1年ぶりに訪れる種子島の留学先。水野理紗は、高校で待つ澄田花苗と再会時に抱き合い、そしてその傍らに立つ遠野、田中といった協力者の面々と握手をして、天文部員に彼らを紹介した。そして、職員室に出向き、恩ある澄田先生と、これから合宿でお世話になる種子島高校放送委員会・種子島高校天文科学部の顧問の先生とも挨拶した。
並行して、渡良瀬女子天文部の顧問が種子島の高校の教頭に挨拶をする。種子島の高校は本州の東京近くからやってきた才媛たちの集団に沸きかえっていた。一通りの挨拶を終えた後、種子島の高校の生徒会役員が校内を案内し始めた。
「セーのっ!」
掛け声が空の上の方からした。次の瞬間、垂れ幕が校舎屋上から滑り降りてくる。
『 歓迎 栃木県立渡良瀬女子高校天文部の皆さん お帰り 水野理紗さん 』
水野理紗は涙ぐみかけたが、なんとかこらえたようだった。「ささ、みんな、一通り学校を回ったら、準備するよ。」
「遠野。こちらの準備は完了だ。」
田中はいつになく無口で黙々と作業をしていた。「栃木の女の子たちを失望させるわけにはいかないぞ。遠路はるばるきてくれたのだから。」
「田中先輩。通信の方が安定しないんです。」
遠野貴樹は珍しく弱音を吐いた。
「うーん。電波の問題か、それともPCとの相性か。この分だと、栃木の高校の留守番の女の子がログインする時にはいちいち遠野が通信を安定化させていないといけないな。」
「そうですか」
遠野貴樹はちょっと残念そうな顔をした。
「そうがっかりするな。お前だけに貧乏くじを引かせない。俺もとことん付き合ってやる。だから安心しろ。それにお前、星座だったか、栃木の女の子に教えてやるんだろ。その役目の時はそちらへ行け。」
「それはうちの高校の天文科学部の部員がやるから、俺は関係ないですね。」
「そうか。天文部の連中よりお前の方が詳しそうに見えるけどな。じゃ遠慮なくこき使ってやるぞ。」
田中は心底うれしそうな顔をして、遠野貴樹の髪をくしゃくしゃにした。
各部門で手分けして準備を進めているうちに、夜のとばりが降り始めた。7時ごろには生暖かい陸風が吹き始めた。そしてその風は、種子島高校の有志が作ってくれたカレーの香りを漂わせて、準備に明け暮れていた生徒たちに夕食の時を告げた。
渡良瀬女子と、種子島高の生徒、そしてそれぞれの顧問の先生。みんなで調理室に集まって、楽しい夕食をとった。放送室にいた田中と遠野は少し遅れてきたが、ちゃんとカレーにはありついたようだ。澄田花苗は放送委員会の女子と話していたが、遠野貴樹が戻ってくるとすぐ彼の元へ寄っていった。
「本当、お前ら、仲良いな。」
田中は花苗をからかうのにも飽きた様子で、半ば呆れ顔でぼやいた。そしてさりげなく遠野から離れていき、水野の近くに行った。