脳内ハイテンション馬鹿キャラを被ってるTS娘が、やけくそになって親友代わりに業を背負おうとしたら、全世界に追われて一人にボロボロなったところでその親友に救われる話。   作:らげる

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時系列は前話より一日戻ります
少し要の口調調整しました



第十四話。ある暗い部屋の中、とその外にて。

『ライン!!』

 

元気よく、重なる叫び声の通知音が鳴り響く。

暗い部屋の中で、唯一光を発生させるその文明の利器に手を伸ばす。

 

kamenakaname

『明日学校来る?』

 

三日前と同じメッセージ。

素直に言おう。

 

you

『いや』

『無理』

 

それだけ残して、ポイと優しく布団に投げる。

叩き割りたい気分だけど、流石に何万円もするものを壊すのはまずいと良心が訴える。

...良心?俺にそんなものがあったからって何になる?こんなのが良心だったら、あいつの優しさはなんて例えればいいんだ?何て表せばいいんだ?

 

もうわからない。何も見たくない。感じたくない。全部俺が悪い...なんて言ったら絶対あいつは否定してきそうだが、少なくとも今回ばかりは原因が俺だった。

 

俺が、俺さえ余計なことしなければ全ては丸く収まったのに、俺はまたしてしまった。

 

戦場に出てた頃は仕方がない。だってあの狂気に満ちた場所に呑まれないものはいない。いくら自分の精神が強くても、あの時の俺はただの22歳の若造に過ぎなかったから。

冒険者だった頃は...全てがそうではないが、多くのものを放り投げすぎた。ちゃんと彼らを面倒見ないせいで、そのつけは自分に返った、それだけだ。

確かに感情に任せすぎた。放任主義とは言うけれど、面倒だから、自分が疲れるからと、結局自分可愛さで何もやらないという怠惰な感情。我儘とも言う。

前回も前々回も、それは俺自身に返って来るのだから良かったのだ。周りは誰も死なないし、きっと生き続けてる。生き続けて幸せになると感じたから、俺は何も悪く感じない。

 

だけど...残された側の気分って、こんなに辛いのか?

 

あの時、俺が庇った後輩の冒険者もこんな気持ちで残されたのか?あいつには、途中半端に優しくしたせいで、あいつも俺と同じようになっていたかもしれない。俺が必要なことをしない癖に嫌われたくないという理由だけであいつと仲良くしたせいで、今も俺の様に、罪悪感に押しつぶされているかもしれない。それとももう自殺したかもしれない。そうなったら俺は二度も人を殺したことになるな...って、もう既に何人も殺してきたのか...。

 

もう普通だったらおじいちゃんになってるのに、色んな辛いことも経験してきたはずなのに、何故俺はこんなにも苦しいのか?

 

...未だに光ってるスマホの画面に表示されてる俺が嵌っていた、何ヶ月もやれなかったゲームアプリのアイコンを見るたびに、あいつの顔が浮かんだ。

 

『俺、これ始めたんだけど、このキャラって強いのか?』

 

質問風自慢して来やがったあいつの顔は、隠す気もないほどニヤニヤと気持ち悪い顔だった。

思い出しただけで胸が裂けそうだ。

何を見ても記憶の中にある過去を連想させる。

 

...ああ、そうか。この感じは、あの時俺のお父さん、お母さん、妹、それとミケの死を知った時と同じだ。もう会えない者の顔が辛くて見たくない感覚だ。

 

だけど今回、それを俺から引き裂くのは敵国でも誰でもない、間違いなく俺だ。

 

怒りだ。悲しみと、怒りだ。

失った悲しさ。引き裂かれた怒り。

 

俺はたった一人の最初の親友を失って悲しんだ。そしてその親友を自分から引き裂く原因を作った自分にも怒ってる。

 

殺したい。てめーのせいだと怒りに任せてぐちゃぐちゃにしてやりたい。もう何も見たくない何も感じたくない。死にたい。

 

...。

 

だけど、怖い。

 

この血肉は確かに俺だ。けれど俺じゃない。未だにあいつが俺の中に残ってると感じる。あかりの魔力は既にあいつの肉体の再生に回ってる。あの時に感じた暖かい魔力は間違いなくあいつの魔力だ。あいつが、再生し切ったあいつの体が作り出した魔力だ。

 

だからこの体を、あいつの一部を壊してしまわないかと、怖いんだ。

 

...。

 

