黄金の風   作:ボンゴレパスタ

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ジョルノ・ジョバァーナ、トレーナーになる

 

 

 

 

 

 

あの闘いから数年。只のありふれた学生という身分から、イタリア最大のギャング組織に入団し、世界中へと麻薬をばらまき、そのどす黒い精神の下で他人を平然と利用して私腹を肥やしていた組織のボス・ディアボロを打ち倒すまでのあまりにも短く、あまりにも辛く悲しい多大の犠牲を払った…しかしその道のりは、正義という燦燦と輝く太陽に照らされていた、そんな9日間。その禍根はすべて取り除かれ、新たなボスによる新体制のもと、負の遺産の全ては余すところなく浄化されたように思えていた。

 

 

 

 

 

イタリア西岸部に位置する都市・ネアポリスは「ナポリ」の古名であり、風光明媚な観光として知られている。その街の一角にあるとあるレストランで一人の青年が食事をとっていた。その青年の胸にはテントウムシの造形が施されたブローチがつけられており、開いた窓から吹き込む春風同様、爽やかな印象を人に与える、そんな青年だった。彼は窓際の席に一人陣取り、テーブルの上の料理をフォークで突きながら顔をしかめていた。一応店の主人には料理が作られる前に「苦手な鶏料理入れないように」と伝えていたはずなのだが、どうやら料理長の確固たる自信と料理人としてのプライドによって、自身の要望は退けられてしまったようだ。少年は金の巻き髪を指でいじりながら目の前の鶏料理をどうしたものかと内心苦心していると、向かいの席に一人の男が腰を落ち着けるのだった。彼は髪型が窺えない帽子に腹部が見える非常に丈の短いセーターという非常に奇妙な容姿であり、その男は青年の姿を認めると徐に口を開くのだった。

 

 

「…おいジョルノ。おめーまだ鶏肉食えねーのかよ」

 

 

ジョルノと呼ばれたその青年…数年前にイタリア最大のギャング組織「パッショーネ」のボス・ディアボロを打ち倒して新制「パッショーネ」の新たなボスとして据えられたその青年…ジョルノ・ジョバァーナその人であった。彼は自身の料理をその男に差し出すと、男は決して行儀がいいとは言えない様相でその食事をジョルノの代わりに食べ始めるのだった。

 

 

「ミスタ…今日呼んだのは他でもない。とても重要な話なんだ」

 

 

その言葉にミスタと呼ばれたその男…グイード・ミスタは眉をひそめながら食事の手を止めてジョルノの顔を見上げた。どうやらボスが自身を呼び出した理由が、食事の片手間に聞けるほど軽い話ではないことを悟ったのだろう。ミスタがこちらを向いたことを確認すると、ジョルノは話を続けるのだった。

 

 

「…僕らが数年前に組織を乗っ取った後に作られた話、その話の真実を知っているのはほんの一握りの数人しか知らない、そうだろ?」

 

 

ジョルノがパッショーネのボスとして君臨した際、表立って公表された経緯は「今までボスの正体が明かされていなかったのは、ジョルノの当時弱冠16歳という幼さ故であり、その反感を警戒して公表していなかったものを裏切り者がその正体を探ろうと行動を起こしたことによって一般人のトリッシュにまで危害が及んだことで、もう看過できないとジョルノが正体を公表し、その浄化作業に乗り出した」とされている。だが、真実は違う。ジョルノやミスタの…そして今は亡きブチャラティたちが旧体制の組織の乗っ取りに成功したことは組織の最高機密とされていた。そしてこの数年間でジョルノ達はディアボロが悪の限りを尽くした、その負の遺産を完全に浄化したものであると思われていたのだった。

 

 

「もしもディアボロが遺した負の遺産が、まだ残っているとしたら?」

 

 

その言葉にミスタの眉間には深いしわが刻まれていく。やはりこの展開は予想していなかったのだろう。ジョルノは胸ポケットから数枚の写真が取りだすと、テーブルの上に並べていくのだった。写真を並べ終えるとジョルノは徐に口を開くのだった。

 

 

「旧体制のパッショーネ…ディアボロは世界中に配下の部下を作ってその魔の手を広げていた。自身のシノギの根幹である麻薬を売りさばくためにね。そのルートは完全に把握して浄化したものだと思っていたんだが、どうやらまた一つ残っていたようだ。それもかなり悪質なルートに…」

 

 

「………それは一体どこなんだ?」

 

 

「これは組織と協力関係にあるSPW財団の調べでわかったことだが、なんと日本のとある場所…」

 

 

