修学旅行の始まり
僕たちは今この家の裏側。つまり向こうの反転世界にいる。
反転世界は基本的に生物がいないだけで表と同じ場所。だが地球平面説のようにある程度歩くとそこには闇が広がっている。そしてその闇の中を漂うように小さな足場が動いており、さらに奥を見ると広い大地が見える。
もう一つの特徴としてここには大小さまざまな鏡のようなものがたくさん漂っている。そこから表の世界を見ることができる。が、その鏡や映してる場所の物を壊してはならない。鏡が映ってる場所は現実世界とつながってるため壊すと向こうも壊れてしまう。
今は結界とギラティナで鏡が侵入しないようにしてるから絶好の修業場になってる。
そしてなぜ僕たちがここにいるか。それは僕が新しく手に入れた力の実験と紹介のためだよ。
僕が生き返ってだいぶ経つのに家族に見せるどころが自分でも使ったことがなかったからね。
「よろしくお願いします、アルセウスさん」
「うむ」
第一実験に協力してくれるのはアルセウスさん。アルセウスさんなら大抵のことは対処してくれるし。
それにアルセウスさんにはこんな時便利な技がある。
『みがわり』
アルセウスさんから発生したオーラがアルセウスさんから離れもう一人のアルセウスさんに変わる。
これがアルセウスさんの『みがわり』という技。自分の体力を削って身代わりを作る技。そして身代わりは壊れるまでアルセウスさんが自由に操作できる。
これなら安全に実験できるね。
「よし、まずは普通に攻撃してみよ」
「はい!」
僕は家族に見守られながら魔力を練り上げる。
今まではこの段階で手が爆発した。でも今はちゃんとした大きな火の玉を作ることができた。
「おお~ちゃんと成功してるじゃん」
「また爆発しないか不安でしたが、成功してよかったです」
盾姉と月の驚きに同意。
今まではどんなに小さな火をつけようとしても自爆の規模が変わるだけだったからね。
その度に家族たちに心配をかけちゃったからね。
「行きますよ!」
「来い!」
僕はアルセウスさんの身代わりに向かって火の玉を投げる。
だが火の玉は燃え盛る炎に似つかわしくないほどあっさりと受け止められてしまった。
そして僕の炎玉を持っているアルセウスさんは何かに気づいた様子でポケットからメモ用紙を一枚破り、みがわりの持っている炎玉の何か手ごと入れる。
「な、何をして…」
「これ、燃えん」
アルセウスさんがそう言うと僕はアルセウスさんの手にある紙が燃えてないことに気づいた。
そのことに気づいた家族たちも炎玉に近づく。
「ほんとだ、全然燃えてない」
「ちゃんと熱はあるのに不思議」
「でも何だか暖かい炎ですね」
家族全員で僕の炎玉に近づく。
炎玉を観察してるうちにさらに新しい発見をする。
「持てた……」
恋が炎玉を握るとそのまま持ててしまった。なんで?
すると好奇心でフランも同じことをするとフランも平気で持てる。さらに家族全員が普通に持ててしまった。
「なんか……別に熱くなかったな」
「そうね、せいぜいカイロくらいだったわね」
僕は何だか悔しくなりもう一度火の玉を作り出す。
すると今度はさっきとちょっと違った。
「あつ……」
「今度は普通に火として熱い」
やった! 今度はちゃんとした炎を出せ
「でも相変わらず燃えんの」
「あらら」
みがわりがメモ用紙を火に入れると用紙は燃えてない。
「でも今回は熱でみがわりもダメージを受けてるな」
まあ炎を出せただけで良しとしよう。
それから他の魔法の適性も盾姉に調べてもらったがやはり炎以外適性なし。
僕の魔法のコントロールの勉強のためアルセウスさんから盾姉に交代。
「いい、魔法ってのはイメージが大切。イメージの完成度が高ければ高いほど魔法の精度も高くなる。
後は魔力の総量で実現できるものも限られたりするけど、誇銅の場合すぐに回復しちゃうから関係ないか」
僕は盾姉に言われた通りいろいろイメージしながら炎を作ってみる。
すると結構いろいろな形の炎を作ることができた。
「じゃあ次は瞬発的な想像の練習ね」
盾姉はあたりの砂を集めて戦闘態勢を取る。
「じゃあ、あたしの砂に対抗してごらん」
「は、はい!」
まず盾姉砂の弾丸を炎の盾で防いでみる。
すると砂の弾は炎の盾にぶつかると突破しようと何度かぶつかったのち崩れる。
「へ~やっぱり」
「なにがですか?」
「どうやらあんたの炎は燃焼させる力はないけど物理的な力はあるみたいってこと」
そう言うと盾姉は誰もいない位置に砂の人形と盾を出現させる。
「ちょっとあの盾を物理的なイメージで壊して人形を攻撃してごらん。できるだけ自分にわかりやすい物理的イメージでね」
「はい」
僕は物理的イメージと言われたので炎を拳の形にして攻撃してみる。けれど盾を破壊するには至らなかった。
「だったら一旦炎のイメージに戻して壁をつたうようにして盾の後ろに回り込むイメージをしてみなさい。
今までの感じからするとあんたの炎はかなり操作性が高いみたいだからできるとおもうわ」
「はい」
僕はいったんイメージを炎に戻して盾を燃やすイメージをしてみる。すると砂の盾は崩れてただの砂に戻ってしまった。
「「あれ?」」
僕も盾姉も今起こったことがわからない。
盾姉の様子からもわざと解いたわけではなさそう。
「……砂の支配権がきれてる。ねえ誇銅あの砂の人形にも同じことをしてみて」
「うん」
僕は同じように砂の人形にも燃やしてみる。
すると盾と同じように砂に戻ってしまう。
「どう、盾姉」
「う~ん……ねえフラン」
「ん?」
「ちょっと誇銅に向かって軽く弾幕で攻撃してみて。誇銅はそれを燃やす気で防いで」
「いいよ」
「わかりました」
僕とフランは言われる通りフランは弾幕を僕に、僕はそれを燃やすイメージで防ぐ。
すると弾幕は炎の中で消えてしまった。
「やっぱり」
「なにかわかった?」
「誇銅、あんたの炎は魔力のみを燃やせるみたいね」
「えっ!?」
魔力のみを燃やす?
