NEXT TIME 8人のジオウ!   作:祝井

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EP4「最後の校則2018」

 

 ソウゴがディケイドに襲われた翌日早朝。ある空き教室は数人の女子と一人の男子に占められていた。

 

「可愛い〜! 名前は?」

 

 女子に囲まれたソウゴEははにかむ。

 

「クマちゃん」

 

「やだ平和! でも可愛い!」

 

「ねー。……家にもテディベアいるんだけど、会えないから寂しいんだ」

 

 私も、と同意が上がる。

 

「じゃあお茶会しようよ」

 

「え?」

 

「お茶会って……」

 

「何にも用意されてないけど……?」

 

 女子達の困惑の声にも可愛い笑みで返すソウゴE。

 

「できるよっ、魔法でね」

 

「魔法?」

 

「いやいやそんなの──」

 

〈ドレスアップ・プリーズ!〉

 

 どこからか聞こえた呪文が女子の言葉を遮る。その瞬間、彼女達は綺麗なドレスを身にまとっていた。ついでにクマちゃんも。

 

 Eは燕尾服を着ていた。服に着られているように見えるが、それもそれで庇護欲を誘う可愛らしさ。

 

「待ってね、お茶出すから」

 

〈コネクト・プリーズ!〉

 

 呪文と共に魔法陣が現れ、机を通過していく。すると机の上にはティーセット。

 

 Eはティーポットを持ち上げ、高い位置から紅茶を注ぐ。机がびちゃびちゃになることはない。

 

 先程の可愛らしさと優雅な動きとのギャップで女子達はもうメロメロだ。

 

「清き一票をよろしくね」

 

 女子達は全力全開で頷いた。

 

 一方、廊下で悲鳴が聞こえる。またDが生徒に恐喝をしているのだろう。

 

「だんだん常磐ソウゴの質が落ちてきたな」

 

 Bの言葉にミサはほんまやなぁ、と頷いた。傘下に降ったはずのウールはいなかった。

 

「でもEのやり方はアンタと似とる気ぃするけどなぁ」

 

「一緒にするな。俺達も始めるぞ」

 

「うん」

 

 ミサはBに返事をしながらもその背に付いて行かず、未だCに扮したソウゴに声をかける。

 

「ちょっとええか?」

 

 頷いたソウゴはミサに付いて行く。着いたのは空き教室の一つ。

 

「なんやねん急に」

 

「ええからっ」

 

 ソウゴは死角に引き摺り込まれ、ミサの整った顔と真っ正面から向き合うことになる。肩を軽く掴まれ、ソウゴは戸惑う。

 

「ご褒美や。ソウゴAを倒し──痛ぁ!?」

 

 ミサは悲鳴をあげてソウゴから跳び退く。

 

「スネは無いやろスネはぁ!」

 

「ファーストキスを奪おうとした報いさ。行こ、ソウゴ先輩」

 

「ウール……どうして……?」

 

 ミサの脛を蹴ったのはウールだった。ウールはすぐに空き教室からソウゴを引っ張り出して説明し始める。

 

「Cが『33』って書いたメモを残してたんです。最初は単純にソウゴ先輩をCとあの女が共謀してソウゴ先輩を殺そうとしたんじゃないかなって」

 

 半分は合っている。Cはそのつもりは無かったようだが。

 

「でもゲイツ先輩がソウゴCを殴った時に聞いた台詞で、先輩がCのふりをしてるんだなってわかったんです」

 

「そう、だったんだ」

 

「そんな状況で僕がやれることはあの女について周りで調べることかなって」

 

 結局何もできませんでしたけど、とウールは肩をすくめる。

 

「でもありがとう。黙ってるのつらかったでしょ。あとえーっと、オーラと離れて寂しかったとか……」

 

「それはないです」

 

 きっぱりと断るウールの背後から声が聞こえる。ソウゴの名を呼ぶ声。

 

「……ゲイツ! オーラ!」

 

「ソウゴぉっ!!」

 

