BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

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 タイトルでだいぶ予想がつけられちゃったかな?


反英雄、光炎の2000万パワー

 一誠たちはバラバラにされたのち、道中の英雄派の刺客を倒しながら曹操たちがいる本丸御殿へ足を進めた。

 誇銅と恋に連絡しようとしたがつながらず、一誠はとりあえず九重の母親を救出を優先した。

 

禁手(バランス・ブレイカー)使いの刺客を倒したか。俺たちの中で下位から中堅の使い手でも、禁手(バランス・ブレイカー)使いに変わりない。流石だ」

 

 曹操は練習したとおり、悪の親玉感を出すため余裕たっぷりに言う。

 それを合図に建物の陰から他のメンバーが姿を現す。

 

「九重のお母さんは何処だ!」

 

 曹操はその問いに隅の方にある宝箱を指さす。

 

「あそこの箱に九尾の御大将のいる場所の地図が入っている。

 ちなみにお前たちの仲間二人もそこにいる」

「なに!?」

「安心しろ、二人とも人間だから傷つけてない」

 

 それを聞いて一誠は曹操をさらに問い詰める。

 

「曹操! こんな疑似京都まで作って、しかも九尾の御大将まで誘拐して、何をしようとしている!?」

「京都はその存在自体が強力な気脈に包まれた大規模な術式発生装置だ。名所と呼ばれるパワースポットが霊力、妖力、魔力に富んでいる。

 この疑似空間にもそのパワーは流れ込んでいる。

 そして、九尾の狐は妖怪でも最高クラスの存在。京都と九尾は切っても切り離せな関係だ。

 だからこそ、ここで行うことに意味がある」

 

 曹操はスラスラと悪役っぽく説明する。

 時より手のひらに隠したカンニングペーパーをばれないようにチラチラ見ながら。

 英雄派のメンバーはその様子を見て、ばれてないか若干ハラハラする。

 

「都市の力と九尾の狐を使い、この空間にグレートレッドを呼び寄せる」

「グレートレッド? あのでっかいドラゴンを呼んでどうするつもりだ? あいつ、次元の狭間を泳ぐのが好きで実害はないんだろう?」

「俺たちのボスが邪魔な存在らしい」

「……それでグレートレッドを呼び寄せて殺すのか?」

「え、あの、その、それは……」

 

 曹操はまさか一誠がここまで聞いてくるとは予想しておらず言葉を詰まらせる。

 どうせ単純な性格の彼は目的を聞いたら即戦闘になると思っていたからだ。それに、別に秘密と言っておけばどうにでもなると考えていた。

 だがこの空気と流れは言わなくてはいけない感じになってしまっている。

 曹操は周りのメンバーをチラチラ見るが誰も目を合わせてくれない。

 

「……まっ、まあ一つの実験だ。あの、あれだ、強大なものを呼べるかどうかのな。……うん」

「……よくわからねぇ。よくわからねぇがおまえらがあのデカいドラゴンをとらえたら碌でもないことになりそうなのは確かだな。それに九尾の御大将も返してもらう」

 

 さっきより若干弱弱しい言葉で曹操は言う。

 曹操はこれで空気がぶち壊れることを恐れていたが、別にそんなことは無く曹操とそのメンバーはほっと胸をなでおろす。

 

「さあ! かかってこ…」

「初手だ。くらっておけッ!」

 

 曹操が開幕のセリフを言い終わる前にゼノヴィアがフライングな攻撃を放つ。

 

 

 

 

      ***

 

 

 一方その頃八坂たちは

 

 

 

 

「はっはっは、そりゃ災難じゃったな」

「僕には笑い事じゃないですよ! もう少しで大変なことになるとこだったんですから!」

 

 む~、八坂さんとお話ししながら打ち解けたまではよかったけど、うっかり口を滑らせてあの観光中の危機まで喋っちゃったよ。

 ここには恋もいるからいろいろぼかしてもらうように言ってるし、恋にもここで話したことは誰にも言っちゃダメって言ってるから内容が漏れる心配はないと思うけど。

 う~、なんで言っちゃったのかな~。僕のバカ~。

 

「ボニータからすればお主のような男はどすとらいくじゃしな。妾も思わず撫でたくなってしまうほどじゃから。

 なんせあやつは昔は可愛い男の幼子を見つけると、すぐさま攫って愛でたくらいじゃ。

 今はだいぶましになったが……あやつは今も昔も暴れ牛じゃからして」

 

 多少幼く見られて可愛がられるのはもう慣れてるのである程度は許容範囲です。

 ですがボニータさんのは僕じゃなくてもアウトラインだよ!

