NEXT TIME 8人のジオウ!   作:祝井

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 インサイド・アウト。意味は裏返し。


EP FINAL「2018:インサイド・アウト」

 

 有日菜は男の子を背負い、開けた道を歩いていた。部活を引退し体育の授業も去年より減ったことで筋肉や体力は若干衰えていたが、やるしかなかった。

 

「ねえ、ほんとにこっちで合ってるの?」

 

「うーん」

 

 呑気に唸る男の子だったが、ふと後ろを向いて「お姉ちゃん!」と叫ぶ。有日菜もそっちを向いてみると、目に飛び込んできたのは跳び込んできた化物。

 

 引き離される有日菜と男の子。化物はまた仲間を呼び、有日菜と男の子の分断を加速させる。

 

 とりあえず有日菜は用意しておいたファイズフォンXで化物を怯ませて変身。

 

 化物達をばったばったと蹴り倒していくツクヨミだが、何体かの化物に連携されて右脚を何度も何度も引っ掻かれ、地面に転がされてしまう。無傷の脚で踏ん張ろうとしても、中腰が限界だ。

 

 仕方ない、とツクヨミはドライバーのウォッチを起動。

 

〈タイムジャック!〉

 

 ドライバーが回る。ツクヨミの手にエネルギーが集まって弾となる。化物達はそれを喰らって呆気なく爆散した。

 

 そのまま変身が解除されてしまい生身の身体を晒す有日菜。先程の技は強い代わりに体力を消耗してしまう技だが、早めにケリを付けないと男の子まで危なかった。

 

 有日菜は立とうとするができない。体力の消耗もあるが、問題は先程集中攻撃を受けた脚だ。黒いソックスを下ろすと、深い傷跡から血が流れていた。

 

「お姉ちゃん、大じ──」

 

「カバン取って!!」

 

 男の子は初めて聞く有日菜の大声に慄きながらも頷いて指示通りにする。男の子はカバンを有日菜に渡すと、その怪我の状態が初めてわかったのか騒ぎ出す。

 

「血、血だよお姉ちゃん! 血が出てるよ!」

 

「男の子でしょ! しっかりして!」

 

 泣き言に構ってはいられないと、叱咤しつつも有日菜は包帯を巻いていく。

 

「痛くない、痛いよね!」

 

 いや、泣き言ではないのか。この子は血が怖いんじゃなくて、私が傷ついたことが恐いんだ。

 

 その姿に、長い付き合いの友人をなんとなく思い出した。いつもゆるゆるでふわふわしているけれど、土壇場では他人を優先してしまうような危なっかしい友人。

 

「大丈夫だよ」

 

 安心して顔が緩む男の子の頭を有日菜は撫で続けた。

 

 

 

 

 

 夜。足を怪我した後は然程進めなかったが、幸いなことに再び化物と会うことはなかった。

 

 焚き火を起こし、有日菜と男の子はそれを囲んでお喋りをする。といってもほとんど話すのは有日菜で、男の子は完全に聞き役だった。

 

「ソウゴさんに、ゲイツさんか」

 

 他にも色んな人の話をしてもらったけど、男の子が気に入ったのはその二人との話だった。

 

「お姉ちゃんにはおもしろい友だちがいるんだね!」

 

「二人は特に個性的でね」

 

「ぼくも名前ほしいなぁ……」

 

 ぼくに名前付けてよ、という要望に有日菜は答えかねた。元の名前と乖離しすぎてても困るし。

 

 だが、「お姉ちゃんの友だちと同じ名前がいい!」と続けられた言葉にハードルが下がった。

 

「君は誰かっていわれると"ソウゴ"かな」

 

「じゃあ、今からぼくは"ソウゴ"だ!」

 

 ニコニコと笑う"ソウゴ"だったが、有日菜の脚の傷を見てからすぐに有日菜の身を案じた。

 

 そういうところが似てるんだよ。有日菜はそう心の中で言って、"ソウゴ"の頭を撫でた。

 

 

 

 

 

 ようやく森を抜け、開けた土地に出た。するとジオウがピンクのライダーに襲われているではないか。有日菜は迷いなくファイズフォンXで撃った。

 

「常磐君!!」

 

「ツクヨミ!? 無事だったの!?」

 

 わんやわんやと騒ぐ彼を指差して、"ソウゴ"に教える。

 

「彼が本当のソウゴよ」

 

「本当の、"ソウゴ"?」

 

 その時、"ソウゴ"の目が赤く光る。

 

「──思い出したぞ!!」

 

 その小さな身体から衝撃波が放たれ、近くにいた有日菜は倒れて気絶し、四人のライダー達の変身は解けてしまった。

 

「本当にお前が、真実のソウゴ……!?」

 

「そうだ。この娘が付けた名前は、合っている」

 

 幼く高い声から、老人の声へ変貌していく。

 

「私は、ソウゴ。真実のソウゴだ」

 

「ならば何故、子供の姿を……!?」

 

「私は王として、多くの世界を破壊し創造した。その結果力を消耗し、身体が子供へ退行を始めたのだ。

 私は新たな命を手に入れなければならない」

 

 それが、常磐ソウゴの選定の真実。

 

「そんなこと、させない」

 

 Eが立ち上がり、再びオールドラゴンウォッチを起動する。Bの「止せ!」の声を無視して再び変身した。

 

 回転しながらドラゴクローZを突き出す。しかしそれは届かない。真実のソウゴが手を翳すだけで太陽から圧縮された熱線が降り注ぎ、寸前でジオウを蒸発させたからだ。ウィザードアーマーが描かれたカードがふわりと落ちてくる。

 

「私は最も優れたソウゴを探すために、数多の次元のソウゴを集めた」

 

 士を睨みつける真実のソウゴ。

 

「ディケイドよ。候補者を減らした罪は重い。その報いはいずれ受けることになる」

 

「自分で減らすのはいいのか」

 

