BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

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一騎当千の力

「やっぱりね……」

「う~ん……誇銅君……むにゃむにゃ」

 

 旅行二日目の朝、僕はなれない場所での睡眠のためかいつもより早く目を覚ます。

 隣のベットには確かに昨日はルピ君が寝ていたし眠りに落ちるまで確認もした。だけど今は隣のベッドは誰もいなくて僕の隣にルピ君はいる。

 正直ルピ君は昨日の寝る寸前に一緒に寝たいと言ってくると思ってたよ。

 朝の点呼までまだ時間はたっぷりあるしもうしばらくベッドでゆっくりしておこう。

 

「僕に気を使ってくれたんだね。ありがとね」

「すうすう…」

 

 僕の腰上あたりに手をまわして軽く抱き着いてるルピ君の頭をやさしくなでる。

 そうするとルピ君は嬉しそうな顔をしながら抱き着く力を少しだけ強める。

 

「う~ん……♪」

「ホントに寝てるよね?」

 

 僕のしてることに対してルピ君の反応がありすぎる。

 でも僕がこんなことを言っても起きないってことは多分寝てるんだろう。もし本当は起きてたらえへへ、ばれちゃったと言うだろうからね。

 このままルピ君を撫で続けるのも悪くないけどこのまま二度寝とかしちゃうとちゃんと起きれるか不安になるね。

 

「フラブルマ・マンドレイク」

 

 僕は自分の炎で小さな手足のあるマンドレイク型の炎を三体作り出す。

 

「それ」

 

 その三体のマンドラゴラを操ってちょっとした組体操をさせる。

 これは炎の操作性をあげるための僕が考え付いた練習。

 なぜマンドレイク型かと言うと昔好きだったゲームの影響かな?

 小さな生物たちが群れで大きな生物と戦うゲーム。

 

 それからしばらくマンドレイク組体操をした後、ちょうどいい時間になったのでルピ君を起こしてひと騒動あったのちゆっくりと支度を始めたのだった。

 さて、今日はまず稲荷神社に行く予定だ。

 

 

 

       ***

 

ー一誠sideー

 

「―――――じゃあ、野郎ども! 行くわよ!」

「「「おおーっ!」」」

 

 桐生がメガネをキラリと光らせながらバス停を指さし、俺たち男子が雄たけびをあげた!

 初日にはなぜか現地の妖怪の襲撃を受けたりして大変だったけど、先生たちが修学旅行を目一杯楽しんで来いと。だから先生たちのお言葉に甘えて観光できるうちに観光しておこうと思った。

 匙たちや誇銅たちも今日は各所を回るって言ってたしな。

 京都駅のバス停から清水寺行のバスに乗ることから始まる。俺たちは京都駅でバスの一日乗車券を買うと他の生徒たちと共に並びながらバスを待つ。

 

 バスに乗ると町の風景を楽しみながら目的地に到着。

 周辺を軽く見物しながら坂を上って清水寺を目指す。

 坂を上ってる途中桐生が三年坂の逸話を話してアーシアとゼノヴィアがマジで怖がる。

 

「はぅぅぅっ! それは怖いです」

「……日本は恐ろしい術式を坂に仕込むのだな」

 

 二人は俺の両腕につかまる。二人とも若干震えている。

 ちょっと不真面目だろうけど二人のおっぱいが当たって役得。

 二人の美女を両脇にしながら坂を上ってる間に感じる野郎二人の嫉妬の視線も心地よい。

 坂を上りきり大きな門を潜り寺へ!

 寺の中では教会トリオが興奮して神様仏様に失礼なことを言ったり、桐生が清水の舞台のうんちくを言ったり。

 清水の舞台の下を眺めていると今の俺なら落ちても平気かななどと思ってしまった時は戦闘的なものが身にしみすぎてるなと思った。

 

 他のも安全と合格の祈願や成就の小さなお社でお祈りしたりおみくじをしたりした。

 二人の野郎は隅でどんよりしてたな。

 寺を一回りして記念の品を軽く買うと次の場所に行くためにバス停に進む。

 

 

 

「銀じゃない!?」

 

 銀閣寺に着いて寺を見たゼノヴィアが開口一番に叫んだ。

 まあ銀閣寺は銀じゃないからね。ただゼノヴィアのショックは尋常じゃない。

 開いた口が塞がってない。

 ただ金閣寺を見た時は逆にチョー喜んでいる。両手をあげて顔を輝かせるほどに。

 確かに金閣寺はすんごい金ピカだ! 実際生で見るとその輝かしさに圧倒されるわ。

 他の来ていた生徒たちもみんな撮影していた。俺も記念に写メしておこっと。駒王学園にいる他のメンバーに送信っと。

 

「……金ピカだった」

 

 休憩所でお茶を飲んでいる時、ゼノヴィアは未だに夢の中。よほど金閣寺を見た感動がデカかったみたいだ。

 それからまた教会トリオが天にお祈りをしたりした。記念と言っていたがどういう記念なんだろうか?

