インフィニット・ストラトス~夏の月が進む世界~   作:吉良/飛鳥

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天才と天災……一字違いで落差がハンパねぇ!By夏月      其れは……確かにねBy楯無    僅か一字の違いで残酷な違いがあるねByロラン


Episode11『天才の出撃~Genialer Ausfall~』

夏月との試合で気を失ったセシリアは担架で運ばれる途中で目を覚まし、救護班に『大丈夫ですわ』と伝えると、ブルーティアーズのシールドエネルギーを補給し、破壊されたBT兵装を拡張領域に粒子変換して収納して再構築して再び使用可能な状態にしていた。

 

 

「(一夜夏月……まさかあの様な野蛮な攻撃に屈するとは屈辱この上ありませんわ!

  そもそもにして男性は女性に対しては優しくするモノではありませんの?其れが紳士と言うモノで……いえ、男性は女性に媚び諂う情けない存在の筈――であるのならば女性に対して特別優しくする必要はない筈ですわね?

  であるのにも関わらず、何故私は男性は女性に優しくすべきだと考えてしまったのですの?……いえ、そもそもにして私は一体何時から『男性は女性よりも弱い存在である』と考えるようになっていたのでしょうか?

  大体にしてお父様が本当に情けない男性であったのならば、何故お母様はお父様と結婚したのでしょうか?)」

 

 

夏月に圧倒的な敗北を刻まれたセシリアだが、夏月との試合を思い返す中で己の考え方にトンデモナイ矛盾が存在している事に気が付いた。

『男性は女性には圧倒的に劣る存在である』と認識していたにも拘らず『男性は女性には優しくするモノだ』と言う考えも存在していたのだ――其れこそが、『英国紳士』であるとセシリアも無意識の内に考えていたのだろう。

 

 

「(いえ、其れは今考える事ではありませんわね……私が今すべき事、其れは彼との、織斑秋五との試合に勝つ事のみ。

  先程の試合、油断と慢心、そして相手の実力を見誤って居た事は認めましょう……だからこそ、もう慢心も油断もしません。織斑秋五の事も、素人ではなく私と同格の相手として見るとしますわ。)」

 

 

気付いてしまった己の中の矛盾は一旦頭の隅っこに追いやり、セシリアは次の秋五との試合に気持ちを切り替える事に。

先程の夏月との試合では、試合開始後数分は完全に遊ばれ、本気を出されてからはあっと言う間に全てのBT兵装を破壊され、切り札のミサイルビットですら簡単に攻略され、挙げ句の果てには試合とも呼べないような圧倒的な蹂躙をされた上で、アリーナに詰めかけた多くの生徒の前で気絶して救護班に回収されると言う醜態を晒してしまった。

其れは当然セシリアのプライドに大きな傷を付けたのだが、其れだけの醜態を晒した事で、今のセシリアはある意味で『怖いモノなし』の状態になっており、更に秋五の事も己と同格の存在として相手にする事を決意していた――その証拠に、夏月と戦う前の様な人を見下すような雰囲気はマッタク持って感じられないのだ。

 

だが、其れでもセシリアは秋五には勝てると思っていた。

今日までに何度か秋五が放課後にアリーナで訓練機を使って訓練をしているのを見た事があったが、毎日完敗し、更に初日と最終日でその差が縮まっているようには見えなかったからだ。

しかし秋五が毎度毎度完敗していたのは、楯無の方が秋五よりも圧倒的に強いからなのだが、実はただ完敗しただけでなく楯無は秋五がレベルアップする度に少しずつ本気レベルを上げており、完敗しながらも秋五の実力は大きく上昇しているのだ。

僅か一週間弱の訓練で既に秋五は飛行と歩行は完全にマスターしており、攻撃と防御(回避も含む)も実戦レベルにまで引き上げられ、特に防御と回避に関しては楯無の本気の攻撃をも防ぐ、或は躱す程になっているのだ。此れに関しては楯無が、『君は立場上、まず自分の身を護る事を最優先に覚えなさい』と言って、防御と回避を徹底的に鍛えたからであるが。

 

油断と慢心をなくし、そして秋五を己と互角の存在として相手をする事を決めたセシリアは『イギリスの国家代表候補』としての本来の実力を発揮するのかも知れないが、秋五の成長値を見誤って居る事がセシリアの穴とも言えるだろう。

 

 

「補給完了。セシリア・オルコット。ブルー・ティアーズ……発進しますわ!」

 

 

補給が完了したブルー・ティアーズを纏ったセシリアはカタパルトからアリーナへと出撃して行ったが、彼女には秋五の成長値を見誤っていただけでなく、ある意味で致命的とも言えるミスを犯していた。