 走ってくる勢いで抱きついてくるゲイツ。ソウゴ諸共床に倒れ込む。

 

「痛い痛い痛い!!」

 

「ったく、何の騒ぎかって皆集まってきてるわよ」

 

「……悪い」

 

 急にパッと離れるゲイツ。二人は顔を伺いあって、同時に頭を下げる。

 

「すまんソウゴ!」「ごめんゲイツ!」

 

 えっ、と同時に顔を上げて驚く二人。漫才でもしてんのかあんたら、とオーラは眉間を揉む。こんな時ピナなら、と今はいない親友のことを思い浮かべる。

 

「常磐はどうして謝ったの!」

 

「ソウゴCのふりをしてたのを言わなかったことです!」

 

「この件についてゲイツはどうするの! 許すの!?」

 

「許しますっ!」

 

「ゲイツはどうして謝ったの!」

 

「殴ったことと見捨てたことだ!」

 

「常磐はどうするの! 許すの!」

 

「許すも何もゲイツは悪く──」

 

「どうなの!」

 

「許しまーす!」

 

 スピード解決。よし、とオーラはドヤ顔だ。確かにごちゃごちゃせずに本音を言い合えたのはいいことだけどさぁ、とウールは心の中でぼやいた。

 

 拍手が聞こえる。そっちの方向を見てみると、赤シャツに学ランを来た青年。

 

「いい友情劇だな、うん? 人殺しがやるにはいい芝居だな」

 

 ソウゴD。否、残りのソウゴも集まっている。Bは無関心そうに。Eは対照的に興味津々で。そしてDは凶暴な笑みを浮かべていた。

 

「C殺しといてそれは無いだろこの野郎、あぁん!!」

 

「そ、それは──」

 

「それは違うぞチンピラ」

 

「飛流!」

 

 震えていたソウゴの肩を叩き、お前じゃないと囁く。

 

「コイツにはそんなことはできないだろ。それに俺もあの場にいたが、割り込んできた下手人がいてな」

 

「下手人?」

 

「そうだ。お前らだって昨日見ただろ」

 

「ジープ……?」

 

「正解だッ──!?」

 

 Eを称賛した飛流の顔の真横を黄色の光弾が掠める。

 

「追尾弾なんてちゃっちいもん使ってないで出てきたらどうだ。門矢士ァ!」

 

 門矢士。その名を聞いた多くの生徒の中で二人だけが耳を疑う。ゲイツとオーラだ。

 

「負け犬の遠吠えだな。安心しろ、俺が破壊するのは常磐ソウゴだけだ」

 

 声が聞こえる。ベランダからだった。真っ先に辿り着いたのはミサ。足がモデル並みに長い男に問いかける。

 

「あんたがC殺したんか?」

 

「そうだ。そしてこれからAもBもDもEも関係なく破壊するつもりだ」

 

「んだお前、何が破壊するだこの野郎。ぶち殺すぞゴラァ!」

 

 残りのソウゴ達もベランダの前の廊下に集まってくる。それを見て士は落下防止用の塀から脚を離す。

 

「戦争の始まりだ。お前達ソウゴ、全員に挑戦する」

 

「……何が目的だ」

 

「真実のソウゴを倒すため。そして世界を創造するため」

 

「真実の、ソウゴ」

 

 動画の中のCの言葉が思い出される。ソウゴの選定。まさかCの言う黒幕は──

 

「何かよくわかんねぇが、売られた喧嘩は買ってやるよこの野郎」

 

「俺も」

 

 意外にもDと並んでドライバーを構えたのはEだった。

 

「根性あんなお前。これから俺とお前は兄弟だ」

 

〈フォーゼ!〉

 

「……ま、いいけど」

 

〈ウィザード!〉

 

 ベルトに継承したウォッチが装填される。士に向かって駆けながらベルトを回す。士もカードを素早く入れてバックルを閉じる。

 

〈"フォーゼ"ェーッ!〉〈"ウィザード"!〉〈──DECADE!〉

 

 三人は変身した直後に衝突、もつれ合いながら落ちていく。

 

