GODEATERsidestory 変異狩りと救世主の物語 作:紅 星鎖
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2071年×月▲日 とある孤島の森林地帯にて、被験者2084Fと被験者5413M
「よしっ、じゃあ決まりだ。
さっさとこの試験を終わらせてこの施設とオサラバしよう!」
『彼女』はいつものように笑ってオレにそう言った。
オレはまた馬鹿なことを言い出したな、と思いながら溜め息をついた。
そして楽しげな様子の『彼女』に言う
「よくもまぁこんな状況でそんな楽観的なことが言えるな。
正真正銘の馬鹿なのか、お前は?
いくら卒業試験をクリア出来ればこのクソッタレな施設から出られると言ってもこんな無理ゲー挑戦するほうがおかしいだろ?」
「む?
ま~だ、**はそんなネガティブなことを言ってるの?
今更遅いって!
だって私たちは今卒業試験真っ最中じゃん。
幸いさっきの衝撃で壊れた武器はなかったみたいだし、このままこの一帯のどこかにいるおーがている?のコアを取ってくることくらい楽勝だって。」
『彼女』は笑いながら小型の拳銃型神機ーー第零世代神機をオレに見せながら歩いて行く。
正直、こんな装備で大丈夫か?と本気で聞きたくなるが、何故か『彼女』は自信満々だ。
オレはかなりの不安を感じつつも、『彼女』の言う通りなんとかなるかもという不確かな自信が心のどこかにあることに気が付いた。
『彼女』といるといつもこうだ。
最終的には『彼女』のなんとかなるという根拠のない自信が伝染している。
「一種のカリスマだな。」
昔、この狂った施設に入りたての頃色々なことを教えてくれた先輩は『彼女』のことを以前そう評していた。
確かにカリスマだな。
今も『彼女』の無駄なハイテンションさがあるおかげで危険極まりない試験の中でもまだいつも通り平常心でいられる。
「今回の試験の討伐対象って確か、おーがている?とかいう小型のアラガミでしょ。
だったらこの豆鉄砲みたいなのでもピンポイントで脆い箇所を打ち抜けば仕留められるかな?」
「あぁ、多分な……。
っつうかそれしかないだろ。
オレとしてはもう少し威力のある武器のほうが良かったんだけどな。」
「**がいつも使ってるあの片手剣のこと?
でもあれじゃ確かおらくる細胞?とやらに食べられちゃうんじゃない?
確かアラガミって通常兵器は効かないとか言ってたし。」
「確かにその通りだけど、何故いちいち疑問形で言う?
まったく、そんなんだから座学の点数で落第しかけるんだ。」
「うへ~、また始まったよ。
良いじゃない、別に。
もう合格したんだからさぁ。」
「オレがみっちり一か月教えてギリギリだったけどな。」
「えーと、それはそのぅ………………。
あっ、目的の地点ってもうすぐじゃない?
急ごう!」
『彼女』は盛大にキョドった後、逃げるように話題を変えた。
…………後で覚えとけよ。
オレと『彼女』が目的の地点に辿り着いた時、何やら周囲の様子がおかしいように思えた。
警戒のため、一度近くの茂みに身を隠した瞬間
それは姿を現した。
白い巨躯に女神像の様な顔をした虎のようなアラガミーーのちにプリティヴィ・マータと呼ばれるアラガミーーが悠然と歩いていた。
オレと『彼女』は必死で気配を殺しながらそのアラガミの様子をうかがう。
しばらくして、そのアラガミはオレたちに気付かなかったらしく、そのまま去って行った。
そのままそいつが見えなくなると途端に緊張が解けた。
息を止めていたことを今更ながらに思い出し、軽く咳き込む。
『彼女』もその場にへたりこんでいた。
冗談じゃない。
あれは今のオレたちでは到底太刀打ち出来ない相手だ。
出会ってしまったらそれこそ何もできずに一瞬で命を奪われるレベルだった。
そして今のアラガミが元来た方向を見れば、数名の人間……の成れの果てと思しき死体が転がっていた。
もしあそこで見つかってしまっていたら、オレたちもあぁなっていただろう。
そう思うとぞっとした。
『彼女』は不幸な彼らの死体に手を合わせて黙祷をささげていた。
そしてふと、何かに気付いてオレを呼んだ。
「ねぇ、これアラガミのコアじゃない?
これを持っていけば合格出来るかな?