セシリアはこの試合が決まったその日に、夏月に『お前は織斑と戦って天才の理不尽さを知る事になる』と言われた事をすっかり忘れていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の月が進む世界  Episode11

『天才の出撃~Genialer Ausfall~』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリアがアリーナに出ると、其処には既に白式を纏った秋五が待機していた……何故か空中で禅を組むと言う独特の待機姿勢だったが、此れは秋五が集中力を高める為に行っていた事なのだろう。

 

 

「申し訳ありません織斑さん、お待たせしましたわ。」

 

「いや、そんなに待ってないから気にしなくて良いよオルコットさん……一夜君にビットを全部破壊されちゃったんだから補給にも時間が掛かるのは仕方ないと思うからね。」

 

 

まだ試合開始前だが、自分の方が後にアリーナに来たと言うのは礼儀を失したと感じたのか、セシリアは遅れた事に謝罪するが秋五は気にした様子は全然なく、禅の姿勢を解いて白式の専用武装である『雪片二型』を展開して構える。

セシリアも狙撃ライフル『スターライトMkⅡ』を展開して臨戦態勢になるが、雪片二型を構える秋五を見て少しばかり眉を顰めていた。

 

 

「織斑さん、先程の私と一夜さんの試合は見ていたのですわよね?」

 

「うん、見てたけどそれが如何かしたかな?」

 

「そうであるならば、私が中~遠距離の射撃タイプで、更にはBT兵装も使う事は分かっている筈――であるにも関わらず、近接ブレードで挑む心算ですの?」

 

「って言われても、僕の白式に搭載されてる武器って此れだけなんだよね……ロケラン搭載しろとは言わないけど、僕としてはせめてハンドガン位は搭載して欲しかったって言うのが本音だよ。」

 

「はい?」

 

 

だが、己の問いに対する答えを聞いたセシリアは思わず目が点になってしまった。其れだけ秋五の専用機である『白式』は、少なくとも素人に使わせるには有り得ない装備の専用機であると言う事なのだろう。

 

 

「ま、マジですの?」

 

「マジ。本気と書いてマジだよ。」

 

「あ、有り得ませんわ!

 男性操縦者のパーソナルデータを採る事を目的とした専用機であるのならば、基本性能は攻守速のバランスを取り、武装に関しても近接戦闘用と中距離用、遠距離射撃用を搭載して、其れ等の稼働データからカスタムして行くのが普通ですわ!

 一夜さんの機体は近接寄りでしたが、彼の場合は存在を秘匿されていた間にパーソナルデータを採って彼に最適な専用機を開発したと言えますが、織斑さんの場合はそうではないでしょう?

 であるにも拘らず、近接ブレード一本のバリバリの近接型の機体を専用機として用意するって、貴方の専用機を開発した企業は頭のネジが半分ほど宇宙の彼方のブラックホールに吹っ飛んでいるんではなくて!?」

 

「其れは否定出来ないかなぁ?

 僕が織斑千冬の弟だからって言う事で、姉さんが現役時代に使ってた専用機と略同じモノを用意したんだろうけど、僕と姉さんは姉弟だけど同じじゃない。『織斑千冬の弟だから同性能の機体を使うべきだ』なんてのは、マッタク持って有難迷惑以外のナニモノでもないかな。

 機体の反応速度は白式の方が上だけど、汎用性で言えば打鉄の方がずっと上だ。寧ろ、打鉄を僕用にカスタムした方が良かったんじゃないかって思ってる位だからね……でも、無いもの強請りをしても仕方ないし、僕はこの白式で君に勝ってみせるよオルコットさん。」

 

「ある意味では欠陥機とも言える専用機ですが、織斑先生の現役時代の専用機を再現した機体であると言うのならば油断は禁物ですわね……私の全力をもってしてお相手しますわ織斑さん!」

 

「うん、全力でやろうオルコットさん。

 でも、僕は負けない……此処で負けてしまったら僕を鍛えてくれた会長さん、訓練に付き合ってくれた箒、白式が一次移行するまでの時間を稼いでくれた一夜君とローランディフィルネィさんに合わせる顔がないからね。

 負けられない理由があるんだ、だから僕は君に勝つ!」

 

「負けられない理由があるのは私も同じですわ……この試合、勝利は譲りませんわ!」

 

 

秋五の専用機である『白式』がブレオンのイカレタ機体である事にはセシリアだけでなく秋五自身も突っ込みを入れずにはいられなかったみたいだが、秋五は『打鉄よりも反応速度が良い』との理由で白式で試合に臨む事にしたようだ――セシリアがアリーナに来るまでの間に軽く体を動かしてから禅を組んだからこそ反応速度って言うモノの差に気付いたのだろうが。

 

 

『第三試合、織斑秋五vsセシリア・オルコット、試合開始ぃ!!』

 

 

「先手は貰いますわ!」

 

 