「そっ、魔力のみをね。これで戦略の幅が広がったじゃん。やったね誇銅」
盾姉は肘で僕をつんつんする。
家族のみんなも僕を褒めてくれる。懐かしいなこの感じ。褒められるってこんなにうれしいことだったんだ。
お父さんとお母さんが死んでから褒められるなんてことは無かったからね。
それからみんなで組手などをしてみた。
それで新たにわかったことはやはり盾姉と比べるとまだまだ造形の幅とスピードが甘いことと、戦闘面でもまだまだ弱いってこと。
前よりずっとマシになったけどまだまだ守られる側から脱出は出来そうもない。みんな強いや。
でも僕は剣術もあんまり強くないから単純に戦力が増えたと思えばいいか。
***
そして日が経ち修学旅行当日。
昨日の夜は楽しみで眠れなくなったルピ君を寝かしつけるので僕もなかなか眠れなかった。僕自身はすんなり眠れたけどね。
家族のみんなからは前日にお土産を楽しみにしてると言われ、朝にはしっかりと見送ってくれた。
何だかとってもうれしい。ちなみに朝こっそりとテト姉にほっぺにチュウをしてもらったのはヒミツだからね。
駅に行く途中早起きに慣れてないルピ君だけは眠そうにしていた。
さーて、楽しい修学旅行の始まりだね!
新幹線が東京駅を出発して数十分経った頃ようやくルピ君の目がしっかり覚めたようだ。ちなみにそれまでは僕に寄りかかって寝ていた。
新幹線の席は窓側に僕、通路側にルピ君。通路を挟んだ向こう側に恋と月がいる。
月と恋は楽しそうに談笑している。僕とルピ君は向こうの名所を調べながらおしゃべりしている。
「ねえねえ誇銅君この金閣寺と銀閣寺ってとこは絶対見ようね」
「大丈夫だよルピ君そこはちゃんと回る予定になってるから」
それから新幹線でルピ君の僕へのセクハラを月が止めようとして、二人を恋が止めたところで、
『間もなく京都に到着致します』
アナウンスが流れる。ふう、ついに到着か。
新幹線が駅のホームに到着して僕たちは荷物を持ってホームへ降りる。
「京都到着」
ルピ君も月も恋も初めての遠出で見るからにウキウキしてる。
僕も中学時代の修学旅行を思い出すよ。あの時の僕もわくわくが止まらなかったからね。
進んでいくごとに僕も初めて見る場所の景色に心が躍る。僕でさえこんなにわくわくしてるんだからルピ君たちはもっとわくわくしてるだろうね。
「見てみて誇銅君!」
「誇銅さん! こっちも見てください!」
ルピ君と月はあれこれ指さしてはしゃいでいる。
一方恋はいつも通り口数は少ないがその表情はいつもより数段明るい。どうやら楽しんでくれてはいるみたい。よかったよ。
「確か集合場所はホテルの一階だね。行こう、ルピ君、月、恋」
「うん!」
「はい!」
「(コク)」
月たちを地図を見ながら誘導していく。
なれない土地だけに迷ったりもしたけど無事ホテルに集合することができた。が、
「京都サーゼクスホテル……」
サーゼクスってリアスのお兄さんの名前だったよね? まあ駒王学園自体悪魔の経営するところだからびっくりはしないけど……どこまで悪魔の手が伸びてるんでしょう?
ホテルの中もすっごい豪華だった。リアスさんの実家の方がすごかったけど圧倒されるね。
時間が来ると各班ごとに点呼をとる。全員が揃っていることを確認するとホールに座って先生方の注意を聞く。
新しく入った先生はなぜか百円均一の話をしだしたけどまああらかた注意事項はわかったからまあいっか。
そして注意事項の話が終わると午後の行動についての説明が始まる。
その説明が終わると荷物を持ってホール出入り口で部屋のカギをもらう。月と恋とはここでいったんお別れだね。まあ荷物置いたらすぐにまあ会うけどね。
ちなみに僕はルピ君との二人部屋。綺麗な洋室の広い部屋だった。
一応大丈夫だとは思うけど今更ながらルピ君が暴走しないか心配になってきたよ。