NEXT TIME 8人のジオウ!   作:祝井

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EPilogue「2018:多重露光」

 

 真実のソウゴが引き起こした事件が解決してから二週間後。光ヶ森高校では無事に文化祭が行われることになった。

 

 高校最後の行事にソウゴ達は全力で取り組んだ。厳しくつらかった一ヶ月を取り戻すかのように。まぁ実際に取り戻せたのだが、言葉の綾である。

 

 そして当日。あの事件の時と同じ教室に、また同じように屋台が設置されていた。流石に予算は増えなかったが、出し物は二つ増えた。

 

 その一つは太鼓だ。ソウゴの「祭りといえば太鼓じゃない?」という言葉が発端となり、若干の協議がありつつも採用された。部屋の大きさを考えて小さめのものだ。なお盆踊りはしない。

 

 もう一つ、お面だ。一つ一つ手作り。ジオウやゲイツ、ウォズやツクヨミ、ヒリュウ。そしてディケイド。種類こそ多くはないがいいアクセントになった。余談だが、一つだけアナザーディケイドのお面が紛れている。誰が作ったかは言うまでもない。

 

 ソウゴとゲイツは皆よりも早めに来て最終チェックを行っていた。輪投げ、金魚すくい、と見ていって最後の一つでゲイツは溜息を吐く。

 

「これ置くなって散々言っただろ」

 

「だって豪華賞品みたいなの必要じゃん。絶対取れそうもないやつ」

 

 ゲイツがソウゴに詰め寄る。ゲイツが指差しているのはディケイドウォッチ。置かれているのは射的の棚、その頂点。

 

「それに固定してるし取れないよ」

 

「万が一倒れたらどうするんだ」

 

「じゃあゲイツやってみて」

 

「後悔しても知らんぞ」

 

 ゲイツは慣れた手つきで弾を込めて銃を構える。レジスタンス仕込みである。

 

 妙に様になってるなぁ、とソウゴは不思議に思った。

 

 ピンと張られた人差し指が曲がり、弾が射出される。中心に当たるがピクリとも動かない。

 

「……もう一回だ」

 

「お客さんと同じで五発までだからね」

 

「分かった」

 

 撃った。右端に命中するが倒れない。

 

 撃った。左端に命中するが倒れない。

 

 撃った撃った。二発ともディケイドの顔に命中するが倒れない。

 

「ほらね?」

 

 ドヤ顔にムカついたが倒れなかったのは事実。ぐぬぅ、とゲイツは唸る。どう固定したんだ。

 

 そこに有日菜とオーラ、ウールがやって来る。バッグを持っているので登校してそのまま来たようだ。

 

 おはよう、とそれぞれ挨拶する。その中でも注目を集めていたのはやはりディケイドウォッチだった。

 

「大丈夫なの、こんなことしちゃって」

 

「ゲイツだって落とせなかったし大丈夫だよ」

 

「どんな固定の仕方してるの……?」

 

 オーラがゲイツと同じくディケイドウォッチを落とそうと試みたり、皆で一緒に再度チェックをしたりしていると、最後の一人が現れる。

 

「お、おはようございます」

 

 山田ゴロウ。ソウゴがやっていたお祭りに唯一ずっと来ていた生徒。

 

 ソウゴは最初から彼を誘うつもりだったが、その前に彼からやって来た。九十度腰を折った。皆が驚き戸惑う中、最初に声をかけたのはウールだった。

 

「よろしくお願いします、先輩」

 

「……よろしくお願いします」

 

 そんなこんなで仲間入りである。

 

 ゴロウの担当は金魚すくい。挨拶を終えた後すぐに桶に近寄ってポイと器を確認。それが終わったら泳ぐ金魚達を眺めていた。

 

「……大丈夫なの?」

 

「いける気がする」

 

 準備やスウォルツの対処をしているうちに、時間はあっという間に過ぎた。

 

 チャイムが鳴る。さぁ、文化祭の始まりだ。

 

 

○○○

 

 

 最初に来たのは飛流とその友人達だった。いたのはソウゴとゲイツ、ゴロウ。

 

「ツトム久しぶりー」

 

「久しぶり、ソウゴ。……お、太鼓あるじゃん」

 

 軽く太鼓を叩いていると、飛流とアタルが輪投げをやっているのが見えた。輪投げて。

 

「ツトム、射的やろうぜ」

 