此処で試合開始が宣言され、セシリアはスターライトMk.Ⅱを放つが秋五は其れをアッサリと回避して見せた。

夏月に言われた通り、秋五は夏月とセシリアの試合をよく見ており、その結果としてセシリアの射撃に関してはセシリアの視線と銃口の角度から弾道を完璧に読み切って見せたのだ。

尤もそれが出来たのは、楯無との訓練で『己の身を守る為にも、銃を使って来た相手の視線と銃口から弾道を読んで弾を避けられるようになりなさい』と言われて悪魔のような精密射撃を回避すると言う地獄のような特訓を熟したからこそなのであるが。

 

 

「ティアーズ!」

 

 

初撃を躱されたセシリアは、しかし焦る事なくBT兵器を展開して秋五に立体的な攻撃を行い、秋五は持ち前の防御と回避でビットの攻撃をシャットダウン!――しかし、セシリアがBT兵器を展開してからも秋五は見事な防御と回避でBT兵器の攻撃を捌ききっていた。

BT兵器操作中はセシリアは動けない事が既に割れているのだが、其れでも秋五はセシリア自身を攻撃する事なく防御と回避に徹していたのだが、僅か一週間弱の訓練でBT兵器に対応出来ると言うのは驚異的な事だと言えるだろう。

尤も多くの生徒は、秋五の防御と回避の技術に驚きながらも防戦一方になっている様に映ってしまっているのだが。

 

 

「秋五……成程、今はズレを修正していると言う訳か。」

 

 

だが、箒は秋五がBT兵器に対して防御と回避に徹している真の意味に気付いていた。

六年間も離れ離れになっていたとは言っても、箒にとって秋五は初恋の相手であり、六年経った今でもその思いは一切萎えていないので、秋五に関しては千冬よりも箒の方が詳しいと言えるかも知れない。

 

 

「ズレって、どういう事かな篠ノ之さん?」

 

「秋五は先程の一夜とオルコットの試合をピットで見ていたのだろうから、オルコットのBT兵器の動きは覚えたのだろうが、しかし見たのと実際に体験したのでは、其処に僅かなズレが生じてしまうんだ。

 だからこそ、秋五はそのズレを修正する為に、先ずは様子見に回っているのだろう……恐らく大体五分後に戦況は一変する。」

 

 

モニターで見た事と実際に体験した事では其処に僅かばかりのズレが発生し、そのズレを修正する為に先ず秋五が『見』に徹しているとクラスメイトに説明した箒だったが、試合が始まって五分が経ったところで箒が言った事は正しかったと証明される事になった。

 

 

「修正完了……見切った!!」

 

 

防御と回避に徹していた秋五が、一転して攻勢に回りBT兵器を一つ斬り裂いて見せたのだ。

今までの防御と回避に比べれば其の動きは僅かに固さがあるモノの、秋五の訓練期間を考えれば十分過ぎる動きだったと言えるモノだが、驚くべきは秋五が破壊したBT兵器は秋五の背後、つまり死角である筈の場所にあった一基だった事だろう。

 

 

「さっきの一夜君との試合の映像、そして実際に戦ってみて君のビット操作のクセは完全に見切ったよオルコットさん……見ただけの情報と、体験しての情報のズレも修正出来た。

 ビットの攻撃は、もう間違っても僕には当たらない!」

 

「そんな馬鹿な……先程の一夜さんとの試合、そしてこの試合で少し見ただけで完全に見切ったと言いますの?あ、有り得ませんわそんな事!」

 

「一夜君との試合、そしてこの試合の五分間で君が見せたビットの操作パターンは合計七つ。恐らくは今は其れ以上の操作パターンは存在しない。

 そして複数のパターンを合わせて使う事も出来ない……そして、其の七つのパターンへの対処法はもう覚えた!」

 

 

言うが早いか、今度はブルー・ティアーズ本体を狙うかのようにセシリアに向かって突撃し、セシリアは其れを止めようと秋五の背後からBT兵器で攻撃するが、秋五はBT兵器からの攻撃が放たれる直前で軌道を変え、結果として秋五に向けて発射された攻撃はセシリア自身に向かって行く事に。

 

 

「く……トリックプレイと言う訳ですか。ですが、此の程度は想定しましてよ!」

 

「分かってる。だけど僕の本当の狙いは君自身が動く事だよオルコットさん。」

 

 

其の攻撃を回避する為に、BT兵器の操作を止めて飛翔したセシリアだったが、秋五は動きを止めたBT兵器を破壊する――『ビット操作中はセシリアは動けない』と言うのは裏を返せば『セシリアが動いている間はBT兵器は動かせない』と言う事でもあり、BT兵器を確実に破壊する為に秋五はセシリアが動かざるを得ない状況に追い込んだと言う訳だ。

