【完結】閃光と隼と風神の駆ける夢   作:そとみち

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JDDのウマ娘公式イラストでデジたんになりかけました。
ウララ…






93 挑戦する意思

 

 

『────さあここからは偽の直線(フォルスストレート)!!まだまだ!まだまだ先はあるぞ!!勝利を狙う日本勢!!ヴィクトールピストとナカヤマフェスタは中団から先頭を窺う!!』

 

 

 

『…いいな、いい位置だヴィック……フェスタもいい、あの子は大舞台で強いなやっぱり』

 

『ピストの領域も気持ちよく決まってるわね…残り700m………けど、サリフォスとワークストレングスがまだ脚を溜めてる……ここからね』

 

 俺は10月初週の日曜、自宅のテレビでSSと共に凱旋門賞を観戦していた。

 チームのみんなは寮だ。なにせ凱旋門は日本時間の夜11時に出走となる。門限を過ぎた時間だ。

 しかし今日は凱旋門に挑むウマ娘が二人もいるということで、寮では特別に談話室を開いており、そこで寮のみんなで観戦するとのことだった。

 俺も一人で観戦してもよかったのだが、しかしせっかくなので酒でもつまみながらどうだい、とSSを誘ったというわけだ。もちろん愛バたちには報告済である。

 夕飯前に家で合流し、最近彼女は日本食に凝っているという事だったので、俺が渾身の日本料理を準備してやった。

 肉類を抜きつつも満足できる出来の料理に舌鼓を打ち。ビールとワインを軽くくゆらせつつ、こうして凱旋門賞の奮戦を二人で観戦しているというわけだ。

 

『…残り600m、フェスタがかなりいい位置を取ったな…!ヴィックはバ群に、いやっ、抜けるのかそこから!?』

 

『あの領域、牽制の類を無効化するものかと思ったけど…バ群すら拒めるのね!行ける、脚は残ってる…!』

 

『よし、いけーっ!!そのまま………くっ、残り500で来やがったか!!』

 

『サリフォスとワークストレングスが領域に入った、加速するタイプ…それも相当なもの!凱旋門だからかしらね、相当気合が入ってる…!!』

 

 最終直線残り400m。その地点で、勝利は先頭集団の4人に絞られたと考えていいだろう。

 それぞれが領域を繰り出し、あとは根性勝負。

 実況が日本の勝利を願い、叫ぶ。

 

 

『─────なんとここで先頭はナカヤマフェスタ!!来た!!日本の夢が来た!!だがしかしその後ろ!!ワークストレングスが凄まじい加速でナカヤマフェスタを狙う!その後ろからヴィクトールピストも来ているぞ!!サリフォスは来ない!!ナカヤマフェスタ頑張れ!!ヴィクトールピスト頑張れ!!日本の夢が叶うのか!!ワークストレングスが迫る!!ヴィクトールピストが、いやっ、ナカヤマフェスタが交わされるのか!?何という末脚!!』

 

 

 

『行けーーーーーっ!!GO!!GOーーーーーーーー!!!!』

 

『堪えろ!!粘れ!!!そこだ、ぶっ飛べェーーーーッ!!!』

 

 

 

『これは激戦だ!!行ってくれ日本!!頑張れ日本ッッ!!今ッ!!3人並んでゴーーーーーールッッッ!!!』

 

 

 

 最後にもう一伸びを見せたワークストレングスが、ナカヤマフェスタに並び…そしてその後ろから加速したヴィクトールピストも肩を並べたところで、3人がゴールラインを割った。

 俺もSSも全力で応援し、そうして決着を見届けた。

 

 ────────しかし。

 俺には。SSには。

 このレースの勝者がははっきりと見えていた。

 

『…………及ばなかった、か』

 

『…そうね。悔しいけれど、あっちの執念が上だったわね。日本の凱旋門制覇は、まだ遠い夢、か……』

 

 

『…今確定のランプが出たようです!!悔しいッ!!!一着ワークストレングス!!二着ナカヤマフェスタ!!三着にヴィクトールピスト…!!惜しくも!ハナ差で日本の夢は破れましたッ!!』

 

 