 

「何するアルかー!! この痴漢野郎アル!!」

 

 あ、女性の声だ。気になってお茶屋をを出てみると男性が小猫ちゃんほどのチャイナ系少女に後頭部を両足で蹴られていた。

 

飛翔龍尾脚(ひしょうりゅうびきゃく)アルっ!」

 

 そしてそれからまだ動く痴漢が係りの人に取り押さえられる。

 

「お、おっぱいを! 特にちっぱいをくれ!」

「黙れ変態アル! 取り調べ室でも同じことほざくなら背骨折ってやるアルよ!」

 

 そう言って男と少女は係りの人に連れられてさる。

 まったく、こんなとこで痴漢とか雰囲気ぶち壊しだぜ。

 そして不意に俺の携帯が鳴る。あらら、朱乃さんからだ。なんだろうか?

 

「はい、もしもし。どうしたんですか、朱乃さん」

 

 朱乃さんの話では小猫ちゃんが写真の風景に狐の妖怪が何体か映っていたと。

 朱乃さんは少し心配げな音声で言う。

 

「いえ、大丈夫です。あ、ちょっとアーシアが呼んでるみたいなんで、また後で」

「……何かあったら連絡をくださいね」

「はい」

 

 電話を切りお茶屋の方を振り返ると、松田、浜本、桐生が眠りこけていた。

 そしてゼノヴィアが女性店員を怖い顔で睨みつけている。

 怪訝に思い店員を見ると頭部に獣耳に尻尾もある。人間じゃない。なるほど、ゼノヴィアも警戒するわけだ。

 ゼノヴィアがバックから聖なる短剣を取り出してアーシアを背後に隠す。

 俺も左手に籠手を構えて臨戦態勢をとると、

 

「待ってください」

 

 聞き覚えのある声が俺たちを静止させる。声のする方を見るとそこにはロスヴァイセさんが。

 ロスヴァイセさんの話では停戦の話でアザゼル先生に迎えに来るように言われたと。

 どうやら昨日の誤解が解けたようだ。

 それから俺たちは周りの獣耳のお姉さんに連れられて妖怪の領土に案内された。

 そこには古い家屋が立ち並び、たくさんの妖怪たちが。

 河童や歩く狸、昔話などで聞いたような生物がたくさん。

 

 獣耳のお姉さんに連れられてさらに進むと巨大な赤い鳥居の前まで来た。その奥には古さと威厳を感じさせるデカい屋敷が建っている。

 そしてそこには、

 

「お、やっと来たか」

「やっほー、みんな☆」

 

 アザゼル先生と着物姿のレヴィアタンさまと昨日俺たちを襲ってくれた九尾の娘さんが。

 ついさっき

 それから九尾の娘、九重から謝罪と襲撃した訳を聞いた。

 先生たちはそれを禍の団の可能性が高いと情報を提供。

 

「……なんだか、えらいことになってますね」

「ま、各勢力手を取り合おうとするとこういうことが起こりやすい。

 オーディンの時もロキが来ただろう?」

 

 先生が不機嫌そうに言う。平和な日常を願う先生はテロリストは絶対許さない姿勢だもんな。きっと腹の中は煮えくりかえっていると思う。

 そこから話は協力して九重のお母さんを取り戻そうという話になっていく。

 そこで先生が俺たち眷属を見渡すように視線を向ける。

 

「おまえたちに動いてもらうことになるかもしれん。人手が足りなさすぎるからな。

 特にお前たちは強者との戦いになれているから対英雄派の際に力を貸してもらうことになるだろう。

 あと、ここにいない木場とシトリー眷属と誇銅たちには俺から連絡しておく」

「ホントにそいつらでテロリストと戦えんの?」

 

 先生が話してる最中に女性の声が割って入る。

 そこには胸元が大きくはだけている白シャツとロングスカートをはいた褐色肌の角の生えた女性が。

 て言うか胸のサイズもとんでもないが、それをあんなにエロく露出させてるって、ヤバイ鼻血が……。乳が! 乳がぁぁあっ!