 

「しかし、ボニータの性癖には困ったものじゃ。我々もそれには手を焼かされておる。

 ボニータ自身の強さと経歴で妾以外はあまり強く言えんからな」

 

 ああ、やっぱり身内でも厄介と思われてるんだ。

 よかった。ボニータさんみたいな妖怪がポピュラーだったら僕もう京都では一人でトイレにも行けなくなるところだったよ。

 それにしても八坂さんが常識人っぽくて良かった。

 

「まったく、方向性が違えは妾が抱けたというのに」

 

 ……ん? なんか話がおかしな方向に向いたっぽい。

 

「あの豊満な体、鍛えられた筋肉がそれをさらに際立たせる。抱き心地も抱かれ心地も最高じゃ。

 それと男勝りな性格も妾の心をくすぐる。

 なのにボニータのやつは妾がいくら言っても全く誘いに乗ってくれん。

 あー/// あの体に抱かれたい。抱く方でも構わん。それはそれで……うへへへ」

 

 この人もボニータさんとは別の方向の同類だったよ。

 あの人もあの人で食べられる側の人だったんだ。

 とりあえずこれ以上聞いても八坂さんが残念なことになるだけだから話を変えよう。

 

「そう言えば八坂さんには娘さんがいるって言ってましたよね?」

「うむ、名前は九重じゃ。まだ幼く、妾に歌を歌ってくれや、舞を教えてくれとかわいい時期じゃ」

「八坂さんは娘さんがかわいくてしょうがないんですね」

 

 僕も一時だけだったとはいえシルバー君と言う実の子供を持ったからわかる。

 小さい我が子は本当にかわいらしいんだよね。

 

「うむ。大きくなるのが楽しみじゃ。うへへへへ」

 

 やばい、この人本物の変態だ。実の娘にまで手を出そうとしてる……。

 九重ちゃんの将来が心配になってきたよ。

 

「そっちの娘は呂布と言ったな。

 まさかあの天下無双と呼ばれた呂布がこんなかわいらしい娘になってるとは。ものを食べてる姿はまた格別にかわいらしいのう」

 

 八坂さんは置いてあったお菓子を食べてる恋を見て手をワキワキさせながら近づく。

 僕はすぐさま恋と八坂さんの間に割って入り、恋の盾になる。

 

「だ、駄目ですよ!」

「安心せい、ボニータと違って妾は強引なのは好かん。

 ちゃんとお互い気持ちよくなれるのが好ましい」

「ほ、本当ですか?」

「もちろんじゃ。だが、ちょっとしたすきんしっぷくらいなら別じゃがな」

「だ、だめです! 恋はまだそう言うことは知らないピュアなんですから」

「おお! まだ青い果実を食すと言うのもまた」

「だから、駄目ですってば!!」

 

 八坂さんの悪乗りはこの後しばらく続く。

 止めるのに一苦労したけど、八坂さんが本気ではなかったため恋を守りきることはできた。

 これで違う意味で一人でトイレに行けなくなっちゃったよ。

 

 

 

      ***

 

 

 ゼノヴィアの不意打ちをくらった曹操たちは、全員少し服が汚れたくらいでこれと言ってダメージは無かった。

 

「いやー、いい攻撃だ(まだ喋ってる途中だったのに……)」

「エクスカリバーと合体させたデュランダルの攻撃で無傷とは」

「君たちの力は上級悪魔の……いや、トップクラスの上級悪魔の眷属と比べても遜色がない。

 魔王の妹君は本当に良い眷属を持った。

 レーティングゲームに本格参戦すれば短期間で成果を上げられるだろう」

 

 曹操は一誠たちの実力、経歴を褒める。

 その姿は上に立つ悪役のように見えるであろう。

 横でヘラクレスがチラチラとこっそりカンニングペーパーを見せてなければ。

 そのほかにも横でジャンヌが「もっと上から目線で」と小声で言ったりしている。

 

「まったく、我々は『英雄派』だと言うのにまるで悪者みたいじゃないか。むしろ君らが英雄(ヒーロー)のようだな。

 いや、君らの今までの戦果から見ると主人公かな?

