BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

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平行世界のパラドックス
時を駆けた少年


   一誠side

 

 いま俺は謎の筒型カプセル装置の中にいる。

 

「ホントナイスタイミングだったぞ、イッセー。ハハハ」

 

 笑いながら実験装置を稼働させているのはアザゼル先生。

 先生の研究室にお茶を持って入出したら、「おおっ、ナイスタイミングだ!」の一言でこの中に放り込まれた。まったく意味がわからねえ!

 中から叩いて脱出を試みるがこのカプセルはビクともしない!

 

「何する気ですか、先生!」

「いやな、ちょうど試したいことがあったんでな。そしてその装置がたった今完成して、そこにちょうどお前が来たんだ。あまりのタイミングが良かったもんだからつい」

「『つい』って! あんたは『つい』で教え子を謎の実験機械の中に放り込むのか!?」

「犠牲はつきものだ」

「え!? もう犠牲は確定なの!? いや、出してくれ! いやだぁぁぁぁぁぁああ!」

 

 俺が助けをこうなか、装置は順調に稼働していく! 隣にも同様のカプセルがある! しかし何も入っていない。俺だけがカプセル入りなのか!

 

「あっ、ヤベ」

「つーか、何の実験なんスか!? しかも今『ヤベ』って言いました!?」

 

 俺の問いに先生が両手を合わせる。そして何かを口にしかけた時―――――――――。

 

 カッ! ドオオオオオオオンッ!

 

 一瞬の閃光と爆発が巻き起こったのだった。

 ゲホッ! ゲホッ!

 ……うぅ、すっごい煙。俺はいつの間にか、装置から解放されていた。

 見れば、俺の入っていたカプセルが壊れている。実験は失敗で爆発した?

 室内は爆発の影響でぐちゃぐちゃになっていた。いろんなものが壊れ、錯乱している。

 室内を見渡しても当の先生がいない。実験は失敗で飽きてどっかに行ったのだろう。

 一言文句を言いたかった。生徒を即実験に使うなんて教師の風上にも置けん! さすが堕天使のボス様だ。考え方が悪だぜ。

 

「ったく、アザゼル先生、実験が終わったらそのまま放置かよ」

「あぅぅ」

 

 毒づきながらも俺は先生の研究室を出て行こうとすると後ろから声がする。

 振り向いてみるとちょうどもう一つのカプセルがあった場所に小さな子供がいる。

 銀髪の男の子。

 その子は周りを見渡して

 

「ここ、どこ?」

 

 そう言い、涙目で俺を見る。

 ちょ、そんな目で俺を見ないでくれよ。

 

 

 

       ***

 

 

「で、ここに連れてきたってわけね?」

 

 俺はとりあえずその子をオカルト研究部へ連れてきた。

 どうすればいいかわからなかったからな。

 

「はい、俺にはどうしたらいいかわからなくて、ここに連れてくる以外に選択肢がなくて」

「でも正解よ。だってあの子は悪魔ですもの」

「え!?」

 

 この子が悪魔!? でもなんであの時あそこにいたのかのなぞは全く解けない。

 

「で、アザゼル。いったい何の実験をしていたの?」

 

 部長がアザゼル先生に訊く。

 

「いやー、ドッペルゲンガーの実験だったんだがな、途中でなんかおかしなことになっちまったんだ」

 

 ソファに座っているアザゼル先生がそう言う。

 

「そんな実験を俺でしようとしてたんですか!? ていうか、ドッペルゲンガーって何?」

 

 俺の質問に朱乃さんが答える。

 

「ドッペルゲンガーとは、『霊的な生き写し』を意味し、自分自身が目の前に現れる現象ですわ」

 

 じゃあ、この子は俺の分身!? なんだか全く似てないが…。

 

「じゃあ、この子は一誠君の分身なのかい?」

 

 木場がアザゼル先生に訊く。俺の分身と言われても全然そうは見えないからな。

 

「いや、それはねえ。もし失敗するとしても、一誠の分身が暴走するだけだろう。

 それにこの子と一誠の共通点も見当たらねえしな」

 

 俺の分身が暴走させられなかったのはよかったが、これはこれで困る。

 そこで朱乃さんが子供にやさしく話しかける。

 

「君、お名前は?」

 

 最初この子は『ここ何処? お父様、お母様』って泣いていた。

 だが今はもうすっかり落ち着いて部室でギャスパーと遊んでいる。

 珍しくギャスパーが自主的にこの子の世話を買って出た。

 

「シルバー。シルバー・フェニックスです」

 

 なるほど、シルバー君か。……フェニックス!?

 

 

      ***

 

 

 今、俺は冥界に来ています。この子の親の元へ返すために。

 なぜ自分たち自身が行くのかって?

 それは、堕天使総督の実験でフェニックス家の子供を誘拐してしまったなんて上にばれたら大変だからだそう。

 だから直接連れて行って、穏便に済ませてもらおうとのこと。

 

「あっ、おじい様だ」

 

 来ているメンバーは、俺、部長、アザゼル先生、シルバー君と、すっかりシルバー君になつかれたギャスパー。

 現在俺たちはフェニックス卿との話し合いの席についているのだが、問題が一つ。

 

「シルバー・フェニックスと言う名前の子供は家にはいませんが?」

「「「え?」」」

 

 まさかのそんな子家にはいませんと来た。

 え? え!? え~~~!!