**、死人の持ち物を盗るのはちょっと気が引けるけどこれ、貰っていこう。
どうせこのまま置いといても勿体ないだけだし。」
「あぁ、賛成だ。
それにいつあの化け物が戻って来るかわかったもんじゃねーしな。
きっとそれがこいつらにとっても良いことだろうよ。」
そう言ってオレたちは彼らからコアを貰い受けると、そのまま施設に戻ることにした。
数時間後、オレたちは試験に合格して今は他の合格者が来ないか待っていた。
「なかなか来ないね。
さっきの奴に襲われちゃったのかな……。」
『彼女』が不安げに訊いてくる。
「かもな。
だが、それはそれで仕方ねーだろ。
どうせいくら言ってもここの施設の職員ーーいや、研究員がオレたちを助けるなんてことあるわけねぇしな。
それにあの連中はオレたちにとっては敵も同然だろ?
いつも他人をどう蹴落として成り上がるかしか考えてねぇ。
そんな奴等に同情する余地なんざねーよ。」
この施設に入って早4年、ここの連中のやり方は嫌ってほど解りきっている。
手柄の強奪など日常茶飯事。
成功の芽がありそうな者は徹底的に潰して、心を殺す事もある。
そうして無気力になった者を研究員は見逃すことなく用済みだといわんばかりに抹消する。
先程の先輩もこの卒業試験を受けようとした矢先、食事に毒を盛られて殺された。
『彼女』も彼らの仕打ちを思い出したのか顔をしかめていた。
そして重苦しい空気を切り替えるために口を開いた。
「……うん、そうだね。
じゃあ今はこの施設を出た後のことでも考えよっか。
そうだなぁ………私はどっか安全なところで料理店でも始めようかな
前から料理は得意だったし、天職だね!」
「まぁ、確かに料理(だけ)は得意だったな。」
「なんか今一瞬料理の後に悪意ある一言が付けられた気がするよ?!」
「気のせいだ。」
しかし、料理店か……。
『彼女』の容姿は遺憾ながらかなり良いほうだし、料理の才能もあるから確かに天職だな。
「ところで**はどうするの?
何かやりたいことでもある?」
「いや、特にねぇよ。
結局オレは戦うことしか出来そうなことねーし。」
「だったらさ、私と一緒に料理店経営しようよ!
**は会計とか、材料調達の交渉とか、……あとその他諸々ね 」
「おい、ちょっと待て。
それ実質オレが苦労するだけじゃねーか!
面倒事を全部こっちに押し付けんな!」
「えぇー?
良いじゃん、だって私じゃ難しいことなんてさっぱりだし!!」
「威張んな、バーカバーカ!!」
そんな会話をしていたオレたちははっきり言って浮かれていたのだ。
この地獄のような施設から解放されるという長年の願いが目の前に迫っていたことで。
だからこそ、すぐに気が付かなかった。
この施設が今、やけに静かなことに……。
それから間もなくして、異変に気付いたオレたちは何が起きているのか調べるため、一度外に出ようとした。
だが、その必要はなかった。
原因が向こうからやってきたからだ。
先程の白いアラガミが施設を襲っていた。
何故奴がここにいるのか、その答えはすぐそばに転がる血塗れの死体で解った。
それは施設の中で最も多くの人間を裏切り、絶望の淵へと追いやった男の最期の姿だった。
おそらくこいつのせいだ。
死ぬのならば、合格者や、研究員を一人でも多く巻き添えにして恨みを果たしたかったのだろう。
今のオレたちにとってはただの迷惑でしかない。
『彼女』も死体に嫌悪と侮蔑の混じった視線を向けていた。
っと、こんなことしてる場合じゃねぇな。
さっさと他の研究員たちが逃亡用に準備していた脱出口を探さねぇとな。
『彼女』と共に白いアラガミにバレないようにうまいことその場から逃げると、非常用出口につながっていると思われる部屋を発見した。
そして、手早く出口につながる隠し扉を見つけたオレたちは急いで逃げ出した。
「なんか大変なことになっちゃったね……。
これからどうしようか?」
隠し扉から地下に続いている階段を降り、地下通路を歩いていると、ふと『彼女』が尋ねてきた。
「どうするっつったってそんなのここを出てから考えるしかねぇだろ?
オレもお前も行くあてなんてどこもねぇしな。」
「そっか、そうだよね!
**が考えてもわかんないなら、私にわかるわけないし!
だったらさっきの話の続きでもしながら進もっか。」
「思考丸投げかよ……。
ま、いいや。
で?どこまで話したっけ?」
「…………忘れちゃった。」
オレは思わず、アホと返した。
そのまま『彼女』と雑談を続けながら進んでいると、徐々に出口が見えてきた。
『彼女』はやっと出られるね、と言ってはしゃいでいた。
その姿を見てオレはそうだな、と苦笑しながら応じた。
そして……………………
外に出たところには黒い虎のアラガミーー後にディアウス・ピターと呼ばれるアラガミーーがこちらを睨んでいた。
近くの無数の肉塊からはむせかえる様な血の臭いがした。
「ーーーーッ!!」
オレはとっさにスタングレネードを叩き付けすぐさま『彼女』の手を引いて走り出した。
やばいやばいやばい!!
