あ、ありのまま起こっていることを話そう。
僕が学校に行くと放課後にオカルト研究部に来てほしいと一誠に頼まれたんだ、合わせたい人かいると。
そして放課後にオカルト研究部に行くと銀髪の子供が「お父様♪」と言いながら嬉しそうな顔で僕の傍に来た。周りからも「誇銅、お前の子供だ」というセリフが聞こえた。
僕にも何が起こってるのかわからない……頭がどうにかなりそうだ……夢や幻とか、そんな安っぽいものじゃ断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わっている。
「お父様♪」スリスリ
「あ、あの……これは一体どういうことでしょう……?」
僕は自分の足をスリスリしている子供の頭を撫でながらその場の人たちに聞く。
僕はたまらなく不安になって後ろのついてきてくれた月と恋とルピ君の方を見る、すると月とルピ君は目に見えて動揺してる、むしろ僕以上に。
「その子の名前はシルバー、シルバー・フェニックス。
貴方とここにいるレイヴェルとの実の子供よ」
僕の質問に答えてくれたのはリアスさん。
リアスさんは普段ここにいるはずのないレイヴェルさんを指して言う。
「う、嘘です! 誇銅さんがそんなことしてるはずありません! ですよね? 誇銅さん」
「う、うん! 僕はまだそっちの方は未経験だよ!」
あたふたする僕たちを静止するようにアザゼルさんが喋りだす。
「まあ待て、確かに誇銅はそう言った経験はないだろう」
「だったらこの話と矛盾してるじゃないか! 誇銅君との間に子供なんてできるはずないじゃないか!」
「話を最後まで聞け、その子は未来の誇銅の子供だ。ちょっとした事故でどうやら未来から来たようなんだ」
「それが事実だとしてどうして誇銅君の子供だってわかるんだよ!」
ルピ君が事実追求をするとアザゼルさんはソファに深く座り込む。
「それがな…」
***
昨日のフェニックス家での出来事の続き……
シルバーの証言からシルバー・フェニックスが未来のレイヴェルの子供であることはほぼ証明された。だが、そうなると新しい問題を一誠が口にする。
「じゃあ一体父親は誰なんでしょう?」
その一言でその場の空気がフェニックス方面を中心に冷える。
「……そうですな、娘の将来の婿のことは父親として気になりますな」
「いやお父様、別に今から気にすることでは無いと思いますわ、ですからその話はやめましょう。
私は少し自室でシルバーと少しお話しますわ」
レイヴェルは苦笑いしつつその場を逃げ出そうとする。
「待ちなさいレイヴェル、部屋で一人で聞き出す気だろう?」
「うっ、い、いいじゃありませんか、私の未来の夫(仮)の事なんですから!」
「父親として娘の夫のことが気になるのだよ!」
「私が恥ずかしいじゃないですか!」
この場で聞く聞かないで言い争いを始めるレイヴェルとフェニックス卿。レイヴェルの近くにいたシルバーは空気を読んで二人から離れてギャスパーの膝に戻っている。
「ねえシルバー君、君のお父さんはどんな人?」
ギャスパーはごくごく自然に暇をつぶすかのようにシルバーに聞く。
「お父様はとっても優しくて強いんだよ!」
シルバーは嬉しそうにギャスパーに語りだす。
「へ~自慢のお父さんなんだね」
「あっ、ちょっと何勝手に聞いてるのですか!」
父親との口論に夢中になっていたレイヴェルがシルバーの父親についてのことを話してることに気づく。
「お父様は僕といっぱい遊んでくれるし、お母様もいっぱい僕を撫でてくれる。だからお父様もお母様も大好き!」
「レイヴェル……良い母親になったのだな……」
目にうっすら涙を浮かべるフェニックス卿。
レイヴェルの父親として娘が子供に好かれる母親になっていることに感動を隠せないでいた。
「アンコパンマンもお父様が子供の頃好きだったって言ってた」
「子供の頃好きだった? と言うことは相手は転生悪魔だな」
シルバーの何気ない一言でアザゼルは父親が転生悪魔と推測する。
それだけなら別に何の問題もなかった、問題は次のシルバーの言葉。
「確かに俺も子供の頃好きだったなアンコパンマン」
「うん! リアスさんからトレードしたってお母様が言ってた!」
