彼氏×彼女→彼女×彼女になったカップルの日常の話   作:九十九一

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1日目 ランジェリーショップにて

 ――などということを、俺らしくもなく思ったが…………前言撤回。

 

 楽しくねぇよ。こんなの。

 

「彩羽ちゃん、次はこっちをお願いします!」

「…………なぁ、ルナ」

「はい!」

「……なぜにお前は、俺を着せ替え人形にしてるんだ!? しかも、服じゃなくて下着の方!」

 

 現状の俺と言えば、ルナの着せ替え人形にされていた。

 

 その上、どういうわけか、アウターではなく、インナーの方で、だ。

 

 ……な? 楽しくなりそう、なんて考えを前言撤回したくなんだろ?

 

 そういうことだ。

 

「え? だって、彩羽ちゃんのお胸やお尻は素晴らしい形をしていますし……」

「理由がセクハラじゃねーか!?」

 

 明らかに彼女が彼女(元彼氏)に言うセリフじゃねーよな、これ。

 

 …………と、まあ、なぜ唐突にこんなことになってるかと言や……時間を少し戻そうと思う。

 

 

 そもそもの話の発端は、昼休みの『お買い物デート』の決行だ。

 

 俺が女物の下着を持ってねーってのと、服が少ねーってーのをルナが知った結果だ。

 

 いやまあ、俺もルナとデートすんのは嫌じゃねぇ。ってか、全然嬉しいことだ。

 

 だから、俺も普通に行くと言ったわけだ。

 

「というわけで、早速デートです! 彩羽ちゃん!」

 

 んで、放課後になるなり、クラスメートが帰ってもいない状況で、こいつは臆面なく、真正面からそう言うわけだ。

 

 こいつに、そういったタイプの羞恥心はない。

 

 なぜか。

 

 箱入りだったからに決まってんだろ。

 

「……わーってる。ってか、ルナテンション高くね?」

「当然です! 彩羽ちゃんが好きだった作品群のネタがついに、現実でできるのですから!」

「お前、最初の頃に比べて、随分とまぁ俗世に染まっちまったなぁ……」

 

 いやまあ、こっちの方が好きではあるが……だとしても、なんてーか……これはどうなんだ? と思っちまうわけで、

 

 正直、こいつと出会った頃って言やぁ――

 

「えと、てぃーえす? ってなんですか? あと、こっちの女の子は、どうしてこっちの女の子と抱き合っているんでしょうか?」

 

 みたいな、マジで何も知らないお嬢様、って感じだったんだよなぁ。

 

 もっと言や、

 

「え? 赤ちゃんって、コウノトリさんが運んでくるんじゃないんですか?」

 

 二次元も驚き桃の木山椒の木飛び越えて、腹抱えて大爆笑間違いなしの知識の無さを見せてくれた。もしくは、可愛すぎる、とも思うことだろう。

 

 ……で、これを訊いて思ったことと言や、こいつの家では『そういう知識』は、一切教えてこなかったんだろうな、ってことか。

 

 それが今じゃ――

 

「女の子同士での恋愛模様は素晴らしいと思うので。せっかく、それが実現可能になったのですから、それを楽しまない手はないですね、と」

 

 これだもんなぁ……。

 

 そもそもの話、こいつが性知識と言う名の物を覚えてから、こいつは箱入りお嬢様系美少女から、チャンスがあれば即座に飛びつく、肉食系女子になっちまったんだからな。

 

 もし、転校したての時のルナが、今のルナを見たら卒倒するかもな。

 

 ……いや、逆に受け入れる可能性もある、か。

 

「さぁ、早速行きましょ、彩羽ちゃん!」

「わーったよ。俺もさっさと帰って寝て―しな。正直、疲れちまった」

 

 一日中、色んな奴らの見世物状態になっちまってた影響で、かなり疲れってっからなぁ。

 

 見られるってだけでも、結構疲れるもんだと、初めて知った。

 

 ……ふむ。そう考えれば、アイドルをしている奴らってのは、なかなかにすごいんだな。

 

「それなら、少し急ぎましょうか。お疲れなようですし、早めに行って、早めに帰りましょう」

「あぁ、そうしてもらえると助かるよ」

 

 やっぱ、ルナは優しいぜ……。

 

 

 そんなわけで、学園を出て、俺たちは市内にあるショッピングモールへ。

 