「元より、記憶を失う前は私が選定を行っていたからな。さて、残りは二人」

 

 ソウゴとBはお互いを見合った。また衝撃波が飛んでくるのかと思ったが、そんなことはなく。

 

「戦え。生き残った方が、私と一つになる」

 

 勝手にドライバーが腰に巻きつく。ソウゴは外そうとするができない。

 

「この世の王となる夢が、叶うぞ!」

 

 Bは震えながらウォッチを構える。それを見た士はライドブッカーに手をかけるが開かない。変形もしない。これ以上の邪魔はさせぬぞ、という声が聞こえてくるようだった。

 

「いいの? あれは俺達が目指す王様なの!?」

 

「俺の世界を救うには、あの力が必要だ。許せ」

 

 ウォッチを回し、ドライバーに装填する寸前。その時だった。

 

「待て!」

 

 オーロラが広がり、中からスウォルツと飛流、そしてウールが現れる。飛流はすぐに有日菜を回収しに走り出していた。

 

「お前達がいなくなった後、校内に化物が出た。その状況下で生徒会長選に投票した勇気ある者がいた」

 

 スウォルツはゴロウから渡された投票用紙を開いて読み上げる。ソウゴ、A。

 

「この一票を以て、生徒会長はソウゴAに決定する」

 

「……その一票は、一万票にも匹敵する。俺の負けだな」

 

「待てお前ら、何でこんな時に選挙なんか──」

 

「お前が最も優れたソウゴか」

 

「それでいいのか……」

 

 士は途方に暮れていた。流れがおかしい。

 

「ではその命を差し出してもらおう」

 

 真実のソウゴはどこからか黄金のドライバーを取り出して丹田に当てる。

 

「変身」

 

〈祝福の刻……!〉

 

 地面が割れ、巨大な時計を形作る。

 

〈最高!最善!〉

 

 真実のソウゴの幼い身体を黄金のバンドが何本も囲み、強制的に成長させていく。

 

〈最大!最強王!〉

 

 地面から流れるマグマが刺々しい"ライダー"の文字に固まり、顔面へ音を立ててはまっていく。

 

〈逢魔時王!!〉

 

 時の王者たるオーマジオウが今、この世界に降臨した。

 

「あれがオーマジオウ……!」

 

 オーマジオウが手を上げ、ソウゴに向けようとしたその時。一人の男が虚無から現れる。海東大樹だ。

 

「さて、出番だよ」

 

〈FINAL KAMEN RIDE──〉

 

 シアンカラーの召喚機がスパークを出しながら起動する。幾多もの幻影が重なり、オーマジオウの前に現れた者は。

 

〈──OHMA ZI-O〉

 

 もう一人のオーマジオウ。オーマジオウはオーマジオウの拳で後ずさる。受けた胸の装甲から火花が散る。

 

「なるほど。王としての在り方を放棄した、多くの"私"の内の一人か」

 

「アンタこそ、民の意思を省みない最低最悪の魔王だろ……!」

 

「あのような箱庭を創造した者の台詞ではないな。それに私はより多くの世界を良くしたいだけだ」

 

 皮肉り合う間にも二人のオーマジオウは殴り合う。倒れ立ち上がりまた拳を振り上げる。

 

 大樹の召喚したオーマジオウの声はもう片方のオーマジオウと同じではなく、ソウゴAと瓜二つだった。

 

 拳と拳がぶつかり合い、離れる。片方のオーマジオウの拳からはスパークが散り、もう片方は拳を軽く振った。

 

「ディエンドライバーでの召喚に加え、元々の力が私以上に弱まっているか。よく私の前に現れられたものだ」

 

「それでも世界を、民を救うのが王だ!」

 

〈ビルドの刻!〉〈ボルテック・フィニッシュ!〉

 

 黄金のグラフが現れてオーマジオウを捕らえる。その上を滑りながら蹴りの体勢に入るオーマジオウ。

 

 しかしオーマジオウはグラフを引きちぎって背を向ける。

 

〈カブトの刻!〉〈ライダーッ・キーック!〉

 

 跳び蹴りと回し蹴り、二つのキックが激突する。勝ったのは真実のソウゴが変身したオーマジオウ。召喚されたオーマジオウは吹っ飛んで地面に這いつくばる。

 

 脱力したオーマジオウはスパークを散らす脚をチラリと見ながらも、あらためてソウゴの方を向く。

 

「邪魔は入ったが、今度こそお前の命を貰おう」

 

 再び手をソウゴに向ける。ソウゴはそのプレッシャーで動けなかった。その他の面々も同様だ。動いたのはオーマジオウ、そして──

 

「ソウゴ先輩!」

 

 ──ウール。突然走り出したウールをスウォルツも飛流もBも止められない。ソウゴはウールに突き飛ばされ、地面を転がった。破壊音が荒地に響き、煙が広がる。

 

「ウール!!」

 

 煙が晴れる。そこにはウールの姿があった。無傷の。安堵しウールの元へ駆けるソウゴだったが、他の面々はそれどころではなかった。それは助かった本人も例外ではない。

 

 ウールの前には赤いドラゴンがいたのだ。おそらくコイツがウールを光弾から庇ったのだろう。

 

「ええっ!?」

 

「何だアレは……?」

 

「ドラグレッダーでも、ウィザードラゴンでもない……」

 

 ソウゴBの疑問に答えるわけではないだろうが、飛流は自分の知識と目の前の神獣を照らし合わせる。しかし、該当するような存在はいない。

 

 形容するならまるで王道ファンタジー小説にそのまま出てきそうなドラゴン。尻尾が剣になっているわけでもなく、魔法陣を背負っているわけでもない。

 

 すなわち、ライダーでは今までにいなかったタイプ。

 

 一方スウォルツは自分の手の中に収まっているものが光っていることに気づいた。

 

「まさか、な」

 

