黄金の風   作:ボンゴレパスタ

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イージュー・ライダー

 

 

 

 

 

 

 

デビュー戦から早数日、タキオンとジョルノはトレーナー室に会していた。タキオンはいつものように紅茶に多量の角砂糖を入れる光景を視界の端に認めながら、ジョルノは口を開くのだった。

 

 

 

「……それでタキオン。話って言うのは?」

 

 

 

ちらりとタキオンは彼の方を見やると、さも当然かのように言葉を切り出すのだった。

 

 

 

「実はデビュー戦に出ていたウマ娘のうちの一人、確か……ロングキャラバン君、だったかな?多分彼女、ジャンキーだったぞ。」

 

 

 

その言葉に、ジョルノは思わず立ち上がってしまう。もう既にそこまで奴らの手は広がっていたのか。ジョルノが目を見開いていると、タキオンはごそごそと何かを取りだして、それを顔の横でひらひらと振りながら言葉を続けるのだった。

 

 

 

 

「少なくとも、今までだけで5人も毒牙に掛かったと思われるウマ娘が見つかった…そのウマ娘たちの名前と、出身地や直近のレースの成績。その他もろもろのデータがここに記入されている」

 

 

 

 

それは彼女が情報を収集し、そのデータを記録したファイルであった。タキオンはジョルノにファイルを手渡した。彼がデータに目を通すと、そこには以下のような記述が施されているのだった。

 

 

 

ロングキャラバン 出身地:アメリカ 推定身長165㎝ 推定体重50㎏ デビューレース3着

ステイシャリル 出身地:日本   推定身長155㎝ 推定体重47㎏ 模擬レース8着

グライディカーズ 出身地:フランス 推定身長154㎝ 推定体重46㎏ 模擬レース6着

ウエストパリル 出身地:フランス 推定身長171㎝ 推定体重55㎏ 模擬レース12着

ソワールセレス  出身地:アメリカ 推定身長145㎝ 推定体重44㎏ 模擬レース14着

 

 

 

 

一人一人のウマ娘について、タキオンによる確かな観察眼によってつぶさに情報が記載されているのだった。一通りファイルの情報に目を通したジョルノが顔を上げると、タキオンは徐に口を開くのだった。

 

 

 

「そこに記載されているウマ娘たちには、共通点がある。それは……」

 

 

「レースの成績が振るっていない。そうだろう?」

 

 

 

その返答に、タキオンはゆっくりと首を縦にふるのだった。奴らの毒牙に掛かったウマ娘たちは、レースの成績が振るっていなかった。思春期の、そして多感な彼女たちにとって、それはこの上ないストレスであり、トレセン学園に志を持って入学し、打ちひしがれた彼女らにとって、相当な重圧となることは間違いないだろう。奴らはそれを利用した。その心の隙間につけこんだ、目をそむけたくなるような凶行を決して許すわけにはいかない。

 

 

 

そして目の前の彼女。アグネスタキオンもこの状況について思うところがあるのだろう。いつものように余裕があるようにふるまってはいたのだが、その瞳の奥には言い様のないやるせなさと僅かな怒りが浮かんでいるのを見逃さなかった。

 

 

 

だが、この資料……

 

 

 

 

何処か引っかかるものがある。明確な指摘はできないが、釣り針でひっかけられるような、この資料の何処かに引っかかるものがあるのだ。それこそがこの事件の、奴らの足取りをつかむ手がかりとなる予感がする。今資料と睨めっこしたところで、その違和感が判明することはないだろう。ジョルノが顔を上げると、タキオンへと言葉を投げかけるのだった。

 

 

 

 

「……それはそうと、今後のレース展開だが……」

 

 

 

「なんだい?モルモット君」

 

 

 

モルモット君という呼び名に、最早注意する気など起こらなかった。ジョルノはぐるりと目を回すと、今度は自身が用意した3年間のレース日程を組んだ資料をタキオンに手渡すと、再び言葉を続けるのだった。

 

 

 

 

「やはりクラシック路線に備えるのが妥当といったところだろう。君の走りにはそれほどの才覚がある」

 

 

 

 

「ふぅむ。まぁ、確かにそうだね」

 

 

 

そう言う彼女の顔は、あまり興味をそそられていない様子であった。ぺらぺらと資料をめくると、手渡された資料をジョルノの下に返すのだった。釈然としない様子で視線を向けるジョルノに気が付くと、彼女は徐に口を開くのだった。

 

 

 

「君なら十分に目指せるぞ?」

 

 

 

ジョルノがそう言うと、タキオンは仰々しく肩を竦めるのだった。

 

 

 

「まぁ、それに関しては否定しない。このローテーションも、概ね順当にいけば実現可能なものだと思うよ」

 

 

 

いつものように余裕にあふれた視線を向けるタキオンであったが、その姿には何処かいつもと異なる印象を受けた。

 

 

 

「……だが、確実に出ると約束を交わすことはできない。出るかどうか、それは私が決めよう。1番大切なのは、研究だ。徒労に時間を費やすわけにはいかないのさ」

 

 

 