 学園の近くにあるのと、駅が近いってー地の利がある影響で、学生の利用客が最も多い。

 

 各言う俺も、ここはよく利用する。

 

 時期によっちゃ、カップルで来る奴らも少なくない。

 

 むしろ、増えるくらいだ。

 

「……で? お前はなぜ、腕を組んでいるんだ?」

「もちろん、恋人の彩羽ちゃんと歩いているから、ですけど?」

「いやまあ、そりゃそうなんだが…………なんか、前以上に視線が多い気がすんだが?」

 

 学園を出てからというもの、俺はルナと腕を組んで歩いていた。

 

 正確に言えば、ルナが一方的に、なんだが……。

 

 ……いや、まあ、別にそれが悪いわけじゃねーが……。

 

 視線が気になる。

 

 さっきから、周囲の視線がすげー気になる。

 

『な、なぁ、あの二人、めっちゃ可愛くね……?』

『それには同意だが、なんだろうな、あの二人の間の独特の雰囲気』

『……カップルなんじゃね?』

『だったら最高すぎ』

 

 例えば、数メートル先にいる男のグループからは、やたら好奇的な視線を向けられる。

 

『何あの二人、ちょー綺麗なんですけど!』

『うっわー、まつげ長いし、黒髪の娘なんて、スタイルよすぎじゃない?』

『いやいや、隣の銀髪の娘なんて、モデルみたにスラッとしててすごくない?』

『『『羨ましい……』』』

 

 反対に、女の方からの視線と言えば、まあ……羨望の眼差し、なのか? この場合。

 

 聞こえてくる限りじゃ、まつげだとか、スタイルだとか、そんな身体的特徴を羨ましがられている。

 

 ふむ……。

 

「……な、なあ、ルナ。なんか、すげえ恥ずかしいんだが……」

「何を言いますか。彩羽ちゃんが彩羽君の時代の時からしていたことじゃないですか? と言うより、二日前までは普通にこういうことしていましたよね?」

「そりゃそうなんだが……なんてーか、明らかに男の時より、恥ずかしい気がするんだが……」

 

 正直、男の時からも周囲から視線が来ていたんだが……その時と言や、

 

『うっわ、何だあの野郎。あんな可愛い彼女とデートか?』

『非モテな俺らに対する当てつけだよな、あれ』

『爆ぜればいいのに』

 

 こんな感じだぞ?

 

 間違っても、好奇的な視線なんぞなかったわ。

 

 反対に女からは、

 

『ねえねえ、なんかあの二人良くない?』

『わかるー。美女と野獣みたいでいいよね』

『でも、男の子方、なんかカッコよくない? こう、不良っぽというか』

『あんた、そんな趣味なの? まあ、わからないでもないけど』

 

 みたいな感じだぞ?

 

 こっちはまあ……なぜかは知らんが、好奇心が強く混じったような視線が来ていた。

 

 だが、今の俺たちはそれとは程遠い何かだ。

 

「大丈夫です♪ 単純に、私たちが珍しく見えるだけですよ、きっと」

「……まあ、女同士で恋人のように腕を組んでるわけだしな」

「ふふふ。でも、楽しくないですか?」

「……いやまあ、俺的にはルナと一緒ならどこでも楽しいっつーか……な?」

「はぅっ! 今の彩羽ちゃんの照れ笑いは反則ですっ! 可愛すぎます!」

「おわっ!? ちょっ、お前何突然抱き着いてんだよ!? 動きにくいわ!」

「ふふふ~、今は私の方が身長が高いので、私が有利ですね?」

 

 などと、楽しそうに言うルナ。

 

 ……くっ、わかってるじゃねーか……さすが、ルナだぜ……。

 

 …………そういや、なんかあれだな。

 

「なんか、今の姿でルナに抱き着かれても、あんまりドキドキしねーな……」

 

 以前ほど、ドキドキしなかった。

 

「……な、なぜですかっ!?」

 

 俺の発言に、ルナは納得いかないとばかりに声を上げた。

 

 いやまあ……。

 

「あん時の俺は男だったし、ルナの胸が……な? 男的には押し付けられるとドキドキするってーか…………今は逆に胸があるし、なんだったら、ルナの胸が俺の胸に押しあたるだけで、あんましパッとしねーと言うか……」

「そ、そんなっ……今まで、意図的に彩羽ちゃんをドキドキさせていた私の完璧な作戦が……!」

「いやあれ意図的にやってたんかいっ!」

 

 てっきり、箱入りお嬢様特有の、無意識的な物だとばかり思っていたというのに、まさかの意図的だと!?

