GWいかがお過ごしですか?
私はいろいろ予定があったりでなかなか時間が取れず他の作品を更新できていないので、せめてストックのあるこっちはと思い、予定を早めて投稿しました。
GWも気付けば折り返し、明日は平日で残すは土日だけですね!
私は買い物を少ししたのと昨日「Dr.ストレンジMoM」を見てきたくらいであとはあれこれ用事をこなしてばかりでした!
「Dr.ストレンジMoM」ヤバかったっす。
今後のマーベルの世界がどうなっていくのか楽しみです!
そんなわけで最新話です!
伯父さん達に腕の傷と下に着ていたスーツを見られてから数十分後、腕の傷を治療してもらった僕は着替えないままリビングの椅子に座り
「…………」
「…………」
睨むような伯父さんの視線と、心配そうにオロオロと僕と伯父さんを交互に見る沙月おばさんの視線にさらされていた。
かれこれ10分はこうしていただろうか、恐らくどう切り出すべきか考えていたのだろう伯父さんがゆっくりと口を開く。
「ピーター…もう一度訊くぞ。お前が『スパイダーマン』なのか?」
「…………」
僕はすぐに答えず考える。
ここで否定するのは簡単だ。僕がスパイダーマンのファンで自分で作ったスーツをこっそり着ていた、と言えば多少おかしい部分はあっても伯父さん達には否定することはできない。伯父さん達の認識では僕は『無個性』なのだから明らかに蜘蛛の個性を持っているスパイダーマンと僕は別人となる。
でも――
「……そうだよ」
僕はそうしなかった。いや、そうしたくなかったのだ。
「伯父さん達の言う通り、僕が『スパイダーマン』だよ」
「ッ!」
「そんな……ッ!」
僕の言葉に息を飲む二人の顔に僕は俯く。
そうだ、これでよかったのだ。
経緯はどうあれずっと秘密にしているのは苦しかった。これはちゃんと話して伯父さん達を説得するいい機会だ。ここは素直に全部話して伯父さん達にも理解を得るべきだ。
そう考えた僕は意を決して顔を上げ――
「ふんッ!」
「うわぁッ!?」
伯父さんの振るう拳を寸でのところで避けた。
いや、あぶなッ!?
「ちょ、伯父さんッ!?」
「ベンッ!?」
咄嗟に避けた僕とおばさんが驚く中で叔父さんは拳を振り抜いた姿勢のまま僕を見て
「今のを避けられるとは……やっぱり本当なんだな」
言いながらすとんと椅子に座り直す。
「いや、もうちょっと穏便に確かめてよ……」
僕はドキドキと脈打つ心臓を胸の上から押さえてホッと息をつきながらボソボソと呟く。伯父さんも聞こえていただろうがフンッと鼻を鳴らして憮然と腕を組み僕を睨む。
ちなみに伯父さんは僕の父さんと兄弟だが得意分野は真逆だ。
頭脳派の僕の父さんとは対照的にベン伯父さんは肉体派だ。
学生時代には格闘技をやっていたらしく40手前だがその肉体は筋肉質でガタイもいい。そんな伯父さんに本気で殴られれば『個性』によって強化された肉体でもただでは済まないんじゃないだろうか。
そんなことを考えていた僕をよそに伯父さんはギロリと僕を睨んで口を開く。
「お前がスパイダーマンだっていうことは分かった。だが、お前は『無個性』だったはずだ。いつの間に『個性』が発現していたんだ?」
「そ、そうよ!どうして!?」
伯父さん達の疑問に僕は小さく頷き
「えっと、僕も詳しいことはわからないんだけど…『個性』が発現したのは去年の11月頃――父さん達の元職場に行った次の日だよ」
「そうか……なんですぐに言わなかった?」
「その……ちゃんと使いこなせるようになって伯父さん達を驚かせようと思って……」
「ならなんで俺たちに話す前に『ヴィジランテ』なんかになった?」
「それは……」
伯父さんの問いに押し黙る。
全くその通りだ、正直あの頃の僕は浮かれていたとしか言いようがない。
言い淀む僕に伯父さんは顔を顰めてため息をつく。
「まったく…聞き分けのいい大人びたやつだと思っていたが、やはりまだまだ子どもだったな。どうしてリチャード達から貰ったその頭の良さを使ってもっとよく考えなかったんだ……」
「ちょ、ちょっと待ってよ伯父さん!なんだよその言い方!まるで悪いことみたいに――」
「悪いことだろう!?」
僕の言葉を遮って伯父さんが叫ぶ。
「ちょっとベン!」
「悪いが言わせてもらうぞ、沙月」
咎めるように言うおばさんに伯父さんは首を振って答えてから僕に向き直る。
「お前は公共の場で『個性』を使ってはいけないという法律を破り続け、無資格でヒーロー活動し続けていたんだぞ!?」
「そ、それは……」
伯父さんの言葉に僕は押し黙る。
「いいかピーター、お前がどれほど『ヒーロー』に憧れ続けていたか俺達は知ってる。だからお前に『個性』が発現したことは本当は祝ってやりたい。だがそれとお前がしてきたことは別だ」
