次の日には僕はきちんと学校に行ったよ。
もう大丈夫、気持ちも落ち着いているしね。
そして今、僕たちは『開かずの教室』とされている部屋の前に来ている。
もう一人の
扉にはテープが幾重にも張られている。でも、僕は今とっても嬉しい。だって今回はきちんと呼んでもらえたから。
「ここにいるの。一日中、ここに住んでるのよ。
一応深夜には旧校舎だけなら部屋から出てもいいのだけれど、本人がそれを拒否しているの」
部長が扉に手を突き出して魔法陣を展開している。たぶん、封印を解いてるんだろう。
でも、なんでだろう? 僕ならこんなところに閉じ込めれれて、深夜だけ部屋からでていいと言われたら絶対散歩でもする。
でも、他人を自分と同じになんて見ちゃだめだね。封印されている
木場さんが扉テープを取り払う。
「中にいる子は眷属の中でも一番の稼ぎ頭だったりするのですよ。パソコンを介して、特殊な契約を取っているのです」
朱乃さんの言葉からすると、賢い人なんだろうな。
「さて、扉を開けるわ」
扉に刻まれた刻印も消え、ただの扉となった扉を部長が開ける。
「イヤァァァァァァァァアアアアアアァァ!」
叫び声!! もしかして襲われている!?
でも、部長たちは驚くどころがため息してる。これが普通なの? あ、部長たちが奥に行っちゃった。
「ごきげんよう。元気そうで良かったわ」
「な、な、何事なんですかぁぁぁぁぁ?」
声からして中性的だけど……男と予想しよう。
「あらあら。封印が解けたのですよ?もうお外に出られるのです。さあ、私たちと一緒に出ましょう?」
朱乃さんが優しく接している。
「やですぅぅぅぅぅぅぅ! ここがいいですぅぅぅぅぅ! 外に行きたくない! 人に会いたくないぃぃぃぃっ!」
やけに叫び声が聞こえる。……重傷だね。
心配になって中に入ってみると、金髪で赤い双眸をした美少女が震えていた。
「おお、女の子!しかも外国の!」
一誠が歓喜の声をあげる。男の娘だ! ……多分……
一誠は歓喜しているけど、部長は首を横に振る。
「見た目は、女の子だけど、この子は紛れもない男の子よ」
一誠固まっちゃったよ! そして僕の予想もまさかまさかの当たりだったよ。完全にあてずっぽうだったけど大当たり~。
「女装趣味があるのですよ」
朱乃さんが一誠そう告げる。
引きこもりで女装趣味か……見せたいのか、見せたくないのかどっち? 難しい……
「ええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?」
「ヒィィィィィィィッ!ゴメンなさいゴメンなさぁぁぁぁい!」
衝撃の事実に一誠は大声をあげ、反射的に
「うわぁぁああああああああああああああああッッ!」
そしてその場に頭を抱えしゃがみ込む一誠。
僕は一誠の肩に手をおき優しく喋りかける。
「一誠」
「誇銅……」
「うるさい」
やさしくうるさいと告げる。
「うるさいって誇銅……だって……こんな残酷な話があっていいものか……。完全美少女な姿で……男だなんて……チ〇コがついてるんだなんて」
「……下品な単語禁止」
搭城さんナイスツッコミ。
「女装趣味ってのがさらに残酷だ! 似合っている分、余計に知った時のショックがでかい! 引きこもりで女装壁かよ! 誰に見せるための女装ですか!?」
「それは僕も思った。」
「だ、だ、だって、女の子の服の方がかわいいもん」
「かわいいもん、とか言うなぁぁぁぁ!
