フォー・ゼロの星が導く異世界生活   作:ヤマト・ゼロ

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前回のフォー・ゼロは

自身の死を覚悟した直後

最初の八百屋前に戻っていたスバル

どうするべきか悩む中

またもやチンピラ三人衆に絡まれるスバル。

だが、素手での喧嘩なら負ける気がしない

スバルは難なく三人を倒すのであった。

考えるのは後にし、向かうは盗品蔵へ。


第8話「死・者・蘇・生」

盗品蔵への道を急ぐスバルだったが、

 

以前行った際はサテラの後ろをついていっただけだった為、

 

道順など覚えていなかった。

 

「道に迷ってる暇はねぇ。とにかく、貧民街まで、急げ、俺!」

 

盗品蔵へ急いでいたスバルだったが、意気込み哀しく、

 

位置についての記憶は曖昧だった為、

 

人通りの多い場所で、道を尋ねながら進んでいた所……。

 

「よし!道は大体分かった、後は急ぐだけだ

待ってろよ!サテラ!」

 

「きゃーっ!?」

 

勢いよく走り出したスバルは道で誰かとぶつかってしまったようだ、

 

ぶつかった相手は、亜麻色の髪をセミロングで切り揃えた、愛らしい顔立ちの少女だった。

 

「いたた…も~、なんなの!

ちゃんと前見て走らなきゃダメでしょ!」

 

「悪い!急いでたもんで…痛っ。

あー、クソ、今のですりむいちまったか……」

 

謝ろうと急いで立ち上がれば腕に痛みを覚えた、

 

見れば、先ほどの衝撃で手をすりむいていた。

 

「勢いよく転ばれましたからな。

大丈夫ですか?」

 

少女に横に立っていた老紳士と呼ぶのが相応しい振舞の老人が声を掛けてくる。

 

「ありゃ、ヴィル爺の言う通り、

結構派手にやっちゃってるね」

 

「…フェリス、治して差し上げては?」

 

「ぶつかったのはこの子なのに…。

もう、しょうがないんだから。

フェリちゃんが治してあげるから見せて」

 

少女の言葉の通りぶつかったこちらに非があるのだから

 

ここは迷惑かけずにさっさとたちさろう。

 

「大丈夫だって。それに俺、本当に急いでるからさ」

 

「時間は取らせないから、素直に治療させる事。いいネ?」

 

彼女はそう言って、俺の傷口に手をかざすと光と共にみるみる内に

 

傷が塞がっていく。

 

「おお…治療魔法ってやつか!すげぇな一瞬で治っちまった」

 

始めて見る治療魔法にスバルは感激を覚える。

 

「ふふ~ん、まあね」

 

「ああ、そうだちょうどよかった。

貧民街って、こっちの方向であってるか?」

 

「貧民街へ向かわれるのであれば、

この方向で間違っておりませんが…。

しかし…」

 

二人は俺の身なりを確認し、眉を顰める。

 

「その見た目に加えて、訳ありっぽい目的地。

にゃんだか、怪しいネ

おまけに、随分慌ててるみたいだけど、

貧民街によほど大事な用でもあるのかな?」

 

「急がねぇと、あの子の命が…」

 

「えっ?ちょっとそれ大丈夫なの?」

 

「ふむ、何やら深い事情がおありの様子、

詳しく聞かせてはいただけませんかな?」

 

二人はスバルの切羽詰まった様子に

 

ただ事でないと確信していた。

 

「いやそれが、悠長に話している余裕は

ないんですよ、急いで盗品蔵にいかないと、

女の子が危ない目に遭ってるんだ!」

 

「女の子が危ない目にって…ええ?

まさか、君が助けに行く気にゃの?」

 

「疑わしい気持ちになるのは分かるけど、

本当の事なんだから仕方ねぇ。

とにかく、それで急いでるんだよ!」

 

俺は直ぐにでも貧民街に向かわないといけないんだ。

 

「にゃんだかただ事じゃない感じ?」

 

「急いでいると言われましたが、

貧民街への道程もままならぬご様子。

その盗品蔵の所在はご存じなのですか?」

 

「う…それは、記憶を頼りに…。

貧民街の奥までいけば、

そこに目的の場所があるはずなんだ!」

 

スバルは図星をつかれて狼狽するが、

 

何とか意気込みを叫ぶのであった。

 

「…ふむ」

 

「これまた随分と大雑把だネ。

時間が無くて正確な場所も分からないとか、

頼りににゃいにもほどがあるよ」

 

「分かっただろ?

だからこそ、急がなくちゃならねぇ!」

 

「ですが話を聞く限り、おひとりで向かうには

いささか危険な状況にあると判断せざるを得ませんな」

 

確かに、俺一人行って何が出来るんだと思うが、

 

それでもあの子を置き去りには出来ない!