 一着に、英のワークストレングスが入っていた。

 ハナ差、クビ差での敗北。

 あと一歩。しかし、このあと一歩が余りにも遠い。

 日本はまたしても、凱旋門のトロフィーを獲る事が出来なかった。

 

『…悔しいな。しかし、フェスタもヴィックもこれ以上ない走りだった。ワークストレングスが強かった…そう、表現するしかない』

 

『レースなんていつもそうよ。どんなに全力で走って、どんなに限界を超えたって負けることはある。絶対はないんだから…』

 

 お互いに残った酒を煽り、はぁ、とため息をついた。

 つらいものを見てしまった。後で沖野先輩と、フェスタの専属のトレーナーには奢ってやらねばなるまい。

 俺はテレビの先、激走を見せた彼女たちを讃えんと改めて二人の姿を見る。

 フェスタも、ヴィックも、悔しさがにじみ出す顔をしていた。

 見ているのもつらい。エルコンドルパサーも同じような表情だった。

 レースは、勝者を燦燦と煌かせるが、敗者に与えられるものは悔しさだけ。

 その悔しさをバネにして、また己を磨き上げて、ウマ娘達はさらに輝くのだ。

 

『……────────ん?』

 

『……ん、あら…?』

 

 しかしそこで、俺は彼女たちの…ヴィクトールピストの様子を見て、気にかかるものを見つけた。

 それに気付いてしまった…いや、気付けて良かったのかもしれない。

 彼女の、走り終えて疲労が蓄積された、その右足。

 テレビ越しの映像で、僅かに、ごく僅かに見える、重心のブレ。

 

『…挫跖(ざせき)*1、か?走ってる時には影響はなかったように思うけど……SS、どう見る?』

 

『……そう、ね。レース後の疲労によるものにも見えるけど…でも、ちょっとブレが強いかも。気になるわね。タチバナ、一応オキノに連絡入れておいた方がいいわ』

 

『…だな。沖野先輩が見逃すはずはねぇと思うけど一応…重症には見えないから大丈夫だと思いたいが』

 

 1000年の経験を持つ俺と、実際にレースを走った一流のウマ娘であるSSだからこそ、テレビ越しでもなんとか気づけたヴィクトールピストの不調。

 恐らく学園のウマ娘でこれに気付くのは、それこそシンボリルドルフやアグネスタキオン…あとはマヤノくらいの物だろう。ごく僅か、普通に見ていれば気付くことができないそれ。

 もしかすれば唯の勘違いかもしれない。レースに全力を出した結果、単純に重心がぶれているだけかもしれない。

 しかし、それならそれでいいんだ。もし気付かれないまま万が一があってはいけない。

 挫跖は大きな怪我ではなく、一般的には3~4週間も安静にしていれば完治する程度のそれだが、万が一重症になれば跛行を発症し、歩くのがつらくなるレベルにもなり得る。

 

 伝えておくべきだろう。

 俺は沖野先輩のLANEに連絡を入れ、凱旋門の労りの文面と、そしてヴィクトールピストの右足、万が一だが挫跖(ざせき)の可能性があることを伝えておいた。

 流石に今はヴィクトールピストへの慰労で忙しく目は通せないだろうが、落ち着いたら見てくれるだろう。病院に連れて行けば実際どうかわかるところだしな。

 

『…よし、OK。…残念な結果になっちまったが、でも、ヴィックは強くなった…これからも、うちの子達の手強いライバルだな』

 

『ええ。あの領域に負けないくらい、うちのチームも強くなりましょ。……さて、レースも終わったし、私も帰るわね』

 

 ワインを空け終えて、ゆっくりとSSが立ち上がり、帰り支度を始める。

 前回の飲み会の時とは違い、今日の彼女は飲みのペースキープをしっかりと出来ており、酔いもそこまで回っていないようだ。足取りもしっかりしている。

 これなら送っていく必要はなさそうだ。これが学園の生徒のウマ娘なら当然寮まで送り届けるが、彼女も既に大人だしな。あんまり世話ばかりしていては過保護と言うもの。

 

 _──こらーっ!!SS!何帰ろうとしてんのよ!?ここ逃したら一生男日照りよアンタ!!