 

 

「真の目的はティアーズの破壊……!貴方、本当にISの訓練を始めて一週間程度なんですの!?本当は、入学前から密かに訓練していたのではないですか!?」

 

「いや、僕が訓練をしたのは本当にこの試合が決まった翌日から昨日までの間だよ――まぁ、余程先生が良かったって事なんだろうけど。」

 

「如何に師が優秀であっても、弟子の方が無能でしたら全く意味はありませんわ……たった一週間足らずで此処までISを扱えるようになるだなんて想定外も良い所ですわよ本当に!」

 

 

楯無は日本の国家代表であり、其の実力はセシリアも知る所ではあるのだが、如何に楯無の実力が高く指導者としても優秀であるとしても、この短期間で此れだけISを扱えるようになったのは実際の所は織斑計画による所が多い。

しかし織斑計画の事を知らないセシリアにしてみれば秋五の才能が、この短期間でISの操縦をマスターするに至ったと考えた事だろう。

 

二基目のBT兵器を破壊されたセシリアは、此れ以上破壊させないように再びBT兵器の操縦にシフトするが、秋五は其れ等の攻撃をいとも簡単に回避し、擦れ違い様に三基目を破壊する。

BT兵器の最大の強みは、複数展開したビットによる多角的な攻撃だが、そのビットが残り一つになってしまってはその強みを生かす事は難しい。本体とビット一つの攻撃では二方向からしか攻撃出来ない上に、セシリアはBT兵器操作中は自身が動けないので残ったビット一つとの波状攻撃すら出来ないのだから。

近接戦闘を仕掛けて来た所にミサイルビットをぶつけると言う手段も存在しているが、その切り札は既に夏月戦で切ってしまっている……故にセシリアは至近距離ミサイル攻撃を使うと言う選択肢を選ぶ事が出来なかった。

夏月戦の観戦と、自身が実際に体験しただけで己のBT兵器の操作パターンを完全に見切ってしまった秋五に対して、同じ切り札が通じるとは思えなかったのだ。

 

 

「く……ならば撃ち落として差し上げますわ!」

 

 

残ったBT兵器を本体に戻すと、セシリアはスターライトMk.Ⅱを使った射撃戦に切り替えるが、その精密射撃をも秋五はマッタク持って余裕で回避してしまう。夏月が見せたアクロバティックな回避ではなく、必要最小限の動きでの回避だが、其れだけに堅実で一切の無駄がなかった。

 

 

「何故?何故当たりませんの!!」

 

「会長さんの言ってた通り、目線や銃口の角度で何処を狙ってるのか分かるモノなんだね……一流のガンマンが能面みたいな無表情で撃つ理由が分かったよ。」

 

 

そして秋五は射撃を回避しながらジリジリと距離を詰めて来ている。

イグニッションブーストが使えたら一瞬で距離を詰められていただろうが、流石に此の短期間では高等技術であるイグニッションブーストの習得には至らなかったモノの、少しずつ、しかし確実に距離を詰められている状況は、セシリアにとってはプレッシャー其のモノだろう。

 

 

「(私の目線と銃口の角度から何処を狙ってるか判断する等、其れこそ年単位での修練が必要な筈ですが、彼は僅か一週間足らずで其れを習得したと言うのですか!?あ、有り得ませんわ!

  彼の才能は認めましょう。ですが、如何に才能があると言っても此の短期間でそんな事が出来る筈が……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――『お前は、天才の理不尽さを知る事になる。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、セシリアは夏月が言っていた事を思い出した。

あの時は『一体何を……』と思ったが、今この状況に置かれてその言葉の意味が理解出来た……秋五は只高い才能を持っているのではなく、正真正銘の『天才』であると思い知らされ、そして同時にその才能に嫉妬した。

 

 

「天才の理不尽……そうですわね、確かに理不尽ですわ。

 私が代表候補生になる前から習得を目指し、未だに習得出来ていない『銃の弾道を読む』と言う芸当を、この僅かな期間で習得してしまったのですから……マッタクもって神様と言うのは不公平なモノですわね。

 真の天才と言うモノは凡人を圧倒的に追い抜いて行くと聞いた事がありますが、貴方がその真の天才と言う訳ですか……認めましょう、男性の強さと言うモノを。」

 

 

だが、同時にセシリアは男性の強さを認めるに至った。

夏月との戦いで感じたのは男性の凶暴さと暴力性だったが、秋五との戦いでは男性の強さと言うモノを純粋に感じる事が出来た――本来ならば絶対不利な条件であるにも関わらず己と互角以上に戦っている秋五に此れまで感じた事のない男性への感情が芽生えたのかも知れない。

 

 

「認めた以上、もう二度と男性を見下した発言や行動はしないと誓いましょう……お礼を言っておきますわ織斑さん、私の目の曇りを晴らしてくれた事に。」

 

