加古川飛流/アナザージオウIIが引き起こした歴史改変は修復され、常磐ソウゴはドライブを除いた全てのライドウォッチを手に入れた。
 時は満ちた。時を司る一族の末裔と歴史の管理者が今、激突する──!



このSSはPrivatterにも投稿しております。

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 EP43.5のつもりで書いたので、時系列的にはEP43と44の間です。


2058:ANOTHER DECADE×BARLCKXS

 

 クジゴジ堂。リビングでソウゴとゲイツはチェスを、ウォズはソファに寝転んで逢魔降臨暦を読み返している。ツクヨミは激辛料理にチャレンジに行っている。三人ももちろん誘われたが、メニューを見て全力で拒否した。食には目のないウォズでさえもだ。

 

 とにかく、四人は平和な日々を過ごしていた。スウォルツの脅威があるとはいえ、王達にも休息は必要である。

 

 そんな中、急にウォズが立ち上がる。

 

「どしたのウォズ」

 

「すまない我が魔王。……"我が魔王"から呼び出しだ」

 

「ウォズの我が魔王は俺だけど?」

 

「いや奴が言ってるのはオーマジオウだろ……」

 

 二人の疑問にウォズは答えず薄く笑う。

 

「夕食までには帰ってきますので」

 

 では、とそのままクジゴジ堂を出るウォズ。木々にまぎれて消えていく後ろ姿を玄関から眺めるソウゴとゲイツ。二人は顔を見合わせる。

 

「どうしたんだろうね、未来の俺」

 

「案外、スウォルツに焦ってるのかもしれんぞ」

 

「どーかなー」

 

「お前はどう思う、ジオウ」

 

「暇だったからじゃない?」

 

「それは今のお前だろう……チェスの続きやるぞ」

 

「はーい。……そういえばさ」

 

「どうした?」

 

「昨日のアレ、なんだったんだろうね」

 

 少し考え込んだ後、それに当たる出来事を思い出してああ、とゲイツは駒を動かした。

 

「確か長篠合戦だったか」

 

「それにクリムなんちゃら博士に詩島剛、だっけ」

 

「クリム・スタインベルトだ。仮面ライダードライブの生みの親の。しかし、どうして俺の姿が屛風に……」

 

「折角だし確かめに行っても良かったんじゃない?」

 

「馬鹿言え、歴史改変は御法度だ」

 

 今ゲイツがここにいるのもそうじゃないかな、と言いかけてやめた。現状はこのままでいいとソウゴは思っている。友達を失うのは嫌だった。駒を動かし、ゲイツの駒を取る。

 

「……ま、そうだよね。それにゲイツの絵も消えちゃったみたいだし」

 

「本当に謎だな……」

 

「もしかしたら、タイムパトロールみたいな組織が修正してくれたのかも!」

 

「かもな」

 

 ゲイツはそう言ってから駒を動かし、ソウゴの指を目で追った。

 

 

○○○

 

 

「この本によれば。

 歴史の管理者Quartzerの王、常磐SOUGO。彼には真の大魔王、オーマバールクスとなり、平成という時代をゼロからやり直す未来が待っていた──はずでしたが」

 

 普段よりも強く本を閉じ、ウォズは気を引き締める。

 

「昨日。我が魔王に何があったか、知らねばなるまい」

 

 とはいえ、ウォズの手は震えていたが。

 

 

 ──2019年。

 

 

 スウォルツはとある競技場へやって来ていた。常磐ソウゴの高校時代の友人がマラソンの大会に出場しているのを嗅ぎつけたからだ。

 

 掌のアナザーウォッチを弄びながら件の人物の出番を待つ。ついに来た。

 

 目的である普通の大学生の青年は走る、走る。追い抜き、追い抜き、そして。

 

 ゴールテープは切れなかった。崩れ落ち、泣き叫ぶ青年。

 

 その様子を見て不謹慎にもニヤリと笑うスウォルツ。即座に会場全体の時を止める。

 

「感謝するといい──」

 

 青年に近づき、手をかざす。

 

「俺が、お前の世界を創ろう」

 

 青年を灰色のオーロラカーテンが包み、可能性の世界──アナザーワールドへ連れてゆく。オーロラは青年ごと消えながら、代わりと言わんばかりに一人のダークライダーを喚び出す。

 

 喚び出されたのは、未来のドライブ・タイプネクスト。その力は一度悪に奪われ、父が取り戻した。しかし今はまた悪の元へ。

 

 そのダークライダーの名は、仮面ライダーダークドライブ。

 

「なるほど、丁度良い」

 

〈DRIVE……!〉

 

「お前の意見は求めん」

 

