スカイ「朝起きたらちっちゃくなってたんだけど」 作:アメざいく
「どうやってスカイに薬を飲ませたのか、教えなさい!!」
ここは校舎内の空き教室・・・をタキオンが占拠したことで完成してしまったラボ内。
あたし―――ナイスネイチャは、部屋内で留守番となったスカイとタンホイザのほうと繋がったスマホ(テレビ電話モード)を片手に、タキオンを問い詰めていた・・・。
「だいじょうぶかいネイチャ君、今日はやけに不機嫌じゃないか~。
・・・もしかして、トレーナー君の不機嫌さがうつったのかい?」
「今日はまだあいつに会って無いから無関係」
いつもより数割増し不機嫌な口調で、あたしは乱暴にそう返す。画面の向こうのタンホイザたちが何やらひそひそと喋っているのが見えたので、睨んで黙らせる。
「とにかく、あたしの質問に答えなさい。もしくはとっととスカイをもとに戻すための解毒剤か何かを渡しなさい。・・・そーきゅーに」
「渡したいのはやまやまなのだが・・・あいにく解毒剤は一点物でね。それもついさっき別のウマ娘に渡してしまったのだよ。」
『はぁ!?』
画面の向こうからスカイのそんな声が聞こえる。・・・相当不機嫌な声だった。不機嫌さが伝染しているのかもしれない。
「・・・誰?それ。」
「それは・・・言えない。そういう約束なんだ」
タキオンはそう言うと、ふいっと後ろを向く。・・・この期に及んでお茶を濁すつもりか。
「約束も信用もへちまもない!!とっとと教えなさい!!押しかけて問い詰めるから」
きっとタキオンの後姿を睨む。そっちがお茶を濁すスタンスを変えないのなら、そのお茶の入った湯呑ごとぶっ壊してやる。そんな気分だった。
『ちょっ・・・ネイチャ!!今回はその、いったん引いたほうがいいよ~!!』
机の上に放置したままになっていたスマホから、タンホイザのそんな声が聞こえる。・・・仕方あるまい。
スマホをひったくると、あたしは足早にラボを後にする。・・・どうでもいいけど、もうしばらく紅茶は飲みたくなかった。
・・・決して軽くはない重い足取りで、私―――ニシノフラワーは、とぼとぼとスカイさんの部屋へと向かう。
さっきタキオンさんから貰った、あの試験管。綺麗な空色をしていたそれは、私にとってとても魅力的で・・・悪魔のような薬だった。
(―――あの薬を使えば、スカイさんはもとに戻る・・・)
そもそもなんで私はあの薬・・・タキオンさんに無茶を言って作ってもらった年齢を退行させてしまう薬を、スカイさんに飲ませようと思い立ったのだろう。結果としていまだに脳内の大半を罪悪感が渦巻いているというのに。
でも、もう少しこのままでいたいという自分も、・・・確かに頭の片隅にいるのだ。
―――私と同じ高さで目線が合って、悪戯っ子のような瞳をした今のスカイさんと、大人っぽくて、いつも私をリードしてくれる、オリジナルのスカイさん。どちらも中身は同じ【セイウンスカイ】であって、ただ外見が違うだけ・・・だが、どうにもそのことに引っ張られてしまう。
――――今のスカイさんには、オリジナルの時のように接することができない。
・・・もし、私があんな薬のことなんか思いつかなかったら。―――こんなにぐだぐだと悩む必要は、無かったのだろうか。
(―――私は・・・)
「とにかく、あたしは諦めない。スカイをこんなにした犯人を絶対にあぶりだす!!
・・・どんな手を使ってでもね!!」
スカイさんの部屋のドアノブに手をかけようとすると、ネイチャさんのそんな声がドア越しに飛び込んできた。―――一瞬ドアの前で硬直する。
「こうなったら何かの欠片でも見つけるまで今日は寝ない!!ほらタンホイザ!!あんたも来なさい!!」
「えぇ~っ!!なんで~っ!?」
目の前のドアが乱暴に開く。・・・タンホイザさんを引きずって現れた彼女が私に気づくと、ばつが悪そうに頭を掻いた。
「あっ・・・あっははは・・・ごめん。ちょっと・・・びっくり、・・・させちゃった?」
「いっいえ・・・だいじょうぶ、です・・・。」
「あっ!!じゃっじゃぁ、あたしはこのへんで・・・その・・・」
その言葉を言い終わらないうちに、ネイチャさんはタンホイザさんを引きずったままどこかへと去っていく。
(――――私は、・・・どうすればいいんだ?)
去っていく彼女の姿を見て、私はそう思った。