夜も更け、夜行性モンスターたちが盛んに活動する時刻。
クラウドはチョコボ車から降り立ち、目的の地を眺めた。
「じゃあな、坊主。」
「おじさん、ありがとな」
ここはコスモキャニオン。
古より研究が進められてきた学問、星命学が盛んで、星の守護戦士たる人語操る赤獅子に守られた村だ。
起伏激しい地形を利用し、断崖絶壁にほんの少し人の手が加えられ、居をかまえた独自の文化を築いた小さな村。
石や煉瓦を積み上げ外から塗り固めて作られるニブルヘイムの住居とは違い、この村の住居はまるで移動民族のそれのような作りだ。
決して数の多くないそれらは大地だけでなく、長い梯子のかけられた崖の上にも点々と見られ、広場には不思議な色合いの炎が灯されていた。
コスモキャニオンの象徴、コスモキャンドルだ。
一年中絶やされる事のないその炎はかつて一度だけ消えたことがある。
その時訪れた災厄はまだこの村の人々の記憶に新しく、そのためキャンドルが消えた日は災いが訪れるとされ、厳重な管理の下絶やされないよう細心の注意が払われている。
クラウドは行商人と別れると、その景色に目を奪われていた。
「キミ、お父さんかお母さんは?」
すると赤い大きな犬が話しかけてきた。
星の守護戦士たる赤獅子、ナナキだ。
この村に住むものはナナキを見知っているため驚きはしないが、知らない者は人語を操る彼にたいそう驚く。
モンスターの類だと言って攻撃してくる者もいる程だ。
しかしクラウドは淡々と質問に答えた。
なので、ナナキはクラウドの事を不思議そうに見つめた。
この村の子ではない事は、服装や雰囲気、髪や目の色からすぐに察せられたからだ。
きっと親とはぐれたのだろうと思って、声をかけたのだった。
「父さんはいない。母さんはニブルヘイムにいる」
「え!?キミ一人!?」
「オレはクラウドだ、ヒトリじゃない。」
・・・この少年は年齢の割には言葉が不自由らしく、ナナキの言葉の意図が分かっていないらしい。
「いや、そうじゃなくて・・・まいっか。クラウド?オイラはナナキ。このコスモキャニオンに住んでる。」
「お前モンスターじゃなかったのか、ウマそうだったのに」
「オ、オイラはモンスターじゃないよ!!それにモンスターなんか普通食べないよ!!」
「そうか?ウマいやつもけっこういるぞ。」
(・・・この子、変わってる・・・。)
ナナキが驚くのも無理はない。通常モンスターは神羅や賞金稼ぎに退治されたり、その毛皮などが売買される事はあるが、食される文化は決してない。
・・・ニブルヘイムには、もしかしたらそんな特殊な文化があるのかもしれない。
そう無理やり自分を納得させ、ナナキは続けて話しかける。
「ニブルヘイムって、ずいぶん遠い所から来たんだね。どこに行くの?」
「ミッドガルだ」
ニブルヘイムからミッドガルは遠い。地球をおおかた半周するほどだ。
クラウドの返事に驚いたナナキは、しっぽの火が消えてしまいそうなくらい驚いた。
「ぇえ!?ミッドガル!?いったい何しに行くの!?」
「オレ、ソルジャーになりたいんだ」
「ソルジャーか・・・神羅だね。止めたほうがいいよ、クラウドみたいな小さい子には危ない」
「オレ小さくないぞ」
「・・・クラウド、いくつ?」
「13歳だ」
「ぇえ!?」
「今年14歳だ」
「ぇええ!?」
どう見ても十歳くらいに見える。
そのくらいクラウドは小さく幼い。
「ご、ごめん。そんな年には見えなかった。クラウド一人だし、迷子かなって思って」
「オレはヒトリでもないしマイゴでもないぞ。クラウドだ。」
「いや、だから・・・」
(この子が一人でミッドガルまで・・・心配だ・・・)
「これからどうするの?」
「宿泊まって、明日出発だ」
「よかったらオイラがミッドガルまで送ってってあげるよ」
「そっか、じゃ頼んだ」
(あっさり・・・大丈夫かなこの子・・・)
「う、うんじゃあ宿まで案内するよ」
「お前犬なのにいいヤツだな」
「オイラ犬じゃないよ!!」
「オレ知ってるぞ。赤犬ってウマいんだ」
「・・・だからオイラ犬じゃないって・・・お願いだから食べないでね」
精神的にかなり疲れたナナキは、げっそりと宿まで案内した。