 部長があわててシルバー君に確認をとる。

 

「え!? シルバー君、君本当にフェニックス!?」

「ホントだもん! ほら」

 

 シルバー君は小さいながらも、ライザーのような炎の翼を見せる。

 それをみたフェニックス卿は驚く。

 そしてすぐに困った顔をする。

 

「うむ……確かにフェニックスですな。でも本当にシルバー・フェニックスという名の者は記憶にも記録にもないのです。

 フェニックスの子供とあれば引き取るのは一向に構いませんが、いったい誰の子なのか……」

「そうね、それはちょっと困ったことよね」

 

 そこで部長はギャスパーの膝の上に座ってるシルバー君に訊く。

 

「お父さんか、お母さんの名前わかる?」

 

 そうですよね、名前がわかれば早いですもんね。

 

「え~と、お母さんはお父さんを、あなたって呼んでる」

 

 父親の名前はわからないっと。

 まだ小さいから仕方ないか。

 

「お父さんは、お母さんをレイヴェルって呼んでる」

「レイヴェル!?」

 

 レイヴェルって、あのライザーの妹!?

 あいつってもう子供いたんだ。なんか以外。

 

 フェニックス卿はすぐにレイヴェルをこの場に呼ぶ。

 

「なんですか? お父様」

「レイヴェル、この子を知っているか?」

 

 フェニックス卿はレイヴェルにシルバー君を見せる。

 

「いいえ、知りません」

「レイヴェル、この子は自分の母親はお前だと言ってるのだが?」

「えぇ!? 私は子どころが、殿方とお付き合いもしたことはありません!」

 

 レイヴェルは必死に身の潔白を主張する。

 そこで当のシルバー君はレイヴェルをじっと見る。

 

「お母様……?」

 

 シルバー君は不思議そうにレイヴェルの顔を見る。

 確かに自分の母親はレイヴェル・フェニックスと言ったのに。

 

「どうしたの?」

 

 シルバー君の様子が少しおかしいのに気付いたギャスパーは、その理由を訊く。

 

「なんか違う、お母様はもう少し大人っぽい」

 

 大人っぽい?

 

「あっ、でもお母様が見せてくれた写真のお母様にそっくり」

 

 写真の母親?

 え? 何がどういうこと?

 俺が混乱してると同様にその場の全員が事態がよくわからないといった顔だ。

 そこで先生が何か思いついた顔をしてシルバー君に近づく。

 

「なあ、シルバー、おっぱいドラゴンは知ってるか?」

「はい! 毎週見てます。友達はみんな大好きって言ってます」

「そうか、そうか」

「でも、僕は人間界のジャムパンマンの方がずっと好き!」

 

 ごはっ!

 子供の正直さって残酷。

 まさかこんな純粋な批判を聞くことになるなんて、悲しくなってきた。

 しかも“ずっと”まで言われたし。

 

「そうか。じゃあ最後に見た話はどんな内容?」

「最後に見たのは……スペシャルでおっぱいドラゴンの映画でした!」

「映画?」

 

 え? 映画化の話なんて知らないぞ!

 

「やっぱり……」

「やっぱりって、どういうことよ」

「今までの情報から推測するに、この子は将来の産まれる、レイヴェル・フェニックスの子供ということだ」

「「「「「えぇ!!?」」」」」

 

 ってことは未来から来たってことか!?

 ドッペルゲンガー製造機どころが、タイムマシン作っちゃったよ、先生。

 この場の俺を含めた全員はいまいち信じられないといった感じになってる。

 というか俺もまだ信じられない。

 

「いや~、まさかタイムマシンを作っちまったとはな」

「私の……子供……」

 

 先生は自分のやったことを笑いながら自画自賛してる。

 頼むからもうあんな人体実験はやめてくれ。

 

「本当に私の子供……?」

 

 レイヴェル自身はまだそのことを受け入れられないらしい。

 そりゃそうだよ、俺だっていきなり自分の子供と名乗る子供が目の前にいたら動揺すると思う。

 それに、父親が誰かもわからないしな。

 

「……お母様」

「!」

 

 シルバー君はどうやら目の前のレイヴェルを母親だと認識したらしい。

 レイヴェルに笑顔を向けて歩み寄る。

 そして両手を広げて抱っこのポーズをとる。

 

「いつもみたいに、ギュッとしてください」

 

 それを聞いたレイヴェルはさっきまでの困惑した表情から、やさしい表情へ変わる。

 そして優しくシルバー君を抱きかかえ、頭をなでる。

 

「うみゅ……気持ちいです」

「シルバー……」

 

 レイヴェルは優しい笑みでシルバー君をなで続ける。

 シルバー君も気持ちよさそうに、目を閉じて体を預けてる。

 こうやって見ると本当の親子みたいだな。

 まあ、本当の親子らしいんだけど。




 安心してください。次回、ちゃんと誇銅たちの出番があります。
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