 

「悪魔とドラゴンの気配……。今噂の赤龍帝ってやつかい? おっぱいドラゴンだっけ?

 んーまあそこは噂通りっぽいな」

 

 そう言って俺を残念そうな目で見る。

 そんな目で見ないでー!

 

「こら、客人に失礼じゃぞ!」

「しかし弱そうに見えるってだけならそれは立派な強みだ。なあ赤龍帝、いっちょオレと勝負しないか?」

「こら! わらわの話を聞かんか!」

 

 九重はボニータさんをしかりつけるが本人は完全無視。

 京都の妖怪のボスの娘じゃなかったのかよ。家臣の妖怪がまったく言うことを聞いてねえぞ。

 それでも九重はしつこくしかりつける。なんかもうかわいいな。

 

「コラ、勝手に暴走するでない!」

「うるせーな。オレはどっかのお姫様みたいに問答無用で襲いかかってないぜ。

 ちゃんと手合せを相手に申し出てるぜ」

「ううっ……」

 

 悔しそうな表情をする九重。

 どうやらこれ以上言い返せないみたい。

 でもボニータさんってなんだか日本妖怪ぽくないな。頭の角的に牛の妖怪だと思うけど。

 

「バッファローだ」

「えっ?」

「だからオレはバッファローの妖怪だ。角とかじろじろ見てたからどうせオレが日本妖怪ぽくないとか考えてたんじゃねーのか?」

 

 正解です。てか心読まれた。

 てかバッファローの妖怪って明らかに日本妖怪じゃねえな。

 

「オレの故郷スペインで一族の内乱でオレとオレのオヤジ以外全滅したんだ。

 そんで安住の地を見つけるためにオヤジはまだ幼かったオレを連れて日本に来たんだ。そして京都に流れ着いた時に、そのままオヤジはぽっくり逝っちまってオレは京都妖怪に受け入れてもらって今に至るってわけだ」

 

 ボニータさんは笑いながら言ってるけど内容は結構重たかった。

 ボニータさん自身は明るくて親しみやすそうだけど内容が重いからこの話はここで終わりにしよう。

 

「どうするよ赤龍帝。悪魔の実力を見せるためと交流のために一丁やろうぜ」

 

 確かにそう考えると悪くない。

 これでこっちの力も知ってもらえるし妖怪との腕試しもちょうどいい。

 それにうまくいけば合法的にあの乳と触れ合える。

 

「よく考えるのじゃ赤龍帝! ボニータは昔妖怪同士の戦争が起きた時、一千万の敵をたった一人で倒したことのあるほどじゃ」

 

 一千万対一で勝っただと!?

 その話に俺たちは全員耳を疑った。

 いやいや、俺とは格が違うじゃねえか。

 

「あーそんなこともあったな。まあそんなことはどうでもいいじゃんか。

 お前だってかなり武勇伝があるらしいじゃんかよ」

 

 それから俺はボニータさんにうまいこと言いくるめられて軽く手合せすることに。

 さすが一騎当千の妖怪。口では勝てそうにない。

 九重も途中までもう抗議していたが、ボニータさんが自分の胸に押し付けてしゃべれないようにされた。

 う、うらやましい……。

 

 

「じゃああっちに広い場所あるからそこ行こうぜ」

 

 俺とボニータさんは広場に出る。

 他のみんなは離れて観戦。

 

「じゃあ行きますよ! プロモーション、戦車!」

 

 赤龍帝の鎧を展開させる。

 ボニータさんの気迫が膨れ上がり俺をキチンと見てくれてるようなピリピリとした感覚が俺を襲う。どうやら本当に俺を強者として相手してくれてるみたいだ。

 正直気迫でもう押されているがとりあえず全力で初手を繰り出す。

 背中のブースとを最大に噴かし、前方に飛び出した!

