蜘蛛のヒーローアカデミア   作:大同爽

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お久しぶりです。
投稿が遅くなってしまってすみません。
ストーリーを練っていて遅くなりましたが本格的に原作に入ります。
そんなわけで最新話です!





ep.8 「転校初日」

 

「改めて説明する…」

 

 僕を含めた21人の生徒が全員体操服に着替えてグラウンドに集まると、相澤先生は口を開いた。

 

「今からお前達にやってもらうのは個性把握テスト…お前達も中学まででやったことあるだろ、『個性』使用禁止の体力測定…『個性』が当たり前になって随分になるが国ははいまだに画一的な記録をとって平均を取り続けている…合理的じゃない、まあ文科省の怠慢だな…」

 

 言いながら相澤先生は並んでいる僕らの中からツンツン頭の目つきの鋭い男子を見る。

 

「実技入試成績のトップは爆豪だったな」

 

「おう」

 

「中学の時、ソフトボール投げ何mだった?」

 

「…67m」

 

「じゃ、『個性』を使ってやってみろ」

 

 言いながら相澤先生をは横に置いていた箱からボールを取り出し爆豪と呼んだ人物に投げ渡しソフトボール投げのサークルに立たせる。

 

「円からでなきゃ何してもいい…思いっきりな…」

 

「……んじゃ、まぁ…」

 

 爆豪君は右手でボールを持って腕の筋を伸ばしてから身構え――

 

「死ねぇぇぇぇッ!!」

 

 怒声と共にボールが爆発を帯びて高速で飛んで行く。と、言うか――

 

(今、死ねって言ったよね……?)

 

「……死ね?」

 

 僕の思考と同じタイミングで隣に立っていたモジャモジャ頭の男子も呟く。

 恐らく僕達以外にも疑問符が浮かぶ中で相澤先生は特にそこには触れず口を開く。

 

「まず自分の最大限を知る…それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ…」

 

 言いながら取り出したデバイスの画面を確認した相澤先生は僕らにその画面を見せる。

 そこにはボールが飛んだであろう記録――「705.2m」の文字が表示されていた。

 

『おぉぉぉぉッ!!』

 

 その数字に一気にクラスメイト達が湧きたつ。

 

「705mってマジかよ…!」

 

「ナニコレ!?面白そうッ!」

 

「『個性』思いっきり使えんだ!流石ヒーロー科!」

 

 口々に興奮を隠しきれない様子でクラスメイト達が言う中、そんな様子を冷めた目で見ていた相澤先生が

 

「面白そう…か……ヒーローになるための三年間、そんな腹積もりで過ごすのかい?」

 

 冷めた声で呟く声が興奮していたみんなも一瞬静まり返る。

 

「……よし、八種目トータル成績最下位の者は『見込無し』と判断し、『除籍処分』としよう」

 

『はぁぁぁぁぁぁッ!?』

 

 その言葉を聞いた瞬間、今までで一番の大声で全員叫ぶ。もちろん僕も思わず叫んでいた。

 

「生徒の如何は俺達教師の自由…」

 

 困惑する僕達に相澤先生はおよそヒーローらしからぬ鋭い眼光の笑みを浮かべながらボサボサの髪を掻き上げ

 

「ようこそ、これが『雄英高校ヒーロー科』だッ!」

 

 クラスメイト各々が大なり小なり衝撃を受けているのを感じる。そして、例にもれず僕もだ。

 一時は潰えかけた夢をもう一度追いかけるチャンスに巡り合えた。なんとしてもここで食らいつかねば!

