DOG DAYS ~桜の花が舞う頃に~(凍結中)   作:緋奈桜

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2話 ここはどこ? え? 異世界!?

 えぇー、俺は只今空にいます。いや……落ちています。はい、落下中です。2()()()1()()で。

 

「「うわぁぁぁぁぁ」」

 

「俺空にいるよ! 浮いてるよ!」

 

 もうパニック状態です。だって、下に広がっている場所がもう大自然だもの。家は? 建物は? あっ! なんかそれっぽい物があった。でも数が少ない? ていうか、島が空に浮いてない? 日本にこんな場所あったかなぁ……。       

 

「こんなことなら滝からのバンジージャンプとかをやっておくんだったぁぁ」

 

「ねぇ、これどうなってるの? それと、バンジーやってたところで関係ないよね!?」

 

「知るかー。俺が聞きたいわぁ! それもそうか……あ、シンク飴なめるか?」

 

「えぇぇぇ! この状況で? くれるんだったらもちろん貰うけど」

 

 俺は現実逃避をすることにした。だって、考えたってしょうがないことってあるよね? 例えば、朝から天気が良いから急遽ピクニックに出かけたけど、帰りに土砂降りに遭って雨具がなかったためにずぶ濡れになって帰ったり……楽しみにしていた遠足の当日に高熱を出してしまって行けなくなってしまったりとか……

そんなことを頭の片隅で思いつつポケットから飴玉を取り出して、手足をばたつかせなんとかシンクのいる場所まで近寄り、飴玉を手渡した。渡した拍子にシンクの手とぶつかってしまい、日頃から手首に付けていたブレスレットが外れてしまった。

 

「あっ……」

 

 落下中ということも忘れて、外れてしまったブレスレットに手を伸ばす。必死にもがくとなんとかブレスレットに手が届き、それをもとあった場所――手首に付け直す。するといきなりブレスレットから桜色――淡紅色の光が溢れ出した。

 

「ごめん! セッカって、えぇぇぇ!」

 

「次から次へとなんなんだぁぁぁ!」

 

 つぶやいた言葉もむなしく俺は桜色の光に包まれた。

 

 

 

 

 気が付くと石碑の前に俺は倒れていた。

 

「いててて、ん? ここは?」

 

 起き上がって改めて周りを見てみると、そこは森であった。ただ、今いる場所だけが少し開けており、ちょっとした公園ぐらいの広さがあった。その真ん中には、桜の木と石碑が建っており、石碑を囲うように周りには色とりどりの花が咲き誇っていた。

 

「ここにも桜ってあるんだ……。てか、もう咲いてるんだ」

 

 などとしみじみ思っていると、自分の置かれた状況をだんだんと思いだしてきた。

 

ええっと、確かシンクと一緒に穴へ落ちて、そしたら空中に投げ出されて……自棄になったから飴でも舐めようと思って、シンクにも飴を渡した時にブレスレットが外れたんだよな。そして、ブレスレットに手が届いたから付け直した……と。うん、そこまでは良い。ん? シンクがいない……が、まぁ問題はブレスレットがいきなり光りだした事だよな。シンクは、頑張ってくれ……

 

「あれ? 今は光ってないのか。さっきの光の色ってどこかで見たことあると思ったらこの桜の花びらと一緒だったんだな」

 

 そういやぁ確かベッキーってこんな感じのファンタジー物語が好きなんだっけ? こんな体験をベッキーに話したら目を輝かせて寄ってくるんだろうなぁ。っと、そういや石碑の前に座りっぱなしだった。なんの石碑かわからないけど、まずいよね。

 

 そう思い立ち上がってから、何の石碑なのかと気になって見てみると石碑には何やら文章が書かれていた。

 

「これ、なんて読むんだよ……。さっぱりわからねぇ……ん?」

 

 石碑には、ほとんどわからない文字? で書かれており全く読めなかったのだが、最後の方に小さな文字で……俺にもわかる文字で書かれていた……そう、(・・)(・・)(・・)で。

 

 

