DOG DAYS ~桜の花が舞う頃に~(凍結中) 作:緋奈桜
戦場を駆け抜けること約10分。またまた訳のわからないとこに出てしまった。今度は目の前に大きなすり鉢……蟻地獄のような場所に出てきた。ここに来るまでもそうだったが、この中でも戦闘が繰り広げられている。
「こりゃあ落ちたらなかなか上がれないなぁ」
呆けて中を眺めているとダチョウのような鳥に跨っている女性が目の前を華麗に飛ぶところであった。雪花はその光景に目を奪われていると、緑色の髪をしたやはり耳が生えている女の子だろう……と一緒に見知った顔が、騎乗している女性に向かって跳躍してきた。だが、2人の攻撃は当たらずに振り下ろした武器同士がぶつかり合い女の子が使用している双剣と思われる武器が欠けてしまった。
女性は2人の攻撃を躱した後、何やら手にいきなり斧のような武器をどこからともなく出して、手の甲が光ったかと思うと2人に向けて斧の先から閃光を放った。2人は空中にいたため避けることができずに閃光に打ち抜かれて地面に叩きつけられた。
「うわー、なんかすげぇ。てか、何故シンクが戦っているんだ? っと」
とりあえず、訳が分からなくてもどうやら友達がピンチっぽいので助太刀に入ることにした。すり鉢状の坂を滑り降りてシンクと女の子が叩きつけられた場所まで向かう。すると、女の子を押し倒すようにシンクが上に倒れていた。
「いったぁ……」
「シンクー。お前はいったい何をやってんだ! このやろう!」
「勇者! お前は何なん……だ。……え?」
女の子が驚くのも無理はない。いきなり現れた第三者にシンクがぶん殴られて吹っ飛んだからだ。第三者とは雪花である。女の子をシンクが押し倒したわけではないのだが、目の前の光景に戸惑ってつい手が出てしまったのである。つい、で済ませていいかはよくないが、やってしまったものは仕様がない。
「あー……すまん、シンク。やりすぎた。っと大丈夫ですか?」
そう言って女の子に手を差し出すと一瞬戸惑ったみたいだが
「すまん」
と言って差し出した手をつかんで立ち上がった。
「ところで、貴様は……!! いかん、避けるぞ!」
「獅子王……炎陣!」
何事かと思い後ろを振り返ると、先ほど2人を打ち抜いた女性が今度は地面から炎を吹上げ、上空からは炎を纏った岩が降り注ぐところだった。周りにいた人たちはその威力を知っているのだろうか。一目散に急いで逃げている……がそれでも巻き添えをくらって玉になっている。後で知ることができたのだが、この玉の状態を
俺と女の子が跳躍しながら避けているといつのまにか復活したシンクも回避をしながらこちらへ近寄ってきた。
「セッカ! いきなり殴るのってひどくない? それといきなり光ったと思ったら、いなくなっちゃったから心配したんだよ!」
「あーわりぃ。まぁ、いろいろあってさ。それに、こうして会えたんだし結果オーライってことで」
「おい、貴様ら! 悠長に話しているのはいいがレオ姫の紋章術は桁が違うのだから倒されたくなければとにかく逃げるぞ!」
いろいろ聞きたいことはあったのだが、紋章術と呼ばれるものが今まさに展開されているので女の子に従うことにした。俺は持ち前の足を活かしてなんとか坂を駆け上がりすり鉢の外に逃れた。ちょうどその時、
「大・爆・破!」
と声がすると同時に、後ろで爆発が起きた。あのまま下にいたら巻き添えをくらって死んでいただろう……。シンクと女の子は逃げられたかな? などと考えていると実況が聞こえてきた。
『爆破ー! レオンミシェリ閣下必殺の、獅子王炎陣大爆破! 範囲内に入っている限り立っていられる者はいないという。超絶威力の紋章砲! 味方も巻き添えにしてしまうのがたまに傷ですが、それにしても相変わらず凄い!』
「フランボワーズ、確認せい。勇者とタレミミはちゃんと死んだか?」
『あ~、はい。……えぇっとですね……ん? おぉっと! その前に立っているものがおります! これは……一体……誰でしょう? 』
箱の映像を見ながら実況席からの放送を聞いていると、なぜか俺の映像が映った。
「へ? いやぁ、誰でしょうねぇ?」
流石に自分が映されるとは思っていなかったので、冷や汗をかいた。なんと言ったらいいのかわからなかったので、苦笑いを浮かべていたら下から声が上がった。