いや、これは違う。俺はあいつの様に優しくはない。

新しい生を受け、平和で楽しく、まるで自分がこの宇宙の中心にいる感覚に酔いしれるようなクズ野郎だ。

 

俺は、自我が芽生えた時間を数えれば、周りの感情なんて手に取るようにわかるんだ。

自分の置かれた状況がどんなものなのか、俺も理解してる。

 

けれど、初めて味わったその感覚を俺は手放したくなくて、知らんぷりを続けた。この時間が、この感覚が一秒でも長くなるようにと。

 

もし俺が早く誰かとくっつけてれば、あいつが輝く時ももっと早く来るのに、俺はしなかった。

多分あいつは俺にとって欠かせない存在だと、俺は薄々と気付いてたから、こうやって誰とのハッピーエンドを選ばずに、ずっとあいつを縛り続けた。ギャルゲーはヒロインを攻略してしまえば終わる。逆にしなかったら何時までもとは行かなくても、少なくとも卒業まで続いた。

 

だが、ここはゲームじゃない。現実だ。幸せは俺のだけじゃなく、世界中の人々のものでもある。

 

幸せを裾分けしてれば、寂しくは感じても、それでも皆で笑い合えてたのに。

何もかも遅かった。気付いても何もできない。もう死にたい。だけど死にたくない。

もう俺は...

 

「俺は、どうすればいいんだ...。」

 

弱々しく、誰もいない空間でそう問い続けるだけしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「本当にやるんですか?」

「やるも何も、これ以上ほっといたら完全に取り返しがつかなくなるよ。あなたも()()の仲間なら、それぐらいあいつが今どれだけヤバい状態なのか、わかってるはずでしょ?」

「わ、私もう協定に参加しないって、言ったんですけど..」

「はいはい、そうやって自分の気持ちを誤魔化すのはいいからさ」

「ご、誤魔化してないですけど...」

「はぁ、とにかく、今日は本当にあいつを引っ張り出すよ」

「それって私である必要があるんですか?」

「今いるメンバーの中で最適だと思っただけよ。あいつを最も知ってる私とあの場にいるあなた」

「でも...」

「でもも何もない。それにこれは私よりあなたの方が関わりのある問題よ。観念しなさい。というかあいつもあなたも何でそこまで悲観するの?確実にってわけじゃないでしょ?」

「だけど、学園側からも死亡通知来たって...」

「通知だけでしょ?例えドナーカード書いてても遺族さえも顔見せられないって、いくらこの学園都市の仕組みが外界と異なっても、それはおかし過ぎる。それにあの時あなたも見たでしょ?氷の中にいる彼を」

「そう...ですね...」

「死ぬ直前の完璧な状態の死体なんて、悪の組織じゃなくても普通の学者でも喉から手が出るほど欲しいなはず。葬式の時も死者の顔が程過ぎて見せられないわけでもないから、見せないのはあの時、棺桶の中に何もないってことじゃないかって、考えられないの?」

「た、確かに...」

「まあ、仮に彼が本当に死んでて、遺体を渡されないのは何か理由があるってことがあってもいつまでも落ち込む訳には行かないでしょ。あなたもあいつも」

「うっ...わかりました...でも期待しないで下さいね?私だってあの時の罪悪感がまだ残ってて、どうしたらいいのかわかりませんから...」

 




全員ちゃんと登場したことある人物です。

洋君はエセ鈍感主人公です。

凜の葬式と死体の話ですが、葬式はちゃんと知り合い全員(洋と美少女ズ全員も)出席しました。

氷漬けにされた状態をしってるのも全員ですが、実際に現場見たのは洋とあかり、と氷結魔法の使い手と援護に来たモブ数名。他の皆は消耗しきって各地バラバラで洋の健闘を祈ったってわけです。このあたりに関しては私の力不足で描写しきれませんでした。今後出るかもわからない情報なので一応補足を。

まあ、氷漬けにされたのに確実に死んだことにされたのは洋たちからの観点で見れば矛盾ですが、洋とあかりはショックすぎてまともに頭回ってない状態で、他の美少女ズは凜に対して好感度が低いせいで、どちらかというと無関心ですね。可哀そうな凜ちゃん。

ちなみに家族側(凜の父と母)は葬式の前に全部知らされてるので、母は葬式で存分に泣いた演技を楽しんだそうです。

因みにですが、洋の幼馴染である要はIQ140です。
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