カインの手に勇者の紋章が現れてから数刻。
現在カインは4人の男たちと1つ屋根の下で話を交わしていた。
「それでカインだっけ、結局お前はどこから来たんだよ」
座って話を聞いていたカインに詰め寄る金髪の男。彼は槍の勇者モトヤス、現代で言うチャラい青年といったところだろうか。
自身の身の上を話しロトゼタシア地方の王国から来たということを話す。
「だからそのロトゼタシアというのが知らないと言ってるんですよ」
槍の勇者の問いに何度目かの答えを返したカイン。それに弓の勇者 イツキが呆れたようにまた問う。
さて弓の勇者や槍の勇者とはなんだと。
「俺たち四聖勇者が別世界の日本から来たってことはわかった。だがお前が言うロトゼタシアってのはここにいる誰も聞いたことがない」
そう言う剣の勇者レン。その粗暴な態度にカインも眉をしかめる。
そう四聖勇者、いまこの場にいる剣、槍、弓そして盾の4つの武器を扱う4人の勇者のことだ。
そしてカイン、彼はその4つの枠組みとも外れている。この世界に来た時点で4人は各々の装備を持っておりカインだけは世界に来る前に身につけていた小さな袋しかない。
それを置いておいても剣の勇者の対応が気に食わないカインは剣の勇者を挑発するような言葉を吐く。
「……なに?」
些か不機嫌になった剣の勇者に畳み掛けるように更に挑発するカイン。
「……お、お前!」
カインの言った言葉に激昂しカインの胸ぐらを掴む剣の勇者。それを冷めた目で見るカイン。
一触即発の空気に1人口を挟む男がいた。
「……ロトゼタシア、ロトゼタシアってあれじゃないか? ドラゴンクエストの」
そう言ったのは盾の勇者ナオフミ。その言葉に他の3人は納得がいったように驚く。
知ってる人が居たことに3人同様に驚くカイン。
「……あぁ、やっと思い出したよ。その手の甲のアザになんか見覚えあると思ったんだよな。それロトの紋章だろ?」
「ロトの紋章って、あのロトの紋章か!?」
盾の勇者が言った言葉に驚く槍の勇者。胸ぐらを掴んでいた剣の勇者を突き飛ばしカインの手のアザをマジマジと見つめる。
男にマジマジと手を見られるのは少し気色が悪いななどとカインは思いつつも疑いが晴れるならと好きにさせていた。
「……本当にこれロトの紋章じゃねぇか。ってことは本当にドラクエの世界から来たってのか、しかも勇者」
カインは更に驚いた。なぜなら自身の居た世界ではこの紋章を勇者の証だと知っていることの方が常識だったが、他の世界ではそうとは限らないからだ。この紋章を見てすぐに勇者へと繋げられるということは、こちらの世界のことを何かしらの術で知っているということに他ならない。
そこが気になったカインは4人に何故知っているのかどこで知ったのかどうして知ったのか、その事について詰め寄った。
4人はカインの積極的な様子に若干引きつつも全てのことを話した。
カインの聞いたことを大まかにまとめると
・4人はカインの居た世界をドラゴンクエストという娯楽品を通じて遊んだり知ったりした
・ドラゴンクエストは人が作ったゲームだった
・ドラゴンクエストはロトゼタシア以外にも多数の地方そして彼が居た世界と時間軸での話のゲームもあったと
カインはそれを聞いてふむと座り込んで考える。自身の居た世界や会ってきた人々そして大切な人達との思い出が全てが人によって作り出されたかもしれないと考えると思わず目頭を押さえそうになるが、別世界での話。そういうこともあるかもしれないと納得がいかないものの無理矢理納得することにした。
ガシガシと頭を掻いてその場から立ち上がる。モヤモヤとした気持ちを無理矢理押し込んだせいで少し気持ちが悪く感じてしまう。
そしてカインが彼らの知るドラゴンクエストの勇者だと知るや否や彼らは先程までの態度を一変させ、呪文を見せてくれ特技を見せてくれだと口々に言う。
その要望をカインは全て一蹴する。若干気まずい空気になったところに召使いが彼らに食事の用意が出来たと言ったところで話は終わった。