 その光景を見ていたソウゴもウォッチを起動しようとする。が、飛流に止められる。

 

「今のディケイドは究極を超えている。行ったところで無駄死にするだけだ」

 

「でも……!」

 

「俺はお前に死んでほしくない。皆同じだ」

 

「……あの二人は俺じゃないの?」

 

 ソウゴの問いに、ゲイツやオーラはやるせなさげに息を吐いた。ウールは窓の外を見つめるだけ。

 

「俺達にとってのソウゴはお前だけだ」

 

 結局飛流が皆の心中を代弁した。ソウゴはウォッチを下ろさざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 ジオウ・フォーゼアーマーとジオウ・ウィザードアーマーは今、かつてない強さに圧倒されていた。

 

 数の利で圧倒できるかと思いきや、ディケイドは八人に増えた。逆に数で圧倒されることになる。

 

 更にその八人が使う技はそれぞれ奇々怪々なもので、一つに対抗できても残り三つの技によりダメージを喰らう。

 

「へへ、やべぇなこれ」

 

「……そうだね」

 

「ならもう抵抗するのは止めてもらおうか。そうすればちょっとくすぐったい程度に終わらせてやる」

 

「誰が止めるかこの野郎、なぁ兄だ──」

 

 隣にいたはずのウィザードアーマーは消えていた。

 

「……またか」

 

「同情するよ。俺も見捨てられた身でなぁ」

 

「悪いが同情されるのは一番気にくわねぇんだよッ!!」

 

「おっと」

 

 急射出されるブースターモジュールを避けるディケイド。その隙にジオウはベルトを回す。

 

〈リミット!〉〈タイムブレーク!〉

 

 ブースターモジュールが腕に戻った瞬間、フォーゼアーマーが変形しロケット型になる。ジオウは回りながらブースターを噴かし、ディケイドに突っ込む。

 

「ライダーロケットドリルぅーッ!!」

 

「せめて蹴れ」

 

〈FINAL ATTACK RIDE──E E E EVOL!〉

 

 ディケイドはマンホール程度の大きさのブラックホールを生成。ジオウは止まることも出来ずに吸い込まれていく。消えゆくブラックホールが吐き出したのは、ジオウ・フォーゼアーマーが描かれたカード。

 

 それを掴み取った瞬間、ディケイドはオーロラに包まれた。出てきた場所は校外の森。加古川の仕業か、それともスウォルツか。

 

「……面倒だな」

 

 今日はここまでにしておいてやろう、と襲いかかる化物にライドブッカーを突き立てた。まだまだたくさん化物はいた。

 

 

 

 

 

 化物狩りの時にスウォルツにオーロラの使い方習っといて良かった、と飛流は指を折り曲げる。

 

「ひとまずこれで時間は稼げるだろうが……」

 

「どこに送ったんだ」

 

「化物が特に多く住み着いてる場所だ。だがこれが使えるのは今回だけだな」

 

「次が決戦だということか。……ソウゴ?」

 

 崩れ落ちたソウゴを優しく引っ張り上げるゲイツ。Bはそんなソウゴに呼びかける。

 

「どうした、戦いが恐いか?」

 

「……痛いんだよ。常磐ソウゴが──俺がやられたんだから」

 

「変わってるなお前」

 

 そう言い残して、Bはミサと連れ立って去っていった。

 

「……あんたの優しさは美徳だけど、今は捨てた方がいいかもね」

 

 オーラはそう忠告して去っていく。

 

 残った三人はソウゴが動けるようになるまでずっと待っていた。

 

 

○○○

 

 

 夜。調理室。ハンバーグの種を一緒に作りながら、ソウゴは弱気になってしまった。

 

「スウォルツさん、今日で一緒に料理作るのもこれが最後かもしれないです」

 

「……何を言っている。校則を忘れたか」

 

 校則、校則、とぶつぶつ言い始めるソウゴにスウォルツは優しく言う。

 

「俺がこの一ヶ月間、校則を定め続けてきたのはお前達に生き残ってもらいたかったからだ」

 

