ディストピア物で名前だけ出てくる謎国家   作:埼玉臨時政府

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一筋の光が空に走った


プロローグ

私はですね、なんと言いますか、なんともない人生を送ってまいりました。珍妙なる出来事には出会った事もありますがねぇ、これはなんと言いますか、皆さんもそういう事はあるんではないでしょうか?

 

まあそんな事は置いて置いてまず今、今こそがが重要でしょう。人生の過半を占めるどうでもいい、無駄な時間では過去や未来の事はあまり重要ではありませんからね。

私が置かれているのは、これまたなんて事ない木製のベットでありまして、見えない目を凝らしてみるとそれがあると分かったのです。

これもまた重要な事ではなくてですね、おそらく生物学、物理学に止まらない先生方に憚らずに伝えるとですが、私は若返ったという事です。

 

 

今の重大な事態はですね、

ただただ暇、暇、暇、暇ということです。

そんな暇を紛らわす為にですね、私をお世話してくれる人が話している言語を学ぼうとしておりまして、今に頭の中で使用の練習をしている訳です。そんな訳で今、上手に話すことが出来ていますでしょうか。

 

何処かで誰かが言葉のインプットとアウトプットのバランスを保てなければ発狂してしまうとしていたのを聞きまして、確かにそれを実感したためこれをおこなっているのです。

 

子供だから自然に話せるようになると言うのは幻想でして、彼らは他にする事が無いからそれについて勉強し話者になるのであろう。

 

子供、特に幼児と言うのは頭が良くて、私とはついに無縁な物でしたが隣人が話し始めたのを見て遂に言語の習得を目指し始めたのでした。

 

基本的な構成は主語、動詞、それを繋ぐ述語+αのハッピーセットで、語彙に不安が残るにせよ充分に話し始める事ができ、少々出遅れたにせよ同年代と比べれば充分優位に立てたと思うものです。

 

初めての言葉は「こんにちは」でした。微妙な選語センスかも知れませんが世話役の人は涙を流してくれたので及第点でしょう。

 

綿の雲の上で、下の処理に煩われず食餌は天から降ってくるが如し、ただただ思索に耽るだけ。

 

今は充分幸せで、満足です

 

 

 

 

 

 

 

 

私が乳母として活動をしていた中でその子供は一番奇妙だった、子どもは一人一人個性があって同じ者は存在しない事は私の中では常識だったが共通のパターンはやはりある。

 

腹が減れば泣く、尻から実を出したらやはり泣く

それらの声に出ない要求を見分けられて初めて一人前と呼ばれるようになるほど子供は泣く、泣く、泣く、しかし彼は一切泣く事はなかった。

 

声を発しないのだ。

 

こんな子供は面倒

彼は一体どうしたのだろうか彼の気分を計りかねながら私は彼の世話をした

 

ご両親に話を聞けば彼は産まれた時にも泣かず死産と思われ殺されかけたらしい、医者は長くはないだろうと言ったらしいがご両親が「僅かな間だけでも」と言い世話をしたら、なんとも図々しくも生きながらえたと言われた、

仮にもご自分の御子息に対しそれはどうなんだ

実に素晴らしい家族愛に心を打たれて私は心機一転、この子を立派に育てようと誓ったのです。

 

そしてあの日、太陽が燦燦と輝く春日和にあの子は何か意を決したようにこちらを見て遂に口を開いた。

 

「こんばんは」

 

なんと言うミスマッチ!私は泣いた。

 

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