「……良い顔になったねオルコットさん。

 女尊男卑の思考を捨ててくれるなら其れは嬉しい事だけど、どうして君はその考えに至ってしまったの?君だって最初から女尊男卑だった訳じゃないよね?そうじゃなかったら男の力を認めるなんて事は絶対にない筈だから。」

 

「私の両親は既に亡くなっていますが、お父様は何時もお母様には媚び諂っている様に見えたからですわ……お母様は当時のオルコット家の当主ではありましたけれど、其れを差し引いてもお父様は何時もお母様の陰に隠れて、お世辞にも尊敬出来る父親ではありませんでした。

 何時もお母様の陰に隠れて、自分の意見も真面に言えないお父様を見て、男性は情けない存在であると、そう考えてしまったのかもしれませんわね。」

 

「成程ね……だけどオルコットさん、君のお父さんは本当に情けない人だったのかな?

 本当にそんなに情けない人なら、君のお母さんは何でお父さんと結婚したのかな?……此れは僕の推測だけど、君のお父さんは君のお母さんの『オルコット家当主』の地位を守る為に、敢えて一歩下がっていたんじゃないかな?

 恐らく君のお父さんは婿入りした立場だろうから、婿入りした自分が表に出過ぎるのは良くないと考えて妻である君のお母さんを立てる事を選んだんだと思うよ?

 オルコットさん、君のお父さんは本当に君に情けない姿を晒していたの?」

 

「其れは……」

 

 

そして、秋五に『何故女尊男卑の思考に至ってしまったのか』と問われたセシリアは己の父親が情けない人だったからだと答えたのだが、秋五の次なる問いには答える事が出来なかった。

冷静になって思い返してみれば、セシリアの父親は妻の陰に隠れている事が多かったが、幼い頃のセシリアが夜眠れない時には眠るまで御伽噺をしてくれて、セシリアの誕生日には子供の頃のセシリアの身の丈以上のテディベアのヌイグルミをプレゼントしてくれる事もあった優しい男性だった。

だが、成長するにつれセシリアはそんな父親の優しさよりも母親の陰に隠れている姿の方が強く印象に残るようになり、IS登場から現れた一部の『女尊男卑』思想を知った事で知らず知らずの内に、女尊男卑の思考を其の身に宿してしまったのだ。

 

 

「織斑さん、重ねてお礼を申し上げますわ……貴方のおかげで、お父様が本当はどのような方だったのかを思い出す事が出来ましたわ。ですが、其れと勝負は別物ですわ!

 私の全力を持ってして、貴方に勝って見せますわ!」

 

「雰囲気が変わったね……全力は望む所だよ。本当の意味で全力を出した君に勝たなければ何の意味もないからね!」

 

 

セシリアの射撃を躱しながら少しずつ距離を詰めて来た秋五は、3mまで迫ったところで急加速してセシリアに斬りかかったのだ、セシリアは其の攻撃をスターライトMk.Ⅱで受け止めて見せ、そして捌いた。

 

 

「一夜君との試合では、近距離戦は苦手だと思ったんだけど、此れは予想外だったかな?」

 

「確かに私は近接戦闘は不得手であり、インターセプターも上手く扱えませんが、射撃型の嗜みとして銃剣術は其れなりに修めていましてよ?一夜さんとの試合では披露する事すら出来ませんでしたが。」

 

 

ナイフでの戦闘は全くダメだが、銃剣術の心得はあったようで、セシリアは秋五と切り結ぶが、『其れなりに出来る』と『得意』の間にある差は大きく、セシリアは徐々に押されて行く。

ISの特訓に加えて、箒との剣道の模擬戦を行っていた秋五は完全に勝負勘を取り戻しており、試合の前日には箒から一本を取るまでになっていたのだ。

故に、近接戦闘限定であるが、秋五は相手が千冬以上でない限りは誰が相手であっても負ける事はない実力を取り戻していたのだ――実際は、秋五の近接戦闘の実力はとっくに千冬を越えているのだが。

 

 

「此れで終わりにするよオルコットさん……零落白夜!!」

 

「!!」

 

 

その近接の攻防の最中、秋五が切り札を切ってセシリアの胴に一文字の横切りを喰らわせ、同時にブルー・ティアーズのシールドエネルギーを根こそぎ奪い去ってゼロにする。

 

零落白夜――現役時代の千冬の強さを支えていた単一仕様で、其れは『一撃で相手の機体のシールドエネルギーをゼロにする』と言う一撃必殺のクソチート技であり、そのチート技が白式にも搭載されていたのだ。

発動には自機のシールドエネルギーがコストになるのだが、其れでも当たれば勝ち確定と言うのはチート極まりない……近接戦闘を極めれば、零落白夜は必中の『じわれ』、『つのドリル』、『ぜったいれいど』と言えるのだから。