場は再び不穏な空気に包まれる。
それもそのハズ、リアス眷属で平凡な日常を送っていた人間と言えば一人しかいない。
「え?」
ほとんどのその場の人が一誠を見る。
一誠はその視線の雨にじっと固まる。
だがその空気をいち早くリアスが壊す。
「だ、駄目よ! 一誠は私のなんだから! 渡したりなんかしないわ!」
「いやいやありえませんよ! だってそうならシルバー君が反応しないのはおかしいじゃないですか! それにおっぱいドラゴンよりアンコパンマンの方が好きってのもおかしいじゃないですか!」
「未来のお前が今の雰囲気が全くないほど変わったのかもしれないじゃねえ。
それにおっぱいドラゴンも実の父親がおっぱいドラゴンと言うことをいじられてそっちの方が好きって可能性も」
一誠が必死に否定するが、アザゼルがその否定材料を一つずつ破壊する。
リアスは一誠の顔を自分の胸に埋める。一誠は幸せそうに息を詰まらせる。
それを見たギャスパーは助け船をだすつもりでシルバーに新しく質問をする。
「他にお父さんについてないかな?」
「う~ん、あっ、お父様はみんなから『無害な劇毒』って呼ばれてます」
『『『無害な劇毒?』』』
その場のシルバーを覗いた全員が頭に?マークを浮かべる。
「無害な劇毒ねえ……」
「もしイッセーの異名にしちゃイメージとかけ離れすぎてるな。イッセーの異名ならドラゴンや龍って文字が入ってないのはなんかおかしいな」
アザゼルの言葉によって少し緩んだリアスの手から脱出する一誠。
「ほら! やっぱり俺じゃないですよ!」
「それでは一体だれが……」
フェニックス卿の疑問の言葉で再びリアスたちは考え始める。
今リアス眷属の男性は一誠、木場、それと一応ギャスパーの三人。一誠は違うとされると残りは木場かギャスパー、さらに剣を使う木場に毒と言う字はもっともかけ離れているため除外。
すると消去法で残ったのは
「ギャスパー」
「え?」
必然的に残りのギャスパーになる。
それに気づいたギャスパーは一誠同様あたふたし始める。
「ぼ、ぼぼぼ、僕ですか!? ありえませんよ」
「でも……もうあてはまるのはあなたしかいないのよ」
矛先が自分に向いたことに焦るギャスパーだがその頭では割と冷静にこの危機を脱出する方法を考えていた。
シルバーを膝に置いていたおかげでリラックス状態にあったギャスパーは焦りながらもなんとか脱出の糸口を発見するに至る。
それはこの話題の発端で先ほど一誠の危機を救った方法である。
「ねえシルバー君、お父さんはどの駒かわかる?」
「え~と……縦と横にいっぱい動ける駒です!」
「縦と横にいっぱい動ける駒?」
一誠がシルバーの説明に頭を悩ませているとすぐにレイヴェルがその答えを言う。
「ルークですね、チェスでその動きをするのはルークですから」
「戦車となると……小猫? ……ありえないわね」
リアスは自身の唯一の戦車の小猫を思い浮かべるが女性であることですぐに除外する。
そしてリアスたちは残りの空白の戦車を思い浮かべる。
「となると最後の空白の戦車と言うことになるわね」
「他に何かわかることはないかな?」
「う~ん…」
ギャスパーはこれ以上シルバー君を悩ませるのはよくないと思いながらここまで来たのだからもっと聞きたいという気持ちが勝っている。
一生懸命に何かを思い出そうとしているシルバーの頭を優しくなでるギャスパー。そうすることでギャスパーがとても満ち足りた気持ちになるからである。もちろんシルバーを落ち着かせようという意思もある。
「う~ん、後はお父様の名前が誇銅ということだけです」
その時シルバー以外の全員が同じことを思った。
『『『それを先に言えよ……』』』
***
「と、言うことだ」
え、説明されてもいまいちわからないんだけど……。
月とルピ君はついにピクリとも動かなくなった。
よくないよ、でも僕の中ではそれと同等くらいに、
「……よかった……本当によかった……」
僕は恋に寄りかかって泣く。
よかった、別に思い当たることはなかったけどもしかしたら記憶がないだけで無意識のうちになんかやっちゃったかもしれないと思ったりしたけど、何もなくてよかった――――!
