そして8時。渡良瀬女子高校天文部と種子島高校の天文科学部が配置についた。満点の星空。本州では見られない星空に渡良瀬女子の天文部から歓声が上がる。ちょうど真夏の流星群の極大に近づいていこうという時期だった。うまくいけば流星がいくつか見られるかもしれない。
今夜は天文科学部や放送委員会、そして遠野貴樹のように有志のボランティアにとことん付き合おうという澄田花苗は、付け焼き刃で勉強した星座早見盤を片手に、常闇の空に飛ぶ流星を探していた。
『流れ星が見られたら、お願いしたいことがある』
そう言って彼女は胸に手を当てる。こうやって遠野くんと同じ目的に向かって力を合わせていける。それは彼女にとってこの上ない喜びだった。文化祭の時はサキちゃんが遠野くんのクラスとの合同開催を提案してくれて、遠野くんに近づくことができた。今度は私の第二の姉、水野理紗さんが遠野くんとのイベントを作ってくれた。流星に誓う。流れ星が見られたら、彼に告白する、と。波の上に立てたら、告白するつもりだったけど。波の上に立てたら、もっと彼に近づける事を考えよう。
考えているだけで、胸が、顔が熱くなる。きゃー。しかし夜の闇は、花苗の照れも恥ずかしさも隠してしまう。彼女は気を取り直して、夜空を見上げる。
ーそして、天頂のあたりに光が走った。
「流れ星!来たよ!みんな!」
目も良くて、種子島の夜空に慣れている花苗が大声を上げる。天文写真の撮影班が一斉にシャッターを切る。しかしその流星ショーは一瞬だった。
「うーん、澄田さん。よく見つけたね。」
天文科学部の女の子に褒められるも、彼女はシャッターを切り損ねたようだ、ちょっと苦笑したのが夜の闇の中でもわかった。
「流星群っていうのは、もっとたくさん飛ぶんだよ、ただ、まだ極大までには日にちがあるから。今日はあんなもんかもね。でもすごいよ。見つけるだけでも。」
別の方からも中途半端に褒められる。遠野くんは私の発見になんていうだろうか。花苗は彼の姿を思い浮かべるが、彼は放送室にこもりっきりのはず。そろそろ栃木の渡良瀬女子にいる、天文部留守番グループの女子が通信を開始させる頃だからだ。
ー突如、常闇の種子島高校の屋上の夜空に響く黄色い声。
『こんばんは。種子島にいるみんな。そして種子島高校の皆さん、渡良瀬女子高校のお留守番、
『こらこら、そんな紹介じゃ、サボり魔、幽霊部員かと思われるじゃない。陸上部との兼部で、合宿には参加できませんでした、
「おお、渡良瀬女子の女の子たちがログインしてきたぞー!」
屋上で観測している天文科学部や渡良瀬女子の天文部員にも彼女たちの声を届けるべく、屋上にスピーカーを設置したので、静まり返っていた屋上でもどよめきが起きた。
『仕方ないから、私がこいつも紹介するね。手塚由子。テニス部との兼部組。一応レギュラーらしくって、今回の合宿には参加できませんでした。本当はもう1人こっちにくる予定なんだけど、そいつが来たら、改めて紹介するよ。それじゃ、一旦切るよ。じゃあねー』