「トレーナーさん! トレーナーさーん! 痛いですー! やめてくださいぃぃぃ!」
「ここでやめたら罰にならないでしょう?」
「アビャババババ!」
マチカネフクキタルは担当トレーナーから制裁のアイアンクローを受けている。
彼女は今日もトレーナー室に開運グッズを設置しにきた。
トレーナーも神社に参拝するのが日課だったりするほど信心深い性格をしているが、彼女が持ってくる開運グッズ(笑)は明らかにご利益がないとして金曜日になると纏めて学園に許可を得て、安全な場所でお焚き上げしている。
今日のはかなりの大物。彼女の身長くらいはある鯛の木彫りで、取ってつけたように尾ひれに開運と掘ってある。
「毎度毎度どうしてここに持ってくるのです?」
「そ、そんなのトレーナーさんのためを思って……ギニャァァァッ!」
「僕のためを思うなら持ってこないでと何度も申し上げているはずなのですが……この大きなお耳は飾りですか?」
「ちゃんと機能してますぅぅぅっ! だから耳を抓らないでくださいぃぃぃっ!」
絶対零度のスマイルのままマチカネフクキタルの耳を抓りあげるトレーナー。
一方でマチカネフクキタルは痛がってはいても、頬は緩んでどこか嬉しそうにしている。
なのでトレーナーは作戦を変えた。
「……フク。ちょっとこちらに来なさい」
「そ、ソファーで何を?」
「僕の膝の上に座りなさい」
「は、はい……失礼します」
素直にトレーナーの指示に従い、膝上にちょこらんと座るマチカネフクキタル。
するとトレーナーは彼女のことを目一杯抱きしめた。
「あわわわ! ととと、トレーナーさん!? どっどどっど、どうしたんですか!!!!?♡」
「フクの体に教え込もうと思いまして」
「な、何を!?」
「僕はフクがいれば幸せなんですよ」
「あ……〜〜〜♡」
耳元で甘く囁かれ、声にならない鳴き声を漏らすマチカネフクキタル。
「なので開運グッズなんて無意味なんですよ。僕にはフクがいますので。大好きな大好きな愛バがずっと隣にいてくれればそれで」
「はにゃはぁ……トレーナーしゃん♡」
「次から開運グッズを持ってくる度にこうして分からせてあげます」
「も、もう持ってきましぇん……♡」
「フクは悪い子だから持ってくると思うんですよね。持ってくればまた僕からこうしてもらえるなんて浅はかなことを考えて」
「ギクッ」
「ほら」
「ごごご、誤解です! もうしません! なので……そのぉ……」
「?」
「定期的に今みたいなことをしてくれると、嬉しい、でしゅ……♡」
「どれくらいの頻度をお望みで?」
「ま、毎日だったり……♡」
「お安い御用ですね」
「っ……トレーナーさん、大好きです!♡」
「僕もフクが好きですよ」
「はい……はい!♡ 私も大好きです!♡」
「ではあの木彫りはあとで燃やしますね」
「ご無体なぁぁぁ!」
マチカネフクキタルのトレーナーは愛情表現だろうと断捨離だろうと手は抜かないのだ。彼女への愛故に。
ただ彼女が望めばどこでも愛を囁いてくれるので、マチカネフクキタルは別の意味で彼への依存度が増したとか。
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