フォー・ゼロの星が導く異世界生活   作:ヤマト・ゼロ

3 / 13
前回のフォー・ゼロは

突然異世界に召喚されたスバル

行く当ても金もなく

今後に不安に感じたその時

スバルの前に三人組の男が現れた。


第3話「悪・党・出・現」

男たちの侮蔑と嘲弄まじりの視線、

 

それを受けながらスバルもまた彼らを値踏みしていた。

 

見た目はおそらく二十代半ばくらい。

 

薄汚い身なりと、内面のいやしさがそのまま顔に

 

表れたような雰囲気。亜人ではないようだが、

 

善人ではないだろうな。

 

「なるほど、強制戦闘イベント発生か」

 

薄笑いを浮かべる男たちに対し、スバルは顔を拭って慌てて立ち上がる。

 

明らかに物盗り――しかも、

 

世界設定的に物だけじゃなく命まで盗られる可能性がある。

 

ミッション1『物盗りを撃退せよ』の発生だ。

 

クリア条件は敵の撃退。敗北条件はスバルの死亡、といったところである。

 

背中を悪寒が駆け抜けるのを、スバルは自分の頬を叩いて無視する。

 

異世界だからと様子見して、後手に回っては命がヤバい。決断力、

 

それには自信がある。今までも喧嘩は腐るほどやってきた。

 

「それにせっかくの異世界召喚だ。今を楽しもうか。、

もしかしたら召喚特典で何か貰って記憶を消している可能性もある。

頼むぜ過去の俺。使える能力にしてくれよ。

大丈夫、なんかいけるきがする!」

 

「なーんか、ぶつぶつ言ってるよ、アイツ」

 

「状況がわかってないんだろ。教えてやればいいんじゃないか」

 

気分の盛り上がるスバルに対し、男たちの反応はやや冷たい。

 

が、スバルはそんな彼らの態度にめげずに胸を張り、

 

「おっと、調子づいてられんのも今のうちだぜ。言っとくが、

俺はこうやって路地裏でチンピラに絡まれたパターンは日常茶飯事だ。

そいつら同様、明日の俺ぶっ倒して俺の糧にしてやるよ、経験値が」

 

「なに言ってんのかわかんねえけど、俺らを馬鹿にしてんのはわかった。ぶち殺す」

 

「やれるもんなら…やってみな!」

 

言い切って、男たちが動くより先にスバルの先制攻撃が入った。

 

懐に飛び込んで渾身の右ストレート。先頭の男の鼻面を見事に直撃する。

 

期待はあまりしていなかったが、特殊能力とかは無いか。

 

殴られた男は地面に倒れて動かない。そのまま勢いに任せて、

 

スバルは驚いている別の男にも躍りかかった。

 

「食らえ! 風呂上りストレッチが可能としたハイキック!」

 

「ぐはっ!」

 

弧を描く足先が男の側頭部を打ち抜き、壁に叩きつけて二人目を悶絶させる。

 

異世界であっても俺の力が通用してよかった。

 

「思っていたより大したことないなこいつら

さあ、ラスト一人!」

 

勇んで振り向き、最後の男を叩きのめそうとスバルは駆け出す、

 

その最後の男の手の中にきらりと光るナイフを見つけた瞬間、

 

体が固まった。

 

「まじかよ、ここで武器取り出すか、素手で来い素手で!」

 

今まで喧嘩なれしているといっても、相手は素手かバットなどの

 

武器しか使っていなかった。

 

異世界で初めて見るナイフに尻込みしてしまった。

 

流石に刃物は無理。刺されたら終わりだし、ナイフ持ち相手のスキルとかないし。

 

此方も武器かなんかあれば話は別だが、手持ちに武器になりそうなものはない。

 

気付けば一撃食らわして倒したはずの二人も復活している。

 

それぞれ鼻血の垂れる顔を押さえていたり、くらくらする頭を振ったりしているが、

 

それ以外は元気そうだ。

 

「くそ、浅かったか、超パワーあると思って加減しちまったか」

 

「なにわけわかんねえこと言ってやがる! よくもやってくれやがったな!」

 

男がナイフを突き出してくる。要は当たらなければいいんだ

 

俺は何とか震える足に活を入れて、攻撃を避ける。

 

「動くんじゃねぇよ、クソ野郎!」

 

「避けるにきまってるだろが、馬鹿野郎!」

 

唾を飛ばしてがなる男が怒りで顔を真っ赤にし、

 

持ったナイフを逆手に持ちかえるのが見えた。

 

ガシッ!