 

 何してんだマジで!

 

「だ、だって、男の人は女の子のお胸でドキドキするって……」

「たしかにそうだが! その辺はマジで本能レベルで遺伝子に刻み込まれてるくらいだが! だとしてもお前はどっちかと言えば、清楚系だろ!?」

「いえ、私は肉食お嬢様系女子です」

「自覚あったん!?」

「当たり前です。自分の属性を理解してこそ、メインヒロインになれると言うものです」

 

 ルナは一体何を言っているのだろうか。

 

「……お前はどこへ向かってんの?」

 

「彩羽ちゃんのお嫁さんですね」

「…………自分で質問してなんだが……すまん、顔を直視できねぇ……」

 

 やべぇ、こうも真っ直ぐ言われると、さすがに照れる外ないんだが……。

 

 ……くっ、顔が熱い……!

 

「あらあら~? 彩羽ちゃん、照れてるんですかぁ~?」

「て、照れて悪いかっ?」

「いえいえ、むしろそういう彩羽ちゃんが見られて嬉しいくらいですよ~❤」

「なんか俺、ルナにだけは、掌で転がされてる気がするんだが……」

「メインヒロインとは、そう言うものです」

「お前は何を言っているんだ」

 

 世の中のメインヒロイン全員が主人公を掌で転がしていると思うなよ。

 

「ささ、彩羽ちゃん、TS作品定番の、下着購入イベントと行きましょう!」

「お前本当に今日はどうした!?」

「レッツゴー!」

「引っ張んなって! 自分で歩くからぁっ!」

 

 なんか、今日のルナはクソほどテンションが高いらしかった。

 

 

 そんなわけで、ランジェリーショップ。

 

 一度も入ったことがない、と言うわけではないんだが……

 

「なんだろう、この場違い感」

 

 言い表しようのない場違い感が、俺を襲っていた。

 

 いや、今の俺は女(認めたくない現実だが)なんで、別段こうして女性用の下着を売る専門店にいてもおかしくはない。

 

 おかしくはないんだが……

 

「なぁ、ルナ」

「はい、なんですか?」

「……俺は何で、こんなに視線が集中してんだろうなぁ」

「彩羽ちゃんがすごく綺麗だからだと思いますよ?」

「それにしちゃ、視線集まりすぎじゃね……?」

 

 どういうわけか、俺は今、店内にいる店員や客も含む奴らから、謎の視線を一身に受けていた。

 

 何故、下着姿を見ず知らずの奴らに見られにゃならんのだ。

 

 恥ずかしい。恥ずかしいぞ、この状況ッ……!

 

「彩羽ちゃんのスタイル、すごくいいですしね…………むぅ、やっぱり、私よりおっきくないですか? お胸」

「あー……そう見えるか?」

「はい。と言うより、ブラジャーのサイズがFなんですよ? 彩羽ちゃん。反対に私はDです。二カップも違うんですよ? 全然違います!」

「お、おう、そうなのか……」

 

 俺、どうやらルナより胸があるらしい。

 

 …………途中から女になった奴が、最初から女として生まれた奴よりも胸がでかいって……嫌味なんじゃね?

 

 俺、ルナから見たら、存在が嫌味なんじゃね……?

 

「な、なぁ、ルナ」

「はい、なんですか?」

「一つ訊きてーんだが…………胸のサイズで、俺を嫌ったりしない……よな?」

「私がですか?」

「あ、あぁ」

 

 事実、それで別れたカップルがマジでいるらしい。

 

 なお、逆のパターンもあったとか……。

 

 ……その逆パターン。つまり、男同士。男が比べる所と言えば…………そういうことだ。

 

 うえぇ、気持ち悪ぃ……。

 

「そんなことはありませんよ?」

「ほ、ほんとか?」

「はい。朝も言いましたけど、私は彩羽ちゃんという人間そのものを好きになったわけですからね。お胸の大きさで負けても、嫌いになるはずがありません!」

「そ、そうか。ま、まあ、ルナならそう言う――」

「――ですが、何も思わないわけじゃないです。……むむむぅ~~っ! 彩羽ちゃんずるいです! 私よりも巨乳な彩羽ちゃんのお胸なんて……こうですっ!」

「ひゃぅんっ!?」

 