アレと戦闘になったら確実に殺される!
少しでも遠くに……
ドンッ バチィ!
というすさまじい音がして近くの木に雷球が貫き、炭化させる。
もう動けるのか!?
次々と追尾型とおぼしき雷球がオレたちに牙をむく。
何とか振り切って近くにある建物、多分施設の分館に逃げ込んだ。
『彼女』は周囲を警戒しながら、残っていた最後のスタングレネードをいつでも投げられるように右手に固く握り込んでいる。
オレはなにか逃げるのに役立つ物がないかざっと見て非常食と、スタングレネードをそれぞれ二つずつ、それと大量のダイナマイトを発見した。
「どうしよう、アイツまだこの施設の周辺を徘徊してる…。
このままだと二人揃って餌になっちゃうかも。」
「っざけんなッ!
どうして、ここまで来て死ななきゃならねぇんだ。
ゼッテー諦めねぇぞ、オレは!
二人揃って生きてここを出る!」
「うん、そうだね!
こんなところでみすみす殺られるほど私たちは柔じゃないよ!」
オレも『彼女』も自分の目的を再確認して気を持ち直した。
でも、この状況を切り抜けられそうな切り札は、なかった。
いや…待てよ…?
もしかしたら…。
いやしかしリスクが…。
「なにか策でも見つかった?
難しい顔して考えてないで私にも教えてよ~!」
「ダイナマイトで建物ごとアイツを吹っ飛ばす。
致命傷とまではいかないかもしれねぇが、足止めくらいだったら十分な時間を稼げるだろうな。
だが…。」
「どうしたの?
なにか問題でもあるの?」
「このダイナマイト遠隔操作どころかタイマーセットすら出来ねーやつばっかりだ。
だから設置してもただの置物にしかならん。
直接アイツにぶつけてみるか。」
「……それリスク高過ぎない?
だって下手したら私たちまで吹っ飛ぶでしょ?
アイツは爆発の中でも平気で出てきそうだけど、こっちは生身なんだよ?近くで爆発したらひとたまりもないよ!」
「あぁ、だからオレが囮になってアイツの雷球をダイナマイトに誘導する。」
「危険過ぎるよ!?
だったら他の方法を今から考えて……!」
「いや、無理だな。
というかもう悠長に考えてられる時間もねぇみてーだし。
二人揃って逃げ切るのは無理っぽいがお前だけならどうとでもなるだろ?
こっから先はオレに任せて先へ行け。」
「盛大に死亡フラグ立てないでよ!?
私、そんな助け方されても嬉しく無いよ!」
「じゃあどうしろと?!
このままだと二人揃って喰われるだけだ!
だったらお前だけでも…!」
「二人揃って生きて出るってさっき言ったばっかじゃん!
私も囮になる。
一人じゃ出来なくても二人なら成功するかもしれないでしょ!?」
「………いいのか?
最悪、オレたち両方共、死ぬかもしれないだぞ…。」
「だとしても、二人揃って逃げ切れる目もあるんでしょ?
なら、やるよ!
1%でも可能性があるほうに私は賭ける!!」
『彼女』はそう決意を固めると、この分館の地図を見つけていたらしく何処からか取り出した。
オレは貴重な遠隔操作型のダイナマイトを二階と三階にそれぞれ三ヵ所、建物を崩せる位置がないか探しだし、それから二人であの黒い虎に遭遇しないように慎重に設置した。
そして、スタン、スモークグレネード、そして一番強力なダイナマイトを持つと決死の作戦を開始した。
雷球がすぐ隣の壁を粉々に砕く。
凶爪が地面を抉り、空気を切り裂く。
咆哮が足をすくませ、戦意を挫く。
もうどれだけ経っただろうか。
数分か、数時間か、或いは数日か。
終わりなき攻撃がオレたちの時間感覚を狂わせる。
もうすぐだ。
あと少しでトラップを仕掛けた場所に辿り着ける。
オレと『彼女』はとうとう目的の大広間に辿り着くと同時にダイナマイトを投げつけ、遠隔操作型の起爆スイッチも押した。
黒い虎は雷撃を放ち、飛んでくるダイナマイトを撃ち落とそうとする。
そして………爆発が周囲を焼き付くした。
どのくらい気を失っていたのだろうか。
オレは瓦礫の中で目を覚ました。
周囲を見回すとあの恐ろしいアラガミはどこにもいなかった。
……助かった……のか?
そして今更ながらに『彼女』が見当たらないことに気付き、周囲の気配を探った。
しかし、近くに誰かがいる気配はなかった。
オレは立ち上がり、キョロキョロと『彼女』がいないか探した。
しばらく探してみたもののどこにもいない。
………まさか爆発に巻き込まれて粉微塵になったか?