「……確かに、そうですね」

 

「察しの悪い生徒もいるようだから最後の校則をここで定めよう。……『生き残れ』」

 

 意見は求めんぞ、と付け加えたスウォルツにソウゴははい、と言うことしかできなかった。

 

 これから作るハンバーグを食べるだろう人は、そのしょっぱさに違和感を覚えるかもしれない。申し訳ないけど許してほしかった。

 

 

 

 

 

 もはや朝夜で恒例行事になっているスウォルツと飛流の相談会。今回はどこか口数が減っていた。

 

「……Cの言葉が正しければ、ここに真実のソウゴはいない」

 

「門矢士にそれを伝えたところで止まるか?」

 

「なら実物を見せればいい」

 

「いや無理だろそれは」

 

「……この高校に五人ものソウゴが集まった。それは偶然か?」

 

「運命とでも言うんじゃ無いだろうな」

 

「だが類似例はある。お前もよく知っているはずだ」

 

「アナザーライダーの性質か」

 

 アナザーライダーはアナザーライダー同士惹かれ合う。それと類似することがソウゴ同士で起こっているのではないか。スウォルツはそう考えた。

 

「それにソウゴも残り少ない。舞台は整っている」

 

「運命サマがよだれ垂らして齧り付きそうなクライマックスだな」

 

「おっと、運命は信じないのではないのか?」

 

「そこまでは言ってない。信じたくないのが本当のところだ。

 ……ならせめて、運命の掌で全力で踊ってやろうぜ」

 

「そうするとしよう」

 

 二人はそれぞれの寝床を目指して散った。

 

 

 

 

 

 ソウゴとスウォルツがハンバーグを仕込んでいた同時刻。ソウゴBは寝床として与えられた空き教室からジープを見下ろしていた。

 

「チューだ、ミサ」

 

「なんやねんいきなり」

 

「戦争が始まるからな」

 

 奇襲攻撃で仕留められれば、これで終わる。できなければ終わるのは自分の命だ。ソウゴBは決断していた。他のライダーの計画に乗りたくは無かった。どちらにせよ確実性に欠けるなら、自分の意思で戦いたかった。

 

 その意思はミサには伝わらなかったようだ。

 

「……アホか」

 

 その後の投げキッスに愛は無かった。これでは勝てる可能性も尽きたも同然だった。

 

 ミサのことを考えないなんて、焦りすぎたか俺は。Bは開けていた窓を無言で閉めた。

 

「悪い」

 

 

 

 

 

 士はジープの運転席でカードを何回も何回も見続けていた。破壊してきた三人のジオウと、この世界に来る前に渡されたジオウ達のカード。後者は真実のソウゴの選定の結果だった。

 

「士」

 

「海東」

 

 しれっと後部座席に滑り込む大樹。約束は守ったよ、といつも通りの口調だ。

 

「だな。……なんでも聞いていいぞ」

 

「そうさせてもらうよ」

 

 そう言いながらも海東はその質問を口に出すのに時間をかけた。

 

「士はどうして、光写真館に戻らないんだい?」

 

 士は溜息を吐いた。誰にも話さないつもりだったが、お前にはしてもいいかもしれない。

 

「俺が大ショッカーの偉大なる大首領に返り咲いた時のことは覚えてるな?」

 

 海東は頷いた。忘れてはいない、いや忘れてやるもんか。

 

「あの時、夏みかんとユウスケには本当のことを話してたんだ。当然というべきか、反対された」

 

「喧嘩したんだ」

 

 いつものことだね、とは流せなかった。結果的に士は写真館を出ていって、それからずっと帰っていないのだから。

 

「一人で旅をしてる途中にウィザードの世界に喚ばれ、ますます足は遠くなった」

 

 仲直りできないまま時間だけが過ぎていく。

 

「紘汰や巧、翔太郎に晴人。平成ライダー達という仲間と一緒にバダンと戦ったことは、俺にとって救いだった」

 