 掌のアナザーウォッチを起動してそのままそのダークドライブに埋め込む。多くのアナザーライダーに見られた拒絶反応はあまり見られない。

 

「今日からお前が、仮面ライダードライブだ」

 

 ダークドライブは二つのタイヤに押し潰され、事故者と事故車が融合したような異形であるアナザードライブへと変貌する。

 

〈DRIVE……!〉

 

「アナザーウォッチの中にデータは入っている。……やるべきことは分かるな?」

 

『──ええ。あの二人の抹殺、でしょ?』

 

 予想通りの声だ。女性の声で話すアナザードライブにスウォルツは満足気に頰を歪める。

 

「ならば、行ってくるがいい」

 

 スウォルツの命令に従い、アナザードライブは超スピードで駆け抜けていった。

 

「……さて、後は」

 

 これを一、二回繰り返せば良い。そうすれば常磐ソウゴは食いつくはずだ。そして──

 

 その未来を心に描きながら、スウォルツは競技場を去ろうとオーロラを喚び出す。

 

 が。

 

「これ以上お前の好きにはさせない」

 

 声が聞こえる。止まった時の中で動ける存在は限られている。その中でもこの状況で一番聞きたくなかった声だ。対策はしてあるとはいえ。

 

「……常磐SOUGO」

 

 そちらの"ときわそうご"が食いつくのは想定外だった。不機嫌そうに首をゴキリと鳴らし、声の方向を見る。

 

「俺が生きた時代の、過去の王が何の用だ」

 

「言っただろう、お前の好きにはさせないと。オーマジオウを誕生させるわけにはいかないからな」

 

「ならば力づくで止めてみせるがいい。それができる力があれば、だが」

 

 スウォルツが手を掲げる。二人をオーロラカーテンが包み、とある採石場へと転移させる。SOUGOは動じず、スウォルツを睨む。

 

「見せてやろう。俺が手に入れた力を」

 

 先程とはまた別のアナザーウォッチを取り出すスウォルツ。

 

 それと同時にSOUGOもジクウドライバーを取り出す。

 

「数多くの歴史改変。お前の所業って醜くないか?」

 

〈ジクウドライバー!〉

 

 ドライバーを丹田へと押し付け、彼もまた自分のウォッチを取り出す。

 

「俺が歴史の管理者の王として、お前を断罪してやろう」

 

〈バールクス!〉

 

「貴様のやっていることも大概だがな」

 

〈DECADE……!〉

 

 宣言したり煽ったりしながら自分のウォッチをそれぞれ起動し、それを自らの胸へと、ジクウドライバーへと装填する。

 

「──変身ッ!」

 

〈ライダー・タイム!〉

 

 ドライバーが回り、SOUGOの身体は白く強い光に包まれる。対象的にスウォルツの身体は闇に包まれる。

 

 "ライダー"の文字を模した複眼と21枚のライドプレートがぶつかり合い、変身者の元へ戻っていく。

 

 光が収まり、複眼が大きな音を立てて顔面に貼り付いていく。ライドプレートが刺さり、幻影が霧散していく。

 

〈カ・メェーン"ライダー"!バァルゥークゥース!〉

 

〈DECADE……!〉

 

 SOUGOが変身したのは黒いボディーに真っ赤な目、所々に金の時計を模した装飾が施されている仮面ライダー。創世王・仮面ライダーバールクス。

 

 スウォルツが変貌したのは悪魔の如き姿のマゼンタカラーなアナザーライダー。世界の創造者・アナザーディケイド。

 

 数秒見つめあった後、二体の異形は駆け出した。

 

 アナザーディケイドが振りかぶった拳を素早くガードするバールクス。アナザーディケイドはその後も蹴りを交えながら殴る、殴る。バールクスは回避する一方だったはずが、いつの間にかアナザーディケイドのパンチを掌で受け止める。

 

「何ッ!?」

 

「平成ライダーの力で俺に勝つことは不可能だ。何故か分かるか?」

 

 アナザーディケイドの胸部を赤く光る拳で殴り飛ばすバールクス。

 

「平成ライダー自体に意味は無い。それはアナザーライダーも同じこと」

 

「貴様には平成ライダーの力は通じないということか……」

 

「その通り。さぁ、幕引きとしよう……リボル剣!」

 

〈RX!〉

 

「リボルケイン……?」

 

 腕に携帯するウォッチを起動し、ジクウドライバーから長剣──リボル剣を喚び出すバールクス。それに対抗しようとアナザーディケイドは右拳から禍々しい色の光刃を生やす。

 

 バールクスが斬りかかる。光刃で防ぐ。お返しに蹴りを入れようとするが容易に避けられる。

 

