それ故に世界は廻る 上   作:アイリス@水天一碧

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Intersection

見慣れた景色が広がる。

何度この場所を共に歩いたのか、思い起こすことすら億劫になるほど、私はこの場所を訪れている気がする。

一体これまで何度ここを歩いたことがあるのか……。

そしてこれから何度この場所を共に歩くのか……。

そんな考えがふと頭の中をよぎる。

どうしてこんなことを考えるのか自分にも分からない。でも、どうしてかこの場所を歩く度にそんな考えが出てきてしまう。

 

「ねぇ蓮子。覚えているかしらこの場所のこと」

「どうしたの急に? 藪から棒に」

「なんか思い出しちゃってね。なんだかここを通る度に思い出しちゃうのよ」

閑静な郊外の一角。

二人が歩いているこの場所は、緑地が広がる公園のすぐ傍の歩道で、学園が栄える街らしく幾何学模様にレンガが敷かれた小洒落た通りとなっている。

近くの商業施設や学園からは少し離れた場所ということもあってか、人通りの少ない静かな散歩道として栄える場所だった。

「ここは……そうね。大切な場所ね」

「良かった。覚えていてくれたのね」

「そりゃね。なんたって私はロマンチストなんだから」

「ふふ。そうね、貴方は根っからのロマンチストよね」

「そう言う貴方は現実主義者よね。メリー」

「私が普通。貴方がちょっとおかしなだけよ」

「言い出しっぺは貴方なんだから貴方も同罪よ」

「そこは同類って言って欲しかったわね」

いつもいつも、こんな会話をしてる気がする。

気が合う仲だからこそできる会話。

相手のことを理解し合っているからこそできるやり取り。

幾度となく繰り返されるそのやり取りに、いちいち意味を求めるのは無駄な行為である。

しかし、一つ一つの言葉にはしっかりと意味が込められていた。

それは彼女達にしか分からない。彼女達だけの世界がそこに広がっていた。

「この場所……、私とメリーが初めて出会った場所ね」

周りの風景を見渡しながら蓮子がそう呟く。

「覚えてるかしら? あの時のこと」

その時のことを確かめるように、顔を覗き込みながらメリーが尋ねる。

「ふふん! なんたってロマンチスト蓮子さんですから! 覚えていないわけが無いのよ」

胸を張り自信満々にそう答える。その様子はどことなく子供っぽさが滲み出ていた。

「ふふ。蓮子は相変わらずね。そういうところが可愛げがあって良いわ」

「あ、また馬鹿にしてるでしょ。可愛げないなぁ」 

表情をころころと変える様子がさらに彼女の子供っぽさに拍車をかけていた。

天真爛漫という言葉が正しく彼女にはうってつけの言葉なのかもしれない。

「何だかね、忘れてはいけないことだと、そう感じるのよ。どうしてかしらね……。何だか確かめられずにはいられなくなってしまうのよ。」

「それだけ大切なことなら忘れるわけ無いじゃない。実際にこうやって二人とも覚えているわけなんだから。心配することないよ」

「そうよね……。ありがと。何だか変なこと言っちゃったわね」

「なんだか調子が狂うなぁ。いつものことだけどさ、今日は特に変よメリー」

「変な人に変って言われたらどうしようも出来ないわね。まぁ、ちょっとした気まぐれということにしておいてくれるかしら?」

「はいはい。いつもの気まぐれね」

なんだか誤魔化されたような気分だったが、まぁ詮索しても仕方のないことだと諦める。

気まぐれなんてお互い様だった。

ひょんな理由をつけては夜の街に繰り出したり、少しでも気になることがあればどんな場所にだって調査をするために現地に赴むいたりもする。

それが彼女たち『秘封倶楽部』なのだから。

このありふれた世界に隠れている無数の秘密を暴き、解明する。

その行為に意味があるかどうかなんて、彼女達には些細なことでしかない。何しろそんなこと彼女達にとっては、ナンセンスでしかないのだから。

他の者とは少し違った何かを持っている彼女達は、周りから少し浮いた独特な存在感がある。

そのおかげか、逆に他者から干渉を受けることなく、自分達の好きな事を不自由なく行うことが出来ていた。

むしろ彼女達こそ、この世界に隠された存在なのかもしれない―

 

「ところでさ……」

何かを伺おうとする蓮子が少し曇った表情をしていた。

「? どうしたの蓮子」

「ここって多分だけど……。初めて出会ってから二人で歩いたのは、まだ二度目な気がするんだけど……」

「……え?」

突然、突き放された感覚に陥る。

じゃあこの記憶は何なのか……?

何度もこの場所を二人で訪れたことのあるこの感覚は何なのか……。

「そんなはずは……」

―ふと、体の奥底から悪寒がした。

嫌な空気が体全体を包んで離さない感覚―

「……っ! ねぇメリーっ! あれは何!?」

突然大きな声をあげる蓮子に驚く。

酷く怯える様子で指を指している方向に視線をやると、そこにはメリーにしか見えないはずの黒い『裂け目』が―

 

 




サークル『水天一碧』で東方関連の執筆活動をしているアイリスと申します。
新潟例大祭で頒布させて頂きました作品を、少しずつこちらに投稿していこうということで掲げさせて頂きました。

目的としましては、小説を読みたい!って思う人たちが集う場所でどのような評価を頂けるのかということで、今まで頒布させていただいてきた物が短編小説ばかりで長編小説というものを書いたことが無い自分が実際にどれぐらいの物が書けているのかということをさし測るといった、実験的な何かだったりします。

ぜひ、感想や評価を頂けると励みになります。
これから少しずつ投稿をしていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
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