「あこってほんとに可愛いなぁ」
「もう! 恥ずかしいよトモ兄〜」
少年に撫でられているあこも、そうは言いながら嫌がりはしない。傍から見れば、とても仲の良い兄妹かと思える。しかし、この二人に血縁関係は無い。
「智也! あこが嫌がってるだろ〜」
そう言いながら、あこの姉、宇田川
「いやぁ、悪い悪い」
この加藤智也と言う少年。一体宇田川姉妹とどういう関係なのか。それは所謂、幼馴染である。家が隣で、小学校が一緒、さらに母親同士仲が良い。ある意味必然的に仲が良くなった。中学で学校が分かれてからも、なんやかんや関係は続いている。
「トモくん、相変わらずだねぇ〜」
駅へ向かって歩いている三人の後ろから、間の抜けた声がする。振り返ると、そこに
「モカも飽きないねぇ」
智也はそう言わずにはいられなかった。モカは毎日のように大量のパンを食べているはずだが、飽きる様子は全くなく、あまつさえ太らないのだ。
「よくそんな食べてて太らないね」
さらにこう言ってしまったのは、もはや不可抗力ではないだろうか。
「食べた分のカロリーは、ひーちゃんに送ってるからねぇ〜」
「ええっ!」
モカの爆弾発言(?)に、ひーちゃんことひまりが露骨な反応を見せる。
「ぐぬぬ……敵は身内にいたんだね……!」
そうひまりが唸っていると、
「コンビニスイーツ食べ過ぎだからでしょ」
「昨日も結構食べてたしな」
蘭&巴がバッサリと切り捨てていく。
「あはは……」
これにはつぐみも苦笑い。そして、その間にも智也はあこをずっと撫でている。
「いい加減やめろっ!」
巴は、智也とあこを強引に引き離した。
「トモちんがトモくんから取り返したぁ〜」
モカが、智也と巴のあこ争奪戦(?)を実況する。蘭は「いつも通りだね」と言いつつ、ひまりやつぐみと同じく苦笑いである。
智也のあこへの溺愛ぶりは、今に始まったことではない。しかし、この場に居る、智也以外の六人。基本、これに関しては何も言わない。溺愛されているあこも鬱陶しくないのだろうかとも思われるが、あこさえも、何も言わない。妹を取られたくない巴が止めるまで、そのままだ。言わないというよりは
あこと引き離された智也は、「あぁ……」と名残惜しそうにしている。巴は、その様子を見るといつも、少し罪悪感が残る。
七人は駅へと歩みを進める。駅から電車で学校の最寄り駅まで行くのだ。七人が電車に乗り込んでからも、おしゃべりは色々弾んでいる。
「あこ、バンドに入れてもらえることになったんだ〜!」
「ええっ、バンドってあの湊さんのバンド!?」
今は専ら、あこがバンドに加入したという話で盛り上がっている。あこの言葉に、ひまりは目を丸くした。
「うん! リサ姉も一緒にバンドに入れてもらったんだ〜!」
「あれ? リサさんって楽器弾けたの?」
あこの口から、先輩の今井リサの名前が出てきたことにつぐみは驚く。
「うん! ベースだよ」
「そういえば、リサ先輩、前にベース弾いてたって言ってたかも」
ひまりがはっと思い出したことを言う。
「ライバル登場ですなぁ〜」
「そうだね〜! ねっ、蘭!」
モカも興味ありげに笑い、ひまりが蘭に同意を求める。
「アタシたちは、アタシたちらしくやるだけ」
蘭は済ました顔でそう言った。
「そうだね! 今日も練習頑張ろうね!」
つぐみが、蘭の答えにそう言う。蘭、モカ、ひまり、巴、つぐみの五人はAfterglowというバンドを組んでいる。蘭は興味無さそうにしているし、他の四人も気にせず「いつも通り」のバンド活動をするつもりではあるが、やはり多少はライバル登場かとウキウキする気持ちも持っている。
話していると、電車が減速を始めた。そろそろ羽丘学園の最寄り駅だ。智也以外は全員そこに通っている。智也は豊崎学園に通っており、次の駅で降りるのでここで一旦お別れだ。
「練習頑張ってなー」
智也は、そう声をかけて六人と別れた。
どうも、見切り発車致しました
これは比較的すぐに完結まで持っていこうと考えております。しばらくの間、お付き合いいただければ嬉しいです。