 バールクスが体勢を立て直したところに斬りかかり、初めてダメージを与える。

 ほんの少し後退りしたバールクスはほう、と感心する。

 

「なるほど、王家の力か」

 

「貴様もこの力でなら倒すことができるだろう」

 

「かもな。だが、そんな力ごときで俺に勝てると思わないことだ!」

 

 バールクスの剣捌きが速くなっていく。対応しきれず、吹っ飛ばされて地面を転がる。

 

 絶体絶命。だがアナザーディケイドには秘策があった。

 

「ならばこうしよう」

 

 立ち上がりながらアナザーディケイドは空に手をかざす。オーロラが現れ、別の任務に就いていたジョウゲンとカゲンを吐き出した。

 

 起きた光景にSOUGOは仮面の下で目を見開いた。

 

「ここは、1575年では無い……」

 

「スタインベルトの屋敷でもない──って何で二人が?」

 

「何故その力が使える! 俺が封じたはずだ!」

 

「何故、何故だと? フハハハ、フハハハハハハ!!」

 

 困惑する部下二人の前で叫ぶバールクス。アナザーディケイドは高笑いした後に種明かしを始める。

 

「貴様の言うそんな力──王家の力。それでディケイドの力の一端、破壊の力を補強した! 貴様の力を打ち消すほどにな……!」

 

「何ィ……!?」

 

 驚きの視線でこちらを見つめてくるバールクスに構わず、アナザーディケイドは腰のバックルを左手で叩く。すると光刃が三枚に分裂する。

 アタックライド・スラッシュ。オリジナルのディケイドも多用した技である。

 

 そのままバールクスに不意打ち気味に斬りかかる。ギリギリのところで一撃目を防げたものの、二撃三撃でそのまま押し切られて吹っ飛ばされる。

 

「王よ! ……ジョウゲン!」

 

〈ゾンジス!〉

 

「ああ」

 

〈ザモナス!〉

 

 カゲンもジョウゲンもジクウドライバーを装着、各々のウォッチを素早く起動させる。

 

 アナザーディケイドに妨害する様子は無い。光刃をしまい、ただただこちらを見ているのみ。

 

「変身!」「変身」

 

 ライダータイムの音声が重なる。

 

 ドライバーが回り、カゲンの身体は緑色の淡い光に包まれる。ジョウゲンの身体からは爆風が吹き荒れる。

 バールクスのものとは形や色が違う"ライダー"の複眼が顔面に貼り付いていく。

 

〈カ・メェーン"ライダー"!ゾンジスゥ〜!〉

 

 カゲンが変身したのは緑色のバッタを模した異形に新興宗教の教祖のようなマントを羽織る仮面ライダー。超生命体・仮面ライダーゾンジス。

 

〈カ・メェーン"ライダー"!ザモナスゥ〜!〉

 

 ジョウゲンが変身したのは青と赤の二色の身体に翼のような肩マントを纏う仮面ライダー。野生と養殖のハイブリッド・仮面ライダーザモナス。

 

 獣のように唸るゾンジスが真っ先にアナザーディケイドへ襲いかかる。ザモナスはまず相手のやり方を見ることにした。

 

「スウォルツ、俺が殺してやる!」

 

「お前の相手は後だ」

 

 腰のバックルを左手で叩いて、分裂した右手から光弾を放つ。アタックライド・ブラストだ。

 大体は弾いたものの、残った一つにもろに当たってしまう。突進の勢いが衰える。

 

「お前達の相手はこいつらだ」

 

 オーロラからモノアイの忍者が大量に召喚される。仮面ライダー風魔が使役する忍者プレイヤーだ。

 彼らはゾンジスとバールクスに攻撃を仕掛ける。ザモナスはアナザーディケイドが直々に戦うようだ。

 

「まずは各個撃破ってことね」

 

「お前達の力はそれぞれ厄介だからな……複数で来られては勝ち目が無い」

 

「ならどうして俺達を喚び出したのかなぁ?」

 

「分かっているだろう。お前達の計画を破壊するためだ」

 

 仮面ライダードライブの力と歴史──すなわち真のドライブウォッチを常磐ソウゴに継承させる計画。SOUGOはスウォルツの妨害を阻止するおとりだったのだ。計画を確実に成功させるために。

 

「なーるほど。案外頭回るじゃん」

 

「それでもお前達への対策には骨が折れたが……」

 

 再び光刃を生やしてザモナスの腹を貫く。しかしザモナスは何の反応も示さない。密着しているアナザーディケイドを蹴り上げ、腹に大穴を空けたまま距離を取る。

 

〈アマゾンオメガ!〉

 