伯父さんは言い聞かせるように僕に言う。
「ピーター、何故『個性』の使用に制限があるかわかるか?」
「それは……」
「誰もが好き勝手に無制限に『個性』を使えば大変なことになるからだ。歴史の授業で習っただろう?『個性』が登場してすぐの黎明期は世界中酷いありさまだった。同じことを繰り返さないためにルールが作られみんながそれを守るんだ」
「…………」
「でも、どんな時代にもそう言う枠組みから漏れ出てしまうやつはいる。そう言うやつらが『
子ども扱いされることに僕はカチンと来た。
「伯父さんは僕が間違ってたって言うの!?困っている人がいたら見て見ぬ振りすればよかった!?」
「いや、見てみぬふりしろとは言ってないが……」
伯父さんは僕の返しに少し考え
「ピーター、俺も今のお前ほど稀じゃなくなったが『無個性』だ。だからこそ周りに舐められないように格闘技を習って力をつけた。だからお前の気持ちはわかる」
「わかるわけないよ!」
伯父さんの言葉に僕はたまらず叫ぶ。
「伯父さんは分かったように話すけど、じゃあ僕が何で『ヒーロー』になりたいって思ったかわかってる!?」
「それは……」
「父さん達が死んだからだよ!」
言い淀む伯父さんに僕は叫ぶ。
「父さん達が死んで胸にぽっかり穴が開いたみたいだった。そんな時に『ヒーロー』の――オールマイトの活躍を見て憧れたんだ。カッコよかったからじゃないよ、どんな困っている人も助けてるからだよ!僕も『ヒーロー』になれば父さん達みたいに死ぬ人が減らせるかもしれないって思ったからだよ!僕みたいな大事な人を亡くす人が減らせるって思ったからなんだよ!」
言いながら僕は目を伏せる。
「……でも、ダメだった。僕は『無個性』だった。伯父さんみたいに格闘技をやってみようかと思ったけどそれも向いてなった。僕には戦う力も困った人に伸ばせる手も無かった……でも今は違う。今の僕にはこうして『ヒーロー』としてやっていける『個性』があるんだ!それなのに手が伸ばせば届くところにいる困ってる人に手を伸ばしちゃいけないって言うの!?」
「いや、そうは言ってないだろう……」
僕の言葉に伯父さんは困ったように眉を顰める。
「確かにお前の考えは間違っていないと思う。むしろ困っている人を助けたいというお前の気持ちを俺は好ましいと思う。だが、もっとよく考えて行動してほしいんだ」
言いながら伯父さんは真剣な眼差しで見つめてくる。
「人助けをするのは構わんさ。だが、そうやってコスチュームを着てヒーローみたいに町中飛び回ることはやりすぎだ。しかもお前は困っている人を助けるためとはいえ犯罪者を相手に何度も大立ち回りをしてるんだろう?」
「それだって別に犯罪じゃないでしょ!?日本じゃ現行犯なら警察官やヒーローじゃなくても逮捕権はあるんだよ!目の前で犯罪起こした人を取り押さえられるならそうして何が悪いのさ!?」
「確かに法律上は間違っていないのかもしれない。でもなピーター、だからと言ってそれが正しいかどうかは別なんだよ」
僕の言葉に伯父さんは優しく言う。
「いいか?お前の年頃でどう変わるかによって一生をどんな人間として生きていくかが変わるんだ。どう変わるか慎重に考えろ」
「…………」
「お前が捕まえた犯罪者たちも殴られて当然かもしれないけど、お前の方が強いからと言って殴る権利があるわけじゃないんだ。いいかピーター、覚えておくんだ。大いなる力には大いなる責任が伴うんだ。よく考えて行動しろ」
「なんだよそれ。伯父さんは僕が『
「いや、別にお前が『
「そうだよ、父親じゃないんだ!!だから父親の真似しないでよ!!」
「「ッ!!」」
言った瞬間、二人の顔が強張ったのを見て、僕は自分が頭に血が上ってとんでもないことを言ってしまったと思った。
二人は僕の言葉に申し訳なさそうに、そして、どこか悲しそうに目を伏せた。
僕は二人にそんな顔をさせてしまったことがものすごく申し訳なくて、居たたまれなくて――
「ッ!ピーターッ!?」
「ちょっと待てピーターッ!!」
二人の静止も無視して脇に置いていたカバンを掴んでリビングを飛び出しそのまま家を飛び出したのだった。
――夜も遅い時間に歩いていれば補導される恐れもあったので家を飛び出してすぐにコスチュームに着替えて行く当ても特に考えずスイングで街を周った僕の足は自然と廃工場に向かっていた。
いつの間にか降り出した雨が冷たく身体に打ち付けるが僕は気にせず工場跡のひときわ大きな煙突のてっぺんに座り込んでいた。
考えることは一つ、先程伯父さん達に言ってしまったことだ。
15歳になった現在、伯父さん達と一緒に暮らすようになってそろそろ10年になる。もはや父さん達と暮らしていた期間よりも伯父さん達との時間の方が長くなっている。