 そしてボニータさんに向かって思いっきり右ストレートを放つ

 

「こんなもんかい?」

「なっ!!?」

 

 が、俺の拳はあっさりと受け止められていた。

 しかも受け止められた。さらに左手で頭を掴まれてそのまま振り回される。

 

「うぉぉぉぉおおおおおっ!!」

「そらっ」

 

 そして元の位置ほどまで投げ飛ばされる。

 結構距離があったのにそれを片手で簡単に投げ捨てる力は相当なものだ。

 

「くそっ、だったら……!?」

 

 俺が立ち上がってボニータさんの方をしっかり見ると、ボニータさんはそれを確認してから地面を強く蹴って某サイヤ人のように一瞬で俺の目の前まで飛んできた。

 そしてそのまま右ストレートを入れられる。

 両手でクロスして防御した上にとっさに半減の力まで使ってしまったのに籠手の部分はボロボロに崩れ去り、俺は今宙を舞っている。戦車にプロモーションしてるにも関わらずだ。

 俺とパワーが違いすぎる。サイラオーグさんレベルだ。

 しばらく宙を舞って落ちるとアーシアが俺の治療をしてくれる。

 

「お前の攻撃はいいパンチだったが、素人にしてはってとこだな。

 オレから見ればまだまだ未熟ってとこだ。でもとっさに防御できたのはいい反応だったぜ」

 

 何だか全く褒められてるように感じないが、まあ一騎当千と言われる妖怪から一言褒められたから良しとするか。

 それから再び話が進んでいき結局本格的に旅行どころではなくなってきた。

 まあ、めぼしいところは今日のうちに回っておいたからよかったぜ。でも、明日は九重が観光の手伝いをしてくれるらしい。初日の襲来の謝罪と言う意味合いもあるらしい。

 話を続けてるうちにこちらの主要メンバーの情報と写真を軽く伝えている時

 

「うお! 居るじゃねーか、かわい子ちゃんが! オレこいつらの護衛する!」

「絶対ダメじゃ!!」

 

 誇銅の写真を見せた時、ボニータさんが誇銅たちの護衛をしたいと言いだし九重がそれに猛反対。

 そりゃボニータさんは妖怪側の最大戦力らしいけど、別にそれくらいなら問題ないんじゃないと思うんだけどな。

 ボニータさんは先ほどと違って何度も九重にお願いするが九重はそれを断固拒否。

 

「そもそもお主に観光の手伝いをする理由などないじゃろ!」

「実は昨日敵だと思って思いっきり襲い掛かっちゃってそのお詫びで…」

「嘘つけなのじゃ! 報告では戦闘はなかったと聞いておるし、お主が暴れて何の被害もないわけないのじゃ!」

「頼むよ、あくまで観光の手伝いだし連れがいるみたいだから襲ったりしないから」

 

 ものすごい頼み込むな。なんでそんなにボニータさんは誇銅たちの観光の手伝いがしたいのか、そして九重もなんでそこまで却下するのか。

 わかんねえけどそれぐらいいいんじゃねえの?

 

「あの、ボニータさん。なんでそこまで誇銅たちの観光の手伝いがしたいんですか?」

「オレの勘が言ってるんだ、こいつらのとこにいれば八坂のやつが見つかると」

「嘘なのじゃ! こやつは幼い男が好きで昔は種族問わず幼い男を攫ったと母上から聞いたぞ!」

「ちょっと愛でた後にちゃんと全員無事に帰したじゃねえかよ」

 

 それってショタコンってやつですか!?

 確かに誇銅は見た目は幼いから狙われたのか。

 それからこの話は何度も却下されなしと言う結論に至ったが、他の話の間にもボニータさんはずっとお願いし続けていた。どんだけ行きたいんだよ。

 しかしまだ幼い九重のお母さんを誘拐するなんて……禍の団の奴ら、会ったら絶対とっ捕まえてやる!

 

 

ーoutー

 

       ***

 

 

 ふい~今日も楽しかった。

 今日は特に変なこともなく順調に観光地巡りができたよ。特にパワースポットと呼ばれる場所は僕と相性が良かったのかいるだけで力が湧いてきてリラックスできたよ。

 それに稲荷神社では人通りの少ないとこで野生の狐に触れちゃった。最初に恋が見つけていつの間にか手なずけちゃったからね。

 流石に飼いたいと言われた時は心を鬼にしてダメって言ったけどね。そこで恋がちょっと沈んじゃったことを除けば完璧だったんだけどね。

 でも今日の晩御飯はバイキングだったから恋も満足してくれたみたいで機嫌も直してくれた。

 

 これで終わったらな僕も文句はないよ。でも残念ながら一つ不満が出来ちゃったんだよね。

 

「キャー誇銅君、こっち向いて!」

 