 ――と、静かに闘志を燃やしていた僕だったが

 

「あ、そうだ…パーカー、お前は入学前に粗方データはとってるから今回は見学な…でも、順位には反映させるから」

 

「……え?」

 

「ほんの数日で記録が格段に良くなったりしないからな、時間の節約だ…」

 

「えぇぇぇ……」

 

 僕の燃やしていた闘志は一瞬で無意味になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで始まった個性把握テスト、クラスメイト達はみんなそれぞれの『個性』を活かして好記録をたたき出していく。

 50m走では脹脛にバイクや車のマフラーのような物がついているメガネの男子が爆走したり、お腹からビームを出して飛ぶ男子――1秒以上出すとお腹壊しちゃうんだよねェ、と何故か決め顔で言っていた――ソフトボール投げでデモンストレーションをしていた彼は両手で爆発を起こして推進力にしたり、とそれぞれ創意工夫を行っていた。

 他にも、

――握力測定では複数の腕を持つ男子が同時にその複数の腕で器具を持って計測し500㎏を記録したり

――立ち幅跳びでは50m走の時の様に爆豪君が爆発を利用して跳んだり、レーザーの彼が飛んだりはしたが単純な跳躍力では黒髪の女生徒がまるでカエルのようなフォームで記録を出したり

――反復横跳びではクラスで一番小柄な男子が特徴的なブドウみたいな髪の毛をモギモギしてくっつけそれを反発させていたり

 みんなそれぞれで得意な競技で記録を出しているようだった。

 そんなこんなで折り返しの五種目目、最初のデモンストレーションで行われたソフトボール投げにて、とんでもない記録が出た。

 ボブカットのどこか麗らかのんびりとした印象の女子が投げたボールは速度こそゆったりとしていたもののクルクルと回転しながら勢いが弱まることなくドンドン飛んで行き――

 

『∞ッ!?』

 

 相澤先生の持つデバイスに表示された異次元な数値に僕を含めクラスメイト達は唖然とする。

 と、そんな僕を含めたクラスメイト達の興奮を他所に――

 

「ど、どうしよう……」

 

 横で青い顔をして震えるモジャモジャ頭の男子の呟きを聞く。

 

「………」

 

 一瞬迷った僕は

 

「……あ、あの」

 

「ッ!?」

 

 意を決して話しかけた。

 

「だ、大丈夫?顔色悪いけど、体調悪い?保健室行く?」

 

「だ、大丈夫!へ、平気だから!」

 

「でも…」

 

「ほ、ホントに!ホントに大丈夫!」

 

「……そ、そっか…でも無理しないようにね」

 

「う、うん…ありがとう……」

 

 そう言ってモジャモジャ髪の彼はぎこちなく笑いながら視線を逸らす。

 なんと言うか教室に入ってから僕に対する周囲の空気はどこか余所余所しい。

 この個性把握テストが始まり本格的にクラスに混ざったが特に誰からも話しかけられることは無く、さりとてみんな無関心なのかと言えばそうではなく、まるで品定めでもするようにチラチラと見られている視線を感じる。

 やはりファーストコンタクトがいけなかった。誰だって入学初日にごつい手錠を掛けられたやつが現れて「今日から一緒に勉強するからよろしく!」なんて言われても受け入れられるわけがない。

 それもこれも相澤先生が手錠を外してくれなかったせいだ、と恨みを込めた視線で相澤先生を睨むが

 

「じゃあ次、緑谷…」

 

「は、はい!」

 

 どこ吹く風で記録を続けている。

 相澤先生の呼びかけで先程のモジャモジャ頭の彼が返事をしてサークルに立つ。

 

「緑谷君は、このままだとマズいぞ」

 

 メガネの彼――飯田君と言うらしい――が神妙な面持ちで言う。

 

「あぁ?たりめぇだ!『無個性』のザコだぞ!」

 

 そんな彼に爆豪君が緑谷君を指さしながら言う。

 

「なッ!?『無個性』!?」

 

「ッ!?」

 

 爆豪君の言葉に飯田君、そして、こっそり聞き耳を立てていた僕は息を飲む。

 

「彼が入試時に何をしたのか知らんのか!?」

 

「あぁ?」

 

 怪訝そうに飯田君の言葉に眉を顰める爆豪君を尻目に僕は改めて緑谷君を見る。

 未だに顔色が良くなく覇気がない。同時に思い出す、彼はこれまでの四種目で大した記録を出していなかった。彼はこのままでは自身が除籍処分になることを危惧していたからこそ、緊張とプレッシャーで押しつぶされそうになっているのだろう。

