時間は昼過ぎ。
本日のトレセン学園はトレーニングコース場が整備のため、使用出来ない。
なのでサイレンススズカは学園外で走ることにした。
担当トレーナーはそんな彼女の後ろを乗用車で追い掛ける。
彼女は走るのが好き。故にこういう時は満足するまで走るため、帰りは車があった方が何かと都合がいいのだ。
気が付けば、高尾山近くまでやって来ていた。
トレーナーは折角だからと、彼女を車に乗せ、高尾山へ向かう。
目の前に広がる美しい景色にサイレンススズカは感嘆の息を吐いた。
景色を眺めながら、肩と肩を合わせるようにベンチに座る二人。
サイレンススズカは自然とトレーナーの肩に頭を寄せていた。
そうすればトレーナーはすかさず彼女の頭を優しく撫で、
「今度時間が取れたら、登山デートでもするか」
と提案する。
「いいですね」
「それともキャンプにするか? そうすればスズカにとってもいい気分転換になるだろうし、広いキャンプ場なら走ることも出来るだろう」
「……はい♡」
彼と出会ってから、彼は常に自分のことを優先してくれることに、心が弾んでしまうサイレンススズカ。
レースに勝つこと、先頭の景色こそが最高の景色だと思ってきたサイレンススズカだったが、最近はトレーナーと同じ景色を見ていることがこの上ない幸せに感じる。
それだけ彼女にとってトレーナーという存在はいい意味で大きい存在に膨れ上がっていた。
「……トレーナーさん」
「ん?」
「私、あなたを好きになって良かったです♡」
「なんだぁ、いきなり?」
「トレーナーさんはいつもいつも、私のことを第一に考えてくれます。最初はトレーナーとしてだったのは分かってますが、今はその……恋人として考えてくださっているのが分かるので、それが嬉しくて……つい」
頬を赤く染め、照れ笑いをしながら自分の今の想いを告白するサイレンススズカ。
そんないじらしい彼女が可愛くて、トレーナーは胸が抉られる思いだ。
「……俺もスズカが恋人で良かったよ。こんなに素敵な子、俺にはもったいないくらいだ」
「そんな! トレーナーさんの方が素敵です! 私にはもったいないくらい!」
「お互い、この上ない相手ってことだな」
「……そう、ですね。ふふふっ♡」
あのままではお互いもったいない合戦になるとお互い気が付いて、笑ってしまう二人。
一頻り笑ったあとで、サイレンススズカはトレーナーの体に自身の体を預けるようにもたれる。
「好きです、トレーナーさん♡」
「俺もスズカが好きだよ」
「ふふっ、嬉しい♡ 好きです、トレーナーさん♡」
「俺も好きだよ」
「ふふっ、ふふふっ♡ 顔がにやけちゃいます♡」
「可愛いね、スズカは」
「だって好きな人に好きって言われたら、喜んじゃいますよ♡」
「何度だって言うよ。好きだよ、スズカ。好き。好き。好き」
「私だって負けませんよ♡ 好き好き好き好き♡」
「早く好き好き言った方が勝ち的な?」
「なら私の方が早いので勝ちですね♡」
「一生俺の負けでいいよ」
「トレーナーさんが追いつけないくらい、大逃げ勝ちしますね♡」
「置いてかないでくれよ?」
「じゃあ、もっと好きって言ってください♡」
「ああ、好きだよ、スズカ」
「もっともっと♡」
その後も二人は景色なんてそっちのけで好き好き言い合っていた模様。
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