BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

14 / 92
授業参観と悪魔の誘惑

「イッセー、アーシアちゃん。あとでお父さんと一緒に行くからね」

 

 朝から気合の入っているお母さん。父さんも有給休暇を取ったと言っていた。

 そう、今日は授業参観。俺の両親はアーシアを娘のようにかわいがっているから、張り切っているんだろう。

 うちの授業参観は、正確には公開授業だ。

 親御さんだけではなく、中等部の学生が授業風景を見学してもいいことになっている。

 自分の親御さんだけでなく、後輩たちも見に来ることもあって、無駄に緊張感がある。

 

「……気乗りしないわね」

 

 部長はため息を吐きながら言う。どうも授業参観が嫌らしい。その後も、ゼノヴィアがコンドーム展開したせいで、思いっきり騒ぎになってしまった。

 こんな時はいつも誇銅が本題をうやむやにしてくれて事態が収拾してくれていたんだが……。

 でも、今日は誇銅はいない。去年の授業参観でも誇銅は、暗い顔をしながら早退していた。

 次の日理由を聞くと、「死んだ家族のことを思い出してつらくなった」と言う。

 おそらく今日欠席している理由は同じ理由だろう。

 

 

 

 

     ***

 

 

 

 

 誇銅は今、学校をズル休みして両親のお墓参りに来ている。

 

「もし今の僕を両親が見ていたら、僕は怒られるだろうな。でも、辛くてたまらないんだ。 

 ……どうして神様は僕から両親を奪ったんだろう……あ、神様はもういないんだっけ。じゃあ、僕はこの行き場のない気持ちをどこにぶつけたらいいんだろう……」

 

 誇銅は時間をかけて両親のお墓参りをする。

 お墓参りを終えると、誇銅はまっすぐに家に帰った。誇銅は帰り道の途中で授業参観に行く親御さんたちを偶然見かける。

 普通なら見ただけで授業参観に行く親御さんとはわからないであろう。しかし誇銅には駒王学園の授業参観に行く親御さんとわかった。

 いかにも学校での息子、娘の生活を見るのを楽しみにしているオーラを感じ取ったのである。

 家族の愛に飢えているからこそ分かってしまう。

 誇銅の目から涙がぽろりぽろりとこぼれ始めた。もしわからなかったら不意にこんなところで涙を流さなかったであろう。誇銅は逃げるように自宅に駆けこむ。

 家に入ると誇銅はわずかながら我慢していた泣き声を漏らす。それを心配するかのように使い魔のももたろうが誇銅に飛び寄る。

 

「アンアン」

「ありがとう、ももたろう。もう大丈夫だよ。僕には君もいるし、部長も僕のことを家族同然って言ってくれたし」

 

 誇銅は涙をふき、ももたろうを両手で優しく包み込みながら自室に向かう。

 そして、ももたろうを箱で作ったベットに寝かせ、自分もベットに入った。

 誇銅は悲しいことがあると眠る。夢の中でなら楽しかった思い出に慰めてもらえるからだ。

 

「おやすみ、ももたろう。今日は、お父さんとお母さんと暮らしていた時の夢が見たいな」

 

 ささやかな願いをつぶやきながら誇銅は深い眠りへとおちる。

 

 

 

 

    ***

 

 

 

 

 

「あれ、ここは……」

 

 この本だらけの部屋は……。

 

「ここって……」

「また来たのか……って言うところじゃが、今回はこっちが呼んだようじゃの。ふむ、やはり前回記憶がなかったのはまだ満たしてなかったからじゃな」

 

 白い髭の老人が奥から出てくる。

 やっぱりか。ん? 呼んだ? それに満たしてなかった・

 

「私が呼んだんだよ」

 

 僕は後ろから聞こえる声に反応し、後ろを振り向く。

 そこには、やさしそうな顔の執事服を着た中年男性が立っていた。

 

「誰ですか?」

「おっと、これは申し遅れました。

 私の名前はアルディラ」

 

 男は僕にお辞儀をする。

 

「これはご丁寧に。

 僕の名前は日鳥 誇銅と申します。それで僕を呼んだ理由を聞きたいのですが?」

「それは…」

「すまんがここはワシの部屋なんじゃが?」

 

 中年の男が喋ろうとするのを老人が止める。

 

「おっと申し訳ない。私の部屋で話そう。こちらです」

 

 男が後ろを向くと本棚があった場所に扉が出現した。

 あぁもう混乱してきたよ

 

「どうぞ」

 