ともあれ、その一撃必殺技が決まった以上、セシリアの機体はシールドエネルギーがゼロになって強制解除され、機体が解除されたセシリアはアリーナの上空からヒモ無しバンジーになる訳で……

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「オルコットさん?く、間に合えぇぇ!!」

 

 

落下し始めたセシリアを、秋五は何とか地面に激突する前に手首を掴んでキャッチし、其のままゆっくりと地面に着地した……もしも後コンマ五秒遅かったら、アリーナにはモザイク指定のスプラッタ映像が公開されていた事だろう。

 

 

「本日三回目の礼ですわね織斑さん……そして、今回は本気で心の底から感謝しますわ。私はまだお母様とお父様の所に行く心算はありませんでしたから。」

 

「間に合って良かった……君が僕との試合で大怪我したとなったら大問題になりかねないからね……其れで、身体の方は大丈夫?助ける為とは言え、思い切り腕掴んじゃったけど、痣になったりしてない?」

 

「其れは大丈夫ですが……自由落下の恐怖を味わったせいか、腰が抜けてしまい立つ事が出来ませんわ。

 機体も解除されてしまったのでピットに戻る事も無理ですし……だからと言って治るのを待つ訳にも……そもそもにして、腰が抜けた程度で救護班の方の手を煩わせるなど恥ずかし過ぎますし……」

 

「腰が抜けちゃったのか……って、其れ完全に僕のせいだよね?じゃあ、ちゃんと責任取らないとだね。」

 

 

そして紐無しバンジーの恐怖で腰を抜かしてしまったセシリアにそう言うと、秋五はセシリアを抱え上げた。其れも只抱えるだけでなく、所謂『お姫様抱っこ』の形で。

秋五は可成りのイケメンであり、セシリアも容姿は美少女と言っても過言ではないので、イケメンが美少女をお姫様抱っこしている姿は中々画になり、新聞部の生徒なんかは、一体どんな記事に使うのか分からないが写真を撮りまくっていたりする。

 

 

「ちょ、織斑さんイキナリ何を!?」

 

「自力で立つ事が出来ないんでしょ?だったら僕がピットまで運ぶのが一番手っ取り早いと思って。

 戻るのは僕のピットになるけど、オルコットさんは次の試合はローランディフィルネィさんとだから、僕のピットに戻った方が移動の手間がなくて良いと思うから。」

 

「其れはそうですが……ではなくて、何故いわゆるお姫様抱っこなのですか!?」

 

「人を運ぶ場合、脇に抱えたり肩に担ぐよりも、こっちの方が安定してるからだよ。災害現場で救助された人も、レスキュー隊員にこうやって抱えられてる事が多いと思うんだけど?」

 

「う……其れを言われると何も言えませんわね……では、安全運転でお願いしますわ。」

 

「其れは任せて。」

 

 

当事者であるセシリアは慌てるも、秋五に『人を運ぶには此れが一番安定するから』と言われては其れ以上は何も言う事は出来なかった。秋五は只安全にセシリアをピットまで運ぼうとしているだけで、其処に他意はないのだ。

ともあれ、『織斑千冬の弟』のネームバリューで注目されていた秋五のデビュー戦は、イギリスの国家代表候補生であるセシリアを圧倒して勝利すると言う中々に鮮烈な結果だったのだが、夏月対セシリア戦の方がインパクトが凄まじかったのでその鮮烈さは若干薄まってしまっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「見事な戦いだったぞ織斑。

 代表候補生を圧倒するとは教師としては充分に合格点をやれるレベルだ――そして、公私混同は良くないが、姉としては誇らしい事この上ない。この調子で残りの二試合も頑張れよ。」

 

 

ピットに戻ってきた秋五に対して、千冬は高評価を下して褒めるが、同時に秋五に抱えられているセシリアには嘲笑の視線を向けていた。『大口を叩いておきながら此の程度か小娘が』と言わんばかりだ。

口にこそ出さないが、『秋五の踏み台になってくれた事には感謝してやる』位の事は思って居るのかもしれない。

 

 

「ありがとう姉さん。

 だけどオルコットさんをそんな目で見ないでくれるかな?彼女は試合の中で己の過ちを知って、そして男性の強さを認め、何よりも全力で僕と戦ったんだ。そのオルコットさんを馬鹿にする事は姉さんでも許さない。」

 

「言われてみりゃ、確かに今のオルコットは問題発言連発して、あろう事か俺にナイフで斬りかかって来たクソライミーとは別人だな?ぶっちゃけアレは、オルコットに宿った千年アイテムの闇人格だと言われたら俺は信じる!」

 

 