「怖かった! 何か知らず知らずのうちにやっちゃったかと思って本当に怖かった!!」
その後月かルピ君がどこかに電話して、たぶん家だろう。
そして泣きつかれた僕は眠ってしまった。
だから僕はなんでこんな豪華そうな部屋にいるのかわからない。
「誇銅、やっと戻った……」
すぐ横には恋が座っており僕の顔を覗き込むように見る。
ちょっと記憶が飛んでたせいか気がつかなかった。
いきなりあなたの子供ですって突きつけられれば意識も飛ぶよね?
「ごめん恋、実はアルセウスさんが電球持って現れたあたりから記憶がないんだ。
ここどこ?」
「……ここ……レイヴェル・フェニックスの家」
と言うことは冥界ってこと?
「え? なんで僕たちはこんなとこに?」
「……アザゼルがシルバーを元の時代に返すまでシルバーがさびしい思いをしないように。
……アルセウスがいっぱいお話しして少しの間こっちから学校に通う……」
お話って多分交渉のことだね。きっともめにもめたんだろうな~。
でもこうして僕がここにいるってことは悪い条件じゃなかったってことだろう。それに僕としても未来から独りぼっちで連れてこられたシルバー君を放っておくのはいやだったし。
「……恋は誇銅の護衛、月とルピも来たがったけど危ないからダメってアルセウスが」
まあ二人とも倒れたしね。
僕は何とか現状をあいまいだか把握した。
それから僕と恋は別々の部屋に案内された。中にはホテルの一室のような空間とそこには似つかわしくない大きなカバンが一つ、家にあるカバンと似てる、というより家のだ。
中身は僕の数日間の着替えとスマホの充電器。最低限必要な物が入っている。そして一枚のメモが
『誇銅へ
必要な物はとりあえずカバンの中に詰めといたから。そっちに入ってるのは全部誇銅の分だから。恋の分は別にしといた。
他に必要な物があったら行ってね~。じゃあ今はなき未来を楽しんでね~。
盾子より。
PS.ベットの下のエロ本は家族には秘密にしといてあげる♪ 誇銅って小ぶり派なんだね♪』
……最後の一文は見なかったことにしよう。
とりあえずここがフェニックス家だとしたらまずここの主に挨拶に行くのが礼儀だろうね。
眠っていたからまだしてないし。すっごく怖いけど。
僕が荷物を確認していると部屋にノックの音が転がる。
「お父様ー♪」
入ってきたのはシルバー君、無邪気な笑顔を振りまきながら僕に抱き着いてくる。
「シルバーどこ行ったのー!」
「こっちですよお母様!」
ドアの外からレイヴェルさんの探す声にシルバー君が返事をするとレイヴェルさんが顔を伏せながら入ってくる。
いきなり未来の子供が来て未来の旦那さんが目の前にいる、それも知り合い程度の相手、そりゃそんな反応にもなりますよ。
僕もレイヴェルさんの顔をまともにみれないもん!
「あ、あの、こ、誇銅さん」
「は、はい、レイヴェルさん」
「? どうしたんですか? お父様、お母様」
僕たちが目を合わせないことに疑問を抱くシルバー君、純粋な目が痛い。
「なんでもないよシルバー君」
「そ、そうよ」
僕たちはシルバー君が不安がらないように笑顔を作ってシルバー君の頭を撫でる。
「お父様、いつもみたいにシルバーって呼んでください」
「う、うん、わかったよシ、シルバー」
「はい♪」
その後は恋が一回ドアの向こうでこっちをチラッと見て部屋に戻ったり、シルバー君が久しぶりにお父さんとお母さんと一緒にいられるのがうれしいとはしゃいだりした。
この状態で未来の結婚相手(仮)の家にいるのはいろんな意味で怖い。
特に食事の時なんかはレイヴェルさんの家族が僕をチラチラやガン見していてより一層怖かった。急い席を立つのも失礼に当たるだろうから逃げ出すこともできない、恋が一緒にいてくれなかったら僕はきっと気絶してただろう。
それから寝る時も大変だった。まず恋が一緒の布団で寝たいと言い出した、仮の未来とはいえ妻の前で他の女性と寝るのはヤバイよ、しかも相手の実家で。僕は当然これを断った、部屋も隣だし。