クソッ! アーシアとお前のダブル金髪美少女『
「人の夢と書いて、儚い」
「小猫ちゃぁぁぁぁん! シャレにならんから!」
「と、と、と、ところで、この方は誰ですか?」
部長は軽く僕たちを紹介しあいさつしたが人が増えてるって怖がっている。
まずはコミュニケーションだ。
「こんにちは、さっき部長が紹介してくれていた
彼は震えながらも挨拶を返してくれる。
「ぎゃ、ギャスパー・ヴラディですぅぅぅぅ」
「ギャスパー君だね。そんなに震えなくてもこれ以上近づかないから安心して。僕はただギャスパー君とお話がしたいんだ」
そう言って微笑むとギャスパー君も安心してくれたのか、落ち着いてくれた。
「へぇ~やるじゃない誇銅。その子を興奮させずに話せるなんて」
「まあ、いきなり距離を詰められるのは今のギャスパー君にとって恐怖でしょう。ある程度距離を取った方が安心すると思いまして。
それに、このくらいの距離なら話はできるでしょう」
「じゃあ、興奮させるとどうなるんです?」
一誠が部長に聞く。
「その子は興奮すると視界に映したすべての時間を一定の間停止させることができる神器を持っているの」
「なんですか、その出鱈目な神器は……」
ほう、それはすごい。
「この子はギャスパー・ヴラディ。私の眷属の『
僕はその後、ギャスパー君とおしゃべりをした。
「『
「そう。 それがギャスパーの持っている神器の名前。とても強力なの」
ん? ああ、ギャスパー君の神器の話しね。いつの間にか話が進んでいてびっくりしたよ。
「しかし、そんな強力な神器を持った奴をよく部長の下僕にできましたね。しかも駒ひとつ消費だけで済むなんて」
一誠の言葉に部長さんは一冊の本を出現させあるページを俺たちに見せた。
「『
部長がそう言うと木場さんが答える
「通常の『悪魔の駒』とは違い、明らかに駒を複数使うであろう転生体が、ひとつで済んでしまったりする特異な現象を起こす駒のことだよ」
「だいたい上級悪魔の十人に一人は持っているのよ。私は運よく二つ有していたの。それをギャスパーとショウに使ったわ」
そうなんだ。
「問題はギャスパーの才能よ」
「部長さん、どういうことですか?」
「彼は類希な才能の持ち主で、無意識のうちに神器の力が高まっていくみたいなの。そのせいか、日々力が増していってるわ。上の話では将来的に『禁手』へ至る可能性があるという話よ」
それはすごいな……でも扱いきれてないから封印したが今の部長さんなら扱えると上は判断したんだね。
それにしても、部長の眷属ってすごい人ばかりだなー。僕も負けていられないや。
「……うぅぼ、ぼ、僕の話なんてして欲しくないのに・・・」
あ、ギャスパー君がダンボールの中に入っちゃった。
ん? ダンボール? 棺桶じゃないの?
「私や朱乃は三すくみトップ会談の会場打ち合わせをしてくるから。
それと祐斗、お兄さまがあなたの禁手について詳しく知りたいらしいから、ついてきてちょうだい。イッセー達はギャスパーをお願い」
「了解しました」
そして、ギャスパー君の引きこもり脱出計画が始まった。
「ほら、走れ。デイウォーカーなら日中でも走れるはずだよ」
「ヒィィィッ!デュラダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇぇぇッ!」
夕方の時間帯でゼノヴィアさんがデュランダルを振り回しながらギャスパー君を追いかけまわしている。
ゼノヴィアさん曰く「健全な精神は健全な肉体から」らしく、ギャスパー君を鍛えることに決めたらしい。
聖剣は悪魔にとって危険、だからギャスパー君も必死。
まあ、危なくなったら全力で止めなくちゃね。
でも、動く意思のない人は無理矢理動かすのも一つの手段だし、もうちょっとだけこのままにしておこうかな。
「……ギャーくん、ニンニクを食べれば健康になれる」
「いやぁぁぁん! 小猫ちゃんが僕をいじめるぅぅぅ!」
搭城さんもゼノヴィアさんと一緒にギャスパー君を追いかけていた……ニンニクを持って……。
やっぱり吸血鬼はニンニク苦手なんだね。
「おーおー、やってるやってる」
そこに、軍手をし花壇用のシャベルを持っているジャージ姿の匙さんがやってきた。
「あ、匙さん」
「よー、兵藤、日鳥。引きこもり眷属がいるとかって聞いてちょっと見に来たぜ」
「ええ。あそこでゼノヴィアさんに追い掛け回されているのがそうですよ」
「おいおい、ゼノヴィア嬢、伝説の聖剣豪快に振り回しているぞ? いいのか、あれ。
おっ! てか女の子か!しかも金髪!」
お、匙さんもそう思いますか?
「残念、あれは女装野郎だそうです」
一誠が真実を教えると匙さんはガッカリしている。
「そりゃ詐欺だ。てか、女装って誰かに見せたいためにするものだろう? それで引きこもりって矛盾すぎるぞ。難易度が高いなぁ」
「それは俺も思ったよ。本人によるとかわいいからだそうだ。そういえば匙、お前見た感じ花壇の手入れしているような格好だけど仕事しなくていいのか?」
「ちょっと見に来ただけだよ。すぐに戻らなきゃならねぇし、それに今度魔王さま方もここにいらっしゃる。学園をキレイに見せるのも生徒会の『
……多分ただの雑用。
「へぇ。魔王眷属の悪魔さん方はここに集まってお遊戯しているわけか」
僕たちは声のした方へ振り向くと浴衣を着た男性がいた。
「アザゼル……」
「よー、赤龍帝。 あの夜以来だ」
アザゼル! 本当なの一誠!