 ザモナスは腕のウォッチを起動し、治癒能力を向上させる。腹の穴はあっという間に塞がれた。

 

「ふーん、俺の再生能力には破壊の力は効かない感じ?」

 

 いやそんなことはないか、とアナザーディケイドの攻撃を捌きながら呟くザモナス。

 

「破壊の力はバールクスの力を抑え込むので精一杯ってところかな」

 

 舌打ちをするアナザーディケイド。

 

 そうだ。補強した、といえどもあの力を封じる程度。補強とその維持に50%の力を使っているが、残りを身体スペックの向上などに使用しているためそれ以上の補強は不可能。

 せめてディケイドの力が100%ならば、とは思うが無いものねだりをするわけにもいかない。最善を尽くすだけだ。

 

「どうしたんだい? まさか対策をしてないなんてことはねぇ?」

 

「無論、している」

 

 オーロラから白いフードを被ったダークライダーが喚び出される。

 

〈チェンジ・ナァウ……〉

 

 全てを犠牲にしてでも最後の希望である娘を取り戻そうとした白い魔法使い、仮面ライダーワイズマンだ。

 

〈チェイン・ナァウ……〉

 

「んっ!?」

 

 四方に現れた魔法陣から白い鎖が喚び出され、ザモナスの動きを封じる。

 

「こんなものッ……」

 

「だろうな。だがこれだけだと思わないことだ」

 

 アナザーディケイドの背後にオーロラが現れ、雪男のようなダークライダーを喚び出す。

 

 ギガント族の力が転用されたメカニカルライダー、仮面ライダーレイだ。

 

 レイはザモナスの腕に触れると、その掌から冷気を発射し始める。

 

「まっ、まさか……」

 

「お前の再生能力も、凍ってしまえば無意味なものとなる」

 

「このォ……!!」

 

〈チェイン・ナァウ……〉

 

〈イエス!ブリザァード!〉

 

 ザモナスはもがくが、更に鎖が追加されて動きがとれなくなる。みるみる凍っていく身体。腕から凍らされたためにボウガンどころか抵抗すらできない。

 

「……完全に凍ったか」

 

 氷像が出来上がると、アナザーディケイドは軽くコンコンと叩く。レイが下がったのを確認し、王家の力を脚部に集中させる。

 

「やめろォォォォォ!!」

 

「フンッ!!」

 

 未だ忍者プレイヤーに囲まれているバールクスの慟哭にも構わず、アナザーディケイドはザモナスに蹴りを入れる。

 

 氷像は呆気なく砕け散り、残ったのはジクウドライバーと四つのライドウォッチだけだった。そのライドウォッチも忍者プレイヤーに回収され、ジクウドライバーはワイズマンのエクスプロージョンで破壊される。

 

「ジョウゲン……!!」

 

「ハハハハハ! 次はどちらにしようか……」

 

 品定めでもするように二人を見るアナザーディケイド。

 その目に、ゾンジスの怒りが爆発する。

 

「俺、これを使う!!」

 

「……やむを得ん」

 

〈J!〉

 

 ゾンジスは腕のウォッチを起動し、無理矢理大地の精霊の全ての力を引き出す。そしてゾンジスは巨大化した。

 忍者プレイヤーの大半が潰され、バグスターウイルスの微粒子となって消失していく。

 

「次は奴か」

 

 アナザーディケイドはひとまずワイズマンとレイをバールクスの方へ向かわせ、自らはオーロラを召喚。オーロラからは二人のダークライダーが。

 

 一人は封印されたはずの特殊装甲強化服、仮面ライダーG4。

 

〈Complete.〉

 

 一人は多くの人間に力を与え狂わせた王の守護者、仮面ライダーデルタ。

 

「お前は、俺が潰す!」

 

「悪いが、お前の相手はこいつらだけで十分だ」

 

 バックルを叩く。するとアナザーディケイドの姿が消える。アタックライド・インビジブル。

 

 無機質に立つG4と静かに手をトン、トン、と叩き合わせるデルタ。アナザーディケイドは彼らにゾンジスの相手を任せようというのだ。

 

「ならお前達からだ!!」

 

 ゾンジスから繰り出される大振りな攻撃を、G4はギリギリのところで、デルタは悠々と避けていく。

 

「3821」

 

〈Jet Sliger. Come Closer.〉

 

 デルタはジェットスライガーを喚び出し、搭乗する。ゾンジスの周囲を飛び回って光弾をぶつける。

 

「グゥゥゥ……鬱陶しい奴め!!」

 

 G4はデルタがゾンジスを引き付けているうちに四連装対地ミサイル、ギガントの発射準備を行う。

 

「まずいッ!」

 