 ソウゴBと飛流の困惑をよそに赤いドラゴンは吼える。そしてオーマジオウの周囲を飛び回り、彼に炎を吹きかける。オーマジオウは思わず腕で庇う。

 

 そしてドラゴンはウールの掌に飛び込んでライドウォッチと化す。

 

「わっ!?」

 

〈セイバー!〉

 

 オーマジオウは少し焦げた腕を見る。即座に再生して黄金の輝きを取り戻す。とはいえ、オーマジオウにそのような傷を与えること自体が恐るべきことだ。

 

「……その力は危険だな」

 

 ウールの手の内のウォッチを見る。さて、新しい命と新しい障害。どちらを優先すべきだろうか。オーマジオウの暗中模索を手助けする者はいない。

 

 一方、オーマジオウの動きが止まったことをソウゴは見逃さない。

 

「スウォルツさん、飛流! あともう一人の俺!」

 

「何だ」

 

「ちょっと話したいので時間稼いでもらえませんか」

 

「分かった。ただし手短に済ませろ」

 

〈DECADE……!〉

 

「……やるか」

 

〈DIEND……!〉

 

 ソウゴの頼みに迷わずアナザーライダーとなるスウォルツ。飛流も溜息を吐きながら続く。

 

 しかしBは渋い顔だ。ソウゴは拾っていたオーズウォッチを見せる。

 

「約束、守ってくれないの?」

 

「それに敗者は勝者に従うべきだ」

 

「……そうだな、仕方ない」

 

 使いたくは無かったが、と紫と金のウォッチを取り出す。破壊者の力を守護者として使える自信は無かった。だが、やるしかない。

 

「……ねぇ、ウール──」

 

 ソウゴがウールに話しかけた時、不意にオーマジオウが動きだす。一跳びでソウゴ達の前に着地し、拳を振りかぶる。が、それはアナザーディケイドとアナザーディエンドにギリギリで受け止められる。

 

「……ほう」

 

 オーマジオウは感心したように声を漏らすが、驚いているのはアナザーディケイド、ディエンド両名も同じだった。

 

 理屈はわかる。先程のオーマジオウとの戦いとあのドラゴンの炎で、更にオーマジオウは力を消耗したのだろう。そしてスウォルツにはかつて吸収したオーマジオウの力の残滓がある。

 

 しかし、まさか無事に受け止められるとは。良くて腕、最悪自分の存在が犠牲になるだろうと思っていたのだが。

 

 とはいえ膠着はすぐに終わる。オーマジオウのもう片方の拳を突き出す。

 アナザーディケイドは無理を承知で片手を伸ばそうとするが、その直前に現れた手が拳を一瞬受け止め、ガラ空きになった胸部にパンチがヒット。オーマジオウは後ずさる。

 

〈恐竜王・"オーズ"ゥ!プ・トォ!ティラァ!!〉〈プテラ!トリケラ!ティラノ!〉

 

 拳を受け止めたのはジオウ・プトティラアーマー。そして__

 

〈KAMEN RIDE──ZERO-ONE!〉〈──A jump to the sky turns to a rider kick.〉

 

 パンチを入れたのはディケイドゼロワン。

 

「まさか貴様が助太刀するとはな」

 

「あの力なら真実のソウゴに勝てる可能性がある。なら今は守るしかない」

 

「それにしても、何だその姿は」

 

 アナザーディエンドの問いにディケイドは肩をすくめる。

 

「令和の象徴にして始まりのライダー。対オーマジオウの切札の一つってところだ。おい、来るぞ」

 

 

 

 

 

 ソウゴとウールは近距離で向き合っている。険しい表情のソウゴからウールは目を逸らさない。

 

「──何で庇おうとしたの、死んじゃうかもしれなかったんだよ!」

 

 ソウゴの叱責にウールは動じない。

 

「だって先輩が死んだら、これ読んで貰えないじゃないですか……!」

 

 ウールが差し出したのは、ラブレター。前貰ったものとはまた別のカラーリングのそれは、ソウゴの手に押しつけられる。

 

 書かれていたのはたった一行、『ずっと、一緒に。』と。

 

「……正直、僕はソウゴ先輩に恋しているのか分からないんです」

 

 オーラが断定したように、吊り橋効果なのかもしれない。

 

「でも、この想いは本当です」

 

 どんな関係であろうと、一緒に笑っていたい。

 

「……そっか。でも俺、不安なんだ」

 

「何がですか」

 

「ここ数日でさ、色んな俺に出会ったじゃん」

 

 王になりたいという欲望が強い自分。

 

 人を騙しながらも人のために力を使う自分。

 

 人を従えるために暴力を用いながらも、真の友を求める自分。

 

 可愛いと思いきや結構強かな自分。

 

 そして他人を、そして自分を躊躇なく犠牲にしておきながら痛みを感じない自分。更に彼は世界を良くしたいと言っていて。

 

「あんな魔王になっちゃって、自分勝手に皆のことを傷つけちゃうんじゃないかなって」

 

「そう思えるお前が、そんな最低最悪の魔王になるか」

 

 急に割り込んできたのは、門矢士。変身解除し転がってきていたのだ。

 

「確かに未来はわからないし、お前は間違った選択をするかもしれない。だがお前には友が、仲間がいる。

 そいつらと一緒なら、王道を歩もうが覇道を歩もうが最高最善の魔王になれる。未来を変えられる。……お前ならな」

 

 急に始まった熱弁。それに圧倒され、納得しながらも困惑は隠せない。だって会ったばっかりだしまともに話してないし。

 

「えっと……アンタは何なの?」

 

 俺は、と士は言い淀む。自分をどう形容すればいいか、少し迷った。

 

 まぁ、最期くらいはいつも通りでいいだろ。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えなくていい。俺の旅はここで終わるからな」

 

 旅は終わる、という言葉に不穏なものを感じながらも、ソウゴは宣言する。

 

「俺なるよ。ウールの想いが叶うような世界を創れる、最高最善の魔王に」

 

