澄田花苗に励ましの言葉を言い切った後で、水野理紗は自分のあの瞬間の行動を思い返した。
まずはPCの画面に復旧完了とのメッセージが走った。この瞬間にこちら(種子島高校放送委員会)の音声入力が復旧。渡良瀬女子に種子島高校発の画像と音声が届くようになった。遠野機でもそのメッセージが流れたと思うが、それに気づいたのかわからないが、遠野くんが画面の中の篠原明里に向かって何やら愛の言葉?を叫んでいた。あのくさいセリフは確実に篠原明里に届いたはず。
その数分後確か臨時ウインドウが出て、バックアップ機に異常発生と出ていた。あれが花苗のケーブル引っこ抜きだろうと思われる。…実はその瞬間にバックアップPC通信からメイン通信に切り替えれば渡良瀬女子の音声は種子島で受信可能だ。…音声だけなら。
しかし、水野理紗はその作業を行わず、臨時ウインドウを開いたままにして、わざと別のエラープログラムを走らせた。それが先ほどのエラーコード1601だった。これは非常用に彼女が密かに作っていたプログラムだった。何か重大な事が起きた時に、障害をわざと起こすプログラム。誰にも秘密にしていた。だから水野理紗しかこのプログラムを止める方法は知らない。
『確かに引き金を引いたのは花苗。だけど私も必要な復旧措置を行わなかった。私も共犯。だけど、遠野くんと花苗と篠原明里のためにはこれが最善だったと思う。篠原明里の返事の言葉はあのタイミングで遠野くんに伝えるべきではない、と私が判断したのだから。第三者…種子島高校生がたくさんこの通信を聞いている状況で、もし篠原明里が遠野くんに今も昔と変わらぬ愛を告げたら。花苗はもう立ち直れなくなる。この狭い種子島では一気に噂は広がり、花苗は遠野くんに公開放送で振られた女として、種子島高校にいる自分も、サーファーである自分も立ち行かなくなってしまうかもしれない。もし、篠原明里に遠野くんへの想いが残っているのなら、この合宿の後で手紙でもメールでもいくらでも彼に自分の思いをこっそり伝えればいい。放送室の公開放送でやるべきではない、と言うことだ。
逆に篠原に遠野くんへの気持ちが残っていないのなら、花苗が遠野くんの運命の相手だったと言うこと。
現状今のままでは誰も幸せになれない。いざとなれば私が罪を被る。私はみんなより年上だし、種子島高校にも渡良瀬女子にもお世話になり、そして迷惑をたくさんかけた。だから…。』
水野理紗の覚悟は決まった。