 ――あなたがこれを読んでいるということは帰ってきたのですね……これからあなたには苦難が待ち受けているはずです。その中で、様々な出会いや別れがあることでしょう……中には悲しいこともあるかも知れません。それでも、ここは皆暖かい人達ばかりです。詳しいことはダルキアンに頼んでいるので、まずは桜の木の奥を目指しなさい。すぐに大きなお城が見えてくるはずです。まずは、そこへ向かいなさい。あなたに幸あらんことを願っています。――

 

 

 石碑に書かれていた文字は、風化したのか所々擦れており、わからないところもあった。そのため、誰宛に書かれたものなのか、誰が書いたものなのかわからなかったが、少なくとも日本人に向けて書かれたものということまではわかった。

 これを書いた人が誰に伝えたかったのか解らない……だけど、ここのこともよくわからないしとりあえずダルキアンって人に会えばいいのかな?

 

「まぁ、書かれていた通りにあの奥を目指しますか」

 

そういって雪花は桜の木の奥にそびえ建つであろうお城を目指して歩き出した。

 

 

 

 

 その頃シンクはというと……。

 

「うぉぉ、飛んでるー」

 

「飛びますよー。ハーランは飛ぶの上手なんです」

 

 戦場の上空をハーランと呼ばれるセルクルの背中に女の子と一緒に乗ってお城に向かっていた。

 

「あ!姫様が、勇者様を連れて帰ってくるであります」

 

「「「おぉぉ」」」

 

 お城から戦場を覗いていた小さな女の子は、目の前に現れたセルクルに乗っている人物を見つけて叫んだ。

 

『今! 大変なニュースが入りました!!』

 

『ミルヒオーレ姫がこの決戦に勇者召喚を使用しました! これはすごい! 戦場に勇者が現れるのを目にするのは私も初めてです! 』

 

『さぁ! ビスコッティの勇者はどんな勇者だ!』

 

 勇者ことシンクはお城に到着した後、メイドの皆さんに着替えさせられてあっという間に颯爽と戦場に降臨していた。

 

「姫様からのお呼びに預り、勇者シンク只今見参!」

 

 

 

 

 放送? 何かの実況と思われるものが聞こえてきたときには雪花はようやく森を抜け出したところだった。桜の木から奥に進んでいくと次第に建物がよく見えるようになってきたので間違ってはいないな……と思いつつ歩くこと約20分。やっと抜けたと思ったら目の前に広がっていた光景に驚いた。

 

「ここは、ホントどこなんですかねー」

 

 目の前にはどうみても日本で見るようなアスレチック広場みたいなんだけど、みんな手に武器を持ってるし……というか戦っていた。その上空には立方体の箱のようなものが浮いており、そこには映像が映っていた。よく見ているとそこから音も聞こえているようだった。

 

「さっき聞こえてきたのはこれかぁ」

 

 さて、どうしよう。ここを突っ切って行かなければ奥の建物につかないし、かといって道が分からないから回り道もできないし……。しょうがない、腹を括りますかー。山で熊から逃げるのに比べたらこの中を駆け抜けるのは楽だよな……きっと。あの時は、ホント焦ったなぁ。これも稽古の内じゃ! とか言いながら山に連れてきて自分は颯爽といなくなるんだもんな。

 

 そう腹を括ってからの雪花の行動は速かった。万が一に備えて捻挫とかしないように軽く準備運動を済ませ、いつも鞄の中に入れて持ち歩いている足袋に履き替えてから建物に向かって一直線に駆け出した。最初のころは人数がまばらだったので軽く避けて進んでいたのだが少し進むと人数が増えてきた。増えてきただけならまだよかったのだが、正体不明の乱入者が現れたことでみんなの意識がこちらに向いてしまった。

 すると、なぜかみんながこちらに向かってくるので避けるのも一苦労となり雪花はいったん足を止めた。

 

 駆け抜けたほうが楽だと思ったのになぁ……失敗だったかも……。でも、ここまで来てしまったらとことん進むしかない……よね……? ん?

