腐っても切れていない縁
昨日はプロシュート兄貴が帰って来ていたので久しぶりに家族全員でご飯を食べれた。まあ実質兄貴が家を空けていたのは二日間だけだったけどね。
ん? 僕が兄貴って呼ぶのに違和感がある?
それは僕も自覚があるよ。でも、なんだかプロシュート兄貴は兄貴って呼ばないといけない気がするんだ。それに僕が兄貴って呼ぶのは違和感があるけど、プロシュート兄貴が兄貴って呼ばれるのに違和感がないから大丈夫だと思うよ!
今僕は学校にいる。お昼休みにはいつも月と恋と一緒にいるけど今日は珍しく僕一人。
月が女子たち連れて行かれ恋にはいざって時のために月についてもらっているためだ。
そして僕が人気のないところでゆっくりお昼ご飯を食べていると。
「誇銅せんぱーーい!」
「ん? この声は……ぐはっ!」
後ろからギャスパー君の声に気づき後ろを振り向くと、ギャスパー君からタックルをもらった。
ヤバイ、今食べたお昼ご飯戻しそう。この威力、手加減したフランのタックルと同じくらいはあるよ。たぶん二人ともタックルのつもりではないと思うけどね。
でも、今までの習慣で大声を聞くと身構えるクセのおかげで何とかリバースせずにすんだよ。今までフランのタックルを受け続けた経験がここで生きたよ。
まあはたから見たら碌な経験じゃないけど、僕にしてみればただのスキンシップさ(震)
「誇銅先輩! 僕ずっと誇銅先輩に会いたかったんですけどなかなか勇気が出なくて」
「よしよし、とりあえず僕の上から降りてくれるとうれしいな。この現場を第三者に見られると非常にめんどくさいことになりそうだから」
今僕はギャスパー君に押し倒されている図になっている。
もしこの現場を第三者に見られたら絶対に勘違いされる。知り合いに見られたら誤解を解くのに一苦労する上にお互い恥ずかしい。
両者が損をすることは素早く辞めるに限るよね。
「あ、すいません」
「降りてくれたんだからもういいよ。
ギャスパー君とお話しするのはあの日以来初めてだよね。どう? 元気にしてた?」
「誇銅先輩……ごめんなさい!」
……ん? なにが?
「僕があの時つかまったりしなければあんなことには…」
「ちょ、ちょっと待って。話が見えてこない。何の話!?」
「誇銅先輩がいなくなっちゃった時のことです。
なぜ誇銅先輩が僕たちのもとを去って行ってしまったのか考えてみたんです。
初めは見当もつきませんでしたが、もしかしたら僕のせいで誇銅先輩が死んじゃったんじゃないかって思って、そのせいで誇銅先輩が僕たちのもとを去ったんじゃないかって思って。だから…」
「ストップ! 僕はそんなことでリアスさんの眷属をやめたわけじゃないよ。
リアスさんのところには僕の本当の居場所はないと感じたから出て行ったんだよ。
もちろんギャスパー君のせいじゃないよ」
僕は子供にやさしく言い聞かせるように言う。
「では、本当の理由は?」
「それは知らない方がいい。今リアスさんのところにはギャスパー君の居場所はちゃんとある。これは僕だったからの話なんだ。
だから僕が余計なことを教えてギャスパー君を信頼してくれている人たちに不信感を抱かせるようなことは言えないよ」
ギャスパー君はいまいち納得のいかない表情である。
でも理由を教えてギャスパー君が今ある居場所を失うのは許容できない。
少なくともリアスさんは今いる眷属のみなさんを本気で大切に思っているみたいだからね。
僕はそこに含まれてなかったみたいだけど。アハハハ……ハハ……ハァ~……。
「もう一度言うよ。今リアスさんのところに君の居場所はある」
「……わかりました。では誇銅先輩、僕は今まで通り誇銅先輩と関わっていいのですか?」
「もちろんだよギャスパー君」
ギャスパーはここにきて初めて笑顔を見せる。
「ありがとうございます!」
ふふ、とってもいい笑顔だ。
昼休み終了のチャイムが鳴り響く。
次の授業が始まるまでに教室へ戻るために僕は走って教室へ向かう。
ギャスパー君は走っていく僕を笑顔で見送ってくれる。
そしてその日の放課後誇銅は木場さんに呼び止められる。
僕の隣にいた月が木場さんに向けて笑顔を向けるが後ろから黒いオーラを漂わせる。
それを感じた木場さんは一瞬ビクッとなったがそのまま僕に要件を伝える。
「すまないがちょっとオカルト研究部へ来てほしいんだが」
「まあ、かまい」
「お断りします」
「ちょ、ゆ…」
「いいですね、誇銅さん」
「……はい」
月は僕の言葉を遮って答える。
僕は頑張って反論を出そうとするが月に笑顔を向けられ黙ってしまう。
情けないなんて思わない。だって怖いんだもん! だって恋もかすかに震えるレベルだもん!