そして次の難関はシルバー君、なんと僕とレイヴェルさんと一緒に川の字で寝たいと僕たちにお願いしてきたんだ、上目づかいで。ただでさえかわいいシルバー君に実の息子+上目づかいはホント危なかった危うく許可してしまいそうになった。
シルバー君には悪いけどそれでレイヴェルさんに不快な思いをさせてしまっては申し訳ないよ。
僕は何とかそれを回避、とりあえず今日はシルバー君のみが僕と一緒に寝ることに。
シルバー君は思ったより早く寝てくれたのはよかった。
シルバー君は現在僕の胸あたりに抱き着いて丸くなって寝ている。そう言えば僕も小さいころお父さんやお母さんと一緒に寝る時は抱き着いて丸くなって寝てたって言われたっけ。
僕はシルバー君の頭を一撫でする。するとシルバー君は『みゅ~』と一言寝言を漏らして再び僕に抱き着きなおす。そんなシルバー君を見て僕はふと笑いをこぼし一時の父親としての幸せに浸り眠りにつく。
ただ、朝起きて恋にシルバー君ごと抱きしめられていたのはびっくりした。
次の日、僕はフェニックス家のメイドさんに僕が公欠扱いになってることを知らされた。
詳しく聞いてみるとリアスさんの仕業らしい。権力怖いと本気で思った瞬間だったよ。
だから今日は一日中シルバー君の相手をすることにした、別にじっとしてるのが気まずいとかレイヴェルさんのお兄さんたちに絡まれないようにするとかじゃないよ! ホ、ホントだよ!
シルバー君は外で思いっきり体を動かすのが好きだったからむしろ僕の方がクタクタになっちゃった。これって神器の副作用か何か? それともただの老化? もしくはただ単に僕の体力がシルバー君の体力を下回ってるだけ?
だけど走り回ったりして流石に疲れた様子を見せたシルバー君。
「みゅ~」
「お休みする? シルバー」
シルバー君はコクンと頭を下して返事をする。
僕は眠そうにするシルバー君を抱き上げる。するとシルバー君はすぐに眠ってしまう。
「あら、おかえりなさい、誇銅さん」
「ただ今戻りました」
部屋に戻る途中偶然レイヴェルさんと会う。
レイヴェルさんは少し話したいことがあるとのことで一緒に部屋までついてくる。
部屋に戻った僕はフカフカなソファーに座ってシルバー君をひざまくら状態にして毛布を一枚掛ける。そしてレイヴェルさんはシルバー君のいる逆方向に座る。
「それで話とは?」
「……誇銅さん、正直なところシルバー君についてどう思ってますか?」
「そりゃ可愛くてとっても元気がいいなと」
「そうではなくて、シルバー君が私たちの子供と言われてどう思いますか!」
レイヴェルさんは急に声を大きくして訊く。
「落ち着いてください、シルバー君が起きてしまいます」
「あ……」
「そうですね、最初はびっくりしましたよ、なんせいきなり僕の子供なんて言われたんですから。
でも今の僕がどう思おうともシルバー君は僕の未来の子供、今は可愛くてしょうがない気持ちです。これが子を持った親の気持ちなんでしょう」
シルバー君を抱いてると幸せな気持ちになる。これは僕の本心だ。
驚きはしたし信じられなくもあった、けどわからないけどこの気持ちは本物だろう、だからシルバー君が僕の子供ってことも今は信じられるし受け入れられる。
「そ、それはつまり私とのその……もうそう考えておいでなのですか?」
「う~んどうだろ?」
「?」
「だって僕はレイヴェルさんのことをあまり知らないじゃないですか、それなのに運命の一言で無理矢理くっつくのはおかしいと思います。
きっと僕とレイヴェルさんがこのような関係になるまでに素敵な過程があったはずです。シルバー君が生きる未来にはこんな出来事はなかったでしょうし」
「……」
「もしシルバー君の言う未来が訪れるのなら僕はそれも悪くないと思っています。けれど今の家族達を裏切る気はありません。
ですからシルバー君が生まれる未来はさっき言ったように素敵な過程を歩んだなら歩みましょう。シルバー君のためにも、そしてレイヴェルさんと僕の家族たちのためにも」
僕が言い終わるとレイヴェルさんは何かを決意したような目、しかし優しい目をした。そしてシルバー君の頭を撫でながら話をする。
「ごめんなさい誇銅さん、実はシルバー君の話には続きがあるのです」
「続き?」
「はい、実は……………」