 その際、仮面ライダー1号──本郷猛には「死に場所を探す旅をしてたんじゃないのか」と問われ、仮面ライダーZX──村雨良には「死に場所を探す旅が俺の生きる場所だと分かった」などと言った。

 

 実はそうだったのかもしれない。その一方で、自分の旅が終わることは無いだろうとも思っていた。

 

「きっかけはわからないが、俺は終わらない旅をしていていいのか迷うことがあった」

 

 その度に鳴滝や大樹に説得される。時には対話で。時には物理で。

 

 夏海やユウスケがどう思うか。会わなくなった期間が長くなって、想像すらできなくなってきて。

 

「俺の中で死への期待が燻ることもあった。だが俺が死にかける時は大体世界の危機ばかりだ。見過ごせなかった」

 

 そしてゼロワンの世界を旅した直後、ある存在がコンタクトを取ってきた。その身を犠牲に世界を救わないか、と。

 

 その時幸か不幸か、大樹は白ウォズに力を奪われていて、鳴滝はQuartzerの後処理を行なっていた。鳴滝が駆けつけた時には、士は既に最後の役割を引き受けていた。

 

「話が逸れたが、俺は写真館には戻らない。アイツらだって、自分の世界に戻ってるんじゃないか?」

 

「理由になってないよ、士。それは君の理由じゃないじゃないか」

 

「いや、理由にはなってる。要は積み重ねだ。時の重なりが俺達を阻んでる」

 

「……そんなことない、って言っても君は耳を傾けないだろうね」

 

「ああ。そしてお前は俺を邪魔できない。俺の死に場所である、この世界でな」

 

 そう言った士は大樹にカードを一枚投げる。

 

「やるよ。この世界のお宝だ」

 

「これは……」

 

「使えと言われて渡されたが、これが無くても問題ないからな」

 

 そう言い残して士は目を瞑った。

 

「そんなことないだろ」

 

 大樹はそう吐き捨てて、ジープから出て行った。

 

 

○○○

 

 

 翌日。ソウゴはいつもの屋台から外を見ていた。ゴロウはいつも通り金魚をすくっている。

 

「いつも来てくれてありがとう。でも、今日でここを閉めようと思ってるんだ」

 

 自分もポイとカップを持ってゴロウの隣に屈む。え、と声を漏らすゴロウにソウゴは続ける。

 

「それでさ、友達がいないって話だけど──」

 

 ソウゴは器用に金魚をすくう。ゴロウはいつも通り取りこぼしている。

 

「──俺じゃだめかな」

 

「……だめ」

 

 え、と次に声を漏らしたのはソウゴだった。無言で穴の空いたポイと水しか入っていないカップを返してゴロウはのっそりと教室を出て行く。

 

 入れ違いにゲイツが入ってくる。ゴロウのことをチラリと見ながらも、その彼が座っていたところに座る。

 

「ちょっと遊ばせてくれないか」

 

「どうしたの、馬鹿にしてたのに」

 

「……これで最後かもしれないからな」

 

「なわけないでしょ。っていうかここで遊んでて大丈夫なの?」

 

「飛流の放ったカッシーンが門矢士の動きは無いと報告してたから問題ないだろ」

 

 差し出されたポイとカップをゲイツは受け取り、金魚すくいをし始める。小学校三年生以来だ。

 

 意外とゲイツは熱中し、昼前までずっとやっていた。飛流が途中で輪投げをしに来たのにも気付かないほどに。

 

 

 

 

 

 食堂。三人のソウゴは同じテーブルで昼食を摂っている。昨日作ったハンバーグはソースがかかっていないが美味しかった。Eだけはプレーンシュガーのドーナツを食べていたけれど。

 

 三人は同時に食べ終え、食器を片付けようとする。その時、ミサが走ってやってきた。

 

「来たで、あのピンク色の悪魔が」

 

 三人は周りの生徒にお盆を渡して走り出した。ミサにマゼンタだと訂正する暇はなかった。

 

 途中で生徒会長選の用紙が配られているのを見た。良いおとりになってくれれば良いけど。ソウゴは柄にも無く祈った。

 