 

「どう考えてもそうだよネ。

どうする?ヴィル爺」

 

「―では、その貧民街への道行き、

私も同道させていただきたくというのは

いかがですかな?」

 

それは、予想もしなかった提案だった。

 

「―っ、いや、それは助かるけど、

なんでそんな風に?」

 

「貴方のお話が事実なら、一人の女性が

危険な目に遭っているのでしょう。それを

見過ごせば、我々の主に顔向けできません」

 

「フェリちゃんも同意見。

ヴィル爺、お願いしていい?」

 

「ええ、もちろんです、

それで、いかがされますか?」

 

傷の手当までしてもらって

 

そのうえ俺に手を貸してくれるなんて…

 

「…ここで断れるほど、俺も状況を勘違い

出来ていないですよ。正直、一人でどうしよう

って思ってたとこですしね

お願いします!俺に力を貸してください!」

 

「承知しました。

私の事はヴィルヘルムとお呼びください」

 

その老紳士はヴィルヘルムと名乗った。

 

「俺はナツキ・スバルです。

じゃあ、目指すは貧民街の、盗品蔵へ!」

 

 

―〇●〇―

 

 

盗品蔵に行くには、裏通りを通るのが

 

最短ルートだという。ヴィルヘルムと共に、

 

目的地へと向かうスバルだったが、

 

「えーと、ヴィルヘルムさん。

ちょっといいですか?」

 

「どうかしましたかな、スバル殿」

 

俺は見覚えのある路地を通りながら

 

ヴィルヘルムさんに質問する。

 

「貧民街ってのは、この路地を抜けていく

ことになるんですかね?」

 

「ええ、こちらが近道になります。

かなりお急ぎのご様子でしたので…

何か不都合なことでも?」

 

「いや、不都合ていうか。

さっきここでチンピラに絡まれまして…」

 

まさか同じ場所に戻ってこようとは。

 

「二度襲われて、一度はさっき話した女の子が

来てくれて、事なきを得たんですが

その後も襲われて、とりあえず相手を気絶だけさせて逃げてきたので」

 

「また絡まれてしまっては、

余計な時間を費やしかねないと。

相手の人数はいかほどで?」

 

二度ある事は三度あるというしな警戒はした方がいいだろう。

 

「3人でしたけど…仲間を呼んでるかも」

 

「ならば、さしたる問題はないでしょう。

その手合いは、自分たちに大きな数的優位がなければ

襲ってなど来ないものです。ましてや、

スバル殿に一度、痛い目に合わされているのならば

なおさら。ところで、その女性とは、

どういったお知り合いなのですかな?」

 

「俺を助けてくれた恩人だ」

 

放っておけばいいのに俺の事を助けて自分は損をする馬鹿者だ、

 

「受けた恩には報いる、ということですか。

なるほど、殊勝な心がけですな」

 

「自分の用事があっても、

人助けを優先しちゃうようなお人好しで…

そういう子は、放っておいたらダメでしょ?」

 

そんな、子を放っておけず何が出来るとも分からないのに

 

助けに行きたいと願う俺はもっと大馬鹿野郎だからな。

 

「スバル殿の想い、しかと受け止めました。

私の全力をもって、そのお方をお守りいたしましょう」

 

「ありがとう、ヴィルヘルムさん!」

 

 

―〇●〇―

 

 

盗品蔵に到着したスバル達。

 

前の惨状を思い出し、扉を開ける前に気を引き締めるスバルだったが…。

 

「ここだ、間違いねぇ」

 

「なるほど、確かに貧民街の最奥と

言って差し支えない立地ですな」

 

一度訪れた場所だが、やはり不気味な場所だ。

 

「それだけに、ヤバイ客も多いんだろうな、

…気をつけてください、

まだ中にあいつがいるかもしれねぇ」

 

「承知しました。

扉を開けますので、

念のためスバル殿は下がってください」

 

ヴィルヘルムさんは扉を開けようとノブを回そうとしたが、

 

「…施錠されているようですな」

 

「…?さっきはそんなことなかったけど…」

 

さっき来たときは鍵なんて締まってなかった。

 

「御免。どなたかいらっしゃいませんか!」

 

「緊急事態なんだ!誰かいるなら、中に入れてくれ!?」

 

儚い希望だと思いながらも、その木造の扉を軽くノックした。

 

意外と鈍い音が中にも外にも響いたはずだ。が、

 

返ってくるのは居た堪れなくなるほどの無音と無言。

 

その静けさがどうにも恐ろしく、スバルは無駄だと知りながら扉を激しく叩く。

 

「誰か……誰かいるだろ! 頼むよ、返事してくれ……頼む」

 

「人の気配はあるようですが、

出てくる様子がありませんな」

 

「居留守なのか、

それともあいつがまだ中にいて…」

 

俺は最悪の展開が脳裏を過る。

 

「だとしたら、

ここは、扉を蹴破ってでも

押し入った方がよろしいかと」

 

「そうですね。一刻も争う事態なんで、

一発ドカンとお願いします!」

 

扉を蹴り破ろうと後ろに下がると、

 

今まで沈黙を守っていた扉が勢いよく開かれる。

 

「ドカンじゃないわい!