〈ロボ・ライダァー!〉

 

「ボルティック銃だァ!」

 

 それに気付いたバールクスは、残りの忍者プレイヤーとワイズマンとレイを一振りで切り伏せ、G4へ銃口を向ける。

 

 が、アナザーディケイドが姿を現し銃を持つ手を逸らす。

 

「お前ェ……!」

 

「そんなことさせるわけが無いだろう」

 

 その直後に、G4はギガントを構える。完了したのだ。その様子を見たデルタもジェットスライガーを操作、カウル部からミサイルを露出させる。

 

 そしてギガントから、ジェットスライガーから大量のミサイルが発射される。ゾンジスの巨体は煙に包まれる。

 

「カゲ──グッ」

 

 先程のお返しとばかりにワイズマンから膝蹴りからの三連エクスプロージョンを喰らい、地面に倒れるバールクス。

 

 煙が晴れる。残されていたのは、ジクウドライバーと四つのウォッチ。ウォッチを忍者プレイヤーが回収し、ジクウドライバーはデルタの手によって灰にされる。

 

「どうだ、常磐SOUGO。戦えるお前の配下はもういないぞ? ウォズとて、この世界に来れはしない。

 何より、奴の忠誠は貴様には向けられていない」

 

「貴様ァ……!!」

 

 立ち上がって怒りに震えるバールクスを嘲笑うアナザーディケイド。

 

「後は貴様を始末すれば──ッ!?」

 

 アナザーディケイドが目を見開く。

 

 その時、不思議なことが起こった。バールクスの身体が発光し、赤く染め上げられていく。複眼は緑色に変わる。

 

 面食らうのも無理は無いことだった。

 

「俺は怒りの王。バールクス……レッドシャドー」

 

「レッドシャドーだと……?」

 

 レッドシャドーはワイズマン、デルタにボルティック銃を撃ち込む。銃撃を受けた二人のダークライダーは即座に爆発した。

 

 その威力に少し怯みながらも、アナザーディケイドは鼻で笑う。

 

「馬鹿め、奴らを倒したところで──何?」

 

 オーロラを喚び出しても、肝心のライダーが現れない。そもそもあの二人に紐付けられたアナザーワールドの存在すら感知できない。

 

「まさか……」

 

「そうだ。奴らは俺が世界ごと舗装してやった」

 

「なるほど……ならば一対一としようじゃないか」

 

 大量のオーロラが残ったダークライダーや忍者プレイヤーを包み、この世界から連れ去っていく。

 

 何も無くなった採石場で、彼らは戦い始める。

 

「お前を殺せばあいつらは蘇る!」

 

「貴様を殺した先に……俺が君臨する未来がある!」

 

 殴って殴って蹴ってまた殴って斬って斬って撃って撃って増えて斬って消えて。力はレッドシャドーの方が上回っていた。

 

 アタックライド・イリュージョンで作り出した分身を取り込みながらアナザーディケイドは地面を転がる。

 

「オーマジオウに匹敵する力だと……ここまで強くなるとはァ……」

 

「これが王の力だ」

 

〈フィニッシュ・タイム!〉

 

 バールクスウォッチを必殺技待機状態に移行させ、構える。

 

「さらばだ、スウォルツ!」

 

 ドライバーが回り、バールクスは飛び上がる。

 

「なりそこないの王よッ!」

 

〈バールクス・タイムブレーク!〉

 

「ぬぅ……!」

 

 レッドシャドーの赤く光る蹴りが迫ってくる。バックルを叩き、自身の顔を模した巨大なバリアを発生させる。アタックライド・バリア。

 

 バリアに蹴りが激突し、火花を散らす。かなりの力を注ぎ込んだのか、中々突き破ることができない。

 

「ぬぉぉぉぉっ!!」

 

〈フィニッシュ・タイム!〉

 

「何だと!?」

 

 ならばとレッドシャドーはまたドライバーを操作する。ウォッチから更なるエネルギーが右脚へ補填される。

 

〈バールクス・タイムブレーク!〉

 

「とあぁぁぁぁぁっ!!」

 

 強化された蹴りは遂にバリアを突き破る。そしてその蹴りは──

 

「何ィ!?」

 

 地面へ衝突した。あまりにも威力が強かったため、足が地面に埋まって土煙が舞う。

 

 足音が聞こえる。アナザーディケイドのものに違いない。

 

「何故だ!?」

 

「それは後でだ」

 

 諭すようにアナザーディケイドは言い、バックルを両手で叩く。アナザーディケイドとレッドシャドーの間に21枚のカード状の禍々しいエネルギーが並ぶ。

 