 

 

 

 

「やはりここに来たな、門矢士」

 

「常磐ソウゴを全員出してお前達はここに閉じこもれ。さもなくば生徒達は化物の餌食だ」

 

 昇降口の前で入口を開いたり閉じたりする士。ミサにソウゴ達を呼びに行かせ、スウォルツはそんな彼を冷ややかな目で睨む。

 

「貴様は変わったな」

 

「そっちこそ。意外とまともな教師やってんだな」

 

「おかげさまでな」

 

 そう皮肉りあっている間にソウゴ達はベランダに到着した。ゲイツと飛流、オーラは万が一のために生徒達を防衛する役割を担っている。

 

「来たな。さぁ、戦争を再開しよう」

 

〈KAMEN RIDE──〉

 

「……頼んだぞ」

 

 スウォルツの言葉に三人のソウゴは頷く。

 

「俺達が、最後の希望」

 

〈オールッ・ドラゴン!〉

 

「王たる者として、お前を討ち倒す。チューだミサ!」

 

「……はいよっ!」

 

〈タジャドルコンボ!〉

 

「……一ついいかな」

 

「何だ」

 

 ソウゴは、ディケイドがソウゴDを破壊した後に得た情報を思い出す。得たといっても、ソウゴCのパソコンに『真実のソウゴ』と打ち込んだことで開示されたものだ。

 

 

○○○

 

 

『ようやく辿り着いたかァ。そうや。真実のソウゴこそ、並行世界の融合を引き起こし俺達ソウゴを選定する黒幕や』

 

 Cの隠し部屋にはソウゴ三人とゲイツ、ミサ、ウール、オーラ、飛流、そしてスウォルツが集まっていた。部屋は九人が集まっても普通に広く、下手したらこの高校の生き残りぐらいならギリギリ入りそうな大きさだった。

 

『真実のソウゴは自称やな。本人曰く、自分こそが存在すべき唯一のソウゴっちゅうこっちゃ。自分でそないなこと言うなって話やろ?』

 

 冗談のようにCは言うが、誰も笑えなかった。ミサは俯いた。自分もBに対してそう思っていたから。

 

『……んで聞きたいのはそれが誰がやろ。実はこの目で見たんや』

 

 皆が更にパソコンに近寄る。一番前にいて操作していたソウゴは、腹が圧迫されてぐぇっと呻き声を漏らした。

 

 そして語られた真実のソウゴの正体に、皆絶句した。

 

 

○○○

 

 

「……俺達は真実のソウゴじゃない。真実のソウゴは高校生じゃなくて子供なんだ」

 

「吐くならもっとまともな嘘にしろ。それにたとえ本当だとしても、俺のやることは変わらない」

 

「……戦うしかないのか」

 

 自分のウォッチを起動しようとするソウゴの顔に、黄色と緑色の物が投げられる。オーズウォッチ。

 

「これって」

 

「無いよりはいいだろ。後で生きて返せよ」

 

「……わかった。君も生きて受け取ってね」

 

〈ジ・オウ!〉〈オーズ!〉

 

 変身。四人の声が重なる。バックルが閉じ、ドライバーが回った。

 

〈──DECADE!〉

 

〈ファイナルターイム!〉〈オール・ドォラゴォーン!〉

 

〈タカ!クジャク!コンドル!〉〈タッ・ジャドォルぅ〜!〉

 

〈タカ!トラ!バッタ!〉〈"オーズ"ぅ〜!〉

 

 二組の"オーズ"と一組の"ウィザード"の文字を模した複眼と七枚のライドプレートがぶつかり合い、変身者の頭部へはまっていく。

 

 変身完了。三人のジオウは跳び、各々の武器をディケイドに振りかざす。

 

〈ATTACK RIDE──MELON DEFENDER!〉

 

〈──GOURA GUARDNER!〉

 

〈──DEFEND!〉

 

 しかしトラクローZはメロンを模したメロンディフェンダーに、ジカンギレードは亀の甲羅を模したゴウラガードナーに、ドラゴヘルクローZは黄色の魔法陣に食い止められる。

 

