クリスマスなのでヒロインちゃんが素敵なクリスマスデートを語ってくれるようです。
ヒロインちゃん中学生ユニバース
まず、昼過ぎに陽務くんと噴水のある広場で待ち合わせをします。
30分早く来てくれた陽務くんと私がばったり鉢合って、
「あー、えっと、待たせたかな」
「い、いえ! いま来た所ですっ!」
というお決まりのやり取りをして。
その後はまず、映画を見に行きたいです。恋人同士が見るのに適した、雰囲気の良い映画を。恋愛ものは鉄板かもしれませんが、陽務くんとならどんな映画でも楽しめそうですね。
映画の鑑賞中にポップコーンに手を伸ばしたら、陽務くんと手が触れ合って、ドキドキしたりして……。
鑑賞後は喫茶店で軽食を戴きながら、映画のことを話し合いたいです。どこが良かった、どこか素敵だった、と。
共感する話題について語り合うと、信頼関係が深まると言いますから。
多分そのくらいで日が暮れ始めると思うので、夕陽の見えるスポットに行って、沈んでいく太陽を眺めるのもいいかなと想います。
「玲の顔、赤くなってる」
「ら、楽郎くんもですよ?」
二人して夕陽の輝きに頬の紅を隠すなんて、素敵だと思いませんか?
日が沈み切ったら街を歩いて、イルミネーションがきらきらしている通りを歩きたいです。通りの脇ではサンタさんの衣装を着た人がケーキを売ってたりする感じの。
街道に並ぶ服飾品を眺めて、ウィンドウショッピングをしてみたいです。陽務くんに似合うマフラーを見つけたら実際に買ってプレゼントしたいですし、逆に陽務くんに服を選んでもらえたら私、もう一生その服を完全に保護して永久保存すると思います。
それでその、私が寒くて吐息で手を温めてたら、突然陽務くんに手を握られて。
びっくりして振り向いたら彼の顔が間近にあって、
「この方が暖かいでしょ?」
な、なんて言われたりして……っ!
……
…………
すーっ、はーっ……す、すみません。続けますね。
街の活気と煌めきで目を楽しませた後は、レストランでディナーを頂戴しようかと。予め私が良いお店を予約しておいて、陽務くんを驚かせちゃうんです。
普段は陽務くんに引っ張られる私ですけど、きっと陽務くんはこういったお店の経験は薄いのではないかと思うので、ここでは私がリードしたいですね。ちょっと興味深げに辺りを見回す陽務くんを私が上品にエスコートして、陽務くんに見直されたい、なんて……!
ま、まあそこまでは夢想的かもしれませんが、とにかくそこでコース料理に舌鼓を打ちながら、今日のことを頭から振り返るんです。映画の楽しさ、夕陽の美しさ、街の明るさ……どれも今日でなくても味わえるものですが、その全てが特別になるんです。一生の思い出に、なると。
デザートを戴いて、後は帰るだけ……と言いたいところですが、陽務くんはゲームが好きなので、最後にゲームに興じたいと思います。夜でも開いてるゲームセンターに行って、ARゲームを一緒に遊びたいです。私も陽務くんも初めてのゲームなので最初はうまく行かないかもしれませんが、それでも回数をこなす内に段々と理解を深めてステージを進めて行くんです。
最後のボスを撃破した後は、ハイタッチとか……そそ、その、ハグとかしたりして……! そ、そんなことになったら私、私は人生最高の日に……っ!!
……
…………
は、はい。もう大丈夫です。
ええと、どこまで話しましたっけ…? あ、えと、陽務くんとゲームセンターで遊ぶところまでですね。
「思ったより時間使っちゃったね」なんて話しながらお店を出て、流石にそろそろ帰ろう、と駅に向かうんです。
そしたら、その……いえ、その、これは、もしかしたら、と言いますか……そうなるかもしれないなという可能性の話なのですが。
終電が、無くなっているかもしれない、ですよね。
今日の為に遠出しているので、こうなってしまっては帰れなくなって、駅の前で一度私達は途方に暮れるんです。
で、その。そうなったら、もう仕方がない、と言いますか。必然と言いますか……
ふ、ふた、二人で。ホ、ホテルでお泊りにならざるを得なくて、日付が日付なので一部屋しか空いて無くてっ!
そそそうしたらやはり一部屋を借りるしか無くて、もももしかすると何かの間違いが「よし玲ちゃんストップ」
自室のリビングで玲と通話していた岩崎真奈は、重い頭痛を覚えこめかみを押さえていた。
初の自社製ゲームの制作が佳境に入っているためにクリスマスに帰ってこれない、と連絡を入れてきた夫の体調を心配しつつ、それはそれとして暇になってしまったこの一夜に、思い立って恋路を応援している少女と通話をしてみた。
話題に困った折、ほんの思いつきで「そういえば玲ちゃんは、陽務クンとしてみたいクリスマスデートとかってあるの?」と聞いた結果彼女の口からお出しされたのがこれである。
その内容の詰め具合と熱量もそうだが、何より恐ろしいのは斎賀玲はこの長さの話を『聞かれた直後にノータイムで話し始め』、『途中一人で盛り上がって詰まった点以外は淀みなく語ってみせた』ことである。
常日頃から彼とのデートにそこまで思考を巡らせているのかと思うと、さしもの真奈も外気温を上回る寒気を覚えるのも無理からぬことであった。
「あ、どこか駄目でしたでしょうか? た、たしかにその、陽務くんのお家の経済力は把握していないので、もしかすると高級料理に慣れている可能性もあるかもしれませんが」
「いや違う、違うの玲ちゃん。そうじゃないの」
根本から色々と言いたいことしか無いのだが、果たして今それを指摘する意味はあるのだろうか。交際するどころかまだ想い人との実質的な面識すらない中三の彼女に。
よって。
「えーっと、玲ちゃん。クリスマスに何をするのかは、事前に陽務くんと話して打ち合わせしておくのがベストよ。彼を喜ばせたいならなおさら。言葉が無ければ親切がうまく伝わらない場合もあるから、ね?」
「そ、そうですか……確かに、陽務くんが喜ぶのが一番ですからね……。参考にします、真奈さん!」
真奈は将来きっと訪れるであろう、彼女の恋人となった陽務楽郎に
アニメが放送される度に奇行が加速するヒロインちゃんに、自分なりについていこうとした結果産まれたSSでした。