楽玲オンリーシャンフロ短編集   作:東雲。

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嫉妬心を隠さないヒロインちゃんという概念を見かけてファルシがルシしました。

大学生楽玲同棲済みユニバース。


楽玲による嫉妬心との向き合い方講座

 温まった身体をゆったりしたパジャマで包む。一人暮らしならパン一でもまかり通るんだろうが、同居人がいると流石にな。

 

「ふーさっぱりさっぱり。風呂上がりのエナド……おっと」

 

 キッチンの冷蔵庫を開け、キンキンに冷えたエナジーカイザー……に手を伸ばしかけたがぐっと堪え、代わりに牛乳をコップに注ぐ。

 昨日既に徹ゲーしたし、あまりやりすぎると玲さんに注意されてしまう。

 

「んっぐ、んぐ……ぷはあ」

 

 風呂上がりバフがあるので心地よく感じるな。エナドリだったらもっとキまったんだろうなぁと思うと未練が湧くが……おや?

 

「………」

 

 ソファに座っている玲さん(寝間着)が、珍しく背中を縮こまらせている。うたた寝という訳ではないだろうが。

 

「どうしたの、玲さん」

「あ、楽郎くん……」

 

 隣に腰を下ろす。玲さんは一瞬だけ表情を明るくさせたが、すぐに物憂げな顔をしてしまった。

 

「悩み事?」

「い、いえ。その、楽郎くんの手を煩わせるようなことでは……」

「なるほど、俺絡みね」

「!?」

 

 玲さんが目を見開く。

 

「な、なんで……」

「玲さんのことだもん、顔みれば分かるよ」

「うぅ……っ」

 

 玲さんは恥ずかしそうに頬を手で抑えるが、その仕草がまた可愛らしい。

 本当は理屈があるんだけどな。玲さんは俺が関係しない悩み事については、聞けばすんなり話してくれる。言い淀んだ時点で、まあそういうことだろう。

 

「それで、どうしたの?」

「……言わないと、解放されないんでしょうか」

「そりゃあ、俺に原因があるなら改善したいし?」

「い、いえ! 楽郎くんは、悪くないんですっ! ……ただ、その」

 

 それから、玲さんは顔を俯けて零すように話してくれた。

 今日のグループワーク、俺と玲さんは別の班分けになったのだが、その時俺が別の女子学生と話しているのを見ていると、どうにも胸にもやもやしたものが溜まった、と。

 なるほどなるほど。

 

「嫉妬だね」

「あうぅ」

「そんなに嫌? 俺的にはそれだけ玲さんに想われてるってのがわかって嬉しいんだけど」

「あ、ありがとうございます……でも、その、普通のことだって分かってても、嫉妬してしまうのは、自分の心が狭いからだと……」

「ふむ」

 

 まあ、そういう見方はあるか。

 

「――楽郎くんは、嫉妬とか……しますか?」

「ええっと」

 

 小首をかしげた玲さんの質問にちょっと詰まる。一般論的に捉えれば何ら問題ない発言だが、状況が状況なのでなんだか試されているような気がしないでもない。

 正直、玲さんが俺以外の男と仲良さそうにしてる場面を見たことがないので、すぐにはピンとこないんだよな。

 

 でも。仮に玲さんがほかの男と楽しげに話してるのを見たのなら。

 

「……まあ、するかなぁ」

「! そ、そういう時、どうしてます、か!?」

 

 うん、俺も嫉妬自体はする。例えばボスのランダム報酬で目の前で良いの取られた時とか。具体的に言うとトットリが貪る大赤依から超便利そうな装備品ゲットしてた時。

 だがそういう淀んだ感情は、考え方次第でどうとでも打ち消せるものだ。「俺だって良いアイテム引っこ抜いてやる」とか、「最悪略奪すればいいや」などと考えれば、心の余裕を取り戻せる。

 端的に言えば。

 

「心の中でマウントを取ってる……?」

「え、ええと?」

 

 やめてくれ玲さん。評価に困ってそうな顔はちょっとメンタルに来る。

 

「いや、言い方はアレだけど実際大事だと思う。俺の方が上だと思ってれば気持ちに余裕が生まれて、多少の事は笑って流せるモンだよ。だからこの場合は――」

 

 一度深呼吸を挟む。

 

「――『まあ、楽郎くんは私のものですけれど』なんて思ってみる、とか」

「!!!?!?!!??」

 

 玲さんが予想通り爆発した。

 俺だって言ってて恥ずいわ。でもそうなるだろこの場合!

 

「う、あ、その、それは、えっと」

「こ、これはあくまで一例ってことで! 詳しいところは玲さんなりの考え方でいいと思うよ!?」

「で、でしたら!」

「ぬおっ」

 

 いきなり玲さんが俺の身体を押す。慌ててソファの背もたれに腕を引っ掛けて最悪の事態(ソファから転げ落ちる)は避けられたが一体何を……?

 視界を覆う黒い影。見上げれば、耳まで赤くなった玲さんの真剣な顔が真上にあって、ようやく俺は自分が押し倒されたのだと理解した。

 玲さんらしいっちゃあらしいが、まさか物理的にマウントを取ってこようとは。玲さん検定一級を自称する俺の目でしても見えなかった。

 

 だが、その眼差しをよくよく見ると若干怪しい雰囲気を感じて。

 

「わ、私が、そう思えるように……楽郎くんが、私のものだって信じられるように……! きょっ、きょ、協力をお願いしても、宜しいでしょうか……っ!」

「あ、ああ。そういう、ね?」

 

 俺、明日一限なんだけど……まあ、いいか。




実践編は、皆様の心の中に―――。
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