そんな千冬に秋五はセシリアを護るような事を言い、夏月も雰囲気が一変したセシリアに気付いたようだ。

逆に千冬は、秋五から予想だにして居なかった事を言われて一瞬眉を顰めるも、直ぐに普段の表情に戻り、秋五とセシリアに『次の試合に向けて補給を済ませておけ』とだけ言うと腕を組んで壁に背を預け、それ以降は何も言わなかった。

 

セシリアはBT兵器が三基破壊され、機体のシールドエネルギーもゼロになってしまったので補給には時間が掛かるが、秋五の白式は零落白夜の使用で消費したシールドエネルギーを補充するだけなので補給は直ぐに終わり次の試合の準備は万端だ。

 

 

「補給は終わったか……最終戦は俺とお前の試合だから、俺は反対側のピットに移らせて貰うぜ。

 そんじゃ織斑次の試合も頑張れよ?言っておくが、ロランはドレだけ低く見積もってもオルコットの三倍は強い……相当気合入れて掛からないと、パーフェクト負け喰らっちまうぞ。」

 

「最低でもオルコットさんの三倍……其れは確かに強敵だろうね。」

 

「そしてサラッと、私に絶望与えないで下さいます?」

 

「天才の理不尽さを知ったお前が今更この程度で絶望するか?寧ろ、勝つ事の出来ない相手に挑んで一矢報いる位の根性見せろよオルコット。お前の全敗は略確定だが、十回の勝利よりも十回の敗北の方が価値があるってモンだ。

 自慢じゃないが、俺は楯無さんから初勝利を挙げるまでに百五十連敗してる……でもって、其れは俺がお花畑見た回数でもある。今更だけど、よく俺精神崩壊しなかったよな。」

 

「夏月君はやればやるだけ成長するから、ついお姉さんもやり過ぎちゃったわ♪」

 

 

夏月は最終戦に向けて反対側のピットに移動したのだが、その際にロランの強さはセシリアの比ではないと言う事を秋五に伝えていた――その後で割とトンデモナイ事を言ってくれていたが、其れは深く追求しない方が良いと思ったのか秋五もセシリアも、そして山田先生と千冬も何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

五分間のインターバルが終わり、続いては秋五対ロランの試合だ。

ピットから出撃した秋五は雪片弐型を、ロランはビームハルバート『轟龍』を夫々構えて戦闘準備は万端と言った状態だ――何方も初撃に全力の一撃を放つ気満々と言った感じである。

 

 

『織斑秋五対ロランツィーネ・ローランディフィルネィ、試合開始ぃぃぃ!!』

 

 

放送部の生徒が試合開始を告げると同時にロランと秋五は互いに距離を詰め、雪片弐型と轟龍がかち合って火花を散らす!そして其処から鍔迫り合いの様な状態になったのだが、ロランがロ―キックを放って秋五の態勢を崩すと、其処に渾身の斬り下ろしを喰らわせるが、秋五は持ち前の回避力で其れをギリギリで回避する。

 

 

「見事な回避だが、でも甘い。」

 

「がっ!?」

 

 

だが、斬り下ろしを回避した秋五に対し、ロランは横薙ぎの攻撃でハルバートの斧部分の腹で秋五の横腹を殴り飛ばす――生身であれば息が詰まり、下手をすれば嘔吐間違いなしの攻撃だが、ISを纏っている状態ならば絶対防御が発動して呼吸困難も嘔吐もないのだが、装甲に覆われていない生身の部分を攻撃された事で白式のシールドエネルギーは大きく減少した。

一撃必殺の零落白夜はシールドエネルギーを消費する事を考えると、シールドエネルギーを消費すると言うのは秋五にとっては有難くない事だ。

逆に言えば、零落白夜を当てる事さえ出来れば秋五はどんな相手にも勝てるのだが、ロランには零落白夜を当てる隙がマッタク見えなかった――秋五は実際にロランと戦ってみて、『特出して高い能力はないが、全ての能力が高い水準で纏められている隙の無いバランス型』だと言う事が分かってしまっていた。

 

セシリアは『射撃特化型』で、一応銃剣術の心得があるとは言え、近接戦闘が不得手と言う穴があったのだが、ロランにはそう言った付け入るべき隙はマッタク存在せず、秋五は攻め入る事が出来なかった。

持ち前の回避力と防御力で、横腹に喰らったカウンターの一撃以外は決定的な攻撃を喰らってはいないのだが、同時に此のまま試合を続けても秋五の判定負けになるのは確実だろう。

 

 

「降参だローランディフィルネィさん。この試合、僕の負けだ。」

 

 

そして試合開始から十分が経ったところで秋五が降参の意を示して試合は終了した。

 

 

「降参するのかい織斑君?君の学習能力を持ってすれば、残り十分の間に私の攻略法を見付けてしまうのでは思うのだが……」

 