「行きましょう、誇銅さん」
「あ……」
僕は月に引っ張られてそのまま教室を出る。後ろから木場さんがなんか呼び止めてるぽいけど月はそれを無視して僕を引っ張る。結局僕たちは木場さんの話を聞かずに帰宅。
「(コンコン)月、ちょっといい?」
「あ、はい。大丈夫です」
僕は家に帰って部屋着に着替えると月の部屋の前に行ってドアをノックする。
すると月がドアを開けてくれて中に入る。
「月、なんで木場さんの言葉を無視したの? ちょっと失礼すぎじゃない?」
僕は月に木場さんの言葉をことごとく無視した理由を聞く。
「……誇銅さん。私はあの人たちが信用できないのです。
他の皆さんは知りませんが私は誇銅さんが悪魔になってからのことを見ました。私たちの大切な誇銅さんをあんな虚ろにした人たちを私は信用できません。
それに誇銅さんが死んでしまったのはあの人たちの王が原因でもあるじゃないですか」
「で……でも……」
でも、あの時リアスさんが僕を助けてくれなかったのだってちゃんとした理由があると思う。
もしかしたら僕の声がちゃんと届いてなくてもうすぐ爆発するんじゃないかと思ったのかもしれないし、王である自分が倒れた時に他の皆さんにかかる迷惑を考えてのことかもしれない。
僕はきっとリアスさんたちはいい人たちだと信じてる。
でも……これを言って月に真正面から論破されるのが怖い。
「……ずるいです。そんな顔されたら私……。
……わかりました。信用するしないにしろもうあんな無礼な態度はとりません」
え!? 本当!?
「それに冷静になって考えれば仮にも今は学友でもあるのですからあのような態度は流石にやりすぎでした。他にもっとやりようもあったはずなのですから」
「あ、ありがとう、月」
「ですが、目に余る行為があればあのような態度は致し方ありませんよ? いいですね?」
「う、うん。わかったよ」
とりあえずはわかってもらえてよかったよ。
やっぱりさすがにいきなりあの態度は駄目だと思うからね。
本当はみんな仲良くなってもらえたらいいんだけどさすがにそりゃ無理か。まあそれは時間をかけてゆっくりしていけばいいかな。
次の日、僕はいつも通りの学校生活を送る。
休み時間には月がもみくちゃにされ、昼休みには恋がもみくちゃにされ、僕は腐女子に視姦され、その度に月が僕を守るように抱きつく。そんな一日が過ぎていく。
正直視姦は精神的に堪える。犯られてるって感じの視線を確実に感じるけど、でも僕の自意識過剰とかで違ってたら嫌だから言いづらい。
でも今日は月のおかげでものすごい緩和された気がする。ありがとう、月。
しかし、放課後はいつもと違う。僕は一人で帰宅することになった。
いつも一緒に変える月と恋は部活の勧誘によって強引に連れて行かれてしまったのである。
仕方なく一人で帰ろうとしたが校門前でリアスさんに呼ばれそのままオカルト研究部へ連れて行かれる。
部室内には僕とリアスさんだけ。
リアスさんの話は夏休みに冥界に僕の家族全員で来てほしいとのことだった。
僕は断ったが、これは魔王たちからのことで敵対する意思がないということを証明するために一度話し合いをしたいということだったのでしぶしぶ了承する。
あとでみんなへの説明が大変そうだ。
そしてリアスさんはあの日助けられなかったことを謝罪してきた。その言葉は丁寧な言葉で僕を助けられなかったことを本気で悔いている。
そして僕が生きていたことを本気で喜び、この人は本当は本気で僕のことを大切にしてくれていると思えた。と、昔の僕なら思っただろう。