 飛び上がったアナザーディケイドがカードを一枚一枚潜り抜ける。その度に力が増していく。

 ディメンションキック。ディケイドの必殺技。必ず殺すための技。

 

 それがレッドシャドーに叩き込まれる。巨大な岩壁まで吹っ飛ばされ、埋まる。その衝撃からかレッドシャドーはバールクスに戻ってしまう。

 

「ぐぅッ……!」

 

「やれ」

 

 その周囲にオーロラが現れ、忍者プレイヤーが四体現れる。バールクスに群がり、腕からウォッチをもぎ取るものが三体と、ドライバーからもぎ取ろうとするものが一体。

 

 バールクスは岩壁から無理矢理脱出し、ドライバーにへばり付く忍者プレイヤーをパンチ一発で爆散させる。

 他は倒せなかったが、アナザーディケイドを倒せれば問題は無い。そう考えてアナザーディケイドの方へ駆けようとするが──

 

「何ィ……?」

 

 変身が解除されてしまう。腰のドライバーにはウォッチが無い。力が抜け倒れ込んでしまう。

 

「答え合わせを始めよう。まずは、何故お前の攻撃は俺に当たらなかったのか」

 

 アナザーディケイドは自分の横にオーロラを発生させ、四体の忍者プレイヤーを喚び出す。それぞれ二個ウォッチを持っている。

 

「バリアの下にこれを展開させておいた」

 

「なるほど、な……」

 

「切り札は取っておくものだろう。そして何故お前のウォッチが消え、変身が解除されたのか」

 

 またオーロラを発生させ、三体の忍者プレイヤーと一人のダークライダーを喚び出す。

 

〈闇の力ァ……!悪い奴らァッ……!〉

 

 大帝の息子であり全人類を自らと同じ存在へ引き摺り下ろそうとした死霊、仮面ライダーダークゴースト。

 

 ダークゴーストはバールクスウォッチをアナザーディケイドに手渡す。

 

「ご苦労」

 

「そういうことか……!」

 

「ああ。……まさか貴様がこいつに霊体化能力があるのを知っているとは思わなかったが」

 

 さて、とアナザーディケイドは掌のバールクスウォッチを強く握る。

 

「門矢士はディケイドの力でゴーストウォッチを破壊していたが……」

 

「やめろ……」

 

「同じ力を持つ俺にできないことは無いだろう」

 

「やめろッ!!」

 

 更に強く握りしめ、破壊の力を注ぎ込む。しかし壊れない。

 

「あの力が働いているということか」

 

 想定内だ、とアナザーディケイドは小さなオーロラを喚び出す。忍者プレイヤー達がライドウォッチを次々に放り込んでいく。

 

「これは適当な並行世界へと繋がっていてな。俺以外が通るのは不可能な道だ」

 

 そしてアナザーディケイドは、バールクスウォッチをSOUGOにこれ見よがしに見せびらかした後オーロラに落とした。

 

「これで貴様は、仮面ライダーでは無くなった。それに、もはやその傷では生きるのも難しいだろう?」

 

 SOUGOの身体はボロボロだった。戦闘での傷は勿論だが、レッドシャドーの力による負荷もあった。

 

「指を咥えて見ているがいい。俺の覇道を!」

 

 見届けるのは不可能だろうがな、と付け足してアナザーディケイドとダークライダー達は消えていった。

 

「我が魔王!」

 

 それと代わるように現れたのは部下であるQuartzer達だった。勿論ウォズはいない。

 

「ご無──」

 

 声をかけたQ-YEAHが凍りつく。Q-DAICHIがSOUGOの傷を見て目を見開く。他のメンバーも同じ気持ちだった。

 

「無事とは、言い、がたいな」

 

 息も絶え絶えに喋るSOUGO。Q-TOMOとQ-KENZOがSOUGOを丁寧に持ち上げる。

 

「ジョウゲン様とカゲン様は……」

 

「殺、された。スウォルツに──」

 

 Q-YORIの問いに答えようとするが、血を吐いてむせてしまう。終わりが近づいていた。

 

 ふと、スウォルツのある言葉を思い出した。

 

『何より、奴の忠誠は貴様には向けられていない』

 

 その忠誠は、常磐ソウゴに向けられているのだろう。ならば。

 

 SOUGOは震える手でジクウドライバーのロックを外し、Q-KIMIに渡す。

 

「お前達。ウォズに伝えろ──」

 

 

○○○

 

 

 ツクヨミもウォズも無事帰ってきた夕食の後のこと。

 

「えっウォズどうしたのそれ?」

 

「ジオウが壊したのか?」

 

「いや壊してないし」

 