「ならまずは、あの最低最悪の魔王を倒さなくちゃな。ソウゴ」

 

「ああ」

 

〈ジ・オウ!〉

 

 ウォッチを起動し、ドライバーに装填。ドライバーのロックを外し、腕を大きく回す。

 

「変身!」

 

〈ライダー・タイム!〉

 

 腕を勢いよく振り落とし、ドライバーを回す。時計の針が回る。世界も回る。

 

 そして、あるべき場所で停止する。

 

〈カメェーン"ライダー"ァー!ジ・オーウ!〉

 

 "ライダー"の文字を模したピンクの複眼が仮面に音を立ててはまっていく。

 

「祝え!!」

 

 背後から聞こえる声に、ウールは振り向く。もう一つの崖の上にウォズが立っている。ウォズは片手に本を抱え、もう片方の手を大きく振り上げる。

 

「全ライダーの力を受け継ぎ、時空を越え、過去と未来をしろしめす時の王者!

 

 その名も仮面ライダージオウ。まさに生誕の瞬間である!」

 

「……ウォズに初めて祝ってもらった!」

 

「そうだね、我が魔王」

 

 きゃっきゃしているジオウにウールはウォッチを差し出す。

 

「これ、使ってください」

 

「ありがとう」

 

 受け取って見てみると、ウォッチに表示された西暦は2020。二年後の未来。

 それを横から覗いた士は内心でほう、と唸る。士にとってさえ未知のライダーだった。

 

 この力なら真実のソウゴを打倒できる。士は確信した。

 

 オーマジオウは三人を吹き飛ばしながらウォズを見据える。

 

「私を裏切るか、ウォズ」

 

「元より私の我が魔王は彼でしてね」

 

 頬を釣り上げたウォズはストールを伸ばし、化物に襲われかけたウールと有日菜を回収する。

 

「ツクヨミとウールをお願い!」

 

「お任せを」

 

〈ウォズッ!〉

 

「変身」

 

〈フューチャー・タイム!〉〈カメン"ライダー"ッ・ウォズ!ウォズ!!〉

 

 ウォズはライダーに変身、背後から忍び寄る化物にジカンデスピアを突き立てる。

 

 彼なら大丈夫だ、とジオウは視線をオーマジオウへ向ける。まだ心と身体は震えている。でも、逃げない。

 

 士はジオウの隣に立ち、懐から携帯端末を取り出す。もちろん、ただの携帯端末ではない。ディケイドが最強の力へ至るための秘宝。それがケータッチ21。

 

〈K-TOUCH 21!〉

 

「鳴滝、使わせてもらうぞ」

 

 士はケータッチ21に指を滑らせていく。それぞれのライダーズクレストは触れる度に輝いていって。

 

〈W!OOO!FOURZE!WIZERD!GAIM!DRIVE!GOAST!EX-AID!BUILD!ZI-O!ZERO-ONE!〉

 

 ドライバーからマゼンタ色のバックルを外し、代わりにケータッチ21を取り付ける。

 

〈FINAL KAMEN RIDE──DECADE COMPLETE 21!〉

 

「変身!」

 

 いつものように、士にいくつもの虚像が重なりディケイドへ変身。

 

 いつもならここで変身完了だが、今回は更にライドブッカーからカードが溢れ出し、それが新たな装甲とマントとなってディケイドに装着される。

 

 まるでカード屋のようなその姿は、ディケイドの物語の集大成。仮面ライダーディケイド・コンプリートフォーム21。

 

 先程戦っていた三人とともにジオウとディケイドは攻撃をしかける。が、オーマジオウはその場から動くことなくジオウとディケイド以外を吹き飛ばし、代わりに化物を何体か引き寄せる。

 

「お前達はこの者らと遊んでいるがいい」

 

 そう言うとオーマジオウは化物達にエネルギーを注ぎ込んでいく。化物達の筋肉は更に盛り上がり、体色は灰色から黄金になり、禍々しい角が一対生えてくる。変貌した化物はエネルギーの供給が終わるや否やアナザーディケイド、アナザーディエンド、プトティラアーマーのジオウに襲いかかる。

 

「これで邪魔者はいなくなった」

 

「俺は邪魔者じゃないのか?」

 

「貴様は特別だ。私が直々に罰を下すのだから」

 

「なるほどな」

 

 ジオウとディケイドは顔を見合わせて頷き、それぞれの得物でオーマジオウに斬りかかる。オーマジオウはそれを片手で防ぐ。斬る、防ぐ。斬る、防ぐ、衝撃波。

 

 吹き飛ばされたジオウは、ウールから渡されたウォッチを取り出す。

 

「だったらこれで──ッ!?」

 

 ドライバーに装填しようとするが、ウォッチが反発して入らない。

 

「入れッ、入れよ!」

 

 懇願も虚しく入らない。オーマジオウはディケイドの相手をしながら鼻を鳴らす。このままでは使えぬか。

 

 しょうがない、とディケイドは黄色のカードを取り出す。ずっと自分を支えてきた、自分のライダーズクレストが描かれたもの。

 

〈FINAL ATTACK RIDE──DE DE DE DECADE!〉

 

 跳んだディケイドは五枚の黄色のカードで作られた円を四つ通り抜ける。その蹴りはオーマジオウが咄嗟に張った時計型バリアを破り、本人にも若干のダメージを与える。

 

 隙ができた。ディケイドはすぐにジオウに近寄る。未だに悪戦苦闘中だった。

 

「これを使え」

 

「え?」

 

「それと一緒にな」

 

 投げ渡されたのはマゼンタカラーのライドウォッチ。形は基本的なものやグランドジオウ、ゲイツリバイブなどと異なっている。

 

 ジオウがキャッチしたのを見るとすぐに、ディケイドはオーマジオウの元へ駆けていった。

 

 ジオウはその指示の通り、ドライバーにディケイドウォッチを装填して回す。

 

