スカイ「朝起きたらちっちゃくなってたんだけど」 作:アメざいく
昨日は、いたって普通の日だったはずだった。
いつものようにクラスのみんなとオチのない話で笑いあって、裏庭で野良猫たちとじゃれあい、フラワーと一緒に、彼女の手作りのお弁当を食べる。
・・・昨日のお弁当はいつもより気持ち甘かった気がする。「味付け変えた?」と質問をすると、彼女はばれちゃいましたかと言わんばかりの表情で笑った。
それが昨日であって、繰り返すようで悪いが、この『昨日』はいたって何の変哲もない日であったはずだ。それなのに。そうだというのに。
「・・・・・・・。」
朝起きたら、ちっちゃくなっていた。
「・・・は?」
とりあえず全身がうつりそうな姿見の前に立って、その場で一周くるっと回ってみる。
幼児退行、というには年上すぎる。・・・フラワーと同い年くらいか?いやワンチャン年下という可能性も・・・。
「・・・・・・。」
ただ単に寝ぼけているだけかもと思い、自分の頬をぺちっと叩く。・・・痛い。そして私の姿が元に戻っているわけでもない。・・・という事は、現実か・・・?
「・・・・・え?」
お、落ち着け。落ち着くんだ自分。・・・あっそうだ、フラワーに相談しよう。早朝だという事を視野に入れず、私は机の上に放置してあったスマホをひったくる。
「・・・も、もしもしフラワー?ちょっと重要な相談があるんだけ、ど・・・」
早朝だという事を一切視野に入れず、私・・・ニシノフラワーは、美浦寮へと走る。
さすがに寮内を全力疾走なんてことはしなかったが、それでも音が周りの部屋に聞こえない程度には廊下を走った。まだバクシンオーさんが起きていなくて助かる。
早朝にも関わらず、唐突にかかって来たスカイさんからの電話。電話の向こうの彼女には、いつもの余裕なんてこれっぽっちも感じられなくて。・・・直感的に、スカイさんが危ないと感じた。
(やっぱり、あの薬は、―――とんでもないものだったんだ・・・!!)
ようやく彼女の部屋にたどり着くと、私はドアを破壊せんばかりの勢いで部屋の中に突入する。
突撃して真っ先に目に入ってきたのは、スカイさ・・・なにこのかわいい生き物。
「フラワー?・・・どしたの?ドアの前で立ち尽くしちゃっ」
その言葉の続きを聞かず、私は思わず彼女を抱きしめる。・・・しまった、という後悔の念が、ワンテンポ遅れて頭の中にやってきた。
・・・同じ高さで、お互いの視線が合う。いつも見上げるだけだった透き通った水色の瞳が、私の目に飛び込んできた。
私と同じくらいにちっちゃくなってしまった彼女の頬に、ゆっくりと手をかける。
そして、彼女の小ぶりな唇に、私の唇を重ねて―――
「ちょっ・・・ストップ!!すとーっぷ!!」
―――ねようとした瞬間、彼女にすごい勢いで止められる。
「・・・・・あ」
顔を紅潮させている可愛い生き物・・・改め、ちっちゃくなったスカイさんの姿を見て、私はようやく今自分が何をしようとしていたのか理解する。
「うわぁぁっすいません!!本当に!!」
「・・・つーん。」
「ちょっ・・・ちょっと待ってくださいよスカイさん!!どうしてさっきから口きいてくれないんですか~っ!!」
何か言いたげな目で、彼女は私のほうをちらっと見る。・・・が、その直後またそっぽを向いてしまった。・・・なぜだ。なぜスカイさんはこんなにも不機嫌なんだ・・・。
「・・・ロリコンなフラワーさんのことはもう知りませ~んだ・・・」
「そんなぁぁっ!!」
ちっちゃいスカイさんとの学園生活は、なにやら前途多難な予感がしました・・・。