蜘蛛のヒーローアカデミア   作:大同爽

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みなさん、ついにノー・ウェイ・ホーム発売されましたね!
私も映画館で二回見ていましたが購入して発売当日に三回目で見ました!
やっぱりあれはこれまでのスパイダーマンの集大成的な作品ですね!
そんな感動で本来なら明日投稿予定の所を一日早めました!
楽しんでいただければ幸いです!





ep.3 「ピーター・パーカー:オリジン③」

 僕が『ヒーロー』の真似事を始めて早いものでそろそろ半年が経った。

 学年もこの春に一つ上がり、晴れて中学3年生になっていた。

 中学も残り1年を切り、僕も本格的に受験生。周りのクラスメイト達も部活をしている人達は引退をし、勉強に本腰を入れ始め、全体的に空気がピリピリしている気がする。僕も志望校をかの有名な『雄英高校』に見据え最後の追い込みをかけていた。

 『雄英高校』は『ヒーロー科』『普通科』『経営科』『サポート科』の四つに分かれるが共通して筆記は難しく、特に『ヒーロー科』には実技試験もあり、毎年たくさんの受験生が集い、倍率は何十倍にもなる。

 普段の僕の成績を考えれば筆記であれば問題なく合格圏に入ることはできるだろう。

 ――そう、何の問題も無ければ、だが……

 現在は6月某日、僕は二つの面で受験に問題を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

「おはよう、ベン伯父さん、沙月おばさん」

 

「おはよう、日曜なのに早いな」

 

 リビングに降りてきた僕に、先に食卓で新聞を読みながらコーヒーを飲んでいたベン伯父さんが言う。

 

「うん、ちょっと図書館に行って勉強しようと思ってさ」

 

「そうか。まじめに勉強してエライな」

 

「フフ、ピーターももう受験生ですもの。最後の追い込みをかけてるのよね?」

 

「うん、まあね」

 

 感心した様子で頷く伯父さんに沙月おばさんは言いながら僕の前に朝食のトーストと目玉焼きとサラダとコーヒーを並べる。

 おばさんの言葉に頷きながら僕は朝ごはんを食べ始める。

 

「ピーターはリチャードやメアリーに似て頭はいいから試験の方は問題ないだろ」

 

「ん…まあ過去問解いてる感じでは大丈夫そうではある…かな?」

 

 伯父さんの言葉に頷きながら僕はトーストを頬張る。

 

「フフ、でも油断大敵!しっかり勉強頑張ってね!」

 

「そうだな、『サポート科』とは言え天下の『雄英高校』だ。倍率も凄いだろうからな」

 

「あぁ…うん、そうだね……」

 

 二人の言葉に僕は頷きながら内心冷や汗をかく。

 これが一つ目の問題で、この半年の間に僕は『個性』発現のタイミングを完全に逃していた。

 いい加減『個性』が発現したことを伝えなければ、志望進路を『ヒーロー科』にすることも相談できない。

 『ヒーロー』を目指すのであれば言わずもがな『ヒーロー科』に入学するのが一番の早道だ。

 過去には別の科から途中で『ヒーロー科』に転向した例もあるそうだが、どうせならストレートに入学する方がいいだろう。しかし、その為には『個性』の発言は早めに伯父さん達に相談すべきだ。だが、今僕に蜘蛛の能力を授かったことを伯父さん達に伝えるのはいろいろと問題がある。その問題と言うのが二つ目の問題につながる

 と、言うのも――

 

『それでは本日の特集はヴィジランテについてです!』

 

 点けてあったテレビから女性アナウンサーの声が聞こえる。

 見るとテレビの向こうでは朝のニュース番組のコーナーとして

 

『昨今無認可でのヒーロー活動に賛否両論分かれ、中にはその活動の活発さからヒーローに匹敵する知名度の人もいるヴィジランテ。その中でもここ数か月の間に特に注目を集めている謎のヴィジランテが彼〝スパイダーマン〟です!』

 