 だが、まだまだ英雄を名乗るには未熟」

『!』

 

 曹操が言い終わると同時に英雄派の構成員、ジャンヌ、ヘラクレス、ジークがそれぞれ一誠たちの前に出る。

 

「彼らはジャンヌ・ダルクとヘラクレスとジークフリードの意思、魂を受け継いだ者たちだ」

 

 ジャンヌはイリナの前に、ヘラクレスはロスヴァイセ、ジークは木場とゼノヴィアの前に一瞬で移動した。

 

「俺の相手はお前たちだ」

 

 曹操は一誠と匙に向かって人差し指をクイッと動かす。

 曹操の指名を受け一誠と匙はすぐさま戦闘態勢になる。

 匙は黒い炎に大きく包まれ巨大に膨れ上がっていく。

 

「『龍王変化(ヴリトラ・プロモーション)』」

 

 匙もヴリトラの力を纏いその迫力は一誠に引けを取らない。

 

「始める前に、ゲオルグ!」

「了解」

 

 曹操の一言でローブを羽織った青年、ゲオルグが現れた。

 ゲオルグは周囲に各種様々な紋様の魔法陣を縦横無尽に出現させる。

 その魔法陣は曹操たちの背後の一か所を中心に集まっていく。

 

「言い忘れてたがあそこには九尾の御大将とこの術式をつなげる大事な装置がある。

 九尾の御大将を助けたくば我々を倒してあの装置を破壊することだ」

 

 曹操はあえて装置をばらし相手を挑発する。

 だがこれも曹操の作戦。あえて重要な装置の存在を教えることで撤退しやすくしたのだ。

 例え変な誤作動をしても安全装置があるから大丈夫と。

 

「さあ、悪魔の勇者たちよ、俺たちか弱い人間を見事倒して見よ!」

 

 曹操のその一言で戦闘の火ぶたは切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははは、どうしたんだい? もっと攻めてきてもいいんだよ?」

「くっ」

 

 ジークは三本の剣を三本の腕で振るいながら木場とゼノヴィアを追い詰める。

 

「この腕かい? これは『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』さ。ただし亜種だけどね。

 ドラゴンの腕みたいなものが背中から生えてきたんだ」

 

 三本の腕と剣で木場とゼノヴィアを翻弄する。

 だがゼノヴィアもエクス・デュランダルの一部を取り外し、もう一本聖剣を出す。

 それでもジークは二人の攻撃をさらさらとかわしていく

 

「面白くなってきた。最近なぜか腕を上げた曹操との鍛錬で腕を上げてなければ少し手こずったかもね。

 でもせっかくだから見せてあげるよ、禁手化!」

 

 するとジークの背中の『龍の手』がどんどん伸びていきついには龍人の上半身がジークの後ろに生える。その龍人には腕が四本ついている。

 そしてその龍人がジークの帯剣していた残りの剣を抜き取る。

 

「これが僕の禁手化、『龍人神の降誕(ドラゴニック・カオス)

 能力は単純なものだよ。腕の数だけ力が倍化するのさ。

 さあ、勝負を続けようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「光よ! はっ!」

 

 イリナは純白の翼を羽ばたかせて上空から光の矢でジャンヌ目掛けて幾重にも放った。

 その一撃一撃は人間を殺すには十分な力がある。

 

「攻撃が素直すぎるわ。素直なことはいいことだけど、この場合は欠点ね」

 

 ジャンヌがダメ出しをしてる間にイリナは空中を滑空し、一気に詰め寄って斬りかかる。

 ジャンヌはそれを真正面から受け止めるふりをしてイリナの首をそっと触る。

 

「はい、一回死んだわよ」

「!」

 

 首を触られたイリナは危険を感じて急いで上空に退避する。

 

「甘いわねぇ。そんな君にお姉さんからの大サービス。

 お姉さんの能力は『聖剣創造(ブレード・ブラミックス)』。どんな聖剣でも創れるのよ?

 そしてこれが、禁手化(バランス・ブレイク)♪」

 

 かわいく微笑むジャンヌの下から大量の聖剣が生み出され、すごい勢いで重なっていく。

 ジャンヌの背後に創り出されたのは幾重もの聖剣で出来上がった巨大な三つ首のドラゴン。

 

「この子は私の禁手。『試練の三聖龍(ブレイブ・トライ・トリシューラ)』。ジーク同様、亜種よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロスヴァイセは縦横無尽に魔法を繰り出している。

 その攻撃はヘラクレスに直撃はしている。だが、

 

「ハッハッハーッ! まだまだ手ぬるいぜ!」

 

 笑いながらその攻撃を受けきっている。

 だが実はヘラクレスがここまでダメージをくらっていないのは、攻撃を受けるか所を瞬時に力を集中させているからである。

 曹操との鍛錬で新たに身に着けたヘラクレスの特技。

 だが、そんなことは知らないロスヴァイセはヘラクレスがただとんでもなく頑丈に見えるだけ。

 

「私の攻撃は効いてないかもしれませんが、貴方の攻撃も当たっていません!」

「ハッハー! 俺の神器は攻撃と同時に相手を爆破させる『巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)』ッ! 当たればあんたはおしまいだ!