 この程度か。仮面の下で士は笑う。オーズアーマーのジオウが叫ぶ。

 

「お願いします!」

 

 ディケイドの背後にオーロラが発生する。ディケイドはもがくが、三人のジオウはシールドはおろか自分達ごとオーロラに押し込んだ。

 

「……さて、ゲイツ達も行かせてやらねばな」

 

 スウォルツはジオウ達を見届けた後、校舎に入る。まっすぐ生徒会長選を行なっている教室に入る。そこに四人が待機していることになっている。ミサも既に合流しているはず。

 

「行くぞ二人──」

 

 スウォルツの声を悲鳴が遮る。生徒達を襲うのは、先程までいなかったはずの化物。

 六人は生徒に群がる化物を引き剥がしながら動き出す。廊下いっぱいに落ちた投票用紙で足を滑らせそうになるが、どうにか持ち堪える。

 

「どういうことだ! ちゃんと送ったんだろうな!?」

 

「しっかりと送ったとも! ならこれは……」

 

「真実のソウゴかもな……! 明光院は前に行け、殿は俺とコイツだ!」

 

 飛流がアナザーディエンドの力で喚び出したのは愛の伝道師・ラヴリカバグスター。しかしその態度は気怠げだ。

 

「なぁんだい君は。ボクは君みたいな男に従う義理は無いんだけどねぇ?」

 

「……じゃあ女になら従うんだ?」

 

「いや従うというか守るというか──」

 

 オーラの投げキッスにラヴリカは撃沈した。すかさず飛流は化物の鉤爪をその身体で防ぐ。

 

「……頼めるか」

 

「これが終わったらさっさと消しなさいよ」

 

「悪いな」

 

 ラヴリカという無敵の盾が手に入ったことで避難も順調に進み、生徒は皆冷蔵庫に入っていく。

 

 最後の一人になった時、その生徒はスウォルツに一枚の紙切れを渡す。

 

「……これは」

 

「よろしく、お願いします」

 

 生徒──ゴロウは、頭を下げて冷蔵庫に入っていった。ゲイツはその後ろ姿を見つめていた。

 

「……選挙の結果を伝えねばな」

 

「だがどうする、今はラヴリカだけで足止めできているがいつ突破されてもおかしくないぞ」

 

「なら俺が残ろう」

 

 人々を守るのが救世主だからな、と言ったのはゲイツ。私も、とオーラも続く。

 

「私がいなきゃ、あいつも働かないかもしれないし」

 

「ウチも残る。ソウゴは必ず戻ってくるから、その帰る場所を守らんとな!」

 

「よし、行くのは俺達ふた──」

 

「僕も連れてってください」

 

「ウール……」

 

 近寄ろうとするオーラをゲイツは止める。

 

「……良いだろう」

 

 三人をオーロラが包み込んで消し去った。その瞬間、扉からドンドンと激しい音が鳴る。数が増え、ラヴリカが対応できなくなってきている。

 

〈ゲイツ!〉

 

「お前ら、覚悟はできてるな!」

 

 ウォッチを起動したゲイツにオーラは勝気な笑みで、ミサはバースバスターを取り出すことで応えた。

 

「変身!」

 

〈ライダー・タイム!〉〈カメン"らいだー"ァ・ゲイツ……!〉

 

 扉を跳ね飛ばして我先にと争う化物に"らいだー"の文字を模す黄色の複眼が命中し、それが跳ね返って顔面に貼り付く。

 

 ゲイツはライダーに変身。そのままジカンザックスで化物に斬りかかる。

 

「ここから先は通さんッ!」

 

 

○○○

 

 

 ジオウ三人とディケイドが送られたのは大きな崖に面した荒地。化物は少ない。

 

 三対一であっても、ディケイドの強さは圧倒的だった。戦えば戦うほど消耗するばかり。

 

「アイツらを待ってる余裕はない、一気に決めるぞ!」

 