 その姿は少し前のまだ『個性』の発現する前の自分に重なって見えて、僕は何とも言えない感情を覚えた。

 と、そんな中で緊張の面持ちの緑谷君は意を決したようにボールを振り被り――

 

「ッ!?」

 

 その瞬間、僕の首筋にビリビリとした感覚が走る。

 一瞬痛みにも思えるそれはこれまで感じたことのないレベルで警鐘を鳴らす超直感――スパイダーセンスだとわかると同時に僕は目を疑う。

 『無個性』と聞いたはずの緑谷君の腕が眩く光っているように見えた気がした。

 ボールを投げるフォームが進むにつれてスパイダーセンスの警鐘が強まっていき――ふいに消えた。

 直後――

 

「てやぁッ!!」

 

 緑谷君は思い切りボールを投げた、が、それは――

 

「ヨンジュウロクメートル」

 

 記録を読み上げた観測用のロボットの機械音声の通り、確かに記録は普通に見れば良い方だろう。しかし、個性を使っての中では見劣りする。

 

「なッ!?確かに今使おうって……」

 

 困惑する緑谷君は自身の右手を茫然と見ている。

 僕も困惑する。

 今のスパイダーセンスの反応は間違いなく本物。もしあのままであればとんでもない記録が出たのではないかと思う。だが、そうはならなかった。いったいどうして?そもそも『無個性』のはずの彼が何故あれほどの爆発的なエネルギーを見せたのか?

 疑問符が浮かぶ僕を他所に

 

「『個性』を消した」

 

 相澤先生の言葉が聞こえる。

 

「つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴も入学できてしまう」

 

「『個性』を消した……?」

 

 困惑する緑谷君だったが

 

「ッ!?そのゴーグル!そうかッ!見ただけで人の『個性』を抹消する『個性』!抹消ヒーロー、イレイザーヘッド!」

 

 どこか興奮を帯びた声で緑谷君が言う。

 なるほど相澤先生の正体は「イレイザーヘッド」だったのか。

 

「イレイザー?誰それ?」

 

「俺知らない」

 

 クラスメイト達も口々に呟いているが無理もない。

 イレイザーヘッドと言えばアングラ系ヒーローでメディアの露出も極端に少ない。僕も以前にヒーローの特集雑誌の隅にあった記事を読んだ覚えがあるが極端に情報が少なかったはずだ。

 そんなクラスメイト達を他所に相澤先生は緑谷君に歩み寄り

 

「見たとこ、『個性』が制御できないんだろ?」

 

「ッ!?」

 

「また行動不能になって誰かに助けてもらうつもりだったか?」

 

「ッ!そ、そんなつもりじゃ――」

 

 睨むように言う相澤先生の言葉に緑谷君が息を飲み反論しようとする。が、それより早く相澤先生は自身の首元の布を素早く飛ばし緑谷君を巻き付け引き寄せる。

 そのまま何かボソボソと言われる緑谷君。

 相澤先生はこちらに背中を向けているので何を言い、どんな表情なのかわからないが、緑谷君の悲痛な表情が、かなり深刻なことを言われていることを物語っていた。

 そのまま話は終わったようで拘束を解かれた緑谷君を見下ろしながら

 

「お前の『個性』は戻した。ボール投げは二回だ、とっとと済ませな」

 

 そう言って踵を返し元の位置に戻る。

 

「指導を受けていたようだな」

 

「除籍宣告だろォ」

 

 僕のそばで心配そうに見ている飯田君とどうでもよさそうに爆豪君を見ながら僕は緑谷君の様子を見る。

 一層青い顔をした彼は再びサークルに立ちながらブツブツと何かを呟いている。

 しかし、再び意を決した様子で目に闘志を灯した彼は大きく振り被り、投球フォームに入る。

 その瞬間僕のスパイダーセンスも再び反応――しかし、先程のような痛いほどのモノではなくいつもと同じか少しピリッとする程度の反応で

 