しかし、部長の言葉にはギャスパー君の時のような心が伝わってこない。兄貴の覚悟のようなものも伝わってこない。何かに例えるなら、僕と出会う前の盾姉のような言葉。正しいことを言ってはいるが中身が詰まっていない。それが今、僕が感じているもの。
「…本当にごめんなさい」
「いえ、僕は別に怒ってるわけじゃありません。ただ今の家族と過ごしたいと思っただけです。
それに状況が状況でしたし」
「ありがとう。誇銅」
やっぱり何か違う。
う~ん……失礼かもしれないけど聞かなくて聞き逃すよりいいか。
「あの~失礼ですが……もしかして他に何か意図があったりします? あった場合僕には何を伝えられてるのかさっぱりわからないので教えていただけると助かるんですが」
「そんなこと…」
「そうなんでしょ」
「!?」
月と恋がオカルト研究部のドアを開ける。
「あなたの言葉、私に言いよってきて傀儡にしようとした奴らと同じ感覚がします。大方誇銅さんを取り入れて私達の家族を味方につけようとしたというところですか」
「……」
「話は終わりですね。誇銅さん、帰りましょう」
「え?、あ!、う、うん。ではリアスさん、さようなら」
***
誇銅たちが去り、部室に一人残されたリアス・グレモリー。
「……ちっ」
そこに静かに入ってくる朱乃。
「その様子ですとダメだったようですね」
「ええ、それに途中で邪魔が入ってしまったわ」
「あら、せっかく手をまわしてお二人を引き離しましたのに」
「ええ、とっても残念よ。
前の誇銅は私の眷属としての資格はなかったわ。でも、今の誇銅には十分その価値がある」
「リアスも惜しいことをしましたね」
「しょうがないじゃない! 原石と思って拾ったら実はただの石ころで、捨てた瞬間宝石になるなんて思わないじゃない!」
二人はまるで仲のいい女子友達とおしゃべりするかのようにわきあいあいと話す。
その内容は生々しいくもあるが。
***
帰り道月はかわいらしく頬を膨らませ誇銅を怒った。
誇銅はかわいいなと思い、ぽろっと口に出すと「へ、へう~///」と言い顔を真っ赤にして顔をそむける。
誇銅は家に着くと夏休みに冥界に行くことになったことをみんなに話す。すると月は目のハイライトを消し誇銅を見る。
その目に周りのみんなも恐怖するが直接向けられている誇銅が一番怖がっているのは言うまでもない。
「というわけなんだ。だからみんなには夏休みに一緒に冥界に来て欲しい」
「まったくめんどくせー話だぜ。わざわざ一回縁切ったやつの実家に行くとか気まずすぎんだろ」
「……行きたくない。でも…家族守る。だから…恋も行く」
「仕方ないね。僕はかまわないよ」
「いざとなったら我がなんとかしよう」
「誇銅さんに手を出したら…………〈ブツブツブツブツ〉」
「恋おねえちゃん。月お姉ちゃんが怖い」
「絶望的に面倒~。そんなことに付き合う私ってマジ希望」
よかった。とりあえずみんなの了承は得られたよ。
あとはいつも通りの平和な日常が戻ってくる。
誇銅はその後はいつも通りの日常へ戻る。
朝は月の作ってくれた朝食を食べ(盾子や誇銅の時もあり)月と恋と一緒に学校へ行く。
休み時間には月がもみくちゃにされ、昼休みには恋がもみくちゃにされ、僕は腐女子に視姦され、その度に月が僕を守るように抱きつく。そして異変に気付いた恋も誇銅を守るように近くに行く。
そして放課後には月と恋と一緒に帰宅する。そんな誇銅にとって幸せな日常が夏休みまで続く。