 きっかけは些細なことだった。お風呂が気持ちよくてちょっとふらふらとしていて間違って女子のフロアでエレベーターを降りちゃったこと。ルピ君も一緒だったけどね。

 そこでクラスの女子とばったり会っちゃって、

 

「ちょどよかった誇銅君、ちょっと来て。ルピ君も一緒にどうぞ」

 

 それから女子の部屋に連れていかれて。あの時は風呂上りで判断力が鈍くなっていたからだ。

 少なくとも今までの経験から用件は聞くべきだったよ。

 そのせいで僕は今、犬耳をつけられて、拾ってくださいと書かれた段ボールに体育座りさせられることは無かっただろう。

 

「あー誇銅君のかわいさがここまで引き出されるなんて」

「これは永久保存版ね!」

 

 女子たちが僕のこの姿を写真に撮る。

 写真くらいはもう慣れたから別にかまわない。でもなでるのは勘弁してほしい。

 僕が嫌がってもそのしぐさすらもかわいいらしく全くやめてくれる様子がない。

 頼みの綱はルピ君なんだけど、

 

「ワンコ誇銅君も、ハァハァ……」

 

 両方の鼻にティッシュを詰めながらキラキラした目で僕を見るだけ。

 ブルータスお前もか状態で救援は期待できず。

 

「は~可愛いワンちゃんでちゅね」

 

 そうだ! 今僕は犬として可愛がられてるのだから犬っぽくお願いすれば解放してくれるだろう!

 それで彼女たちも満足して解放してくれるに違いない!

 

「どうしたの誇銅君?」

「く~ん(上目づかい)」

 

 さっきまで騒いでいた女子たちがピタッと止まる。

 よし、もう一息。保険としてルピ君が連れて帰ってくれるように。

 

「ワン! ワン!」

 

 ルピ君に向かって手を広げながら鳴く。

 これでルピ君も僕の意図を理解して連れ出してくれるだろう。

 この時は本気でそう思っていた。

 

『きゃ~~~~~~~!! ルピ君すっごくかわいい!!』

「えっ!?」

 

 ようやく冷静になった頭で考えたら犬マネなんてどう考えても悪手以外の何物でもないよ!

 彼女たちは与えれば与えた以上のものをさらに(ほっ)するなんてわかりきったことじゃないか!

 まずい、まずいぞ。こりゃ本格的に消灯時間まで帰してもらえなくなるぞ。

 ここを自力で脱出するには本気でキレるくらいのことをしなきゃ出られないぞ。でもそれは今以上に恥ずかしいからしたくない。そうなると自動的に自力脱出は不可能。

 こうなったら最後の希望のルピ君に……だめだ、幸せそうな顔して倒れてる。あ゛ー僕のバカー!

 

「あー誇銅君は今日から私の部屋で飼う」

「ダメー私の部屋で飼う!」

「ずるーい! 私だって誇銅君飼いたい!」

 

 まずい、消灯時間になっても帰してくれそうにない!

 僕は現状に絶望しながら何とか抜け道を考えていると

 

「ダメー!! 誇銅君と一緒なのは僕だ!!」

 

 突然立ち上がったルピ君は僕を女子たちの手から奪い取って人間じゃないスピードで部屋から出た。

 ルピ君、ありがたいけど明らかにアランカルとしての身体能力を使用してるよね?

 後で追及されたらどうしよう。

 何とか部屋に戻って一息つく。

 

「ふ~助かったよルピ君」

 

 僕は未だつけたままの犬耳を取る。そしてルピ君は急に僕に抱き着く。

 ど、どうしたの!?

 

「僕は誇銅君を捨ててないもん……」

 

 ルピ君は僕の耳元でそうつぶやいて抱きしめる力を少し強める。

 僕は不満そうなルピ君の頭をやさしくなでる。

 

「大丈夫、僕の部屋はルピ君と同じだよ」

「……うん」

 

 ドラマなら確実に恋愛イベントが起きる雰囲気が漂う。

 それをぶち壊したのはアザゼル先生。

 いきなり恋たちと先生たちの部屋に集合させられた。

 聞けば今京都でテロリストが潜伏してるらしくその手伝いをしろと。僕はどうやって関わらないように逃げれるか考えながら話半分に聞く。

 そこでホテルにいつでも戻れる転移用魔法陣、携帯簡易版をもらう。

 観光中は部屋に置いとこうかな? ……やめとこ後でどんな文句言われるかわかんないし。

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