「……ああ、これか。"我が魔王"から賜ったものでね。少々汚れているから拭いているところさ」

 

「だからってそれで拭くの?」

 

 ウォズはジクウドライバーをいつものストールで磨いている。傷だらけのドライバーは少しずつ綺麗になっていく。

 

「そういえば結局、未来の俺はどんな用事だったわけ?」

 

「……スウォルツの野望を阻止せよとのことでして」

 

「ゲイツ当たったね!」

 

「お前のよりかは当たりやすいだろ」

 

「それはどうかなぁ。だって俺だし」

 

「そりゃそうだが……」

 

「二人は何の話してるのよ?」

 

「ソウゴ君達ー!」

 

 奥から叔父さん、常磐順一郎の声がする。

 

「何、叔父さーん!」

 

「お風呂沸いたから! 入っちゃって!」

 

「分かった!」

 

 じゃあ俺からね、とソウゴは去って行く。三人とも異論は無かった。

 

「それにしても、お前どれだけこのドライバーを持っているんだ」

 

「確かに気になるわね……」

 

「はは、いくらでもあるさ」

 

 適当にそう答え、磨くのを再開する。

 

「──嘘だな。これが最後の一つだろう」

 

「どうしてバレるんだろうか……」

 

 ウォズが少し悲しげな顔をしていたことをゲイツとツクヨミは指摘しなかった。

 

 

 

 

 後にこのドライバーが最後の平成ライダーの誕生に使われることは、誰にもわからなかった。

 

 

○○○

 

 

「それで……我が魔王に何が?」

 

「我が魔王はタイムジャッカー・スウォルツによって大きな傷を負われた」

 

「その傷は癒えることは無い」

 

「命は今にも消えかけている」

 

「そう、ですか」

 

 変わってしまった本のあらすじを見て覚悟していた。あらすじは、常磐SOUGOのものから、いつも語っている常磐ソウゴのものへと変わっていた。

 

「それで私達は──」

 

「我が魔王がお前に最期の使命を下された」

 

「『常磐ソウゴと共にスウォルツの野望を打ち砕け』」

 

「『それが終わった暁には、お前は自由だ』と」

 

「自由……? 私はQuartzer以外の何者にも──」

 

「いや、お前は"ウォズ"だ」

 

 その言葉が指す意味は分かっていた。

 

「……承知いたしました。我が魔王、"ときわそうご"に誓って、必ず完遂致しましょう──」

 

 

○○○

 

 

 それはそれとして。

 

「ねえゲイツ」

 

「どうしたツクヨミ?」

 

「これ一緒に見ない?」

 

 帰りに借りてきたんだけど、とツクヨミが取り出したのはDVD。『怪談教室』とおどろおどろしいフォントの赤文字のタイトルが載っている。

 

「それはいいが風呂に入って歯磨きをした後にしないか?」

 

「そうね!」

 

「なら早速歯を磨くぞ」

 

「ええ」

 

「……まるで兄妹みたいだね」

 

「何か言ったかウォズ?」

 

「楽しむといい、と。未来でそういうのは見れなかったからね」

 

「……ああ。楽しませてもらうさ」

 

「ウォズは見ないの?」

 

「私は遠慮させてもらおう」

 

 歯磨きをしに行く二人を見送り、ウォズはふと出てきた疑問を呟く。

 

「ゲイツ君ってお化けとかが苦手だったような……?」

 

 まぁ流石に克服してるか、とベルト磨きを再開した。

 

 

○○○

 

 

「やぁ、スウォルツ氏。私に何の用かな?」

 

 採石場から去った後、スウォルツはアナザーワールドの白ウォズを喚び出していた。本人に聞くところによると、明光院ゲイツでは無く自らが救世主となった世界とのこと。

 

「お前にやってもらいたいことがある」

 

 スウォルツはブランクウォッチを白ウォズに渡す。疑りつつも白ウォズはそれを受け取った。

 

「海東大樹。仮面ライダーディエンドの力を奪え」

 

「なるほど。君が分け与えた王家の力を回収したいわけだ」

 

「その通り。ディエンドの力は好きにして構わん」

 

「了解したよ」

 

 白ウォズは未来ノートを取り出して去って行った。

 

 

 

 

 アポカリプス後にこの白ウォズがディエンドの力を奪い、普通の日常を過ごしていた明光院景都達に牙を剥くことは、誰にもわからなかった。

 

 

 

○○○

 

 

 ──2019年7月27日。常磐SOUGOがスウォルツを討ち、オーマの日を引き起こした世界線にて。

 

 活気に満ちた街で、一人裏路地で陰鬱に生きている人間がいた。

 

「常磐ソウゴぉ……」

 

