蜘蛛のヒーローアカデミア   作:大同爽

8 / 10
投降する前に読み返して納得いかないところを直してたら遅刻しました(;^ω^)
申し訳ありません!
というわけで最新話……というか、実は「ピーター・パーカー:オリジン」は今回の話が最後、次回からは原作本編の時間軸に入ります!
と言うわけで最新話です!





ep.7 「ピーター・パーカー:オリジン⑦」

 取り調べから一週間が経った。

 現在僕はベン伯父さん達に引き取られてから十年近くを過ごした自宅の前に立っていた。

 ただし、これは釈放されたことによる帰宅ではない。その証拠に――

 

「ありがとうございます、場所を自宅にしてもらって……」

 

「気にしないでくれ。君もよく知る場所で話す方がいいだろう?」

 

 僕の言葉に隣に立っていた塚内さんが答える。

 今回の僕の帰宅は一週間前の取り調べの際の根津校長との話に起因する。

 雄英高校へ来ないかと誘われた僕は答えを迷った。伯父さんのことがあって僕は『ヒーロー』になる資格があるのか。何より、おばさんにはちゃんと話をしたかった。

 そのため今日は沙月おばさんと話す為に一時的に自宅に連れて来てもらえた。

ただ、僕も何もなしで外出の許可は出ないのでこうして警察官である塚内さんがついて、腕には手錠がかけられ左足にはGPS付きのバンドが巻かれている。

 

「さあ、行こうか。家の中で君が来るのを待っているよ」

 

「……はい」

 

 塚内さんに促され僕は玄関に向かって行く。

 

「…………」

 

 玄関の扉のノブに手をかけ、そこで手が止まる。

 これを開け、おばさんに会った時、一体おばさんはどんな顔をしているだろうか?第一声はなんと言われるのだろうか?

 怒鳴られるかもしれない。罵られるかもしれない。

 今日ほど自宅に戻るのが怖いと思ったことは無い。

 

「………よしッ」

 

 それでも僕は気合を入れ玄関の扉を開く。

 そこには――

 

「ッ!?」

 

 おばさんが僕が来るのを玄関ホールに立って待っていた。

 

「さつき…おばさん……その……」

 

「…………」

 

 おばさんの顔を見た瞬間先程までの覚悟は急にしぼんでしまい僕はモゴモゴとしどろもどろになる。

 そんな僕におばさんはゆっくりと土間におりて

 

「ッ!?」

 

 そっと、優しく抱きしめられた。

 

「お、おばさん……?」

 

 困惑する僕の背中を優しく撫でながらおばさんは

 

「おかえり、ピーター」

 

 優しく言った。その言葉に僕は

 

「……ただいま」

 

 自然と返していた。

 

 

 ○

 

 

 

「疲れたでしょう?座って、今お茶を淹れるから」

 

「うん、ありがとう……」

 

 おばさんに言われ僕はおずおずとリビングの椅子に座る。

 ちなみに塚内さんは玄関で待っている。二人で話をできるように、と気を利かせてくれたらしい。その時に手錠も外してくれた。

 

「お腹空いてない?警察ではちゃんとご飯貰えてるの?」

 

「うん、ちゃんと三食貰えてるよ」

 

「そう、よかったわ」

 

 キッチンに立つおばさんはそう言って微笑み両手にマグカップを持ってテーブルにやって来る。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

 おばさんは僕の前に湯気の立つコーヒーの入ったマグカップを置き、自分は向かいに座る。

 

「怪我は大丈夫?」

 

「うん…ちゃんと病院で診てもらったから……」

 

「そう」

 

 言いながらおばさんはコーヒーに口を付ける。

 僕も同じようにコーヒーを飲み

 

「……おばさん」

 

 意を決して口を開く。

 

「おばさん……ごめんなさい」

 

「…………」

 

「僕のせいでベン叔父さんは……」

 

 おばさんは僕の言葉にそっと頷き

 

「……あの晩、あなたが飛び出して行った後、ベンと話したの」

 

 おばさんは口を開く。

 

「ベンは言っていたわ。あなたの事、頭ごなしに否定しすぎたって」

 

