好き放題してた市長ですが、気が付いたらイカダで漂流していました   作:ひいちゃ

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というわけで、さっそくはじめてみようと思います。
超不定期連載となりますが、生暖かい目で見守ってくださると助かります。


漂流1日目

「な、なんだ、これは!?」

 

 俺はたたみ二畳ぐらいの大きさのいかだ……というよりは木の板でそう言わざるを得なかった。

 

 そうそう、自己紹介がまだだったな。

 俺は、諾推 隼夫(だくすい はやお)。転生者だ。そして市長でもある。

 この世界に転生した俺は、どういうわけかある町の市長になった。

 

 それで色々好き放題やっていたのだが、ある日、家の外で抗議の声を上げ続ける市民の声を無視して寝たら、気が付いたらこんなところにいたのだ。

 

 本当に! 本当に! 何がどうなったら、こんな状況になったんだよ!?

 

 今、どこかから「市民に汚水を飲ませすぎたせいだ」とか「人間を24時間こき使ったりしたらバチも当たるでしょう」とか「よく島流しだけで済まされてるよね」とか聞こえた気がするが無視だ無視。そんな愚民の声より今はこの状況をどうにかすることが最優先だ!

 

 よく見ると、手には先端にフックが結わえ付けられたロープが。そして向こうからは木の板や樽が流れてきている。

 ……もしかしてこれは、このフックでそれらを引っ張ってきて集めろということなのか。

 

 そう思いついた俺は、さっそくそのフックを遠くに投げ込んだ。そして引っかかった板を手元に手繰り寄せる。うぅ、なんでこんなことを……。こんなことは秘書にやらせるべきことなのに! その秘書すら傍にいないときた!

 

* * * * *

 

 そして、必死に資材を集めていると、遠くに樽が見えた。あれはほしいなぁ。樽はたくさん木の板とかがとれるんだよ。

 飛び込んで取るとするか……。

 

 そして俺はイカダから海に飛び込んだ。その瞬間、見たくないものが見えた気が。

 

 ばっしゃーん!

 

 そして海の中に入った途端、俺はその『見たくないもの』と遭遇してしまった!

 

(人食い鮫!?)

 

 なんと眼前に巨大な鮫が突っ込んできたのだ! その特徴からすると、ホオジロザメか……って、そんなことを考えてる場合じゃない!

 

(待て待て待てまて!)

 

 俺はそれをよけようとするが、海中では自在に動けず、その体当たりをもろに受けてしまった! その衝撃たるやかなりのもの。思わず口を開けて溺れることにならなかった自分をほめてやりたい。

 

「ひ、ひどい目にあったぞ……」

 

 俺は慌ててイカダに泳いで戻ろうとする。だがそこに激痛が! それはそう、鮫の牙が俺の左足の親指を食いちぎったような。

 痛いが、それより俺は命の危機をびんびんに感じ取っていた。

 

「いたたた、すいません、すいません!」

 

 それでもなんとかイカダまで泳ぎ着いた。ひどい目にあった……。どうやら、鮫がいるらしいことがわかった。なんてところだ……。

 

「まさか、目の前にいるかよ……」

 

* * * * *

 

 その次の日、疲労困憊で気づかぬうちに眠りについていた俺は、ある音で目を覚ました。

 それはそう、木の板を鮫がかじっているような……。

 

「うわ!?」

 

 その音は気のせいではなかった。

 あの鮫が、イカダにかじりついていたのだ!

 

「ちょっと待て待て待て! 何をしとるか!?」

 

 俺は慌ててフックを鮫にぶつけるが、全然効果はなし。そうしている間にも、鮫のパワーの前に、噛みついている板にどんどんひびが入っていく。

 

 そして。

 

 べきっ。

 

「ああああああ!?」

 

 ついに鮫は、イカダの一部分をかみ砕いてしまったのだ!! イカダが3/4になった……(涙

 

* * * * *

 

 そして資材を集めながら数日、手元の食糧をほとんど食べつくしたところで……。

 俺の目の前に島が現れた! ここになら食料があるかも!? 俺はここに上陸したい!

 

 そして俺はなんとか手でイカダを漕ぎよせて島に上陸した。

 だがそれが俺を破滅に導くことを、当時はまだ知るよしもなかった……。

 

 電話でもないかと思ったが、さすがにこんな孤島にそんなものがあるわけもなく。スイカをいくつか見つけただけだった。

 ヤシの木を切れば木材を手に入れられそうだったが、斧なんてものもないし……。

 

「制覇してしまった……戻るか……」

 

 島を探索しつくした俺は、イカダに戻ろうとした……がとんでもないことがわかってしまった!

 

 俺が探索している間に、イカダはだいぶ沖の方まで流されていたのだ!

 新しいイカダを作ろうにも、作るための道具も材料もなし……。

 

「仕方ない……泳ぎましょう!」

 

 なんで敬語になっているかわからんが、俺は再び海に飛び込んだ。

 

* * * * *

 

 そしてイカダまで泳いでいくが、かなり流されているようで、なかなか追いつけない。

 そうしているうちに、いつの間にかあたりは暗く、夜になってしまった。そこに!

 

「うがっ!?」

 

 足に再び激痛! 見ると、足の肉がまるで食いちぎられたかのようにえぐられていて、血がそこから流れ出していた。

 鮫か!? あの鮫なのか!?

 

「頼む、せめてイカダの上でサバイバルさせてくれ!!」

 

 早く、早くイカダに戻らなければ!? しかし、今のトラブルで、俺はイカダを見失ってしまった!

 それでも泳いでいるうちに、さらに激痛が!?

 

 直感でわかった。右脚がなくなってる!!

 

 でも急いで戻らないと、右脚だけじゃすまなくなる!

 

「やめてくれ! 俺じゃなくてイルカを、イルカを食べてくれ!!」

 

 そう言いながら必死に泳ぐが、そんな願いを奴が聞き入れてくれるわけもなく。

 

 今までで一番の激痛とともに、俺は気を失った……。

 

* * * * *

 

 そして目が覚めた。

 

「今のは夢だったのか? よかった……」

 

 全然よくなかった。

 

 俺はやっぱりイカダの上にいたのだ。鮫に食い殺されたのは夢だったが、それ以外は夢ではなかったようだ。

 

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