「お主、無傷じゃと? 何をやったのじゃ!」
「ただ、全力で走って逃げただけですが……」
そう答えつつ、瓦礫を避けながら坂を滑り降りた。すると、上空から声が聞こえてきた。
「そう簡単に、やられるかぁぁぁ」
「にしても高すぎない? ねぇこれ高すぎない? あ、でも最初に落ちてきた時の方が高かったかな?」
『そ……空ぁ! なんと、勇者と親衛隊長無事です!……だがこれでは、レオ閣下の的だぞぉ!』
「あぁ、上に逃げていたのか」
「お主に聞きたいこともあるがひとまず、勇者とタレミミの相手をせねばならぬかのう」
そう言った後、レオンミシェリという女性は斧を手に取り、体勢を整えた。
「あまり貴様と手柄を分けたくなどないが、二人でかからねばどうにもならん」
「へ?」
「協力だ! さっきのタイミング、今度は外さん!」
「オーライ!」
顔を引き締めシンクが答えると、女の子は上空で体をひねり、シンクを……蹴った。
「よぅし! では、行ってこい!」
「おぶっ……ひでぇぇぇ」
『蹴ったぁぁぁ。なんと! 親衛隊長は勇者を蹴りましたー。勇者は無事でしょうか?』
蹴られた瞬間こそびっくりしたが、シンクは蹴られた勢いを利用して上段から武器を叩きつけた。対するレオンミシェリはそれを下から振り上げた斧で受け止める。と同時に2人の武器から火花ならぬ閃光が漏れた。シンクは上空からの勢いを利用したものの、押し返されてしまい後方に飛ばされた。
飛ばされながらも空中で体制を立て直し、地面に着地する。それとタイミングを同じくレオンミシェリの後方に女の子は着地して、シンクと2人でレオンミシェリを挟撃する形を取った。
そして、シンクと女の子は同時に走りだし、各々の武器を繰り出した。レオンミシェリはそれを盾と斧で防ぐが攻撃に耐えきれず壊された。その際に、女の子の欠けていた武器も壊れてしまった。
それを見てシンクと女の子は一旦後ろに下がり、体勢を立て直し再度突進。レオンミシェリはその攻撃を屈んで交わしたが、すかさず繰り出された2度目の攻撃は避けることかなわず、2人の攻撃をくらってしまった。
2人の攻撃を受けたために、身に着けていた防具が破壊され身に着けていたマントがはらりと落ちた。
「ふぅ~む、チビ勇者とタレミミ相手と思うて少々侮ったか。このまま続けてやってもよいが、それではちと両国民へのサービスがすぎてしまうのう」
「レオ閣下、それでは……」
「ん、ワシはここで降参じゃ」
そう呟いた後、どこに隠してあったのか白旗を上げた。その瞬間、待ってましたと言わんばかりに勢いよく光が上空に上がり、花火のように空に咲いた。これを見たからだろうか各所で歓声が沸き起こった。
『ま、まさか……まさかのレオ閣下敗北! ここで総大将撃破ボーナス350点が加算されます』
『今回の勝利条件は拠点制圧ですので戦終了とはなりません。ですが、このポイント差は致命的! ガレット側の勝利はほぼ無いでしょう』
しばらくするとどこからか撮影班がやってきた。上の箱のようなものに映っているのはこの人たちが撮影していたのであろう。そして、これからインタビューなるものをやるらしい。レオンミシェリは撮影班にマイクを受け取り
「勇者よ、親衛隊長の助けがあったとはいえ、わしに一撃入れたことは誉めてやろう! だが! 今後も同じ活躍をできるなぞ思うなよ?」
そう言った後、レオンミシェリは振り向きざまシンクにマイクを投げた。どうやらシンクにも喋れということらしい。マイクを受け取ると
「ありがとうございます、姫さ……」
姫という単語が出るとレオンミシェリは、尻尾を逆立てて。
「閣下!」
どうやら、姫とは呼ばれたくないらしい
「はい! 閣下!」
すると、満面の笑顔でレオンミシェリ
「うむ」
「閣下との戦い、怖かったけど楽しかったです」
すると今度は、閣下が尻尾で女の子の方を指した。シンクはマイクに目を落とすと女の子に向かって投げ渡した。
「撮影班、タレミミに寄れ。良い画が取れるぞ」
閣下の言葉を聞き、そばにいた撮影班が女の子に一斉にカメラを向けた。……女の子がマイクを手に取った瞬間……
「おぉっと……」
ビリッ! という音と共に女の子の服がパンツ残しに破れてしまった。
「ビリッ?」
「ぁ……ぁぁ。……はっ!?」
