スカイ「朝起きたらちっちゃくなってたんだけど」 作:アメざいく
「今日はなんだか、いいことが起きそうな気がするっ!!」
フクちゃん先輩から【今日面白いことが起こるかもしれない】というお告げを貰って、のんびり部屋に引きこもっている私ではない。うっきうっきで普段よりもずっと軽やかな足取りで美浦寮へと向かう。タンホイザステップなんて命名してもいいかもしれない。
・・・幸い見回りのひとも寮の入り口にはいなかった。らっきー。
「おっはよースカイ!!あっそびに、きったよーっ!!
・・・って、あれ?・・・スカイなんかちっちゃくない・・・?」
スカイの自室のドアを開けるや否や視界に飛び込んできたのは、ベッドの上にひとりちょこんと座る、スカイによく似たちょっと年下のウマ娘ちゃん。・・・もっと踏み込んでいうなら、スカイの年齢をそのままちょっと下げたように見える。
「えっと・・・ねぇねぇ君、お母さんは誰かな?」
「それは私の未来に対する皮肉か?」
冗談半分でそう声をかけると、どこか不機嫌そうな顔で少女がそう返してくる。・・・間違いない、この不機嫌さと口調は・・・スカイだ!!なんかちっちゃくなってるけどスカイだ!!
「どしたの!?」
「いや~それが、自分でもよくわかんなくってね・・・?」
スカイは私の質問に困り顔でそう返すと、こてっと首をかしげる。
(かっ・・・可愛い!!可愛いけど・・・ダメだ、自重するんですマチカネタンホイザ・・・)
「・・・ちなみにさっきの皮肉、完全にあんたに対するブーメランになるけどね・・・ついでにあたしにも・・・」
「うわぁっ!?」
背後から唐突に聞こえてきたそんな声に驚き、ばっと後ろを振り返る。
・・・ナイスネイチャが、ちょっとした自虐じみた表情を浮かべて立っていた。
「ネイチャ!?・・・なんでここに!?」
「いや鍵開いてたし・・・」
悪びれる様子もなくネイチャがそう答える。・・・でもノックくらいしてくれないと心臓に悪いよ・・・。
・・・まぁいいや。このタイミングでネイチャが来てくれたのはありがたい。あのネイチャことだ。きっと、この事態のいい解決方法を発見してくれる―――はず。
「・・・やっぱタキオンの仕業じゃない?」
「いや~、私もそれ思ったんだけどね?」
なんでもスカイいわく、ここ数日タキオンの怪しげな薬品を摂取したり、薬品が混じっていそうなものを食べた覚えもないらしい。それどころかタキオンに接触すらしていないという。
「ん~・・・となると、自然現象みたいなやつかな?」
「いや~でも、自然現象では説明つかないと思うけどねぇ・・・絶対なんか裏がある」
だが、このトレセンも案外狭いのだ。この現象を引き起こせそうなのはタキオン(強いて言うならそれと某金船)くらいしかいないのだ。つまり間違いなくタキオンが絡んでいる。・・・だが、この現象においてタキオンが絡めそうなタイミングが、そもそも存在しないのだ。
(―――あれ?これ迷宮入りじゃね?)
「果たしてスカイは無事もとに戻れるのか・・・タンホイザはどう思う?」
「いや~、私は数日くらいでもとに戻ると思ってるけどなぁ・・・」
「――――【薬の効果が切れてもとに戻るのはいつ頃なのか】?」
ラボ・・・とは名ばかりの空き教室にて、寝起きと思しきアグネスタキオンさんが、眠そうな目をこすりながらそういう。・・・また徹夜で実験でもしていたのだろうか。
「あの薬品は時間経過とともに効果が薄れていくタイプの薬ではなくてだな・・・もとに戻すためには対として作ったこの、えっと・・・逆に年齢を引き上げる薬品を飲ませればいいんだ。だが・・・
・・・なぜそんなことを聞く?」
淡い空色の薬品の入った試験管を片手に持つと、タキオンさんは私―――ニシノフラワーを訝しげに見つめる。
「いっいえ、その・・・やっぱり、使用上の注意事項みたいなのって聞いておきたいじゃないですか・・・?」
「・・・ふ~ん・・・」
彼女はそうとだけ返答すると、手に持っていた試験管を無言のままこちらに投げ渡してくる。
―――試験管の中の空色が揺れていた。