「スゥゥマァァッシュッ!!」

 

 叫びと共に緑谷君の手からボールが放たれる。

 ボールは突風を起こし、まるで爆豪君が投げた時のような衝撃を発しながら高速で飛んで行く。

 高速のまま大きく弧を描いて飛んで行ったボールは地面に落ち、相澤先生の持つデバイスに「705.3m」という記録を表示する。

 

『ッ!?』

 

 驚く僕達の視線を受けながら

 

「先生…ッ!」

 

 緑谷君が何かを堪えるような声で呼びかける。

 見れば彼の右腕の人差し指は赤黒く変色していた。

 

「まだ…動けますッ!」

 

 その瞬間後ろ姿でも相澤先生の雰囲気が変わったのを感じた。

 

「コイツッ…!」

 

 そう呟いた声にはどこか喜色を孕んでいる気がした。

 

「700mを超えたぁッ!?」

 

 クラスメイト達が驚きの声を漏らす中

 

「やっとヒーローらしい記録出たよ~!」

 

 ほんわか麗らかとした雰囲気の女子――麗日さんが自分のことの様に喜び

 

「指が腫れ上がっている!?入試の時と言いおかしな『個性』だ」

 

 飯田君が呟いている。

 爆豪君の口ぶりからして彼と緑谷君は以前から知り合いだったのだろう。だから、彼の言う「緑谷君は『無個性』」と言うことは恐らく真実。

 しかし、飯田君の口ぶりや今の記録を見るに『無個性』とは考えずらい。

 また、彼の腫れあがった指、まるで自分の出したパワーに耐え切れず壊れてしまったかのように見える。

 ここから推察できること、それは――彼は僕と同じつい最近まで正真正銘の『無個性』だったが後天的に『個性』が発現したレアケース、ということではないだろうか。

 それならば爆豪君が緑谷君を『無個性』と思っていたことにも説明がつく。恐らく彼は緑谷君が『個性』を発揮した場面に初めて遭遇したのだろう。

 また、彼の指が腫れ上がっているのも推察はできる。

 以前に読んだ科学雑誌で『個性』についての研究の論文の中に、世代を重ねるごとに『個性』が複雑化しそれに肉体の進化が追い付いていない、と言った論文を見た覚えがある。

 緑谷君のそれも最初『無個性』だった肉体に遅れて『個性』が発現したことで、能力に見合った肉体がまだ出来上がっていない、ということなのではないだろうか?

 そこまで考えたところで、なんとも自分と重なる部分を感じ僕は人知れず彼にシンパシーのような物を感じてしまった。

 と、そんな僕の感慨を打ち消すように首筋の産毛が逆立つようなスパイダーセンスの感覚を覚え、直後

 

「どういうことだコラァ!」

 

 怒声と共に数発の小さな爆発音が聞こえ、視界の端に人影が駆け出すのを捉えた瞬間、反射的に身体が動いた。

 

「訳を言えデクてめぇ!!」

 

 叫び飛びかかる爆豪君、対して恐怖で硬直する緑谷君の様子をどこかスロー映像を見るような感覚を覚えながら僕は素早く爆豪君に右手を向け

 

「シッ!」

 

 素早く糸を伸ばし、爆豪君を引き戻す。

 

「何ッ!?がッ!?」

 

 急に後ろから引かれ勢いを殺された爆豪君はそのまま地面に背中から倒れる。

 そんな彼にダメ押しで

 

「シッ!シッ!シッ!シッ!」

 

 彼の四肢、手首と足首を糸で地面に縫い付ける。

 そこまで、ほぼ反射的にした後で――

 

「……あ」

 

 そこで、やっと理性的な思考が追い付く。

 いや、逃げる犯罪者を拘束する感覚でついやっちゃったけど、何クラスメイト拘束しちゃってんの僕ッ!?