最悪の可能性がふと、頭をよぎったが、すぐにそうではなかったことが証明された。
「………、あれ?
ここは…?」
瓦礫の中から『彼女』がひょっこり姿を現した。
「どうやら、お互い助かったみてーだな。
しかも五体満足で。」
「あ、**!
良かったぁ。
二人揃ってここから出られるんだね……。」
『彼女』はそう呟くと、ぽろぽろと泣き出した。
当然オレは焦った。
長い付き合いだが、『彼女』がこんな風に泣き出したことなど一度もなかったからだ。
「おい、泣き止めよ。
オレたちはまだ助かった訳じゃないんだぜ?
この島を出るのが最終目的だったろ?」
「うん、そうだった。
よし!じゃああと一息、頑張ろー!おー!」
どうやら少し元に戻ったっぽい。
オレは安堵しながら、これから同行どうするか考えを巡らせる。
分館は見ての通り木っ端微塵、施設もさっき襲われてたから期待できない。
「今度はなに考えてんの?」
「いや、脱出するには外にSOS信号送るか、船見つける必要があると思ってな。
でも、船のありそう場所なんて施設から出られなかったオレたちにはさっぱりだし。
SOS信号送るにも肝心の施設がこれじゃあな……。」
すると『彼女』はきょとんとして、
「SOS信号は無理かもだけど、船のありそうな場所なら解るよ。
さっき試験受ける時に頭にいれたし。」
さらっと言ったがかなり凄いことである。
「あの無駄に広大な地図を覚えたのか?
あの短時間で?
お前が?!」
「む?
ちょっと心外かも。
私だって興味のあることに関しては記憶力に自信があるんだよ。
まったく**はどこまで私のことを馬鹿にしたら気が済むの?」
「だったらその才能を座学に生かせ。」
「……興味の湧かないことに対しては無理ッ!
それよりさっさと船のありそうな場所探そう!」
まさか本当に地図を暗記していたとは……。
『彼女』の案内で最短ルートを通ったオレはあっさりと目的の船を発見した。
…してしまった。
どうよ、私すごくない!?と言わんばかりにドヤ顔をしてる『彼女』がスゲーうざい。
しかもこの船、なんと通信機も積んでいた。
オレはご丁寧に船に積まれていたマニュアルを読みながら、慣れない手つきでSOS信号を送った。
SOS信号は《フェンリル ヨーロッパ支部》という場所に届いたみたいだ。
一時間ほどで救助が来るらしい。
ずいぶん呆気ない終わり方だ。
こうしてオレたちの悪夢の様な戦いはあっさりと終わりを告げた。
**………ロロ!
起きなさーい!ロロ・グランディア!
そんな声がしてオレは目を覚ました。
そこには呆れたような表情の『彼女』ーー風鈴 天李(かざり てんり)がいた。
あれから三年、オレたちは結局戦闘経験をかわれてゴッドイーターになっていた。
料理店の経営もしているが、たまの休暇にしか開かない。
そのくせ、天李の料理は行列に並んででも食べる価値ありと言える物なので、一時はめったに開かない幻の料理店があると巷で噂にもなった。
「あぁ、ワリィ。
昔の夢を見てたみてーだ。」
「もう、しっかりしてよ!
今のロロは変異種対策部隊《セイヴァー》の副隊長なんだよ?」
「ほぅ、そういうお前はどうなんだ、隊長さん?
さっきまで寝てたんだろ?
寝癖がたってるぞ。」
天李は(゜ロ゜;という表情を浮かべ、慌てて頭をさわっている。
ふ、バカめ!
今のはブラフだ!
天李も気付いたらしくオレをぽかぽか殴ってきた。
「いいじゃん、いいじゃん!
一回くらいロロを動揺させたかったんだもん。」
「もんって…子供かよ。
まぁ、そんな調子じゃいつまで経っても無理だな。
諦めろ。」
天李はますます、むっとしていた。
そして反論しようと口を開きかけたその時、金髪の少女ーーアリス・K・ユートピアが現れて、
「たいちょー、いつまでふくたいちょーといちゃついてんのー?
みんな次のミッションに行く準備できてるよー?」
「い、いちゃついてなんかいないし!
それで?
今日の討伐対象は?」
「うんっとね~、G並みに速いハンニバル。」
「ちょっ!嫌な比較対象出さないでよ!
あとで戦いにくくなるでしょー!」
彼女たちはそんなやり取りをしながら、部屋を出た。
さて、オレも行くか…!
オレはこれからも戦い続ける、この荒廃した世界で……。
なんかラストがいきなり最終話みたいになってますが、プロローグです。