何処か彼女の言葉や態度には、含みがあるように感じられた。しかし、今ここでそれを聞いたところで、彼女の口から真実を語られることはないことをジョルノは悟っていた。できもしないことを延々と続けることは。それこそ「無駄」というものだ。もしかしたら、いずれ彼女の方から話を切り出してくれるかも知れない……ジョルノは室内に確かに響き渡るため息をつくと、トレーニングのために彼女を連れてトレーナー室から出るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の練習を終えたジョルノとタキオンは、練習後のミーティングを行うために校舎の廊下を歩いていた。換気のためか窓が半開きとなっており、そこから春先の爽やかな風が二人の頬を撫でつけていくのだった。日本の季節もこれくらいの気温で安定してくれていればいいのにな、なんて心の中でぼやいていると、隣を歩いていたタキオンが徐に口を開くのだった。

 

 

 

 

 

「おや?あれは……」

 

 

 

彼女は前方の何かを指さしていた。遠くにあってそれが何か分からなかったが、近づくとそれはどうやら手紙であることが分かるのだった。

 

 

 

「これは……」

 

 

ジョルノがそれを拾い上げると、独りでに手紙入れの蓋が開き、そこから便箋がこぼれ落ちるのだった。悪いことをしてしまったなと感じつつ、ジョルノがその便せんを拾い上げると、そこには一言。只の一言であったが、明確な意思を伝えるには十分なその一言が刻み付けられているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺す…と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げろ!タキオン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンを攻撃から守るために、彼女の身体を突き飛ばす…その瞬間、ジョルノの身体を強い衝撃が襲いかかり、彼の身体は数メートル後方へと吹っ飛んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……や、やはり」

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョルノは軽傷を負いながらも、前方にいる自身に攻撃を繰り出した敵を見つめるのだった。そのスタンド……その姿は無人の、誰にも乗りこなされることなく、縦横無尽に駆け巡るアメリカンタイプのバイクのような姿であった。ちょうどヤマハのドラッグスターのような、ローダウンのクラシカルなデザインのそれは、ジョルノに向かって唸り声をあげるかのように猪突猛進に向かってくるのだった。

 

 

 

「こ、これは……!」

 

 

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!」

 

 

 

ジョルノは自身のスタンド、G・Eで拳を叩きだしていく…しかしその攻撃でそのスタンドは全く勢いが衰えることなく、再びジョルノに危害を加えようと向かってくるのだった。

 

 

 

「ジョルノ!!」

 

 

 

そのバイクの前輪がジョルノの顔面に接触する直前、間一髪のところで彼のスタンド、G・Eがその攻撃を、敵スタンドを掴むことによって防御するのだった。ジョルノはそのスタンドの車体を懸命に押さえつけながら、ジョルノは手のひらの皮から血を噴き出しながら、タキオンに言葉を投げかけるのだった。

 

 

 

「急げタキオン!逃げるんだ!」

 

 

 

「だが……!」

 

 

 

 

「いいから!逃げるんだ!今君にはここで何が起きているのかもわからないんだろう!?」

 

 

 

 

確かに彼の言う通りであった。スタンド能力を持っていない彼女にとって、今の光景はただジョルノが勝手に浮かべ上がり、唐突に手のひらを傷だらけになったようにしか見えていなかった。今この場で自身が勝負の場にはせ参じたとしても、足手まといになることは目に見えていた。タキオンは静かに頷くと、その場を後にするのだった。

 

 

 

 

ジョルノは、タキオンが廊下を走り去るその姿を見送ると、前方の敵を見据えるのだった。中々パワーがあるスタンドだが、周囲を見ても敵の姿は全く見当たらない。通常、本体とスタンドの距離が遠ければ遠くなるほどそのパワーが落ちていくものだが、このスタンドはまるで近距離パワー型のような力を誇っている。つまりこのスタンドは……

 

 

 

 

「遠距離自動操縦型か……」

 

 

 

 

本体との距離とは関係せずに、無尽蔵にその力を発揮することができる。そしてスタンドを倒したところで本体にダメージが及ばないことは既に過去の戦闘で織り込み済みであった。刑務所にいながらもスタンド使いを持つに値する才能があるかを見極めるポルポのスタンド、ブラックサバスや死してなお恨みの力を用いて敵を自動追尾するスタンド、ノトーリアスB・I・Gもこの手合いのスタンドであった。

 

 

 

 

……つまりこの手のスタンドを倒すには……

 

 

 

 

やはりスタンド使い本体を見つけ出すことが肝要ということだ。ジョルノは敵を払いのけると、窓からその身を乗り出し、スタンドを繰り出して壁を叩くのだった。すると壁から芽が噴き出したのかと思えばその芽は急成長し、一本の樹木となって天へと伸びていくのだった。

 

 

 

 

 

 

「とりあえず即席の逃亡装置っていったところか……」

 

 

 

 

G・Eの能力を用いて2階へとあがったジョルノだったが、どうやら敵は追跡を中断したようだ。辺りを見渡しても姿を窺い知ることはできなかった。ひとまず態勢を立て直すことに成功したジョルノはため息をつくと、最寄りの教室の扉を開けた。

 

 

ガラガラガラ……

 

 

 

 

 

教室の扉を大きな音を立てながら開けると、信じられないことであったが、まるで待ち構えていたかのようにバイクのスタンドが待ち構えていたのだった。

 

 

「な、なんだってーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

 

 

 

再びジョルノに向かって、鉄の怪物は向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある人物……その人物は自身のスタンドが今どのような状態であるかはうかがい知れなかったが、その確固たる自信の下に、勝利を確信しているのだった。

 

 

 

「オレ様のスタンド……イージュー・ライダーに弱点はない」

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