 ルナなら問題ないと思った瞬間、いきなり俺の胸をルナが思いっきり揉んできた。

 

 おかげで、変な声が出ちまった……。

 

「むむむっ……なんて柔らかくて、且つふわふわもちもちなお胸……! 学園で揉んだ時も思いましたけど、すごすぎますっ、彩羽ちゃんのお胸!」

「ちょっ、や、やめっ……ふゃんっ。も、揉むっ、なぁっ……!」

「はっ! す、すみません……つい、私の中の小悪魔な部分が出ちゃいました」

「い、今のは、小悪魔じゃなくて、おっさんじゃね……?」

「むっ、失礼ですよ!」

「……失礼と言うが、お前、普通こう言う場所で人の胸揉むか? しかも俺……上裸なんだが」

 

 そう、実を言うと今の俺は……上裸(一応ブラは着けてる)なのだ。

 

 いやまあ、ランジェリーショップなんで、当たり前のことではある。

 

 あるんだが…………そもそもの話、上裸の女の胸を、別の女が揉んでるとか、仲がいいの度を超えてるだろ。恋人同士だが。

 

「だって、目の前に大好きな人のたわわに実った真っ白な果実があるんですよ!? 彼女として、揉まないわけにはいきませんっ!」

 

 ざわっ――!

 

「お前何言ってんの!?」

 

 公衆の面前でとんでもねぇこと言いやがったんだけど、この彼女っ!

 

 こいつに羞恥心はねーのか!?

 

 …………いやねぇわ。こいつ、肉食系女子になった後と言やぁ、羞恥心なんて遥か彼方へ投げ飛ばしたくらいに、ヤベー状況だったわ……。

 

 ……だが、今の発言は色々とまずいだろ、現に、

 

『ねえ、今あの人彼女って言わなかった?』

『と言うことは、カップル……?』

『え、何あの美少女同士のカップル』

『しかもあっちの黒髪の人、俺って言ってなかった?』

『俺っ娘……もしかして、例の病気を発症した人だったり?』

『でもとりあえず……』

『『『すっごい尊い』』』

 

 こんな風にひそひそと言われてるっぽいしよ……。

 

 ただ、マイナス的な視線ってーよりかは、なんかこう……プラスな視線っぽい、な? だが、それが妙にむず痒い。

 

 まさかとは思うんだが、俺が想像している以上に受け入れられていると言うのか? 同性愛は。

 

「ところで彩羽ちゃん」

「……なんだ?」

「下着の着け心地、いかがですか?」

「あー……そうだな、まあ、悪くはねぇな。ってか、ブラって楽なんだな。初めて知ったよ」

「そうですね。基本的にブラジャーの役割と言うのは、形を綺麗に保つ他に、肩にかかる負担を減らしたりする、と言う意味もあります。何も着けていない時よりも、肩が軽くありませんか?」

「そうだな。割と楽だぞ。……まあ、こう言うのを着けて思うことと言やぁ……なんか、男として大切何かを失っていくような気分、だな……」

 

 遠い目をしながら、俺はそう答えた。

 

 女しか着けない(稀にいるそう言う趣味を持つ男は除き)ものを着けるとか、二日前まで男だった俺からすりゃ、まさに人格破壊兵器的なものなのだ。

 

 何せ、男だった時の人格が、徐々に失われていく気分になるからな……。

 

 あと、

 

「……あれだな。女物のパンツって、すげぇぴったりしてるんだな……」

「逆に、男の人のはどうなんですか?」

「あ? あー、物によっちゃゆったりしてるってか……ボクサーパンツとかじゃない限り、基本的にある程度の余裕はあるぞ。だが、女物の方はフィットしてる感じがするな。なんか、違和感」

「なるほど……ですが、その辺りは徐々に慣れていくかしかないと思いますよ」

「……それもそうだな。まあ、本音としては、慣れたくはねーんだがな……」

 

 俺がこれに慣れた時、それは男としての俺が死ぬときだろう。

 

 …………嫌なもんだなぁ、この病気は。

 