〈アーマー・タァイム!〉〈"ディケイド"ォ〜!!〉

 

 ジオウ・ディケイドアーマー、継承。そしてウールから渡されたウォッチを更にディケイドウォッチに装填する。

 

〈ファイナルフォーム・タァイム!カ・カ・カ・カメェーンライダァー!〉

 

 ディケイドアーマーの顔と胸と両肩のモニターが変化する。顔は交差した二本の炎を複眼とした仮面が、右肩には"セイバー"、胸部から左肩にかけて"ブレイブドラゴン"の文字が表示される。

 

 未だ次々に現れる化物と戦っていたウォズはその姿を一目見ると声を張り上げる。

 

「祝え!!」

 

「えっまた祝うの!?」

 

「未知なるライダーの力を継承した時の王者、仮面ライダージオウ・ディケイドアーマーセイバーフォームが誕生した瞬間を!」

 

 本には載っていないので、アドリブである。

 

〈ライド"ヘイセイバー"!〉

 

 長剣、ライドヘイセイバーを手に喚び出して構えるジオウ。ウォズの祝福連発に少し困惑しつつもオーマジオウへ注意を戻す。

 

 ディケイドと組み合う背中に斬りかかる。ヘイセイバーは烈火をまとい、オーマジオウへ多大なダメージを与える。

 

「……予想以上の力だな」

 

 ディケイドを掌底で吹き飛ばし、ジオウの一手一手に注意する。ジオウの攻撃は当たらない。いずれオーマジオウは行動パターンを見切り、ジオウへの反撃を開始するだろう。

 

「ま、やっぱりそうなるか」

 

 ならやるしかないよな、とディケイドは言い訳するように呟いた。

 

〈ZERO-ONE!KAMEN RIDE──〉

 

 ケータッチ21のライダーズクレスト、その内の一つをタップ。すると黄色と赤色、二体のホッパーライダモデルが現れる。その二体はオーマジオウに跳びかかった後に融合し、一体のライダーへ変身していく。

 

〈──ZERO-TWO〉〈It's never over.〉

 

 ディケイドが召喚したのは、人とAIが共に歩む証、仮面ライダーゼロツー。

 

 ディケイドとゼロツーはすぐさまオーマジオウの元へ跳躍。一糸乱れぬ動きでオーマジオウに攻撃し、いつの間にか両腕を捕縛する。

 

「何をするつもりだ……!?」

 

「さっき言ったな、俺に報いを受けろと。今がその時だ!」

 

 オーマジオウはディケイドの行動の意図を悟ったのか、拘束された腕からエネルギーを放出して引き剥がそうとする。しかし、そうしてもディケイドとゼロツーは一瞬姿がブレるだけで元の位置に戻っている。

 

「ソウゴ、コイツを俺ごと倒せ!」

 

「俺ごとって……まさか」

 

 旅の終わりとは、そういうことだったのか。

 

「駄目だ! そんなことしなくたって──」

 

「そんなこと言ってる場合か!」

 

 ゼロツーの「複数の可能性を同一世界上に展開する能力」でどうにか捕らえ続けているが、それもいつまで持つか。

 

 膠着状態が続く中、光弾がジオウとオーマジオウの間を通過する。その方向を見ると、立っていたのは一人の少女。

 

「やめて常磐君! "ソウゴ"!!」

 

 有日菜だ。ファイズフォンXを震える手で構えている。ジオウもオーマジオウも思わずその姿に仮面の下で目を見開いた。

 

 未だ強化された化物に手こずっているアナザーディケイドは「アイツ……!」とすぐさま彼女の元へ駆け出す。ファイズフォンXを下げさせ、更に身体も下げさせようと踏ん張る。

 

「何をしている!」

 

「何なのあんた!!」

 

 あっ今の俺怪人じゃん。でもこの力持ってるのバレたくないしどうしよう。

 

 困ったアナザーディケイドは一瞬で言い訳を考え、アナザーディエンドを指差す。

 

「俺はだな、アイツが喚び出した怪人でな──」

 

「何でアナザーディエンドが!?」

 

「更に混乱させてどうすんだ!?」

 

 ごめん。アナザーディエンドの泣き言にアナザーディケイドは心の中で謝った。

 

「存分に戦えソウゴ! 勝てるのは今だけだ!!」

 

 最後にそれだけ言って、アナザーディケイドは有日菜を抑えるのに集中した。そうでもしないとキツい。変身するかもしれないし。

 

 更に悩みが深まるジオウ。

 

「お前、最高最善の魔王になるんだろ!!」

 

 ディケイドの再度の言葉。

 

「……わかった」

 

 左手の親指をディケイドライドウォッチのスターターに添える。

 

「物語の結末は、俺が決める」

 

 なんでか、ふと口から出てきた謎の言葉。その言葉に応えるべく、セイバーウォッチは輝いた。

 

〈カ・カ・カ・カメェーンライダァー!〉

 

 聞こえる音声に、ディケイドは頷く。そして足を更に踏ん張り──

 

〈FINAL ATTACK RIDE──ZE ZE ZE ZERO-TWO!〉

 

 バックルがカードを読み込み、ディケイドとゼロツーの足とホッパーライダモデルが一瞬重なる。踏ん張っていた足はオーマジオウを空へ蹴り上げる。

 

 ディケイドとゼロツーは空中のオーマジオウに何度も何度も蹴りを喰らわせる。反撃する暇も、ドライバーに触らせる暇もないほどの頻度で。

 

 そして最後に、ジオウが待つ方向へオーマジオウを蹴り押す。

 

〈ファイナルアタック・タイムブレェーイク!!〉

 

 ジオウはヘイセイバーをX字に振るい、炎の斬撃を放つ。その火炎はセイバーの複眼を形取り、オーマジオウに直撃する。

 

 二つの強力な必殺技をその身体で受け止めたオーマジオウは荒野を転がっていき──

 