 

 立ち止まったことにより、周りの様子がよく見えた。それに伴い今まで見えていなかった物にも気が付いた。なんと、周りの人がみんな頭に獣のような耳が、お尻のあたりには尻尾が生えていた。これには流石の雪花も驚いた。

 

「な……なんで、耳と尻尾が生えているんだよぉぉぉ!」

 

 穴に落ちたり、いきなりブレスレットが光ったり、そして今度は耳と尻尾かよ!? さすがに容量オーバーで頭がパンクするぞ……。もういろいろと諦めた方がいいのかな……。こんなに続いてたら先が思いやられる…

 

「貴様ぁ! 呆けていないで質問に答えろ! どこの者だ!」

 

 どうやら考え事をしているうちに、なにか聞かれていたらしい。なんて答えればいいんだろ? とりあえず言葉は通じるみたいだし、余計なこと伝えて怒らせてもしょうがないし……。よし、決めた。はぐらかそう。

 

「ええっと、さすらいの旅人……です」

 

「んなわけあるかー!! そのような恰好の者見たことないわ! ビスコッティかそれともガレットの者か!」

 

 ビスコッティ? ガレット? なんじゃそれ? 御菓子? とは言え、そんなに俺の恰好が不思議か? 髪の毛は普通。服は、学生服……じゃなくて着替えたんだった。今は稽古の時の服だから、うん。まんま和服だね。これか! この和服がいけなかったのか? でもなぁ、動くときはいつもこの恰好だからなぁ。最初はなぜ和服? って思ってた時期もあったけど、いつの間にか違和感なくなってたし……もう付き合いきれん。てか、話を信じてくれないだろうし、殺されたりしたらそれこそ嫌だ! ってことなんで、強硬突破で進むしかないか……。

 雪花の恰好は、下は黒の袴を穿いており、上には中に黒いインナー。草色の長着を着てその上から水色の羽織を着ていた。そして、変な恰好ともいえるもの。そう、雪花が穿いている靴。――足袋である――と背中に背負った見たことがない鞄。これのせいで、変な恰好と見られていた。こちらの世界にも、足袋のようなものはあるのだが、それはあまり戦などでは使用されていない。それに加え見たことがない鞄。これが余計に気になったのである。両陣営からしてみれば、相手――敵国の秘密兵器ではないのか? という疑惑を高めるのには十分なものであった。それでなくても、先程聞こえてきた『勇者』という存在も大いに関係していた。

 

 

「えぇっと、ひとまず通しては頂けないでしょうか?」

 

「どちらの間者か分からぬ上は、ここを通すわけにはいかん」

 

「ですよね……では、押して参る!!」

 

「なん……だと! やはり貴様敵国の……は?」

 

 驚くのも無理はなかった。話していた相手が急に目の前から消えたのだから。それも、自分に向かって突撃してくるものかと思っていたものだから……。

 消えた本人……雪花はというと相手に接近はしたのだが、攻撃もせずに横を通り抜けただけだった。雪花は暇さえあれば山に籠り、ひたすら熊と追いかけっこしていたおかげで足は速かった。それもそのはず、野生の熊は特に()()()()()()なんかは子供を守るために本気で仕留める気迫でこっちを襲ってくるため、ひたすら走ることしか逃げ道はないのだから、生きるために走っていれば知らぬうちに速くなるというものである。

 とはいえ、雪花自身は今まで自分の足の速さに気が付いていなかった。爺さんと稽古をしていても、いつも雪花のことを追い抜いたり、目の前から消えたりなどしょっちゅうあることだった。そのため、この時あっさり駆け抜けられたことに()()()()()()よりも驚いていた。と同時にわくわくしてきたのである。

 

「あれ? なんかあっけないな。ん? 爺さんが異常だったのかな?」

 

 そう呟きながら戦場を駆け抜けていった。避けきれない相手だけを殴ったり蹴りを入れたりしながら。するとボンッと音がしたかと思うと小さい玉みたいになった。驚いている暇もないので気にしないことにして突き進むことにした。

 

 

 

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