「……さ! 彩羽ちゃん、どんどん試着しますよー」

「は? お前は一体何を言ってるんだ……?」

「いくつか買っておきませんと、後々困りますから。特に、彩羽ちゃんはお胸が大きいですし、彩羽ちゃんに合ったものをいくつか買っておきませんと」

「お、おう。まあその辺はルナに一任するわ……。俺、そういうの詳しくねーからさ」

「ふふ、お任せを! じゃあ、色々持ってきますね!」

「あぁ。あんまし、変なのはやめ――って、もう行っちまった。相変わらず、俺絡みになると、行動が早いな、ルナは」

 

 下着を見繕いに行ったルナの背を見ながら、俺はそう零した。

 

 

 ――そして、現在。

 

 俺の発言が悪かったのだろう。

 

 調子に乗ったルナは、様々な下着を俺に着せて来た。

 

 おかげで、俺たちの周囲には野次馬的な客がいた。

 

 ってか、軽くファッションショーみたいになってんだが!?

 

 しかも、その原因を促進させてる奴ってのが……

 

『お客様、こちらもいかがでしょうか?』

「あ、可愛いですね! 彩羽ちゃん次はこっちをお願いしますっ!」

 

 この店の店員なんだよっ……!

 

 そのきっかけは、ルナが俺に着せるための下着をいくつか持って来て、俺に着せていたことが始まりだ。

 

 この店の試着室は、店の外から見えない場所にある。

 

 店員も女のみで、客も女だけ。

 

 まあ、男が入るにはハードルが高すぎるどころか、よっぽどのイケメンでも、白い目で見られること間違いなしなこの空間には、男はいない。

 

 ……精神的な部分で言えば、俺は女ではなく男ではあるが……外見と言うものは、どんな人間でも第一印象に必ず持って行かれるほどの評価点だ。

 

 つまり、周囲の奴らから見ても、俺は100%女であり、下着姿を見られても恥ずかしくない、などと思っている奴の方が大半だろう。

 

 ただ、これだけならば、ファッションショーもどきになることはない。

 

 しかし、今の俺は美少女と称するほどに整った容姿をしているらしい。

 

 ……そんな奴が、色んな下着を試着していりゃ、そりゃ人目も集まるわ。

 

 で、それを見て何かビビッと来たのか、この店の店長が出て来て、なぜかルナに様々な下着を渡すようになった、というわけだ。

 

「……なぁ、なんで俺、人前で下着姿を晒てんの?」

「綺麗な女の子がいろんな下着を試着していたら、見たくなりません?」

「ならねーよ!?」

「でも、彩羽ちゃんは元々男の子ですよね? 想像とかしなかったんですか?」

「しねーから! 俺はそういうのにあんまし興味なかったんだよ!」

「あ、なるほど。だから、草食系の彩羽ちゃんが、肉食系の私にたじたじになることが多かったんですね」

「今更気付くのか!?」

 

 普通、もっと早い段階で気付くだろ!?

 

 こいつ、たまに天然入るから、疲れんだよなぁ……。

 

「あ、彩羽ちゃんは、どの下着がいいですか?」

「あ? あー……正直、何でもいい。興味ねぇ……」

 

 自分のこととは言え、好き好んで買いたくねーよ、マジで……。

 

「じゃあ、私が選んでもいいですか?」

「なんかお前、すっげえ楽しんでね……?」

「それはもちろん。彩羽ちゃんのコーディネートは楽しいですから! 素材がいいんでしょうね。何を着せても似合うんですよ、彩羽ちゃん」

「そうかぁ? 自分のことだからよ―わからん」

「いえいえ、可愛いですよ、彩羽ちゃん」

 

 何を着せても似合うって言われてもな……。

 

 この姿はどっちかと言えば、綺麗系な気がすんだがな。

 

 可愛い系は似合わないような気がするんだが。

 

「じゃあ、店長さん。これとこれとこれと……あと、こっちと、こっち、それからこれをください!」

「ちょっ、俺そんなに買う金ねーぞ!?」

 

 目の前で急に、大量の下着を指さし、店長に買うという意思表示を見せるルナ。

 

 だが、買うのはあくまでも俺のだ。

 

 正直そんなに買う金はねぇ!

 

 ってか、女物の下着って値段がすげーんだよ! いくらバイトしてるからと言っても、これはさすがに払えん!

