トモとトモ   作:鳩ポッポ

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日常

「あこってほんとに可愛いなぁ」

 

 

 宇田川(うだがわ)あこの頭を優しく撫でながら、その少年は柔和に笑う。

 

 

「もう! 恥ずかしいよトモ兄〜」

 

 

 少年に撫でられているあこも、そうは言いながら嫌がりはしない。傍から見れば、とても仲の良い兄妹かと思える。しかし、この二人に血縁関係は無い。

 

 

「智也! あこが嫌がってるだろ〜」

 

 

 そう言いながら、あこの姉、宇田川(ともえ)が止めに入る。止めに入ると言うよりは、妹を取られたくないだけなのだが。あこを撫でる手を止めて、加藤智也(かとうともや)は巴の方を向く。

 

 

「いやぁ、悪い悪い」

 

 

 この加藤智也と言う少年。一体宇田川姉妹とどういう関係なのか。それは所謂、幼馴染である。家が隣で、小学校が一緒、さらに母親同士仲が良い。ある意味必然的に仲が良くなった。中学で学校が分かれてからも、なんやかんや関係は続いている。

 

 

「トモくん、相変わらずだねぇ〜」

 

 

 駅へ向かって歩いている三人の後ろから、間の抜けた声がする。振り返ると、そこに青葉(あおば)モカ、上原(うえはら)ひまり、美竹蘭(みたけらん)羽沢(はざわ)つぐみの四人がいた。まず話しかけてきたモカの腕には、いつも通り、山吹ベーカリーと書かれた紙袋が抱えられていた。

 

 

「モカも飽きないねぇ」

 

 

 智也はそう言わずにはいられなかった。モカは毎日のように大量のパンを食べているはずだが、飽きる様子は全くなく、あまつさえ太らないのだ。

 

 

「よくそんな食べてて太らないね」

 

 

 さらにこう言ってしまったのは、もはや不可抗力ではないだろうか。

 

 

「食べた分のカロリーは、ひーちゃんに送ってるからねぇ〜」

 

 

「ええっ!」

 

 

 モカの爆弾発言(?)に、ひーちゃんことひまりが露骨な反応を見せる。

 

 

「ぐぬぬ……敵は身内にいたんだね……!」

 

 

 そうひまりが唸っていると、

 

 

「コンビニスイーツ食べ過ぎだからでしょ」

 

 

「昨日も結構食べてたしな」

 

 

 蘭&巴がバッサリと切り捨てていく。

 

 

「あはは……」

 

 

 これにはつぐみも苦笑い。そして、その間にも智也はあこをずっと撫でている。

 

 

「いい加減やめろっ!」

 

 

 巴は、智也とあこを強引に引き離した。

 

 

「トモちんがトモくんから取り返したぁ〜」

 

 

 モカが、智也と巴のあこ争奪戦(?)を実況する。蘭は「いつも通りだね」と言いつつ、ひまりやつぐみと同じく苦笑いである。

 

 

 智也のあこへの溺愛ぶりは、今に始まったことではない。しかし、この場に居る、智也以外の六人。基本、これに関しては何も言わない。溺愛されているあこも鬱陶しくないのだろうかとも思われるが、あこさえも、何も言わない。妹を取られたくない巴が止めるまで、そのままだ。言わないというよりは()()()()()()

 

 

 あこと引き離された智也は、「あぁ……」と名残惜しそうにしている。巴は、その様子を見るといつも、少し罪悪感が残る。

 

 

 

 

 

 七人は駅へと歩みを進める。駅から電車で学校の最寄り駅まで行くのだ。七人が電車に乗り込んでからも、おしゃべりは色々弾んでいる。

 

 

「あこ、バンドに入れてもらえることになったんだ〜!」

 

 

「ええっ、バンドってあの湊さんのバンド!?」

 

 

 今は専ら、あこがバンドに加入したという話で盛り上がっている。あこの言葉に、ひまりは目を丸くした。

 

 

「うん! リサ姉も一緒にバンドに入れてもらったんだ〜!」

 

 

「あれ? リサさんって楽器弾けたの?」

 

 

 あこの口から、先輩の今井リサの名前が出てきたことにつぐみは驚く。

 

 

「うん! ベースだよ」

 

 

「そういえば、リサ先輩、前にベース弾いてたって言ってたかも」

 

 

 ひまりがはっと思い出したことを言う。

 

 

「ライバル登場ですなぁ〜」

 

 

「そうだね〜! ねっ、蘭!」

 

 

 モカも興味ありげに笑い、ひまりが蘭に同意を求める。

 

 

「アタシたちは、アタシたちらしくやるだけ」

 

 

 蘭は済ました顔でそう言った。

 

 

「そうだね! 今日も練習頑張ろうね!」

 

 

 つぐみが、蘭の答えにそう言う。蘭、モカ、ひまり、巴、つぐみの五人はAfterglowというバンドを組んでいる。蘭は興味無さそうにしているし、他の四人も気にせず「いつも通り」のバンド活動をするつもりではあるが、やはり多少はライバル登場かとウキウキする気持ちも持っている。

 

 

 話していると、電車が減速を始めた。そろそろ羽丘学園の最寄り駅だ。智也以外は全員そこに通っている。智也は豊崎学園に通っており、次の駅で降りるのでここで一旦お別れだ。

 

 

「練習頑張ってなー」

 

 

 智也は、そう声をかけて六人と別れた。

 

 

 

 

 

 




どうも、見切り発車致しました810ポッポ(はとぽっぽ)と申します()
これは比較的すぐに完結まで持っていこうと考えております。しばらくの間、お付き合いいただければ嬉しいです。

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