良く晴れた、雲一つない、青空の下。
「トレーナーさーんッ!」
タイキシャトルが自身の担当トレーナーのことを呼ぶ大声がトレセン学園に響く。
トレーナーはこの丸一週間、出張のためトレセン学園を離れていた。
彼はタイキシャトルを育てあげた功績が認められ、レースの本場であるイギリスで本場の風を体験してきたのだ。
今回の出張にあたり、トレーナーは寂しがり屋のタイキシャトルに一ヶ月間に及ぶ説得と事情説明をして彼女の傍を離れた。
それで時差ボケをも押して空港からトレセン学園で待つ、彼女の元へとやってきた。
やってきたのだが、
「……前が見えねぇ」
「もう離れマセン!♡」
絶賛愛犬もとい、愛バから熱烈な歓迎を受けている真っ最中。
彼女に寂しい思いをさせないと約束したのに、その約束を違えてしまった。
時差もあるのでテレビ電話する時間も限られ、タイキシャトルは仕事だと分かっていても、『ウソつき……』と涙で枕を濡らした。
泣き腫らした目を見た瞬間、トレーナーも暫くは彼女のワガママをなんでも聞いてやろうと思った。
しかしこうも正面からハグされて、身長差的にタイキシャトルの大きな2つのシャトルで視界を塞がれてしまってはどうも出来ない。
「タイキ、離れろ」
「イヤに決まってマース!♡」
「せめて背後からにしてくれ」
「むぅ……それなら」
渋々了承し、背後に移動してくれるタイキシャトル。
トレーナーはそのままタイキシャトルを連れて理事長室で報告をし、トレーナー室に入った。
周りの視線はいつも以上に痛く、生温かく感じたが、事情が事情なので甘んじることにした。
◇
「さて、我が愛しの愛バ、タイキよ」
「ハイ!」
「寂しい思いをさせてすまなかった」
「ドーベルやスズカたちと毎日バーベキュー出来たのでダイジョウブデシター!」
「そんなに真っ赤な目をさせて何を言う」
「あぅぅ……」
指摘され耳が垂れるタイキシャトル。
因みに今もトレーナーはタイキシャトルにソファーの上で正面から抱きつかれている。
「タイキも知っての通り、明日から三日間。今日を入れて四日は休みだ。本来は時差ボケ解消のためだが、タイキと過ごすことにする」
「ワオ!♡ トレーナーさんはフトハラデース!♡」
「太っ腹な。使い方も違うけど」
「そんな細かいことはどうでもいーデス!♡ それよりも―――」
タイキシャトルはトレーナーの胸板に頭頂部を押し当てた。
「―――トレーナーさん♡ もう離れマセン♡ 好き好き好き好き好き好き好き好きー♡」
「タイキドリルが痛え……というか息継ぎしような」
「はぅ♡ トレーナーさんの匂い♡ すーはー♡ はふはふ♡」
「おいおい、噛むな噛むな。あと尻尾も膝にベシベシ当たって痛え」
「トレーナーさん♡ 好きー♡ 好き好き好き好き♡」
「俺も好きだから落ち着けなー」
「ワタシの方が大好きデス!♡」
「こらこら足を踏むな。何されても好きだが、痛えんだ」
「好き好き好きー♡ トレーナーさーん♡」
「おー、俺も好きだぞー」
結局、トレーナーはタイキシャトルがこのままだったので特例でトレーナー室で一夜を共に過ごすことになった。
間違いが起きないように理事長秘書が同室してくれたが、彼女曰く『これまでの仕事で一番の苦痛でしたね』と砂糖を吐きながら理事長に報告していたそう。
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