 _──こっからでしょうが!?クソボケが相手なんだから自分から押さないと駄目だって!!

 _──イケるよ!!酔ったふりして胸元開けばイチコロだって!!男なんて!!

 _──いやここは情に訴える作戦で行け。もっと貴方と呑みたいわ…から思いっきりアイツに抱き着け。お前がそれやって落ちない男は不能だ!

 

(…………ん、く………ちょ、アンタたち………バカ言ってんじゃないわよ……!)

 

 なんだか急に寒気がしてきたな。

 そしてどうしたのだろう、SSが帰ると言って立ち上がってから、なにやらもぞもぞと身を動かしてなかなか帰ろうとしない。

 何かあったのだろうか……もしかして結構酔いが回ってたか?

 立ち上がった折に一気に酔いが回ってしまったのかもしれない。

 それはよくないな。無理に帰ろうとしたら転んでしまうかもしれない。

 ならば送っていくか…とも思ったが、しかしここで俺は妙案を思いついた。

 泊めればええやん。

 

『あー、SS?もしよかったら泊っていくかい?風呂も入ってっていいよ。君が作ってくれた石鹸も常備してるし、着替えはアイネスの借りたって怒られないだろ。洗えばいいだけだしな』

 

 俺は彼女に提案する。

 何のことはない。これまでにも一度、年越しでそうしている通り、俺の家はウマ娘をいつでも泊める準備が出来ているのだ。

 服だってアイネスの下着が常備されている。身長差を考えれば問題なく着用できる範囲だろう。ナイトブラもなぜか置いてったしアイツ。

 上に羽織るのは俺のシャツを貸してやってもいいし、風呂だってシャンプー類は完備している。

 これが学園の生徒なら大問題になるので大人しく寮まで送り届けるところだが、彼女は既に成人しているし、トレーナー寮に門限はない。外泊なんて研修やレース関係でいくらでもするからな。

 泊っていくのに何も問題はない。名案である。

 

 しかしその提案をしたところで、SSが信じられないものを見るような目で俺の方を見た。

 え。なんでしょう。

 

『──────────────ケダモノ!』

 

 そう叫んで、SSは近くにあったテレビのリモコンを全力投球で俺に投げてきた。

 ナイスコントロールでそれが俺の顔面に突き刺さって前が見えねェ。

 

『このバカ!そんなんだから、あの子たちもおかしくなるのよ!!もう、帰るわよ…!!』

 

 そうしてふんす、と鼻を鳴らして、何かを振り払うようにしてSSは帰っていった。

 …ううん。

 俺、何か悪いことしただろうか? 

 どう思うオニャンコポン?

 ニャー!!

 

「グワーッ!!地味に痛い!」

 

 俺は抱え上げたオニャンコポンからもキャッツクロー!を受けて更に顔にダメージを負ってしまった。

 どうして。

 

────────────────

────────────────

 

 翌々日の、午後の学園内グラウンドにて。

 俺たちは今日も秋のGⅠ戦線に向けての練習を積んでいた。

 

「姿勢を落とせ!横Gに減速で対抗するな!体勢を傾けることで抵抗しろォ!!倒れそうになるところを体全体の筋肉で支えて走れ!!」

 

「はいっ!!…だ、ああああっ!!」

 

「くっ、これ、バランスとるのが難しい…☆!!」

 

「でも速い…!!流石にサンデーチーフみたいに内ラチに顔は近づけられないけど、それでもっ!!」

 

 今日の練習は併走だ。

 以前アイネスがやっていたコーナーの練習だが、先日のトレーナーズカップでSSが魅せたコーナリングの技術を見て、フラッシュとファルコンもその曲がり方を覚えたい、と申し出たのだ。そうして今彼女たち4人で何度もコーナーを並走しながら、SSが走りを教授している。

 彼女の様に内ラチスレスレを走る事は出来なくとも、その速さを、コーナーのキレを模倣することはできる。

 これまで、特に直線での加速については俺の方でも重点的に教えていたが、いざコーナーの攻め方を教えようとしていた段階でSSが来てくれたのは本当に渡りに船だった。

 俺に出来ない、ウマ娘達と共に並走しての練習が彼女にはできる。

 目の前で正解を見せながら指導できるのだ。効率がダンチだ。

 