「そんなこと……!」

 

 否定しようとした僕の言葉をおばさんは首を振って遮る。

 

「あなたに助けられたって人の話を調べたの。あなた知ってる?『スパイダーマン』って調べたらあなたに助けられたって人の話やあなたを称賛する声をまとめたサイトが出てくるの」

 

「まあ一応見たことあるよ……」

 

 おばさんの問いに答える。

 本当は一日に一回は必ず閲覧していた。ネットで賞賛されているのが嬉しかった。まるで本物のヒーローになれたような気がしたから。

 でも、結局はそれも……

 

「あのサイトでも紹介されてたけど、あなた事故に遭いそうになった子どもを助けたことが何度かあったのね」

 

「うん、まあね……」

 

「……すごいわね、本当にヒーローみたい」

 

「え……?」

 

 おばさんの思わぬ言葉に茫然と顔を上げる。

 

「確かにあなたは無資格で活動していたわ。でも、あなたが助けた人たちにとっては、きっとあなたは『ヒーロー』だったはずよ」

 

「おばさん……」

 

「ベンに同じことを言ったら、彼もそうだって頷いてた」

 

 おばさんは言いながら優しく微笑む。

 

「ベン言ってたわ、あなたのしたことはやり方は間違っていたのかもしれないけど、やろうとしていたこと、助けた命は正しかったって……だからちゃんと話をしないとってあなたを探しに出て…それで……」

 

 おばさんは言いながら徐々に何かを堪えるように口籠る。

 

「おばさん、その…伯父さんの事、本当に……」

 

「謝らないで、ピーター」

 

 おばさんは優しい声音で言いながら首を振る。

 

「ベンを殺したのはあなたじゃない。悪いのは直接手を下した『(ヴィラン)』よ。少なくとも私はあなたを恨んだり怒るつもりはないわ」

 

「…………」

 

 だとしても、僕はおばさんの言葉に頷けなかった。

 例え伯父さんを殺したのが『敵』――グリーンゴブリンだとしても

 

「おばさんはそう言ってくれても、僕はやっぱり伯父さんが死んだ原因は僕にあると思うから……」

 

 言いながら僕は俯き

 

「……実は、雄英高校に来ないかって誘われたんだ」

 

「え、ホントに!?凄いじゃない!」

 

「でも、僕はそれにすぐに返事できなかったんだ」

 

「え?どうして?」

 

 おばさんは驚いた様子で訊く。

 

「伯父さんが死ぬ原因になった僕が『ヒーロー』になれるのかなって……例えヒーローになれたとしても、また同じような過ちを犯すんじゃないかって……どうすればいいかわからないんだ」

 

「そう……」

 

 僕の言葉におばさんは頷き

 

「なら、一番難しいことからはじめなさい」

 

「一番難しいこと……?」

 

「そう、自分自身を許すことから」

 

 そう言っておばさんは優しく微笑む。

 

「私はあなたを信じてるわ。あなたはいい人間よ。あなたは解決する方法をきっと見つけるわ」

 

「おばさん……」

 

「自分を許して、また『ヒーロー』を目指すことが出来たら、きっとあなたはいいヒーローになれるわ。痛みを知ってるあなたなら、同じ痛みを持ってる子を救うことが出来る」

 

 おばさんは言いながら机の上で組んでいた僕の手にそっと自分の手を添える。

 

「子ども達にはヒーローが必要なの。勇気があって自分を犠牲にしてまで、私達の手本となる人。みんなヒーローが好きなの。その姿を見たがり、応援し、名前を呼ぶ。何年も経ってみんな語り継ぐの、諦めないことを教えてくれたヒーローがいたことを。私は誰もが心の中にヒーローがいると思ってる。そのおかげで、正直で、勇気を持ち、気高くいられ、そして最後には誇りを持って死ねるの。でもそのためには常に他人のことを考えて、時には一番大切な物でさえ諦めなければならないこともある。自分の夢さえもね」

 

「……僕に、できるかな?」

 

「できるわよ」

 

 呟くように訊く僕におばさんはニッコリ微笑む。

 