 巷で話題となっている赤と青の全身スーツの人物――と言うか僕がでかでかと映っていた。

 そう、これが二つ目の理由だ。

 この半年間僕は『ヒーロー』の真似事をしていたわけだが、少し目立ちすぎたようだ。

 僕――巷では『スパイダーマン』と呼ばれる人物は『ヴィジランテ』としてかなり有名人になってしまっていた。

 一応『個性』の使用以外では法律に反しない範囲で活動していたつもりだったが、目についた荒事やら何やらに首を突っ込んでいたらいつの間にこうしてニュースに取り上げられるようにまでなってしまった。

 いや、ホント自分でも少しやりすぎたとは思うが、でも、後悔はしていない。

 活動を自粛することも考えたが、やはり困っている人がいれば助けたいし、他人に危害を加える人がいれば見過ごせない。

 そのまま結局ずるずると今日まで『ヒーロー』の真似事を続けていた。

 

『まったく!なんでこんな奴がもてはやされるのかわからん!』

 

 テレビの画面の向こうでコメンテーターの禿でチョビ髭のおじさんがわめいていた。なんでもヒーローを扱った雑誌の編集長らしく、ヴィジランテ・アンチで有名だ。

 

『こいつらのやってることは自警団気取りの犯罪行為だ!それをさもヒーローのようにネットじゃもてはやして、いい加減国民はやつら、特にこいつの本性を理解するべきだ!』

 

『ですが彼の行動で救われた人もたくさんいますよ。彼の行動は評価されるべきでは?』

 

『だとしてもだ!だいたい、何故素顔を隠す!?何かやましいことがある証拠だ!人助けは本職のヒーロー達や警察に任せればいいんだ!』

 

「相変わらず過激ねぇ」

 

 コメンテーターとアナウンサーやりとりにおばさんは苦笑いを浮かべて言う。

 

「でも、全部が全部間違ってるとも言えんだろ」

 

 と、伯父さんはコーヒーを飲みながら言う。

 

「伯父さんは相変わらずスパイダーマンへの評価厳しいね」

 

「まあな。このコメンテーターは少し言いすぎな気もするが、実際本職の人間がいるんだからそっちに任せろ、と言うのは正論だろう。でも、彼の行動で救われた人間もいるから、一概に全部が全部悪いとは言えないがな」

 

 伯父さんの言葉に僕は押し黙り朝食を食べる。

 前々からうすうす感じていたが、伯父さんはスパイダーマン含め資格無しで活動しているヴィジランテの人達のことをあまりよくは思っていない節がある。

 僕もヴィジランテになろうと思って始めたわけじゃないが、こうして〝ヴィジランテのスパイダーマン〟と言う認識が広まってしまっては伯父さんからもそう評価されてしまうだろう。

 それが気になって僕はなかなか言い出せないでいる。

 それに気になるのがヴィジランテをしていた人間が、果たして雄英への入学やヒーロー資格を取ることが出来るのか……もしできないなら僕は自分で自分の首を絞めていることになる。

 

「……ピーター?」

 

「ッ!?」

 

 と、考え込んでいた僕は伯父さんの言葉にハッと顔を上げる。

 

「大丈夫か?なんだか思い詰めた顔して固まってたぞ」

 

「あ、ああうん、大丈夫大丈夫」

 

「本当か?勉強に少し根詰めすぎてるんじゃないか?たまには休んだっていいんだぞ?」

 

「ホント!ホントに大丈夫だから!」

 

 言いながら僕は最後の一口を飲み込み

 

「じゃ、じゃあ僕図書館行ってくる!」

 

「あ、ああ……送って行こうか?」

 

「大丈夫!勉強ばっかりだから体動かしたいから歩いて行く!」

 

 伯父さんの言葉に応えながら僕は自室に戻りリュックを背負い

 

「いってきます!」

 

 そのまま家を出た。

 

 

 ○

 

 

 

「どうしたのかしらね?」

 