 

○○○

 

 

 数十年ぶりに地面へと転がったオーマジオウ。その胸にあるのは怒りや悔しさではなく、納得だった。

 

「良くやった」

 

 おそらくあのソウゴには、自分が持たないものがあった。共に未来を歩む仲間。

 それは真実のソウゴが得られなかったもので、得なければならなかったもので。

 

「これでいい」

 

 それを持ち得ず、果てには他者からそれを奪った自分が負けるのは道理だった。なんと、自分の愚かなことよ。

 

「だが、忘れるな」

 

 気まぐれに、警告してやりたくなった。こんな最低最悪な魔王になるなと。だがそうなる可能性は満ちあふれているのだと。

 

「お前は、俺だ」

 

 柄にも合わない警告。そんな自分がおかしくて、笑ってしまう。笑っているうちに、限界が来て──

 

 

○○○

 

 

 ──言葉をいくつかと笑い声を残して、爆散した。同時に化物達も粒子に還っていく。

 

 有日菜は頬を濡らして崩れ落ちる。アナザーディケイドがそれに寄り添う。

 

 校舎で、荒野で化物達と戦っていた者達は歓喜する。ソウゴも変身解除し、ふぅと息を吐く。

 

「……どうしてだ」

 

 だが、その中で一人。喜びでも安堵でもなく、哀しみでもなく、一人だけ信じられないという顔をしている。真実のソウゴを打倒したことではない。もっと個人的なこと。

 

「どうして……!」

 

 ソウゴの肩が一人の男に掴まれる。門矢士。

 

「どうして俺を終わらせなかった……!!」

 

「いやさっきのはお前がヘタレただけ──」

 

「違う。あの時俺は本気で、奴と共に死ぬつもりだった」

 

 飛流の反論を静かに否定し、ソウゴが持っているウォッチを奪い取って鼻の先に突きつける。

 

「どうして俺の、ディケイドの物語の結末を変えた」

 

 ソウゴはウォッチを奪い返す。

 

「さっき言ってたじゃん。仲間がいる限り俺は最高最善の魔王になれるって。アンタも俺の仲間だ」

 

「お前を破壊しようとしたのにか。お前だけじゃない、他の生徒達だって巻き込もうとしたのにか」

 

「……それでもだよ」

 

 ソウゴは士から目を逸らさずに告げる。士はその力強さに目を逸らす。

 

 言いたくなかったが、と思いながらも士は俯いたまま最後の札を切る。

 

「俺が破壊されていれば。お前の世界もアイツの世界も、融合した世界全てが元通りになったのにか」

 

「やはりライダー大戦を再現するつもりだったのか」

 

 大体そんなところだ、と飛流に返す士。ライドブッカーを剣に変形させてソウゴに柄を差し出す。

 

「やるしかない。俺か世界か、二つに──」

 

「その必要は無いよ、俺」

 

 カラン、と軽い音がする。ライドブッカーが地面に落ちたのだ。

 

 急に現れてライドブッカーをはたき落としたのは、オーマジオウ。だが真実のソウゴではない。先程大樹が喚び出したオーマジオウだ。隣には大樹がいる。

 

「二つから一つを選ぶ必要はない。二つとも取れるんだから」

 

「元はと言えば、お前が──」

 

「話は後で。俺、セイバーウォッチを貸してくれる?」

 

 ソウゴはオーマジオウに言われた通り投げ渡す。何か、いける気がした。

 

「融合した二十の物語。彼らの結末は破滅じゃない」

 

〈セイバー!〉

 

 オーマジオウがウォッチを起動すると、落ちたままのライドブッカーからカードが十七枚飛び出していく。ソウゴとBからもカードが生成されて飛び出していく。

 

 二十枚のカードは一旦円になって回った後、遠く遠く飛び去っていった。

 

 すると光が一瞬世界を包みこみ、その直後に荒野が街へと戻っていく。

 

「これは……」

 

「戻った、のか」

 

「──そうみたいやなァ」

 

 その声は。その少しムカつく関西弁は。

 

「C……!」

 

「エニグマ改で見てきたけど、アンタの世界も、他の世界もみィんな元通りや」

 

「あっそうなんだ──ってええ!?」

 

「エニグマが復活しているだと……!?」

 

 飛流は頭を押さえてふらりと倒れそうになる。そんな主人に急に現れたカッシーンが肩を貸す。便利。

 

「それにしても、まさか世界の再生までできるとはな……」

 

「彼の助けでどうにかね」

 

 アナザーディケイドの声に応えたオーマジオウ。その手のひらの上のウォッチにヒビが入り、赤いドラゴン──ブレイブドラゴンへと姿を変える。ブレイブドラゴンは空に吠えて、滲むように現れた異世界へと消えていった。

 

 彼とはまた会えるだろう、遠くない未来で。

 

「これで良し、と言いたいところだけど」

 

 消滅するセイバーウォッチを見つめていたオーマジオウが声を上げる。

 

「もう一人、物語の結末を変えなくちゃいけない人がいる」

 

 オーマジオウの赤い視線の先にいたのは、先程まで若き自分と言い争っていた男。

 

「あなただ、門矢士」

 

「ソウゴのせいで変わったんじゃなかったか?」

 

「今の物語はね。でもあなたの心は変わってない。続いた物語の中、通りすがった世界でまた命を燃やし尽くしかねない」

 

 士は視線を逸らす。図星か。大樹は呆れたように溜息を吐く。

 

「だからさ、叱らせてもらうね」

 

 かつて叔父から受け取った言葉だった。

 

「寂しい時は、痩せ我慢せずにちゃんと寂しいって言いなよ。言う前から諦めるな! 仲間から、自分から逃げるなよ!」

 

 でもそれは今、自分の言葉だった。

 

「……お前が言えたことか」

 

 士が言いたいのは自分に命じた破壊への非難ではなく、彼が選んだ王道への犠牲。もちろんオーマジオウは言葉の意図をわかっていて。

 