女の子は涙目になり、顔からはダラダラと汗が滴り落ちていく……。
「ちょっ!」
俺は急いで女の子に背中を向けた。勢いよく体を捻ったせいか首を痛めてしまった。女の子の裸を見続けるよりはマシだと思い、首の痛みと
『勇者! 何と自軍騎士に誤爆ぅ! 防具破壊を超えて服まで破壊してしまいました! 先程撮影していた物を確認してみましょう。お、これですね』
先程の戦闘の映像を確認しているとどうやら最後の戦闘の際に、シンクが女の子にまで攻撃を加えていたらしい。女の子はしゃがみ込んで大声を上げていた。
俺は自分の上着である水色の羽織を脱いで女の子に投げて、渡し
「それ、よかったら使ってくれ……」
「うっ……ありが……と」
女の子は羽織を受け取った後、少し戸惑ったようだが何もつけないよりはマシと判断したらしくそそくさと羽織ってから、一緒に投げ渡した羽織紐ではだけない様にしっかりと留めていた。衣擦れの音が聞こえなくなってからようやく振り返った雪花だったが、またすぐに後ろを向くことを余儀なくされた。
……というのも雪花が来ていた羽織が女の子の膝の少し上までしかなく、またまた刺激が強すぎたのである。
その光景を立って見つめていたシンクだったが、ようやく事の重大性と自分の失態に気が付いたのか物凄い量の汗を流しながらゆっくりと後退し始めるが、瓦礫に躓いて音を立ててしまった。
女の子はその音を聞き逃すはずがなく、垂れている耳がピクッと動いたかと思うとキッとシンクを睨み付けて壊れていない武器を手に取りシンクを追いかけ始めた。
「ははははは。ではな、また来るぞ!」
レオンミシェリはビシッとシンクを指さして、
「今度はきっちり侵略してやろう!」
『ここでレオ閣下、堂々のご退場です!』
実況の声が言った通りレオンミシェリはすたすたと振り返り歩いて行き、俺の目の前でピタッと止まった。なんだろうと思いレオンミシェリの方に向き直ると
「お主、見かけぬ顔だがどこの者じゃ?」
「ええっと、さすらいの旅人……です」
「さすらい? 戯けたことを申すでないわ。ワシを誰じゃと思うておる。それに……そのような恰好の者なぞ、ここフロニャルドではあまり見かけぬわ」
どうやらこの女性には真面目に答えねばならぬ雰囲気を感じた。雪花は冷や汗を流しながらもきちんと答えることにした。
「誰じゃと言われても、失礼ながら名前を存じませんので……」
「おぉ! 名乗っておらなんだか……それは、すまなかったのぅ。ん? いや、まて。何故知らんのじゃ? まぁ、よいか。ワシはガレット獅子団の領主、レオンミシェリ・ガレット・デ・ロワじゃ。気軽に閣下と呼ぶがよいぞ!」
「俺は、此花 雪花です。えぇっと、ですね。知らないのは、そこにいる馬鹿の知り合いで違う場所からきたせいですね」
レオ閣下が、挨拶をしてくれたので自己紹介で返すと閣下は顔に皺を寄せた。何事かと思っていると
「ふむ、勇者と同じ世界から……か。しかし、コノハナ……もしや、いや……そんなことはあるまい。セッカと言ったか? お主カヤという名前に聞き覚えはないか?」
「え?」
今、レオ閣下が言った人に、カヤという名前には聞き覚えがある。もし、俺の考えている人と同一人物ならば……俺の……。
「おい。お主、涙がでているようだが大丈夫か?」
あれ? 俺は泣いているのか。人前で泣くのは久しぶりだな……。
雪花は、手で目を擦ってからレオ閣下の方を振り向いた。雪花が呆然としている間レオ閣下は、突然涙を流す雪花を見てあたふたとしていた。そのためなのか、雪花がレオ閣下の方へ顔を向けた際には先程の戦闘の時からは、とても想像できないようなかわいらしい表情をしていた。雪花は、目の前のレオ閣下の様子におかしくなってしまい気付かないうちにくすりと微笑んでいた。
「なんじゃ、泣いたかと思えば笑ってみたり。可笑しいやつじゃ」
「すいません。お恥ずかしいところをお見せしてしまって。その、レオ閣下があまりにも可愛かったものでつい」
「な……何を言うか、この戯けが!」
レオ閣下は面白い人だなー。さっきの戦闘の時は凛々しい顔つきだったけど、こうあたふたしていると可愛らしいや。っといけない。また、変なこと考えていると怒られそうだ。
「それで、その……カヤという人は、もしかして此花 カヤというのでしょうか?」