「より多く取った方が奢りな」

 

 しれっとゲームに持ち込みながら銃を取る。射的は久々だった。ここ数年は祭りに行っても太鼓をずっと見ているだけだったから。

 

「ならあのピンクのやつ六個分でいいか」

 

「いいぞ」

 

 タクヤも銃を取る。久々だ、と呟きが漏れる。最後に行ったのは十歳の時に姉さんとだった。

 

 二人は同時に撃った。一方はお菓子の箱に、片方は一番上の謎のピンク色に。どちらとも落ちない。

 

「一人五発だよー。あとそれピンクじゃなくてマゼンタね」

 

 マゼンタって何、と二人は顔を見合わせた後に撃った。お菓子の箱が落ちる。

 

 撃った。別の箱がぐらつく。マゼンタはピクリとも動かない。

 

 撃った。箱が落ちる。マゼンタはピクリとも動かない。

 

 撃った。更に箱が落ちる。マゼンタはピクリとも動かない。

 

 勝者──鼓屋ツトム。

 

「何だよあれ全然動かない……!?」

 

「よくあるだろそういうの」

 

 タクヤからワンコインを徴収しつつツトムはお菓子を受け取る。ソウゴにお金を渡しつつ飛流とアタルの方を見る。

 

 飛流は一枚の、アタルは五枚のお面を被っていた。もはやアタルのお面は頭ではなく首まで下がっていてお面の役割を果たせていない。

 

 それでもまだアタルはお面達を見つめていた。

 

「アタルすごい買ってんな……」

 

「オタク魂、なのかもな」

 

「いや紛れもないオタク魂だろ」

 

 飛流の呟きにタクヤはツッコむ。

 

「アイツ何悩んでんの?」

 

「もう一枚買うか買うまいか悩んでるらしい」

 

「どれ?」

 

「あれ」

 

 飛流が指差したのは他の一応ヒーローっぽいのとは全然違うお面。祭りで売っているというよりも変な店で売ってそうな禍々しいお面だった。悪鬼と呼ぶべきか、悪魔と呼ぶべきか。

 

「場違いすぎないかあのお面」

 

「でも買いたいなら買えばいいのにな」

 

「金が無いんだとさ。今使ったら明後日の食玩が買えないらしい」

 

「また争奪戦らしいから悩んでるってところか」

 

 しばらくするとアタルもやってきた。お面は、五枚。皆が肩をポンと叩く。お金貸して、と言わないのが良いところでありいじらしいところであり。

 

「よし、行こう」

 

 アタルは一番に切り出した。多分このままここにいたらこの瞬間の物欲に負ける。

 

 じゃあな。またね。お互いに手を振ったり振らなかったりして飛流達は去っていった。

 

 

 

「どうして握手をお願いされたのかな。ゲイツならともかくさ」

 

「……さぁな」

 

 

○○○

 

 

「ごめんくださーい」

 

 ゲイツが休憩中に来たのはセーラー服の少女だった。同年代に見えた。その顔を見てソウゴはぎょっとする。

 

 ソウゴBの最愛の女、久遠ミサに瓜二つだったからだ。もしかしたら並行同位体かもしれない。

 

「ウチ、顔に何か付いてます?」

 

「あっ、いや別に」

 

 ならええわ、と少女は快活に笑った。そして笑みをそのままにソウゴをジロジロ眺め始める。

 

「何ですか……?」

 

「ふふっ」

 

 少女の手が伸び、少し挙動不審なソウゴの顎の下を撫でる。

 

「かわいいなぁ」

 

「えっ──」

 

 少女の言動がソウゴの初恋センサーに反応、ソウゴの顔がみるみる赤くなる。腰が抜けて崩れ落ちてしまう。

 

「だ、大丈夫かいな!?」

 

「あ、ありがとう」

 

 差し伸べられた手を取って立ち上がる。手はすべすべだった。

 

「何かごめんなぁ。でもほんとかわいくて」

 

「えっと……ありがとうございます?」

 

 ツッコミはいなかった。飛流は帰ったしゴロウはそんなことできない。空気悪くしそうだし、とゴロウは思っている。

 

「ソウゴ、お前ちゃんとやってるか──ってどうした?」

 

 帰ってきたゲイツにゴロウが一連の流れをごにょごにょ。あー、とゲイツは納得したような声を出す。

 