 男が扉の奥へ僕を招く。僕は一度お爺さんの方を向くと、お爺さんは安心してだいじょうぶと言ってるような微笑みを向けてくれる。僕はそれを信用して警戒しながらも扉をくぐる。

 扉の奥は暗い雰囲気の洋風の客間。

 

「さっそくで悪いが、話に入らせてもらう。君の望みについてだ」

「僕の望み?」

 

 僕は急にこの男が怖くなった。

 まるで心の見られたくない部分を見られてるかのような感覚に襲われる。

 

「君は羨ましいと思っているだろう? 兵藤一誠のことが。

 家族に囲まれ、友人にも恵まれて、大切な人を助ける事が出来る力も持っている。

 それに対して君は家族もおらず特別親しい友人もいない。大切な人を守れるだけの力もない。

 誇銅君、君はずっと今兵藤一誠が持っているあんな場所を望んでいただろう? 叶えてあげるよ、私と取引すれば。

 なに、君のものが欲しいというわけではない。君は許可さえしてくれればいい」

「な、何を?」

 

 な、なんだこの男は。

 怖い、逃げ出したい。なのに……求めてしまう。

 

「リアス・グレモリーとその眷属を殺す許可だよ」

 

 なに!?

 

「だめだ! 僕を家族同然に思ってくれている人を」

「本当に?」

「!?」

 

 だめだだめだだめだ。

 

「本当に君を思ってる? 君にねぎらいの言葉一つくれない王が? 君のことを二の次にする友人が? それを黙認する仲間たちが?

 そんな奴らが君を本当に家族と思っているとでも?」

 

 ちがうちがうちがうちがう。

 

「もし許可してくれたら、君に兵頭一誠の立場を約束しよう。君の王も仲間も、君を思ってくれる人を約束しよう。

 遠慮することはない。君には受け取る資格がある。

 君はどんなに虚ろにされても信じ愛し続ける聖人のごとき慈愛の心がある。それにいざとなったら身を挺して仲間の盾になることもいとわない勇者のごとき覚悟がある。

 そんな君に彼らの対応はどうだ? 確かに君にはあの赤龍帝ほどの価値は見いだせないかもしれない。だがあのレーティングゲームで君はかなりの頑張りと貢献をしたのだぞ! そんな君に対してあいつらは何をした? 見舞いにもろくに来なかった連中だぞ! お前が目を覚ました時の二人だってたまたま暇だったから来ただけだ!

 もう一度だけ聞く。許可してくれないか? そうすれば君に報いてくれる場所を与えよう。君自身を評価し君を認めてくれる場所を」

 

 だめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめだめちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがつちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう

 

「……ダメです……家族同然と言ってくれた人を裏切ることなんて、僕は絶対にしません!!」

「もう一度考え直さないか? 私は…」

「そこまでだよ」

 

 その一言で錯乱していた僕の心境がなぜか落ち着いた。

 突然僕の隣にあの時の“少年”が立っていた。

 

「久しぶりだね、誇銅君」

「君は…」

「なんのようだ?」

 

 男は“少年”へ目を移す。

 

「誇銅君は君の誘いを断った。君はもう誇銅君にかかわる権利はないよ」

「チッ」

「もう大丈夫だよ。すぐに帰してあげるよ」

 

 “少年”は優しく僕に微笑む。

 

「君は?」

「あ、自己紹介がまだだったね。

 僕はファウル。じゃあね、バイバイ」

 

 “少年”が手を振り、そして手を叩くと、僕はベットの上で目を覚ましていた。

 僕は汗をびっしょり汗をかいていたが、何の夢を見ていたかいまいち思い出せない。でも夢ってそんなもんだよね。

 時計は昼の11時を指している。僕は昼ごはんを食べて、今度こそ両親の夢を見ることを願いながらもう一度眠る。

 そして僕は両親と過ごしていた幸せな夢を見ることができた。

 

 

 

     ***

 

 

 

 

「まったく。僕が来なかったら誇銅君は君に選ばされていたところだよ。

 君は自分の役目をわかっているのかい?」

「ハハハ、すまない。彼の心の中が実に面白くて悪乗りしてしまった。それが私の役目であり性なんだ。ゆるしてくれ」

「……まあいいよ。いよいよ次が僕たちが行う最後の試練だよ」

「これでほとんどの契約が完了する。あとは彼次第だ」

「悪戯しちゃだめだからね、悪魔(デビル)

「あぁ、わかっているよ死神(デス)




悪魔 15
 正位置の意味
  惰落、悪い誘惑、犯罪、理性を失う、など。
 逆位置の意味
  誘惑に打ち勝つ、立ち直る、自立していく、束縛から逃れる、など。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告