「私も、ベンもそう信じてるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――おばさんと話してから数か月後、僕は

 

「……よしッ」

 

 真新しい制服に身を包み、新たな学び舎――雄英高校、その職員室にいた。

 

「やあ!制服よく似合ってるじゃないか!」

 

出迎えてくれた根津校長先生はそう言って朗らかに微笑む。

 

「君が入学を決めてくれて本当によかったよ!よく決めてくれたね!」

 

「いえ、こちらこそご期待に添えるように頑張ります!」

 

 根津校長に僕は頭を下げる。

 

「ああ、これから君に待ち受けているのは茨の道だろうけど、頑張ってね!」

 

「はい!」

 

 根津校長の言葉に頷く。

 

「さ、それじゃあさっそく君の担任を紹介しよう!君の入学は特殊だから入学初日に来た転入生って扱いになるんだ!だから担任と一緒にHRから参加してもらうね!」

 

「わかりました」

 

 僕が頷いたのを確認した根津校長は頷き

 

「相澤先生!」

 

「…はい」

 

 呼びかけられた人物、ぼさぼさの髪に全身黒ずくめの男の人が歩み寄ってくる。

 

「彼が君の所属する1年A組の担任、相澤消太君だ!」

 

「…相澤だ」

 

「…………」

 

 覇気のない様子で言う相澤先生に僕は唖然とする。

 

「あなた…もしかして……」

 

「…あの廃工場で捕まえて以来だな」

 

「やっぱり!!」

 

 相澤先生の言葉に思わず叫ぶ。

 全体的な雰囲気とそっくりだと思ったが、まさかの本人だった。

 

「…あの時はまさかこんなふうに再会するとは思わなかったが、人生何があるかわからないものだな」

 

 と、相澤先生は皮肉げに笑い

 

「…ちなみに俺はお前にヒーローの素質があるか懐疑的だ。厳しく見るから覚悟しておけ」

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

「ああ」

 

 相澤先生は頷き

 

「それじゃあ、そろそろいい時間なので教室に向かいます」

 

「うん!よろしく!パーカー君も頑張ってね!」

 

「え、あ、はい……」

 

 頷いた僕を見て相澤先生は歩き出し

 

「え、あ、ちょ、ちょっと待ってください!」

 

「…なんだ?」

 

 呼び止めた僕に相澤先生が面倒臭そうに振り返る。

 

「あ、あの…僕のこの手錠はいつ外してくれるんでしょうか?警察では雄英に着いたら外してもらえるって聞いてたんですが……」

 

「あぁ~……」

 

 僕の問いに相澤先生は面倒臭そうに頭を掻き

 

「お前、教室までそのまま来い」

 

「………はい?」

 

 思わぬ言葉に僕は茫然と聞き返す。

 

「…他の生徒にお前のことわからせるにはその方が手っ取り早い。合理的に行く」

 

「いや…でも……えぇ~……」

 

 困惑する僕に相澤先生はため息をつき

 

「…いいからさっさと着いて来い。時間は有限なんだよ」

 

「は、はい……」

 

 ギロッと睨む相澤先生の眼にいくら言っても覆らないと悟り渋々頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――こうして僕のヒーローを目指す新たな日々が始まった。

 

――これから何が待っていようと僕は人生を受け入れる。

 

――そして、この言葉は二度と忘れない

 

――大いなる力には、大いなる責任が伴う。

 

――僕に与えられた力は、僕を一生呪うだろう。

 

――僕が誰かって?

 

――僕は、スパイダーマン

 

 

 




と言う訳でこれにてピーター・パーカーが雄英高校に来るまでのお話でした!
次回から原作に入る予定になります!
が、ストックがあったのがここまでの上、最近このお話ばかり更新していたので連載中の他の作品と兼ね合いを見ながら更新になるので更新頻度が落ちますがご了承ください!

ここまでお読みいただきありがとうございます!
引き続きヒロアカ世界のピーター・パーカーの物語を楽しんでもらえるように頑張りますのでよろしくお願いします!
評価や感想を頂けると作者は大喜びでモチベーションが上がっていきますのでお手間でなければよろしくお願いします!



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