「そうそう、ウチの名前は久遠ミサや。おおきに!」

 

「う、うん!」

 

 そうこうしているうちに少女──ミサは去っていった。

 

「……何しに来たんだろ」

 

「道聞きたかっただけ、らしいよ?」

 

「んなわけあるか!?」

 

「あと実家のお好み焼き屋の紹介してた。大阪の」

 

「二階でやれ!」

 

 なお補足しておくと、京都・大阪への修学旅行を控えた二年生の持ち場が二階なのである。

 

 

○○○

 

 

 その後ちょくちょく客が来たり来なかったりし、昼食を終えて午後。

 

 ウォズがやって来た。一人の子供を連れて。

 

「何だその子は」

 

「ここを探して迷っていたようでね」

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

「どういたしまして」

 

 ウォズは子供の頭を撫でると、部屋を見渡してお面を注視する。

 

 ライダーウォズのお面を見つけると、顔を綻ばせた。

 

「これをいただけるかな、我が魔王」

 

「うん。気に入ったの?」

 

「勿論だとも」

 

 お面を受け取ったウォズは早速それを着ける。

 

「ありがとう我が魔王。大切にするよ」

 

 そう言い残してウォズはストールで去っていった。もう少し遊んでいけばいいのに、とソウゴはぶーたれながらも彼が連れてきた子供の方を見る。子供は金魚を見つめていた。

 

 その視界に別のものが入ってくる。ポイとカップ。

 

「……どうぞ」

 

 子供はこくりと頷いて受け取る。椅子に座ってポイを構える。恐る恐るポイを沈め、持ち上げるが大きな穴が空いてしまう。

 

「__た、大切なのは」

 

 新しいポイを渡しながらゴロウは一語一語しっかり話す。

 

「勇気を出すこと」

 

「勇気……」

 

 子供は思いっきりポイを沈め持ち上げる。カップの中には、赤い金魚が。思わず拍手するゴロウ。

 

 そんな二人を見てソウゴは嬉しそうに笑った。

 

 と、その時。ちょっと大きな音がした。何かが落ちたような──

 

「あっ」

 

 振り向くと、ディケイドライドウォッチが無くなっていた。正確には落ちていた。

 

 急いで拾って言い訳をしようと撃ち落とした人物の方を向く。その顔を見て、ソウゴは目を見開く。

 

「まったく、こんなことに使いやがって」

 

 嫌味を言いながらも、彼は笑っている。

 

 後ろにいる連れであろう、白いコートの青年。オレンジのシャツの上に、緑色のチェック柄の薄い上着を羽織った青年。そして妙齢の女性。彼らも笑っている。

 

「返してもらうぞ、俺の物語を」

 

 差し出された掌に、ソウゴも笑ってそっとウォッチを置いた。親指がウォッチを起動して、封じられた力が元ある場所へ戻っていく。

 

「……良かった」

 

 門矢士にかけたのはそんな言葉だけだった。

 

 そんな言葉で十分だった。

 

 その言葉が聞こえたのか、士はマゼンタカラーのカメラを片手で構えた。カチリ、と小さな音が鳴る。

 

 レンズを通した常磐ソウゴの周りには、たくさんの仲間がいた。その中には士も混じっていて。

 

 また士は笑うと、自分のお面を買って仲間と一緒に去っていった。

 

 彼の旅は、終わらない。

 

 

○○○

 

 

 あれが仲間か。ジオウのお面を被った子供は金魚片手に思索する。

 

 あの様な尊いものを破壊してきたという自戒の苦しみと、その概念を良く知れた喜びとが共存している。

 

 何故自分が生を拾ったのかは未だ分からない。だが意味はあるに違いないのだから、と今日ここに来た。意味はあった。

 

 この生は罰だが祝福でもある。敗者には罰を、求める者には祝福を。

 

 この命がどこまで保つかはわからないが、来たる終わりまでは苦しみ、楽しませてもらおう。

 

「お前の描く新たな未来を魅せてもらおう。"俺"」

 





 ついに完結しましたね。まだカットシーンや間話がありますが。
 この作品は2021年の3月初めから4月末にかけて執筆されました。要素だけつまんで別作品を書く、という選択肢もあったのかもしれませんが、スウォルツ先生が良すぎたので書かざるを得ませんでした。

 では、「NEXT TIME 仮面ライダーツクヨミ、トゥルース」でいずれまた。
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