 

「んだこの糸!かてェッ!!」

 

「あ、いや…そのぉ~……」

 

 拘束を解こうと暴れる爆豪君だったが鋼鉄のワイヤー並の強度の糸はびくともしない。

 僕は恐る恐る振り返りクラスメイト達の様子を窺うと――

 

『………』

 

 全員もれなく唖然としていた。

 唖然と言うかもはやドン引きのレベルではないだろうか?

 ただでさえ手錠をして登場した異質なファーストコンタクトで距離を置かれていたのに、ここに来て一気に溝が広まっただろう。

 

 ――グッバイ、僕の高校生活……

 

 と、人知れず涙していた僕だったが

 

「い、今のなんだよッ!?」

 

「まるでプロのヒーローみたいに無駄なく素早く拘束したぞッ!?」

 

「手から糸を出す『個性』なのかな?」

 

 そんなクラスメイト達の呟きで思考が戻る。

 

「ていうか今の動きどっかで見たことあるような……?」

 

「糸を出すときの動きとか、あの特徴的な手の形……」

 

 クラスメイト達の最初の表情は当然のことに驚きが多かったようで、今は興味が勝っているようで口々に言い合い

 

「も、もしかして、スパイダーマン…?」

 

 緑谷君が呟いた一言が決定打となり

 

「そうだ!スパイダーマンだ!」

 

「間違いねぇよ!俺何回も動画で見たことある!あの糸出す動きとか手の形とかまんまだ!」

 

「マジッ!?同い年だったの!?もっと大人なんだと思ってた!」

 

 困惑と興味が一気に興奮に変わった。

 

「あ、いや…その……」

 

 興奮と興味の視線、口々に聞く動画を見ただとかの言葉に驚きながらも反応に困っていた僕は

 

「静かにしろ…!授業中だぞ…!」

 

 相澤先生の言葉に水を打ったように静かになったクラスメイト達にホッと人知れず安堵しながらそそくさと元の隅に戻ろうとして

 

「パーカー、これ終わったら職員室な」

 

「……はい」

 

 無慈悲な言葉にガックリと肩を落とした。

 

「おいテメェ!そこのクモ野郎!ボケッとしてねぇでさっさとこれほどきやがれ!」

 

「あッ、ご、ごめんッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、つつがなく残りの種目の計測は終わった。

 あれから緑谷君は残りの種目でも目立つ記録は出せず、最後の持久走もビリとなっていた。

 あと、話は変わるかもしれないが、持久走でバイクに乗って爆走していたポニーテールの女子がいたがアレはありなのだろうか?というかどういう個性ならバイクを出せるのだろうか?

 そんな疑問は置いておいて、そんなこんなで最終の結果発表。

 相澤先生のデバイスから投影されたビジョンには1位から21位までの名前が並んでいった。

 僕の記録は5位、思わぬ高成績に自分でも驚いた。

 緑谷君は、21位――最下位だった。

 絶望に俯く緑谷君――だったが

 

「ちなみに除籍は嘘な。君らの『個性』を最大限に引き出す合理的虚偽」

 

 相澤先生の予想外の言葉に

 

『はぁぁぁぁッ!?』

 

 クラスメイト達の一部から驚愕の声が漏れ

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない。ちょっと考えればわかりますわ」

 

 と、バイク爆走女子――八百万さんが呆れた様子で言っていた。

 僕を含め何人かは驚きの声は上げなかったものの八百万さんの言葉に

 

――き、気付かなかった……

 

 と茫然としたのだった。

 そんな僕らを尻目に

 

「んじゃ、これにて終りだ。教室にカリキュラムなどの書類があるから戻って目を通しておけ」

 

 そう言って去って行く。

 クラスメイト達もその指示に従って教室に戻っていくので僕もその流れに着いて行こうと歩き出し

 

「お前は職員室だって言ったろうが」

 

「……はい」

 

 即相澤先生に捕まった。

 

 

 〇

 

 

 

「し、失礼しました……」

 