「俺は良いんだよ、これで」

 

 ネガティブな言葉なのにポジティブに聞こえる不思議な口調だった。

 

 オーマジオウは時空に裂け目を入れる。その先に見えるのは古びた建物。ちょこんと置かれた小さな看板には『光写真館』。

 

 外堀を埋められた。

 

 だが士は最後まで抵抗するつもりだった。

 

「……元はと言えばお前がこの役割を与えたんだろ。『その身を犠牲に世界を救わないか』ってメッセージとともにな──」

 

「いや言ってないけどそんなこと」

 

「は?」

 

「え?」

 

 見つめ合う二人。片方は仮面で見えないが、双方ともに困惑の表情を浮かべていて。

 

「お前じゃなかったのか」

 

「元々士にやってもらおうとしたのは、真実のソウゴの探索と選定された"俺"達の残滓の回収だけだったから」

 

「ならどうしてお前のメッセンジャーは……」

 

「……これ以上俺の力が消耗するのを抑えようとしたのかもね」

 

 余計なお世話だ、とオーマジオウは吐き捨てた。自分の力よりも、仲間の命の方が大切なのはわかっていただろうに。

 

「これでわかってくれたと思うんだけど、俺は士に生きててほしいんだ」

 

「……傲慢だな、お前は」

 

「だって俺魔王だし」

 

「違いない」

 

 士はようやく笑って、時空の裂け目へと歩き出す。

 

 そしてマゼンタカラーのドライバーを取り出して腰に押し付けようとするが──

 

「ここまで来て逃げるのは良くないと思うな、士」

 

「またか! またお前は……!」

 

 ──その手にドライバーは無かった。その代わりに大樹の手に握られているのはディケイドウォッチ。

 

「取引はどうした!」

 

「何を言ってるんだい士、僕は君が写真館に帰る邪魔なんてしてないけど? ほら、王様君」

 

 大樹が蚊帳の外だったソウゴにウォッチを投げ渡すと、二つのウォッチは一つに融合する。

 

「二つのウォッチが……一つに……!?」

 

「それは士がまたこの世界に来れるようになったら、返してやってくれたまえ」

 

「海東ォ……!!」

 

「はいはい、行くよ」

 

「クソぉまだだ!」

 

 残された左手でケータッチ21を操作しようとする士。しかしその切り札も取り上げられる。

 

 持っていたのはチューリップハットの男だった。いつ現れたのかわからないその男は、士に笑いかける。

 

「鳴滝……」

 

「ディケイド、私が開発したケータッチ21は役に立ったかな?」

 

「ああ。だから返してく──」

 

「悪いが断ろう。君は夏海君やユウスケ君に会うべきだ」

 

「……四面楚歌だ」

 

 何を今更なことを、と鳴滝も大樹に加わる。

 

 じゃあね、と大樹は士のことを押しながら時空の裂け目へ消えていった。

 

 それを見届けたオーマジオウは長く息を吐き出した。これで俺のやるべきことはひとまず終わりだ。

 

「さて、俺も戻ろうか」

 

「待って!」

 

 背を向けたオーマジオウに呼びかけるソウゴ。

 

「俺もなれるかな、あなたみたいな最高最善の魔王に」

 

「…………どうかな。でも一つだけ言えることはある。

 俺みたいにならない未来を創ってくれよ」

 

 そう言い残して、オーマジオウは消えた。

 

 三人のソウゴは顔を見合わせる。その周りに、皆集まってくる。

 

「……とりあえず、片付けしよっか」

 

 

○○○

 

 

 校内及び校庭の片付けを終え、Cがシェルターも回収し終えたらすっかり夕焼けが綺麗な時間になった。それぞれの居場所に帰る時間だ。

 

 校門。エニグマ改に二台のライドストライカーを接続するC。Bとミサは荷物を括り付けている。ソウゴはBに近寄って、借りていたものを差し出した。

 

「これ、ありがとう」

 

 オーズウォッチを受け取ったBはソウゴの手を握って笑う。ソウゴも握り返した。

 

「出会えてよかった。もう一人の俺と。王とは何なのか、再確認できたしな」

 

「どうするの、これから」

 

「なるようになるさ。……ま、ミサがいればなんでもいい」

 

 そういうことや、とミサも快活に笑う。

 

「お前も挨拶ぐらいしろよ」

 

「これの調整めっちゃ大変なんやてェ……」

 

 作業を中断させられるC。頭を軽く掻きながらソウゴに向き合う。

 

「まぁなんつゥか、迷惑かけて悪かったなァ」

 

「でもCがいなかったら皆のこと守れなかったかもしれない。ありがとう」

 

「そりゃどォも」

 

 そういえばさ、とソウゴはふと湧いた疑問を問う。

 

「何でCって王様になりたいの?」

 

「決まっとるやろ、ラブアンドピースや」

 

 悪魔の科学者の一番弟子を名乗る人間らしからぬ台詞に、ソウゴは少し首を傾げる。それを気にせずCは続ける。

 

「科学の力で、愛と平和を胸に生きられる世界をビルドする。それが俺のなりたい王の形や」

 

「なれるといいね」

 

「ああ」

 

 Cは笑って、エニグマ改へ戻っていく。Bとミサは既に自分達のライドストライカーに跨っていた。

 

「もう行けるか?」

 

「お前が中断させたんやろ!? ……それにしてもニケツか、俺もそんなベストマッチなヤツ欲しいわァ」

 

 ぼやきながらも三分で調整を完了させるC。ヘルメット付けェ、と自身も被りながら二人に促す。

 

「じゃあな」

 

「またなァ」

 

 エニグマ改のブースターが火を吹き、三人は空へと飛んでいった。消えていくエニグマ改を見届けるソウゴの背中を、ゲイツと有日菜とウールは見ていた。三人は昇降口に繋がる長い階段の下側にいた。