黙って聞いて居れば、符牒も知らん奴らが

何を物騒な相談をしておるんじゃ!!」

 

「…!?あんた…え…?」

 

突然の出来事に驚愕するスバルの瞳に映ったのは、

 

入口で顔を真っ赤にさせた老人がスバルを睨んでいる姿だった。

 

「何じゃお前さんらは、客か?

人の晩酌の邪魔をしおってからに。

これでつまらん用事なら、ひどいぞい」

 

「用事って…けど、あんたさっき…」

 

「ぶつくさと何を言っとる。

じろじろと、儂の顔に何かあるのか?」

 

大柄で、禿頭の老人だ。

 

元は白かったのかもしれない上着は、埃と長年の汗やらなにやらで茶色く変色し、

 

見るからに不衛生な有様だ。ほんのり漂う香ばしい異臭は、アレが原因かもしれない。

 

その衣服の下には筋肉質な肉体が詰まっていて、その年齢を感じさせる

 

見た目に反して弱々しさの一切を思わせない強靭さが見え隠れする。

 

つまるところ、体のでかいハゲの超元気そうなジジイが立っていた。

 

「…いや、馬鹿げた話なんだが、

爺さん…最近、死んだことねぇか?」

 

首と右腕をぶった切られて。

 

その言葉を付け足すのはやめておいた。見たところ、首にも肩にも継ぎ目はない。

 

スバルの問いと視線を受け、老人はしばしその灰色がかった双眸を見開き、

 

それからふと時間が動き出したように破顔した。

 

「確かに死にかけのジジイなのは認めるが、

生憎と死んだ経験はまだないぞ」

 

「どういうことなんだよ…。

じゃあ、さっきまでのあれは

全部夢だったとでも言うのかよ…?」

 

今、こうして言葉を交わしている老人だが――スバルは彼の死体を見たのだ。

 

この場所で、暗闇の中、片腕と喉を刃物で切られて、物言わぬ躯と化したこの老人を。

 

しかし、目に焼きついたその光景を否定するように、老人はスバルの目の前に元気に立っており。

 

その赤ら顔には確かに血の気が通い、大量の出血で病的に

 

青白くなっていた死相とは明確な違いを生んでいた。

 

「どうやら、お聞きしていた話とは

ずいぶん違ったようですな」

 

「いやぁ、それが俺にも何が何やら」

 

老人は間違いなく生きている。そして、それは逆にスバルにも言えることだ。

 

振り返ってみれば、老人と同じくスバルも死んでいるのが当たり前の傷を負った。

 

にも関わらず、そんな痕跡も残らない体でこうしてこの場を訪れている。

 

白昼夢でも見たのではないかと、スバルは自分の頭の中身が信用できなくなってきていた。

 

「ご店主、私からも改めて… ―!?」

 

「―貴様」

 

ヴィルヘルムさんが老人の顔を確認したと思ったら

 

突如二人は一触即発の雰囲気となった。

 

「え、何この雰囲気。

もしかして、知ってる顔だった?」

 

「…いや、まさか。

…存じ上げませんな、このような御仁は」

 

「…儂もこんなジジイ知らんわい」

 

二人はそういうと言葉を発さずにらみ合いだけが続く。

 

「―。」

 

「―。」

 

「知り合いじゃないって…

ならこの険悪な空気、なんなの?」

 

二人の間には、浅からぬ因縁が存在していたが、

 

それは、スバルには分からぬことであった。

 

「…まったく、

せっかくの晩酌の味が飛んで消えたわ

何か口直しに…うん?

お前さん、それは何を持っとる?」

 

「え?ああ、このコンポタスナックか。

俺の地元のお菓子でな。お気に入りなんだよ」

 

なにせこのスナックが食いたくてコンビニに

 

行ったんだからな。

 

「どれどれ…。おお、中々美味いもんじゃの」

 

「そうだろそうだろ…

って、勝手に食ってんじゃねぇよ!」

 

いつの間にかスナック菓子の袋を奪われて

 

中身を食べられてしまっていた。

 

「ケチなこと言うでないわい。

口直しの礼じゃ、

話位なら聞いてやらんことも無いぞ」

 

どうやら、大人気のスナックは

 

世界を越えても人を笑顔に出来る様だ。

 

こうして、スバルは最悪の展開を逃れることが出来たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回のフォー・ゼロは

思いがけぬ助太刀を得られたスバルは

急ぎ盗品蔵へ

到着したスバルを待っていたのは

死んだはずの老人だった。

そこへ盗人の少女も合流したことで、

事態は急変する。

スバルは無事にサテラの微章を取り戻せるのか

次回 第9話「交・渉・開・始」

異世界!SwitchON!
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