 タジャドルアーマーのジオウの言葉に反論はなかった。二人が同時にベルトを回す。

 

〈ギガスキャン!〉

 

〈フォーメーション!〉

 

 タイムブレークの音声が重なる。孔雀の羽を模したエネルギーボムが、四属性の力を秘めたドラゴンが、ディケイドに殺到し爆発する。

 

〈オォーズ!〉〈ギリギリスラァーッシュ!〉

 

 そしてジカンギレードの一閃が、空間ごと爆発を斬った。空間の裂け目が直ると、爆発は更に大きくなる。

 

「やった、か?」

 

 爆発が晴れる。ディケイドは無傷だった。

 

「アレでも歯が立たないのか……!?」

 

「流石に危なかったが……」

 

 バックルを開いてその中のカードを見せる。記されているのは『ATTACK RIDE HYPER MUTEKI』。

 

「これを使えば俺は十秒間だけ文字通りの無敵でな」

 

「そんなの、あり……?」

 

 オールドラゴンアーマーのジオウは戦意を失ったかのように崩れ落ちる。

 

〈FINAL ATTACK RIDE──S S S SNIPE!〉

 

 新たなカードが装填され、現れたのはコンバットゲーマ。ガトリングから放たれる炸裂光弾とミサイル弾がジオウ達を襲う。

 

 煙が消えると、アーマーが消えたジオウが一人とアーマーが健在なジオウが二人。全員倒れているが、ディケイドから近いのはアーマーが消えたジオウ。先程までオーズアーマーを装着していたジオウだった。ダメージが一番大きかったらしく、ほとんど動けていない。

 

「逃げろA!」

 

 痛む身体を押してタジャスピナーZやドラゴスカルZから火炎弾を放つも、ディケイドには軽く払われる程度で通じていない。

 

 ジオウも取り落としたジカンギレードをどうにか手繰り寄せようとするが届かない。

 

「終わりだ」

 

 無防備なジオウにマゼンタ色のオーラをまとったライドブッカーが振り下ろされる。

 

 二人のジオウは目を背ける。しかし、破壊音はいつまでも訪れることはなく。ライドブッカーはジオウの仮面スレスレで止まっていた。

 

 その瞬間、ジオウは動いた。ようやく手がジカンギレードに辿り着くと、それを横薙ぎしてからの突き。ライドブッカーの切先は逸れてディケイドは軽く後退した。その隙に二人のジオウは低空飛行でジオウを回収する。

 

 お互いの状態を確認しあっていると、ディケイドが手を見つめているのが見えた。

 

「またか。また俺は……」

 

 ディケイドが咆哮する。ブームボイスから放たれる高周波の弾丸に吹き飛ばされそうになりながらも、ジオウ達はそれぞれの得物を構えた。

 

「今度こそ……破壊してやる……!」

 

 ライドブッカーを振り上げた肩に上から小さな弾丸が命中する。しかし三人のジオウが撃ったものではない。

 

「常磐君!!」

 

「ツクヨミ!? 無事だったの!?」

 

 この場の全員が振り返ると、高場には本来の生徒会長である月読有日菜。そしてその傍らには──

 

「子供……?」

 

「まさかあの子は……」

 

「真実の、ソウゴ」

 

 この世界には高校生以上の存在しかあり得ない。もし子供がいるとしたら、それは真実のソウゴだと思え。Cからの伝言が頭を過ぎる。

 

 同じような結論をディケイドも頭の中で組み立てたらしく、ブッカーの切先を下げてジオウ達に近寄ってくる。

 

「まさかお前の言っていたことは──」

 

 刹那、子供から衝動波が広がって四人のライダーを襲った。

 





D:フォーゼ→ヤンキーだから
E:ウィザード→……クマちゃんを使い魔に見立てた?

 門矢士と海東大樹の関係性はこれくらいでいいと思っています。ここもここで難しかったですね。
 しれっと強化フォームアーマーも出ていますね。必殺技が原作通りすぎるのはソウゴとしてはどうなのだろう、と思いつつも理屈は用意してあります。
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