「あのくらいの年頃にはいろいろあるんだろう」

 

「でもやっぱり心配よ」

 

 ベンの言葉に沙月は言いながら向かいに座る。

 

「この間も学校から電話があったのよ、また一時間目遅刻したんですって」

 

「またか?最近多いな」

 

「そうなのよ。最近はいつもより早くに家を出てるのに……」

 

「そうか……」

 

 沙月の言葉にベンは新聞を脇に置き

 

「さっきの顔と言い、あの真面目なピーターに限っておかしなことはしていないと思うが…少し気になるな……帰ったら少し話を聞いてみるか」

 

「そうね」

 

 ベンの言葉に沙月も頷くのだった。

 

 

 ○

 

 

 

「フゥ……今日はもうこの辺かな」

 

 空が紫がかり始めたのを見ながら僕は一息つく。

 家を出てから僕は図書館に向かわずテキトーなビルの屋上にこっそりと上がり服の下から着こんでいたコスチュームに着替え、脱いだ服を背負っていたカバンに詰め逆に取り出したマスクと手袋、ブーツを着けて街へ出た。

 カバンにはダミーで勉強道具は入れていたが今日も使わなかった。

 今日も一日街中をスイングで飛び回り、迷子の子どもを親の元に連れて行ったり、自転車泥棒を捕まえたり、道に迷ったお婆さんに道を教えたり、その他いろいろしているうちに気付けばこの時間になっていた。

 そんなこんなでそろそろいい時間だし、あまり遅くなっても伯父さん達を心配させると思い、帰るためにカバンを回収し服を着替えようと最初のビルに向かった――のだが、その道中のことだ。

 

「ッ!?」

 

 僕の超直感――スパイダーセンスが何かを感じ取った。

 直感のままにそばのビルに降り立ち目の前の路地裏を見下ろせば、そこには一人の女の子を壁際まで追いやって複数人で取り囲む素行がよろしくなさそうな人物たちが見えた。

 

「まったく…よい子はおうちに帰る時間だって言うのに――なッ!」

 

 僕はため息混じりに言いながらピョンと飛び降り

 

「こんばんは~」

 

「グエッ!?」

 

「え……?」

 

「「「「ッ!?」」」」」

 

 今まさに僕と同い年くらいの女の子の着ているセーラー服の襟を掴んでいたスキンヘッドの男の肩に降り立って着地する。

 僕に押し潰されたスキンヘッドは潰されたカエルのような声を上げ、その取り巻きみたいな五人は驚愕に眼を見開き、詰め寄られていた女の子は呆ける。

 

「こらこら、ナンパはするなとは言わないけど、時間と場所は選ぼうね?こんな路地裏で複数人でこんな可愛い子囲ってたらよからぬことしようとしてるように見えちゃうよ?」

 

「え?カアイイ……?」

 

 言いながら女の子を背中に庇いながら男たちに言うと、背後で女の子が呟いた。その声はどこか喜色を孕んでいるようで

 

「う、うるせぇ!邪魔すんな!」

 

「おっと!」

 

 女の子の反応はさておき目の前に並ぶ男たちの一人がナイフを取り出し僕に向かって振り出すのを手で払いのける。

 

「もう…今引けば見逃してあげられたのに、こうして手を出されたらもう応戦するしかないじゃないか」

 

「うるせぇ!ここで引けるわけねぇだろ!」

 

「ていうかいつまでアニキの上に乗ってんだよ!降りろや!」

 

「おっと、こいつは失礼!すぐにどく――ねッ!」

 

 言いながら僕は背後の女の子を腰に手を回しながら抱き上げ蜘蛛の糸――ウェブを飛ばして大きく跳躍する。

 そのまま男たちの頭上を飛び越えた僕はそっと女の子を降ろし

 

「ここは僕が引き受けるから、君は逃げて!できれば警察を呼んでくれると僕がこの後彼らを警察署まで引き摺って行く手間が省けるから助かるかな!」

 

「は、はい……」

 