 職員室を出た僕はそっと扉を閉めて息をつく。

 あれから相澤先生にお小言を貰った。別に怒られたというほどではない。

だが観察処分で来ているのに行動が軽率だったのは自覚している。

 

「はぁ~……」

 

 前途多難な入学初日となってしまった。

 僕の正体がバレた時には好感触な反応が多々見られたが、その後の競技中は誰も話しかけてこなかったし個性把握テスト後もすぐに職員室に行ったのでクラスメイト達と話すことはできなかったので結局クラスメイト達の僕への評価は不明なままだ。

 しかも結構長いこと職員室にいたので

 

「……誰もいない」

 

 教室はもぬけの殻だった。

 無理もない。今頃初日で構築され始めたグループで和気藹々と下校し青春していることだろう。

 完全に出遅れてしまった。

 これから頑張って挽回せねば!と、奮起しながらカバンに資料を詰め背負う。

 とりあえず今日は家に帰って資料に目を通そう。

 ちなみに僕は保護観察扱いなので雄英から徒歩圏内にある政府の用意したアパートで一人暮らししている。その方が監視しやすいからだろう。

 帰りに夕飯の買い物をしてから帰らないと。何にしようかな、と自分の作れるレパートリーを頭の中に浮かべながら歩いているとすぐに玄関口に着いた。

 下駄箱から靴を出し、校門に向かって歩き出した僕は

 

「ちょっといい?」

 

 下駄箱の影にいた人物に呼び止められた。

 

「え……?」

 

 呆けながらそちらを見ると、黒髪短髪の女子――確か耳郎さんだったか――下駄箱に背中を預けるようにが立っていた。

 

「な、なんでしょうか……?」

 

 思わぬ出来事にどもりながら訊き返すと耳郎さんは背中を預けていたところから向き直って正面から僕を見据える。

 

「ッ!」

 

 鋭い眼光に一瞬たじろいだ僕に耳郎さんはその鋭い視線を維持したまま口を開く。

 

「ちょっとツラ貸してよ」

 

 鋭い視線から一体どんな言葉が出るのかと身構えていた僕はその言葉に

 

「か、カツアゲですか…?」

 

「はぁッ!?」

 

 思わず言ってしまった言葉に耳郎さんがギロッと視線をさらに鋭くする。

 

「んなことするわけないじゃん!」

 

「い、いや…だって今の言い方だと……」

 

「ッ!いや、まあ…ごめん、今のはウチの言い方が悪かったわ……」

 

 慌て言い訳する僕に耳郎さんは少し申し訳なさそうに頬を掻き

 

「ごめん、言い直す」

 

 咳ばらいを一つして改めて僕に視線を向ける。その視線は先程よりは多少和らいでいて

 

「あんた、帰る方向は?」

 

「え?えっと…最寄り駅の方です…けど……?」

 

「そっか、ウチも同じ方向だしちょうどいいね」

 

 僕の返答に一人納得した様子で頷いた耳郎さんは口を開く。

 

「ちょっと話したいことあるから、一緒に帰ろう」

 

 その思わぬ言葉に僕は

 

「………はい?」

 

 思わず呆けた声を出していた。

 

 




というわけで最新話でした!
ファーストコンタクト失敗気味だったピーター君に思わぬ誘い!
耳郎さんの話とは!?
次回をお楽しみに!



~おまけ~
ピーターの個性把握テスト、それぞれの記録の出し方

50m走:普通に走る。身体能力の向上で高記録。
握力:普通に取り組む。身体能力の向上で高記録。
立ち幅跳び:糸を両手から伸ばしパチンコの要領で跳ぶ。
反復横跳び:普通に取り組む。身体能力の向上で高記録。
ソフトボール投げ:糸でボールを投石機の要領で投げる。
上体起こし:普通に取り組む。身体能力の向上で高記録。
長座体前屈:単純な柔軟性で高記録。
持久走:普通に取り組む。身体能力の向上で高記録。

って感じです。
際立って抜きんでた記録は無いけど軒並み高記録を叩き出しているので平均点が高かった、という具合です。


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