「君が特化型だったら攻略法を見付ける事が出来たかもしれないけど、隙の無いバランス型の弱点を十分足らずで見付けろって言うのは流石に無理ゲーだよローランディフィルネィさん。

 君との試合に勝つヴィジョンが見えないんだ……だからこの試合、僕の負けだよ。」

 

「勝てないと分かった相手には無理をしないで降参するか……賢明な判断だね織斑君。だが、最終戦の夏月との試合では途中棄権はしないでくれ給えよ?世界に二人しか存在しない男性のIS操縦者同士の試合は誰もが注目している試合なのだから。

 夏月と君の試合は、言うならば闇遊戯と遊星の夢のデュエルみたいなモノだからね……期待しているよ。」

 

「うん、其れはとっても凄いプレッシャーだね。」

 

 

『今の自分では勝てない』と判断して降参した秋五だが、その判断は決して恥ずべきものではないだろう。

敗色濃厚な相手に挑むのは勇敢な行為ではあるが、敗北だけしかない相手に挑むのは愚かの極みでしかない――故に、秋五は己とロランの実力差を即座に見切って降参したのだ。

 

 

「今回は君が降参した事で私の勝ちになったけれど、君の本当の実力はマダマダこんなモノじゃないだろう?己が強くなったと思ったその時は何時でも私に挑んで来ておくれよ?強者との試合は、私も望む所だからね。」

 

「うん、是非ともそうさせて貰うよ。僕も負けっ放しってのは好きじゃないからね。」

 

 

試合終了後には互いの健闘を称える握手を交わし、そしてこの試合の勝者はロランとなった。

そして全員が二試合を終えた結果は――

 

 

一夜夏月:二勝0敗

ロランツィーネ・ローランディフィルネィ:一勝一敗

織斑秋五:一勝一敗

セシリア・オルコット:0勝二敗

 

 

と、この様になっていた。

既に二敗しているセシリアが一組のクラス代表になる事はないが、ロランがセシリアに勝って、秋五が夏月に勝った場合には、三人が二勝一敗で並ぶと言う面倒な事になるのだが、其れはあくまでも全試合が終わらなければ分からない事であるので、如何するかは此れからの結果次第だろう。

其れは其れとして、通算成績は一勝一敗とは言え、代表候補生を圧倒した秋五は己の実力を示したと言えるだろう。此れに関しては、『秋五の初戦の相手をオルコットにして秋五を確実に勝たせる』と言う千冬の望んだ結果にもなった訳ではあるが。

夏月ほどの鮮烈さはないとは言え、秋五もまたその実力を示した事により最終戦である男性操縦者同士の試合の期待は高まっている訳だが、夏月と互角に戦ったロランと、夏月戦とは明らかに別人の動きを秋五戦で見せたセシリアの試合もセミファイナルとして其れなりに盛り上がるだろう。

観客席の一部では何時の間にか、『成績予想トトカルチョ』が開かれており、一番人気は『夏月の一位通過』で、内訳は『夏月の三連勝』が70%、『夏月の二勝一分け』が25%、『二勝一敗で三人が並び、決定戦で夏月が一位』が5%と言った感じである。

二番人気はロランか決定戦を制して一位通過であり、何気に多い予想がセシリアの三連敗だったりする……因みにセシリアが一勝すると言う予想は一つも存在していないようだ。

賭け事など問題があるように思うが、実際に金品を賭けているのではなく、的中者には学食のスウィーツプレゼント程度なので其れほど問題視する事でもないだろう……学食の食券だったら若干問題になるかも知れないが。

 

 

其れは兎も角として、補給を終えたセシリアはピットから出でそして、ロランと向き合っていた。

 

 

「最後は貴女ですかローランディフィルネィさん……私の勝率は限りなく低いですが、其れでも全力で挑ませていただきますわ!」

 

「勿論全力で来ておくれオルコットさん。君の全力に、私も全力をもって応えようじゃないか。

 セミファイナルと言うのはメインイベントを盛り上げる為の前試合と見られがちだけれど、寧ろメインイベントを食う程の試合をしようじゃないか?今の君とならば、そんな試合が出来そうだよ。」

 

「其の期待に応えて見せましょう。

 では参りましょうかローランディフィルネィさん。女性に対して言う言葉ではないかも知れませんが、確りとエスコートして下さいな?」

 

「全力でエスコートさせていただくよマドモアゼル。さぁ、行くよ!」

 

 

次の瞬間に、セシリアはBT兵器の全てが展開され、ロランは其れに向かって行ったのだった――ロラン対セシリアの試合を含め、クラス代表決定戦は残り二試合。果たして如何なる結果が齎されるのであろうか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 To Be Continued 

 

 

 

 

 

 

 


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