「…ふーぅ!よし、今のは中々よかったぜェ。流石だ。相当な体幹がねェとこの走りはできねぇんだがな」

 

「……はぁ、はぁっ…!体幹は、いつも、トレーナーが、大切って…言ってましたから…!」

 

「うん…☆こうして、速さを求めれば求めるほど、大切さが実感できるよねぇ…!!」

 

「なの…!コーナーでこんなに、全身の筋肉を使うって、今まで思ってなかったの…!」

 

 SSの指導を受けて、愛バ達のコーナー巧者にさらに磨きがかかっている。

 俺の眼から見ても素晴らしいレベルアップを果たしている。これはこれからのGⅠ戦線が期待できる。

 

 …因みに、今日に至るまでのレースだが、9月末にあったフラッシュの神戸新聞杯、およびファルコンのシリウスステークスについて、それぞれ全く心配のない1着を取ってきている。

 神戸新聞杯ではレコードとは行かなかったが、冷静にレースを進めての、無理をしない強い走りでの一着。

 シリウスステークスでは、レコードを1秒縮めて13バ身差の一着を取ってきた。

 フラッシュも安定して強いのだが、やはりファルコンがヤバい。砂の上では誰にも負けるつもりはないというその言葉の通り、世界レコード保持者の誇りを持って、ダートレースを蹂躙している。

 これがSSの言う、ゼロの領域に目覚めた者の強さなのだろうか。

 正直言って、ファルコンについては……負ける姿が、思い浮かばない。

 

 もちろんのことだが、フラッシュもアイネスも十分な仕上がりを見せている。

 アイネスは領域だけが懸念点だが、それでもフラッシュと比較して遜色のない脚。

 領域無しでも十分レコードペースを狙える、世代の中でもピカ一の脚だ。

 

 再来週から始まる、秋のGⅠ戦線、その初戦の秋華賞。

 そこでアイネスは、後輩のサクラノササヤキ、マイルイルネルと勝負になる。

 勝ちきって欲しい所だ。

 

「…よし!20分休憩!普段と違う筋肉使ってるからな、よくほぐしながら休むこと!」

 

「はい!…ふう、もう秋の季節ですが…まだまだ午後は暑いですね」

 

「うー、汗だくー…水分補給はしっかりしないと☆」

 

「汗も拭かないとなの…タオルタオル……あー……トレーナー、あっち向いててくれる?」

 

「はしたねェぞアイネス。()()拭くならちゃんと建物の陰でやれ。…アタシも行くから。フラッシュも行くか?」

 

「……そうですね。ご一緒します。すみませんトレーナー、失礼します」

 

 俺は苦笑を零して、聞かなかったことにして3人が建物の方へタオルを持っていくのを見送った。

 流石に先ほどの会話が何を意味しているのかは朴念仁の俺にだってわかる。

 ウマ娘が女性であること、そしてアスリートであることから起きる必然の事だ。

 

 汗がたまるのだ。

 ある部位の下に。

 

 仕方ない。

 これまでも、そういう身体的特徴を持ったウマ娘を指導するときはそこに気を遣っていた。

 チームハウスには常にベビーパウダーを常備してある。当然の配慮と言えた。

 

「────────☆」

 

 無言の抵抗で俺を尻尾で叩かないでくださいファルコンさん。

 

────────────────

────────────────

 

 さて、そうして水分補給などをして休んでいると、俺のスマホが震えてLANEの着信を伝えてきた。

 

「ん………お。そっか……成程ね。流石沖野先輩、ナイス判断」

 

「ぁー?なんだ、オキノからか?」

 

 スマホを取り出して届いた文面を確認すると、それは沖野先輩からだった。

 そして、その内容が…俺のアドバイスを聞いたうえでの報告で、成程と頷いた。

 それをSSが横から気になるとのぞき込んでくるのに苦笑を零しつつ、みんなにも伝える。

 

「みんな。今沖野先輩から連絡が入ったんだけどな…ヴィックのことなんだけど」

 