 戸惑っている様子の女の子を背後に僕は向かってくる男たちへ応戦すべく身構えた。

 

 

 ○

 

 

 

「はぁ……酷い目にあった……」

 

 僕はため息をつきながら帰路を歩く。

 あれからスキンヘッドを含む六人のチンピラ達と大立ち回りをする羽目になった。

 ためらいなく『個性』を使ってくるチンピラたちはなかなかに手こずった。チンピラの一人の放った爪を弾丸のように飛ばす『個性』が掠めて右腕に軽い切り傷はできたが、それ以外は特に問題なし。ウェブで縛り上げたところでちょうどいいタイミングで警官がやって来た。

 多分襲われて僕が逃がしたあのセーラー服の女の子が呼んでくれたのだろう。

 ほっと一安心しフランクに警官にチンピラたちを引き渡そうとしたところ、いきなり銃を抜かれ投降するように言われた。

 ヴィジランテ崩れの僕ではもろともに逮捕されかけた僕は慌てて逃げだした。

 警告を無視して逃げたもんだからその警官と追いかけっこをする羽目になった。

とにかくしつこいその警官を何とかやり過ごした僕だったが、チンピラの撃退も含めかなり時間がかかってしまい、気付けばどっぷりと日も暮れてしまっていた。

 慌てて荷物と着替えを回収しコスチュームを着替える時間も惜しく上から着替えを着こみ大慌てで家路についた。

 そして、家の前に辿り着いた僕は手早く身なりを直し

 

「た、ただいま~……」

 

 恐る恐るドアを開ける。

 

「ピーター!?」

 

「おい心配したぞ!ずいぶん遅かったじゃないか!」

 

「い、いやぁ…問題集のキリがいいところまで、と思ったら遅くなっちゃって……」

 

「勉強熱心なのもいいが気を付けろよ?」

 

「う、うん…ごめんなさい……」

 

 伯父さん達の心配そうな顔に若干罪悪感を覚えながらいそいそと靴を脱いで部屋に行こうと二人の隣を通り抜けようとして――

 

「おい、ちょっと待て!」

 

「ッ!?」

 

 ガシッと右腕を掴まれる。

 見れば僕の右腕を掴んで伯父さんが眼を見開いていた。

 

「ピーター、これどうした!?血が出てるじゃないか!?」

 

「え……あッ!」

 

 伯父さんに言われて見れば、そこには確かにシャツに赤く15㎝ほど真一文字に血がにじんでいた。そこは確かチンピラの『個性』が掠めたところだ。

 

「な、何でもない!帰りに転んで引っ掛けたんだと思う!」

 

「大丈夫って、血が出てるのよ!?見せてみなさい!すぐに処置しないとバイキンが入るわよ!」

 

「沙月、救急箱持って来てくれ!」

 

「ホントに大丈夫だから!」

 

「いいから見せてみろッ!」

 

 振り解こうとした僕だったが、それより先に伯父さんは僕の服の袖を捲る。

 

「ッ!?」

 

 その瞬間服の下から現れた〝それ〟に伯父さんは眼を見開く。

 僕も見られたことに押し黙る。

 

「持ってきたわ!さあこっちで……どうしたの二人とも?」

 

 救急箱を持って来たおばさんは押し黙る僕らの様子に首を傾げ歩み寄ってきて

 

「これって……」

 

 同じく〝それ〟に目を見張る。

 沈黙の中で最初に口を開いたのは

 

「ピーター……」

 

 伯父さんだった。

 伯父さんは僕に視線を向け押し殺したように問いかける。

 

「これは…これはどういうことだ……?」

 

 伯父さんの問いに僕は応えず視線を背ける。

 そんな僕に黙秘を許さないという様子で掴んだ僕の右腕を持ち上げ、僕の視界に真一文字の傷と傷に沿って裂ける赤と青の蜘蛛の巣模様のスーツが映る。

 

「お前が…お前がスパイダーマンなのか……?」

 

 

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