 

 そう思っての発言だったのだが、

 

「いえ、これらは全て、彩羽ちゃんにプレゼントしますよ」

 

 ルナが唐突にそんなことを言ってきた。それも、さも当たり前と言わんばかりの様子で。

 

「は?」

「女性用の下着は普通の方々にとって、高いものですから。かと言って、安い物にした場合、長期的な目で見ると、あまりよくないかもしれないので」

「……それで、本音は?」

「私がプレゼントした下着を身に着けた彩羽ちゃんをおそ――じゃなかったです、見てみたいだけです!」

「こんな人が多い場で何言ってんのお前!?」

 

 見ろよ、周囲にいる奴らなんて、

 

『え? あの二人やっぱりデキてるの? やっばー、本当に百合カップルじゃん!』

 

 みたいなことを言ってる奴らが大勢いるぞ!?

 

 しかも、襲うとか言いかけやがったよな?

 

「んむぅ……時間的に、ここしかいられなさそうですね」

「唐突になんだ」

「いえ、この後は私服やパジャマなどを見に行こうかと思っていたのですが……結構時間が経っていたようです。今日は泊まることや遅れることは伝えていないので……」

「なんだ、そういうことか。なら、俺は構わんぞ。……ってか、これだけでどっと疲れたわ……」

 

 何が悲しくて、元男の俺が下着のファッションショー的なことをせにゃならんのだ。

 

 慣れないことをすると、人ってのはストレスが溜まるからなぁ……。

 

 おかげで、変な疲労感が溜まってるよ。

 

「そうですね。私としましても、彩羽ちゃんに無理強いさせる気はありませんからね。なので、今週の土曜日、予定を変更してお洋服を買いに行きましょう!」

「…………オレ、スイゾクカンガイイナー」

「却下です! 沙夜ちゃんから聞いた話ですと、一、二着くらいしか私服はないんですよね? 寝るときは今まで着ていたYシャツみたいですが」

「ちょっ、あいつ何教えてくれてんの!?」

 

 何かしらねぇ間に、変な情報がルナに流れてんだけど!?

 

 あ、あの愚妹めぇ……!

 

「なので、土曜日はショッピングです! あ、どうせなので沙夜ちゃんも呼びましょう」

「は? なんでだ?」

 

 どうして、あの愚妹が出てくる。

 

 俺、デートのつもりだったんだが……。

 

「正直ことを言いますと、支給された衣服はあまり彩羽ちゃんに似合っていませんでした。私としましては、やっぱり可愛い衣服に身を包んだ彩羽ちゃんと水族館デートがしたいんです。

「お、おう」

「とは言っても、私一人だけで見繕うのは大変です。それに、私も彩羽ちゃんの好みは100%知り尽くしているわけではないので、幼いころから彩羽ちゃんのことを知っている沙夜ちゃんなら、いいものを選び出せると思ったからです!」

「…………そ、そっすか。いやまあ……うん。個人的には、ルナとのデートは楽しみだったんだが……俺は何でもいいってあの時言ったしな。OK。土曜日は予定変更して、買い物に行くか」

「はいっ! とびっきり可愛いものを選んであげますね!」

「いや、俺は可愛い系よりも、カジュアル系とかそう言うのがいいんだが――」

「じゃあ、早速沙夜ちゃんに連絡しないとですね! とりあえず、可愛いお洋服を探すのを手伝ってください、でいいですよね!」

「人の話聞いてる!?」

「土曜日が楽しみですね!」

 

 俺が惚れまくってるその満面の笑顔に、俺は押し黙ってしまった。

 

 ……ちなみに、この時、俺らは周り人が大勢いることを忘れ、思わずカップル的会話(?)をした影響からか、店を出る頃にはものすげぇ生暖かい目を向けられることになった。

 

 …………マジで下着選びは勘弁。




 どうも、九十九一です。
 記念すべき初の一話目(この作品の進行方法的な意味で)は、下着選びという、ある意味TS物では定番のものとなりました。まあ、安定だよね。
 一応、今後やるネタはいくつかもらっており、それらは基本的にやる方向でいますが、ネタが尽きたらこの小説投稿が止まるんで……まあ、うん。なるべく、頑張ります。
 次の投稿は、ゴールデンウィーク中です。というか、早ければ、明日か明後日辺りに出ると思います。と言っても、他の作品も同時並行で書くことになるんで、多少は遅れるかもしれませんが。
 とまあ、そんなわけです。時間は10時だと思いますので、よろしくお願いします。
 では。
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