「ヴィクトールさんですか?確か、まだパリでしたよね?」

 

「軽度の挫跖(ざせき)だったってニュースで聞いたけど…大丈夫だったの?」

 

「え、もしかして、日本に戻るのも大変なくらいの…!?」

 

「ああ、違うんだ。軽症で済んだそうでさ、念のため1か月走るのを様子見すれば練習には戻れるって。ジャパンカップに挑むかは仕上がり次第って話だけど、有マには必ず仕上げるって。…で、せっかくだからあと2週間は休養もかねてパリにいて、ゴルシと一緒に観光してくるらしい」

 

 俺は沖野先輩からのLANEの内容を簡潔にチームメンバーに伝えた。

 まず、レース直後に俺から伝えた挫跖(ざせき)の可能性。これは残念なことに、予感が的中してしまっていた。

 右足裏の炎症。やはり全力で走っていたこともあり、そこそこの症状が翌日には出てしまったとのことだ。

 この状態では練習をすることはできない。テーピングをした上での日常生活の歩行程度なら支障はないが、出来る限り脚に負担はかけないようにした方がいい。

 そしてその診察結果を聞いた俺は、沖野先輩に一つの打診をしていた。

 なんなら、パリのほうでしばらく療養をしていったらどうか、という話。

 

 俺がしたその提案には2つほど理由がある。

 一つは、沖野先輩たちが泊っていたホテルだ。

 以前アドバイスを求められたときに俺がお勧めしたレース場周辺のホテル。ウマ娘向けのサービスも完備している高級なホテルで、温泉やプールといった施設もあり、宿泊中はそれを利用できるようになっている。

 どちらもウマ娘の脚に効くものだ。特にプールなんかは、歩くだけでトモを仕上げる負担がかけられるほか、今回の様に軽度の炎症になった場合は冷やす意味でも高い効果を持つ。

 以前俺が海でファルコンにやっていた、()()()るアレだ。ホテルに宿泊しながら、プールで脚を冷やしつつ全身運動をすれば、練習不足になることもない。

 

 そしてもう一つの理由が、やはり、敗北してしまったことによる精神面への負荷だ。

 凱旋門の敗北、あれについて責めるようなウマ娘はいないし、ファンや記者だっておおよそは好意的に、奮戦を労わる方向で世論は進んでいる。

 が、肝心の本人はその悔しさを中々切り替える事ができないだろう。そうしたウマ娘達を俺は過去に何度も見てきた。

 だからこそ、日本に帰ってくるのは時間を置いた方がいいのではないか、と俺はアドバイスさせてもらっていたのだ。

 

 そうして沖野先輩も俺の意を汲んでくれたようで、ゴルシを添えて二人でフランスでしばらくのんびりしてもらうということだった。

 いい事だ。ゴルシが居れば破天荒なこともあるだろうが、基本的にあいつは面倒見のいいウマ娘だ。心配もあるが、信頼ができる。

 ヴィクトールピストにとっても、負けてはしまったが、気分転換をしてフランス遠征を楽しい思い出にしてほしい所である。

 

「……ってなわけです。戻ってくるのは菊花賞の前くらいになりそうだって」

 

「そうでしたか…まず、安心しました。ヴィクトールさんが大きな怪我ではなかったようで…」

 

「うん、本当に!…脚が治ったらダートに来てくれないかな?ヴィイちゃんと走りたいなー、あの領域すごかったよねぇ」

 

「あたしは秋華賞がヴィイちゃんが戻ってくる前にあるから…ヴィイちゃんの分まで勝ちきってやるの!」

 

「ハハ、同じことをライバル共も思ってるだろうよォ。まーでも気合が入ったならいいこった。その意気でこれからの練習も気合入れろよォ」

 

「だな。…うし、んじゃ休憩終わり!もう4本、コーナーの練習に戻るぞ!」

 

 はい!!と3人の掛け声が合わさり、SSも腰を上げてざりざりと地面を脚でかく。

 そうして俺たちの練習は順調に進み…これからのGⅠ戦線に備えていくのだった。

*1
走行中に石など固いものを踏んでしまい足裏に炎症が起きてしまうもの

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