スカイ「朝起きたらちっちゃくなってたんだけど」   作:アメざいく

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#6 寂しがりタキオンとタンホイザの思惑

 

「やれやれ・・・今日はやけに妙な客人が多かったな・・・」

 

そんなことをつぶやきながら、私・・・アグネスタキオンは、飲み終わったティーカップをシンクへと運ぶ。・・・そのつぶやきに何かを返してくれる人物は誰もいなかった。・・・静かだ。前まではこれが普通だったというのに、心なしか寂しい。・・・きっと今朝のにぎやかさに慣れてしまったせいだろう。

 

―――フラワー君が来て、前に私が渡した薬の解毒剤を持っていった。それからしばらく経った頃、ナイスネイチャ君が同じ解毒剤を求め、【私があの薬をどうやってスカイ君に飲ませたのか】を問い詰めてきた。

 

・・・だが、ネイチャ君のその質問に対しては、プライバシーの保護とか約束とかそう言ったものを抜きにしても、私に答えることはできない。

 

そのことはすべて、私が薬を渡して、その薬をスカイ君に飲ませたのであろう張本人―――フラワー君にしかわからないのだから。

 

「・・・カフェ~、トレーナーく~ん・・・。」

 

誰もいないとはわかっていても、くだらない希望を抱きながらそう言ってしまう。・・・別にこれは寂しいわけではない。せっかく新しい薬品を作ったというのに、その被験者・・・もといモルモット君が不在というのが悔しかっただけだ。・・・決して寂しいわけではない。

 

その直後、ラボのドアが軽くノックされて開く。―――まさか、本当にトレーナー君が―――

 

「―――って、なんだ君か・・・」

「いやなんだって何?」

 

久々に私のラボへとやって来た犠牲者・・・もとい来客はカフェでもトレーナー君でもなく、相も変わらず3代目だというキャスケットを装備していたひとりのウマ娘であった。―――マチカネタンホイザ。

 

「・・・まったく、今日はやけに珍しい来客が多い日だねぇ・・・」

「まぁそうかも?・・・そんなことより、今日はタキオンに聞きたいことがあって来たの」

 

タンホイザ君はそう言うと、私のデスクの近くにあった回転式チェアに座る。・・・もともとトレーナー君の定位置みたいなエリアだったので、少しばかり複雑な心境にな―――おっと失敬。

 

「・・・聞きたいこと?」

「うん。教えてよ。

―――スカイが飲んだんだろう薬・・・それの効果って何?」

 

どこか探るような瞳で、彼女は私をじっと見つめる。・・・適当にお茶を濁したとしても、彼女からは逃げられはしないということを察した。

 

「・・・あの薬はもともと未完成品でね。・・・まぁ未完成というよりかは、厳密には試験運用を行っていない代物・・・まぁいわば、試作品やプロトタイプと言ったところだ」

 

他に行いたかった研究があったのも重なり、試験運用も確認もしないままフラワー君に渡してしまった。追加で製造した解毒剤も、『理論上は』あの薬の効果を完全に消す・・・というよりはか中和させることで、薬を使う前の状態まで戻す・・・ことが出来るはずなのだ。

 

・・・無論、こちらも試験運用を行っていないので確証はないが。

 

「理論上、あれは対象の身体と精神・記憶を幼少期の状態まで退行させる・・・いわゆる幼児退行の薬だ。・・・あくまで理論上の話だがね」

 

「―――でも、スカイは体がちっちゃくなっても、記憶は巻き戻されてなかった。それに・・・幼児というよりかは、あれはせいぜい小学校高学年くらいじゃない?」

 

「・・・きっと試験運用を行わなかった弊害が、ここに出ているんだ。・・・そもそも当初の私のプランには入っていなかった代物だし、その他いろいろなことも重なって色々と適当に雑になってしまうのはしょうがないというわけで・・・」

「こら、早口でぶつぶつ言わない」

 

言い訳みたいな言い訳を彼女がずばっと遮ると、ポケットから空色の薬品の入った試験管を取り出す。・・・その試験管、どこかで見たような・・・

 

「この薬では理論上でしかあの薬の解毒はできないって事だよね?・・・試験運用をしたことがないから」

「あっ・・・あぁ、そうだが・・・」

 

あれ?・・・なんだか嫌な予感が・・・

 

「・・・だったら、私がその試験運用の被験者になる。・・・そうすれば、理論上うんぬんじゃなくて、実際に効果があるって確証のある解毒剤が作れるんだよね?」

 

・・・あぁ、そうだが・・・いいのか?徹夜はもちろんのこと・・・最悪、命の危険も―――

 

 

「スカイのためだから。―――悪魔と相乗り、してあげる」

 

 

 

 

 

 

「う~ん・・・あれ?」

 

朝。カーテンから差し込む日の明かりで、私―――セイウンスカイは目を覚ます。・・・あれ?・・・ここ、どこだ・・・?

 

「・・・私の、家じゃ、・・・ない」

 

きょろきょろとあたりを見回す。・・・おかしい。何の見覚えもない。・・・なんだ、この部屋。

・・・ふと横を見ると、見慣れた黒髪が視界に入った。

 

「・・・フラワー?」

 

幼馴染であり後輩であった彼女は、私に身を任せるようにしてすやすやと寝ていた。・・・でも、私の知ってるフラワーより、ちょっと大人びているような・・・

 

「・・・どうなってんの?」

 

 

 

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