 加古川飛流だった。彼はアナザージオウIIの力を失った後に平成舗装へと巻き込まれた。

 そして彼を含むこの世界の人間全てを救ったのは常磐ソウゴだった。

 

 飛流にはそれが許せなかった。

 

 俺とお前は同じはずなのに。何故お前は孤独じゃない。何故お前は最高最善の魔王となった。

 

 そう恨み辛みを言い続ける人間に、誰も救いの手を伸ばす者はいなかった。

 

 ──今までは。

 

「痛って」

 

 いきなり何かが頭に当たった。見上げてみると、空に現れた灰色のオーロラからたくさんのウォッチが降り注いでいるではないか。

 

 更に当たる前に飛流は横へ退避する。音を立てながら地面に落ちるウォッチの一つを拾ってみる。

 

「これは……」

 

 常磐ソウゴが戦っていた相手のウォッチ。バールクスウォッチだった。

 

 他にも見てみようと拾ってみると、一つだけチカチカと点滅しているものがある。ザモナスウォッチだ。

 

 ザモナスウォッチは飛流の手を離れ、ふよふよと浮かんで去って行く。

 

 急いで追いかけると、ウォッチはとある廃工場で止まった。何かがあるかもしれない。そう思って侵入してみる。全身真っ黒な男と全身真っ白な中性的な女がいたが、気にしない。

 

「フィーニス、誰か来たぞ」「何だいあの少年」「……まぁいい」「良くないだろ」

 

 そしてあったのは一個のジクウドライバーだった。飛流は迷わず手を伸ばした。

 

「ティード、彼を止めなくていいのかい?」「普通の人間に使えるわけが無いだろう。それに罠があったら、あの男が対象となるから有益しか無い」「……どうしてボクはこんなのと組んだんだろうね」

 

 掴む。掴めた。そのまま丹田へと押しつける。

 

〈ジクウドライバー!〉

 

「は?」「え?」

 

 最初に手にしたウォッチを起動し、装填する。

 

〈バールクス!〉

 

「……変身」

 

「……バールクスだと?」「これはヤバいんじゃないかな」

 

〈ライダー・タイム!〉

 

〈カ・メェーン"ライダー"! バァルゥークゥース!〉

 

 ドライバーが回り、飛流は仮面ライダーバールクスへと変身した。

 

「この力は……あの時とは比じゃない……!!」

 

 歓喜する飛流、否バールクス。二人は逃げる準備をしていた。

 

「この力でなら、常磐ソウゴへ復讐を果たせる……!!」

 

 二人は工場の扉を静かに開けようとしていた。

 

「なぁ」

 

 駄目だった。

 

「な、何でしょうか」「……何だ?」

 

「お前達はどうしてこれが欲しかったんだ?」

 

 バレてる。顔を見合わせた二人は、素直に告白することにした。

 

「仮面ライダーってのは悪の兵器だろう?」

 

「クウガ以来数多のライダーが存在してきた。だがその歴史は間違っていたと言うべきだ」

 

 早口で捲し立てる二人。特にティードがひどい。

 

「新時代の1号として、人類を征──」

 

「俺が歴史を創り直しィ……君り──」

 

「長い」

 

〈ゾンジス!〉

 

〈ザモナス!〉

 

 ゔっ、と二人の喉から声が漏れ出た。

 

 バールクスはゾンジスウォッチをフィーニスに、ザモナスウォッチをティードに埋め込む。フィーニスもティードも拒絶反応を起こす。ティードなんて吐きそうな顔をしている。

 

〈カ・メェーン"ライダー"!ゾンジスゥ〜!〉

 

〈カ・メェーン"ライダー"!ザモナスゥ〜!〉

 

 二人は無事仮面ライダーの姿となった。ただしジクウドライバーは巻いていないが。

 

「さぁ、復讐の始まりだ。常磐ソウゴへの。平成への!!」

 

 加古川飛流は笑い続ける。あらゆるものを巻き込んで、空虚に笑い続ける──

 





 本編、OQ、マジェスティ、HBD、ファイナルステージ、全てを補完したかった作品。ディケ館・7ジオと小説は書いた当時(2020年6月)は存在のかけらも無かったんや……
 あとスウォルツがごとき扱いされてた風潮がそんなに好きではなくてね……入念に準備さえすればSOUGOにも勝てるよってことで。OQの時はディケイドの力が無かったか、あるにしても準備する時間すら与えられずに始末されたんじゃないかなと。
 ちなみに拙作「ヒリュウ、ファースト」の前日譚の一つでもあります。クォーツァーから解放されたウォズはここから来ていたりするのです。
 では、いずれまた。次の作品でお会いしましょう。

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