もちろん父さんや母さんのことを忘れた日は一日もない。でも、同時に伯父さんと沙月おばさんは僕にとって第二の父であり母のような存在で、大事な家族だ。
それなのに、頭に血が上っていたとはいえ、あんなことを言ってしまうなんて……。
悲しそうに、申し訳なさそうに顔を歪めている二人の顔が頭から離れない。
罪悪感と自己嫌悪が押し寄せてきて息苦しい。
「…………」
見上げる空は真っ暗な雲に覆われて一筋の光も一つの星も見えない。ただただ冷たい雨が身体を打つばかりだ。
雨に濡れたコスチュームの感触は肌に張り付き不快だが、泣いても涙がすぐに雨とまぎれてすぐに気にならなくなるのでそれだけは救いだ。
これからどうするかとウダウダ考え続けている。
今すぐ帰って伯父さんに謝れと言う自分と、帰ったところでどうしようもないと嘆く自分が頭の中で大喧嘩している。
どっちの自分も頑固で答えは出ないまま平行線、お陰で考えが堂々巡りだ。
そんな鬱々とした堂々巡りの思考の中に
「――ッ!?」
ノイズのような直感が走る。
半ば反射的に直感に従って煙突から飛び降りた視界の端にオレンジ色のテニスボールサイズの球体が見えた。
その球体は中心に緑色の光を点滅させ、その点滅の瞬きの間隔が早まっていき――爆発した。
爆発による風圧で吹き飛ばされた僕は
「がッ!?」
工場の屋根に落ちそれだけで勢いは止まらずそのまま屋根を転がり落ちて地面に叩きつけられた。
「かはッ……」
幸い骨折したりはなさそうだが叩きつけられた衝撃で肺の中の空気が強制的に吐き出させられ呼吸困難に一瞬なりながらなんとか息を整えようと荒い息を繰り返していた僕の耳に
「ハッハッハッハ~!!」
腹の底に響くような笑い声が聞こえてきた。
なんとか立ち上がれるだけの気力を振り絞った僕はフラフラになりながら体を起こせば、そこには怪しい風体の、恐らく男と思われる人物が立っていた。
何故恐らくなのかと言えば、理由は単純、その人物が顔を仮面で隠しているからだ。
全身をライダースーツのような緑色の光沢のあるスーツに包み、顔には黄色い目に耳まで裂けるような口、尖がった耳の、ファンタジーゲームなどに出てくるゴブリンのような仮面。その纏う雰囲気からしてただのコスプレしたチンピラなんかじゃない――『
体格の様子や先程の笑い声から恐らく男と思われる――そんな男が小躍りするように、まるで演劇の一幕のように芝居がかった口調で言う。
「見つけたぜェ~、
「部下…?世話…?」
男の言葉にまだぼんやりと思考のまとまらないままオウム返しのように相手の発した言葉を繰り返す。
そんな僕に男は変わらない調子で言う。
「お前が路地裏で殴ってフン縛って警察に突き出した奴らのことだァ」
「あぁ……」
男の言葉に腰に手を当てながら背筋を伸ばして頷く。
「あの人達の知り合い?わざわざ来てもらって悪いんだけど、僕今立て込んでてさ。気持ちだけ受け取っておくから今日の所はお互いここで解散ってことにしない?」
「そうはいかねェなァ~」
僕の言葉に男は肩を竦めて大仰にやれやれと言った様子でため息をつく。
「お前の世話になった奴らは部下とは言っても下っ端も下っ端だったが、それでも部下は部下だァ…俺は身内に優しいんだ、けじめはちゃんとつけねぇとだろォ?」
「……あ、そぉ…それは部下想いのいい上司だことで……」
僕は言いながらため息をつく。
伯父さんが正しかった、僕の考えが足りないせいでこんな面倒なことになったんだ。
これを片付けたら、伯父さん達にちゃんと謝ろう。そして、ちゃんとこれまでしてきたことに決着をつけよう。
そう思いながら僕は目の前の仮面の男に向き直って拳を構える。
「うん、そうだよね…納得できないよね……でも、僕もこの後予定があるから手短にね」
「ハッハァ~!そうツレないこと言うなよ!せっかくだからみんなで楽しくやろうぜェ?なあ、
「………へ?」
男の言葉の直後、僕の視界に広がる光景に唖然とする。
いったいどこに隠れていたのか、ゾロゾロと姿を現す一目でまっとうな生き方していないとわかる人達。20人はいるだろうか、そんな人たちが仮面の男の両脇から僕を囲う。
「お前の為にこんだけ頭数を揃えたんだァ、楽しくやろうぜェ!」
言いながら仮面の男は両腕を大きく掲げ
「さぁ、パーティーの始まりだァ!」
そう言って上げた両手を僕に向けて指し示す。
それを合図に周りを取り囲んでいた人たちが一斉に僕に向かってくる。
そんな光景に僕は焦りながら拳を構え直し
――ごめん、ベン伯父さん、沙月おばさん。帰るのちょっと遅れそうだ。
心の中でそっと謝ったのだった。