 

「それにしても気になるなぁ。『お前は俺だ』っていう、真実のソウゴの最期の言葉」

 

 ウールの小さな呟きに、有日菜は小さな声で応える。

 

「……私には、戒めに聞こえた。俺みたいになるなって」

 

「どうだかな。……まぁ、安心しろ。ソウゴが最低最悪の魔王になるようだったら、俺が倒してやる」

 

「うん、頼むよ。救世主サマ」

 

 聞こえてたのか。三人は少し固まる。空気を変えるために真っ先にゲイツは絡みにいく。

 

「オイお前、愛と正義のタイムパトロールみたいにちょっと馬鹿にしただろ」

 

「いやしてないよ、本気だよ本気」

 

「お前そういうとこだぞ──」

 

 じゃれつく二人。ちょっと笑いながらその様子を見る二人。

 

 そんな四人を見るのはオーラ、スウォルツ、飛流。三人は階段の上側にいた。服装は学生服とスーツのままだ。

 

「……ウールは?」

 

「思い出さないなら、思い出さなくてもいいだろう」

 

 スウォルツは何を思っているのか、オーラにはわからなかった。

 

「これからお前達はどうするんだ」

 

「どうするって……」

 

「俺はとりあえず、年度いっぱいは教師を続けるつもりだ」

 

 スウォルツの言葉に飛流は眉を上げる。

 

「意外だな。タイムジャッカーに再就職するもんかと」

 

「教師もやり甲斐があってな。あとタイムジャッカーは、職業ではない」

 

「ほぉ……で、お前は?」

 

 オーラは答えを出せずううんと唸る。咄嗟にスウォルツがフォローに入る。

 

「まぁオーラは俺と違ってまだ高校生だ。進路はいくらでもある。おいおい考えればいいだろう」

 

「……教師みたいだな」

 

「みたいではなく教師だ」

 

「……教師みたい」

 

「お前まで言うのかオーラッ!?」

 

 こっちもこっちでわちゃわちゃしだす三人。

 

 そんな七人を見つめるのは昇降口の前にいるゴロウ、そして屋上にいるウォズ。ウォズは跳び降りてゴロウの隣に着地。ビビるゴロウにウォズは問う。

 

「混ざらなくて良いのかい?」

 

「……いい、です」

 

 ボソリと呟かれた返事にウォズはそうかい、と返して続ける。

 

「でも君には勇気がある。その使いどころは見極めた方がいい」

 

 そう言い残して、ウォズは主人の元へと馳せ参じた。ゴロウは少しその背中を見つめた後、決意したように頷いた。

 

 

 

 

 

「お腹空いたねー」

 

「ああ。特にツクヨミは早急に食べさせないとな」

 

「さっきちょっと食べたし大丈──」

 

 くぅ。有日菜のお腹が小さく鳴った。そりゃ当たり前である。むしろ普通に動けてるのがすごい。ライダーとはいえども。

 

「……付き合ってよツクヨミ。おじさん食べ切れないぐらい料理作りそうだし」

 

「……仕方ないなー、行ってあげる」

 

 よし、とソウゴとゲイツは目線を交わした。

 

「僕もいいですか?」

 

「もちろん。なら折角だし皆で食べない?」

 

「それはいいがどうする? 流石の順一郎さんも、こんなに大勢の料理をすぐには出せないだろ」

 

「バーベキューはどうだい、我が魔王」

 

「あ、ウォズ。来るの?」

 

「勿論だとも」

 

「タダ飯タカリに来やがって」

 

「そんなこと言わないの明光院君」

 

「……流石に食材は買ってこようかな」

 

 ぼやいたウォズの肩をスウォルツが叩く。

 

「なら俺とウォズで買い物に行っておこう。お前達は帰って準備してくれ」

 

「よーし、一ヶ月ぶりのごちそうだー!」

 

 こうしてソウゴ達八人はクジゴジ堂へ仲良く連れ立って行くのだった。

 

 順一郎から一日しか経ってないのを聞かされて、困惑したりほっとしたりしたのはまた別の話だ。

 














「なぁ」

 時空の狭間。Bの世界を目指す中、BはCに話しかけた。ミサはBの背中に抱きついて寝ていた。

「何や」

「どうしてあの時、お前は『またな』なんて言ったんだ?」

 並行世界はその名が示す通りそれぞれの世界は並行線。交わることはほとんどない。

「またAと会う未来がやってくる、そんな気がするんや」

「それだけか」

 Bの追求にCは真面目な顔をして話し始める。

「あのオーマジオウ──世界のソウゴとでもしとくかァ。アイツが気にかかるんや。
 多くの世界の破壊と創造に力を注いだ真実のソウゴ以上に弱体化している、らしい。何でやと思う?」

「……ただの世界の破壊と創造じゃないから、しか思いつかないな」

「なら破壊の後、どう創造したんやろなァ?」

 まさか、Cがオーマジオウを世界のソウゴと呼んだ理由は。

「まさかお前、あのオーマジオウが世界そのものとでも言いたいのか」

「ビンゴ。そりゃ部下も一人のライダーぐらいで済むなら生贄にしたくなるわなァ」

「そして、この事件で更に奴は弱体化した」

「そう。つまりあの世界に何があってもおかしくないっちゅうこっちゃ。現に並行世界から敵がわんさか来てるらしいで」

 聞く限りでもアナザーワールドの白ウォズ、フィーニス。そして真実のソウゴ。まだ行動を起こしていないだけで、まだいるかもしれない。

「なるほどな。そんな奴らが引き起こす大惨事の解決のために、俺達も参戦するってことか」

「まぁするやろ? 俺もするし」

「ああ。世界を救われた借りは世界を救って返す」

「そうこなくっちゃなァ」

 二人は顔を見合わせて笑う。いや笑い事じゃないな、とすぐに前を向く。それでもまた、笑ってしまうのを抑えられなかった。
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