全員が臨戦態勢をとる。
ゼノヴィアさんが剣を構え、一誠は
アーシアさんは危険を察し一誠の後ろに隠れ、匙さんも右手の甲にデフォルト化したトカゲの頭を出す。
「ひょ、兵頭、アザゼルって!」
「マジだよ、匙。 俺はこいつと何度か接触しているんだ」
一誠の言葉で匙さんも戦闘態勢になる。
「へぇ、お前は警戒しないのか?俺は堕天使の総督だぜ?」
アザゼルさんは構えをしない僕に問う。
「これから会談をするのにそれを壊すようなことはしないでしょう。それに警戒したとしても僕達じゃ敵わない。
あと聞いた話によるとあなたは戦争より神器を集める方が好きみたいじゃないですか。それに、あなたから敵意は感じない」
「確かにそうだが、俺がお前たちの神器を奪うって言ったらどうする?」
「全力で抵抗します」
僕がそう言うとアザゼルさんは面白そうに笑う。
「ハハハ! お前面白えな。普通はそいつらみたいに警戒するもんだぜ。まあ確かにやる気はねぇよ。ちょっと聖魔剣使いを見に来ただけだ」
「木場さんならいませんよ。今は魔王さまのところです」
「そうか、聖魔剣使いはいねえのかよ。つまんねぇな」
そう言うとアザゼルさんはとある木を指さす。
「そこで隠れているヴァンパイア」
木陰に隠れていたギャスパー君が慌てふためく。
アザゼルさんはギャスパー君に近づきながら言う。
「『
五感から発動する神器。持ち主のキャパシティが足りないと自然に動き出して危険極まりない」
ギャスパー君の両目を覗き込むように見た後総督は匙さんを指さす。
「それ『
練習するなら、それを使ってみろ。 このヴァンパイヤに接続して神器の余分なパワーを吸い取りつつ発動すれば、暴走も少なくて済むだろう」
アザゼルさんの説明で匙さんは複雑そうな表情を見せる。
「……お、俺の神器、相手の神器の力も吸えるのか?ただ単に敵のパワーを吸い取って弱らせるだけかと……」
それを聞き、アザゼルさんは呆れた様子だった。
「ったくこれだから最近の神器所有者は自分の力をろくに知ろうとしない。『
まあ、これは最近の研究で発覚したことだがな。そいつは、どんな物体にも接続することができて、その力を散らせるんだよ。
短時間なら、持ち主側のラインを引き離して他の者や物に接続させることも可能だ」
「じゃ、じゃあ、俺側のラインを……たとえば兵藤とかに繋げられるのか?それで兵藤のほうにパワーが流れると?」
「ああ、成長すれば本数も増える。そうすりゃ吸い取る出力も倍々だ」
「……」
匙さんは黙ってしまった。しかし、匙さんの神器って思ってた以上に強力だな。
もしかして僕の神器も本当は期待できるかも!
「神器の上達で一番てっとり早いのは、赤龍帝を宿した者の血を飲ませることだ。
ヴァンパイヤには血でも飲ませておけば力がつくさ。ま、あとは自分たちでやってみろ…」
「あの、アザゼルさん!」
アザゼルさんの説明が終わると僕はすかさず声をかける。
「僕の神器は何かわかりますか?」
僕は両手に黒と白の刺青を出して見せる。
「ほー、こりゃまた希少な」
「知ってるんですか!?」
これは期待できるかも。
「こいつの名は『
能力は触れたものを侵食するように破壊することができる。
別名、神の失敗作」
……え?
「まず、破壊スピードが遅すぎる。普通の剣一つ壊すのに最低一日はかかる」
ウソ……僕は持っているのは失敗作……でも、もしかしたら禁手化すれは少しは使える神器に…
「そして最大の理由が
…………
「この神器の唯一の利点は無効化されないことだ。
もし
以後『
「……そうですか。ありがとうございます」
「……誇銅……」
***
一誠が誇銅に声をかけるが返事はない。
誇銅の表情はいつもと変わらなかったが、誇銅の雰囲気は明らかに暗いものへと変わっていた。
それから匙もギャスパーの特訓に付き合い結局夜になるまで特訓は続く。