 

「しまっ!」

 

俺は目の前の男ばかり気にして他の男たちを見ていなかった。

 

ガタイのいい男が俺を後ろから抑え込む。

 

「動けないようにしてから身ぐるみ剥いでやるよ。ふざけた真似しやがって……」

 

「金目の物が目的ならぶっちゃけ無駄だぜ。なにせ俺は一文無し……!」

 

「なら珍しい着物でも履物でもなんでもいーんだよ。路地裏で大ネズミの餌になれ」

 

この世界にもネズミっているんだ。雑魚モンスターっぽい名前で。

 

振り下ろされそうなナイフを見て、そんな現実逃避がぽつりと思い浮かぶ。

 

走馬灯とかは特に見えない。世界がゆっくりに見える現象もなし。

 

俺もさすがにもう無理かと思ったそのときだ。

 

「ちょっとどけどけどけ! そこの奴ら、ホントに邪魔!」

 

切羽詰まった声を上げて、誰かが路地裏に駆け込んできた。

 

ギョッと顔を上げる男たちにならい、スバルも視線だけそちらに向ける。

 

その視界を少女が横切っていく。

 

セミロングの金髪を揺らす、小柄な少女だ。

 

意思の強そうな瞳に、イタズラっぽく覗く八重歯。

 

小生意気そうな顔立ちだが、年相応として見れば可愛げもあるかもしれない。

 

着古した汚い格好の少女は、今まさに強盗殺人が行われる現場に出くわしたのだ。

 

見計らったようなタイミングに、消えかけた希望がスバルの中でガッツポーズを決める。

 

これだ、この展開を待っていた。流れ的にこの子が義侠心溢れる性格で、

 

今にも消えるかも知れないスバルのか細い命の火を助けてくれるような流れに――。

 

「なんかスゴイ現場だけど、ゴメンな! アタシ忙しいんだ! 強く生きてくれ!」

 

「って、ええ!? マジで!?

下手したらもう死にますが!」

 

だがしかし、そんな希望は儚く砕け散った。

 

目が合った少女はスバルに申し訳なさそうに手を上げ、

 

走る勢いを殺さないまま細い路地を駆け抜ける。

 

男たちの後ろを素通りし、行き止まりのはずの奥へ。

 

そのまま袋小路に立てかけてあった板を蹴り、

 

身軽に壁のとっかかりを掴むとあれよという間に建物の上へと消えた。

 

少女の姿が見えなくなり、自然と場に沈黙が落ちる。

 

まさに台風のように一過していった少女。

 

唖然としたのはこの場にいた全員に共通だが、

 

我に返ったスバルの状況が変わっていないのも事実。

 

「今ので毒気が抜かれて気が変わってたりしませんかね!?」

 

「むしろ水差されて気分を害したぜ。楽に逝けると思うなよ?」

 

ぎらつくナイフ男の目がマジなので、

 

「なら、あがかせてもらうぜ、オラァ!」

 

俺は後ろの男に頭突きをし、拘束が緩んだ隙に抜け出す。

 

まだやれると思いなおした。

 

終われない。何もしていないのにこんなところで。

 

確かにまともな人生を歩んできたとは言い難いが、

 

それでもこんな終わり方を迎えるのは酷すぎる。

 

俺が何をしたのかと問えば、先に手を出したには俺だ。

 

だが、こんなそこらのチンピラに殺されるなんて嫌だった。

 

俺は、やりたいことも見つからず、

 

先の事を見ようともせず、問題を後回しにしてきた

 

つけがこれか。俺はそんな半端な自分が嫌だった。

 

こんな空っぽの自分のままで終わることだけはしたくなかった。

 

「――そこまでよ、悪党」

 

その声は雑踏の喧騒も、男たちの野卑な罵声も、

 

スバル自身の荒い呼吸も、なにもかもをねじ伏せて路地裏に響いた。




次回のフォー・ゼロは

スバルのピンチに颯爽と現れた少女

彼女は何者なのか、

次回 第4話「精・霊・使・い」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。