「華陽さんっ!どうしてここに?」
「お前の火柱が見えたからな。だが、まさか追いかけてるんじゃなくて、追いかけられてるとは……二人とも派手にやられた感じだな」
「うっ……これは、その……」
合流した華陽は敵である闇派閥の男に対して、右手で刀を持ちながら警戒心を強め、ボロボロのアリーゼと輝夜の姿を淡々と横目で見る。失態を犯した様を見られ、酷評を頂いたアリーゼは胸に突き刺さるようなショックを受ける一方で、輝夜は何も言わずただ駆け付けた華陽を見つめ続けていた。
「アリーゼの様子だと……あの火柱は輝夜の案か」
「……だったら、なんだ?この戦えない様で貴方様に助けを求めた私達を皮肉だなと罵るか?」
「誰がこんな場面でするか。生憎とボロボロの怪我した女性を言葉責めする趣味は持ち合わせていない。……だが、確かに言いたいことはあるな」
じっと睨み付けるように見つめる輝夜に気付いた華陽は彼女の元に行き、華陽は刀を持たない手ぶらの左手で、そっと輝夜の頭をポスッと撫でる。そこには説教のような怒りや憐れみといった感情は存在しない。
「良い判断だ。後は俺に任せろ」
輝夜に残した言葉はたった一言程度。
それだけを残し、華陽は後ろにいる手負いの乙女達を守るように目の前の敵に集中。輝夜を撫でた左手で、もう一振りの刀を抜刀し、敵に構えるのだった。
「お前、邪魔してきて何者だ?そこにいるアストレアファミリアの関係者か?」
「通りすがりの花屋だ。そこにいる彼女達はウチの常連。殺されるのは勘弁して欲しいってのもあるが……このエリアで悪事を働く奴等はどうしても許せなくてな。ここに来るまでお前の仲間らしき奴等は全員倒したよ」
「へぇ……なら、少しは遊べそうだな!!」
闇派閥の男は右手に黒い片手剣を持って、華陽へ急接近。その速さは並みの冒険者以上。少なくともレベル1ではないの明らか。黒い刃が華陽の身体を捉える。
「おっと……この感じは。レベル3の上位といったところか。アリーゼと輝夜が苦戦するわけだ」
だが、華陽もそう簡単にはやられない。急接近した瞬間に、刹那的な速さでその刃を刀二本で受け止める。剣一つに対して刀二本で応戦するという、華陽の方が劣勢に見える場面だが、華陽は余裕を見せるように笑っていた。だが、その笑みが闇派閥の男を挑発する。
「ちっ!!オラァ!オラァ!」
男は笑みを見せる華陽に絶え間なく斬撃を浴びせる。その姿は蛮族、いや暴君と形容されてもいいもので、そこにあるのは力で捩じ伏せることのみ。剣技といったテクニックは存在しない。
「ふっ!荒い剣だな」
対して華陽はそれを刀を使った流儀で受け流したり、見え見えの剣筋を難なく躱していく。その動きには一切の無駄はなく、脇でその戦いを見ていたアリーゼ達はまるで舞踊を見ていた気分であった。
「ハナミヤ流二刀流剣術・
そして、隙を見て華陽は反撃。身体を捻り、落ち着きがある研ぎ澄まされたその身体から放たれる二本の刀による斬撃が、闇派閥の男の両肩を切り裂く。狙い澄ました斬撃は見事深く入り、肩から血が噴き出すのだった。
「がぁっ!!?」
男は血が噴き出す流れに任せて後ろ向きにヨロヨロと後退。
だが、その瞳には戦意。いや、殺意。
闇派閥の男は、空いていた左手を懐に入れ、そこから燃え盛る炎のような紅い刀身のナイフを取り出した。
「本来なら、街を燃やすように使う筈だったんだが……ここで使うしかねぇよなぁ!!」
「あれは……魔剣か!」
「全部、全部、燃えちまいなぁ!!」
躍起になった様子で男は、出血し続ける左肩を気にすることなく、紅い魔剣を何度も振り回す。振り回した瞬間、魔剣が効果を発揮し、刀身から凄まじい勢いの炎が華陽達がいる方向へ襲いかかる。
「厄介だな……魔剣持ちだったのか」
華陽は降りかかる豪炎を避けながら、闇派閥の男が持つ装備に驚かされる。
魔剣とは、文字通り魔法を放つ剣。冒険者が扱う魔法よりも威力は弱く、消耗品という欠点はあるが、誰でも魔法が使えるというメリットも存在する。
しかし、魔剣は高レベルの鍛冶師じゃないと作れず、その価値は高い。普通ならば、なかなか手に入れることも難しいのに、闇派閥がそれを当たり前のように持っていることに華陽は脅威の二文字を頭に想起させていた。
(昔はゼウスやヘラのファミリアが持っているのが普通ぐらいだった。並レベルのファミリアじゃ買うのも困難なのに、闇派閥がそれを持っているとはな……確実に俺が戦った時代よりも闇派閥は力を付けてきている)
「どぉした!!逃げ回ってばかりだな!」
「ちっ……」
魔剣は磨耗品。使い続ければ、いつかは砕ける。しかし、魔剣が繰り出す炎は周囲を炎獄へと変え、躱す場所が減っていく。加えて、華陽の後方には手負いのアリーゼと輝夜がおり、華陽はこれ以上の回避は彼女達にも危険が及ぶと判断した。
「……アンテイア様。使わせていただきます」
名刀『紫陽花』を鞘にしまい、華陽は懐から小さな革袋を取り出す。革袋の紐を解き、中身を取り出すと、そこには緑色のいくつかの種子。華陽はその中から一つを取り出し、残りをまた革袋の中に入れ、懐に片付ける。
「【
華陽が短く言葉を発した瞬間、取り出した緑色の種子は光り輝き、地面へと落ちていく。
そして、地に落ちたと同時に種子は急激に成長。10秒も足らずにピンク色の彼岸花のような花を華陽の側に咲かせる。しかし、その花の大きさは普通の花のサイズとは違い、子供ぐらいの身長の大きさがある。
「おいおい。なんだ、その花は?」
「この花の名はネリネ。ある大陸に咲く花で、ピンク色に咲くが、地元では『水の妖精』といった別名や物語があるオラリオでは貴重な花だ」
咲いた花の紹介を終えると、華陽は右手に握られた名刀『花繚』を側に大きく咲いたネリネのピンク色の花弁に丁寧に添える。
すると、刀と花弁は呼応するように輝き、折角咲いたネリネの花が光の粒子になって消えてしまう。しかし、その粒子は刀に吸い込まれ、刀は青とピンクが入り交じる刀身へと移り変わる。
「【
華陽はその刀を一振り。すると、刀身から透明な水が現れ、炎が蔓延する周囲を包みこみ、消していく。まるで、焼かれた土地を潤す癒しの水のようだ。
「ぐっ!?魔剣を作った……だと!?」
「残念ながら、俺は鍛冶師じゃない。最初に言っただろ?通りすがりの花屋だってな。ここからは
未だ青とピンク色に照り輝く刀を右手に、華陽は男に向かって突撃。その背後で、水に濡れたアリーゼと輝夜は華陽の背後を見て、言葉を口にする。
「すごいっ!流石は華陽さんの魔法」
「ああ。久しぶりに見たが、これが『百花剣乱』と呼ばれた所以である彼の魔法『