そこで口を噤んだジョルノだったが、やがて決意したかのように正面を見据えると言葉を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…日本トレセン学園の関係者にそのチームの残党がいることがわかった」

 

 

 

 

近年イタリアのURAの権威は下降の一途を辿っており、国内からは遂にG1レースは消失していた。しかし世界各国ではウマ娘のレースとその関連する産業は一大ムーヴメントと化しており、パッショーネもその運営に一部ではあるが関わっていた。日本はURA本部が据え置かれているほどのレース大国であり、その育成機関としてのトレセン学園は注目の的であることは言うまでもない。そんな場所にディアボロの負の遺産が未だに息づいている。それを看過するわけにはいかないというのが今回ミスタを呼び出した理由そのものであった。

 

 

 

「…調査員は既に差し向けたが、そいつからはもう数日連絡が取れない…恐らく残党に始末されてしまったと考えていいだろう」

 

 

 

組織というものが巨大であったとしても、その末端となれば統制の取れないことは組織の常である。しかも極東の島国となれば、不慣れな土地で調査員も言葉も文化も及び知らぬ土地で、いつ敵が襲い掛かってくるとも分からぬ状況下では情報を収集することも、その力を発揮することは難しいだろう。ましてや相手はディアボロがそのルートを開拓してから既に年月が経過し、すっかり土着したプロである。そんな連中が相手となれば、その尻尾を掴むのは苦労するのは自明の理であり、犠牲も今回の調査員の命だけでは足りないだろう。

 

 

 

「………次は誰を行かせんだ?なんならオレが行こうか?」

 

 

「いや、ミスタ。君は日本語が分からないだろう?そんな土地で詮索をしようとしてもうまくいかない可能性の方が高い…つまり」

 

 

 

「……僕が行く」

 

 

その言葉にミスタは急に立ち上がると、ジョルノの胸倉につかみかかる。テーブルは途端にひっくり返り、せっかくの食事は既に誰かの口に運ばれる機会を逸し、地面に音を立てて落下するのだった。ミスタはジョルノの顔を見据えながら言葉を投げかけるのだった。

 

 

 

「………それはボスとしての自覚が足りてないんじゃあね~のか、ジョルノ…おめーが日本に行ったら、誰が組織を仕切るんだよ?それにおめーにもしものことがあったら組織は…」

 

 

 

「…ミスタ、君の言う通りだとは思う。だが、僕ほどの適材はいないんじゃあないか?僕は幼いころに日本に住んでいた。言葉も分かるし、向こうでもうまく溶け込める。向こうの連中もまさか組織のボスが刺客としてやってくるなんて思わないだろう…そして」

 

 

 

途端にジョルノの顔は年相応の青年の顔ではなく、大組織のボスとしてふさわしい重々しく、そしてその隙間に冷酷さも窺い知れる表情へと様変わりする。その表情をみたミスタがジョルノの胸倉からおずおずと手を放すと、ジョルノは口を開くのだった。

 

 

 

「これは相談じゃあない。決定事項だ」

 

 

ジョルノは服のしわを伸ばし膝に付着した埃を払うと、レストランで起こした粗相を詫び、その補填をするために店員を呼んで一言二言会話を交わす…そして胸ポケットから何か紙を書いて彼に手渡すのだった。ミスタはその様子を見つめると、ため息をつきながら呆れたように口を開くのだった。

 

 

「わーったよ。ジョルノ…組織の方はオレとポルナレフで何とかしておく。」

 

 

「ありがとう。ミスタ…僕は今年で学校も卒業だ…ちょうど進路について考えていたところだったんだ」

 

 

 

 

ジョルノはそんなことを調子よく言いながらレストランの出口へと足を進めていく。その姿は、町中のどこにでもいるような学生そのものであった…だが彼はその体に、誰よりも誇り高き精神を秘めていた。彼のためだったら、自身を投げだして助けたい、支えたいと思わせる何かがあった。彼と傍にいるだけで、誇り高き白の中にいると実感できた。だからこそ、ミスタはブチャラティチームの中で新入りだった彼をボスと仰ぎ、その忠誠を誓ったのだった。その日ネアポリスには地中海からの乾いた風が、昼下りの街角に吹き込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 








アイデアはないとキッパリ言ったばかりなのに…‥スマンありゃウソだった。でもまぁ、書きたいものを書くだけだし良しとするってことでさ…こらえてくれ


ということで勢いで書いてしまいましたウマ娘×ジョジョのクロスオーバー小説第3作目、「黄金の風」です。一応続きは反応次第な気分でいます。
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