 せっかくだから俺のも見せてやるぜ、禁手化(バランス・ブレイク)ゥゥゥゥゥ!」

 

 ヘラクレスが叫び、その巨体が光輝きだした。光がヘラクレスの腕、足、背中からごつごつした肉厚のものに形成されていく。

 光がやんだとき、ヘラクレスは全身から無数の突起物を生やしていた。その形はまるでミサイルの形。

 

「これが俺の禁手ッ!『神聖なる格闘の地(シン・ファイティング・ジャッジ)』だァァァァァァッ!」

「このままでは、この場が……ッ!」

 

 ロスヴァイセはヘラクレスのミサイルが他の仲間に当たらないように遠ざかる。

 

「仲間を爆発に巻き込まないように俺の気をそらすか。いいぜ! 乗ってやるよ」

 

 ヘラクレスは突起物のミサイルをロスヴァイセに発射する。

 ミサイルは当然破裂音を鳴らしながら爆発する。だが爆発した後、霧のようなものをまき散らす。

 

「これは……?」

「おっと、魔法で吹き飛ばそうとか考えない方がいいぜ。

 俺のミサイルはただのミサイルじゃねぇ。威力は控えめだが着弾と同時にこの霧を発生させる。

 この霧の中で魔法を使えばそれに反応して大爆発を起こす。俺は耐えられるが、お前はどうだろうな。

 つまり、この中では拳以外は使えねぇってことだァァァァァァァァっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はははっ、パワーは申し分ない。だがテクニックがまだまだ若い!

 力任せの攻撃など俺にはそう通じないぞ」

「くそっ」

 

 一誠は曹操のテクニックに警戒しながら戦ってはいるが、終始曹操の技に翻弄されるだけである。

 しかも曹操は一誠と匙の攻撃を受けながらもまだ余裕の表情を一切崩してない。

 一誠はまずは様子見と拳を突き出したまま猛スピードで曹操に突進するが、曹操はその拳を躱しその力を利用して投げ飛ばす。

 匙はその隙に黒い炎で曹操に攻撃するが、曹操はそれを切り刻むように散布させる。

 

「赤龍帝、君はえらく俺のテクニックを警戒して観察してるようだがそれだけだな。対策がまるでとれていない。いや、小手先の返し技だから対応できないだけかな?

 そっちのヴリトラは俺の隙を狙って攻撃するのはいいが、狙う隙が雑だ」

 

 それでも一誠は再び猛スピードで曹操に突進する。今度は左手に龍の魔力を溜めた遠距離攻撃もできるように。

 だが今度は足払いで転ばされ、左手の魔力を槍でうまい具合に傷つけられ暴発させられてしまう。

 

「ぐがぁぁぁっ!」

「甘いな赤龍帝。そして君もね」

「!!」

 

 一誠が攻撃された瞬間、匙はなるべく気配と殺気を消して曹操の死角となる場所から炎を浴びせようとした。

 だが、その攻撃は準備体制の時点で曹操に槍で腹を刺され止めてしまう。

 

「プロシュートさん直伝の技をこうもあっさり……」

「それは暗殺技術だね。君自身の殺気のなさと気配の消し方はまあまあ良かった。だけどその技術と君の神器は相性が悪い。君がいくら殺気を消しても神器に封印されている龍の殺気がビンビン感じる」

 

 匙は腹を押さえながら膝をつく。腹からは大量の血が流れる。

 

「テメェ!」

「おっと」

 

 一誠は曹操がよそ見している隙に拳を叩き込もうとするが、拳が届くより前に曹操の槍が一誠の腹を貫いた。

 一誠も匙も『黄昏の聖槍』の力で消滅し始める。

 

「イッセーさん! 匙さん!」

 

 二人はアーシアの援護回復により一命を取り留める。

 二人は曹操の間合いにいるのはまずいと感じ距離を取る。二人は曹操の攻撃に気をつけながら消極的な攻撃になってしまう。

 

「こうなったら!」

 

 一誠は右手を突き出し、ドラゴンショットを極大で撃ちだそうとした。

 そしてその時、一誠は右端の方にチラッと機械のようなものを見つけた。

 一誠の視線に気づいた曹操は一誠の視線の先を見る。曹操の顔は青くなっていく。

 一誠はその表情の変化気づき

 

「そこかッ!!」

「やめろ―――――!! それを壊したら大変なことになってしまうぞ!!」

 

 曹操の静止に耳を傾けず一誠はちらりと見える機械に向かって極大ドラゴンショットを放つ。

 一誠のドラゴンショットにより、機械は見るも無残な姿に変わってしまった。

 

「なんてことを……安全装置を破壊してしまった……」

 

 

 

 

 

      ***

 

 

 

 

「うぐっ」

「どうしました? 八坂さん」

 

 ついさっきまで三人でトランプをしながら恋にセクハラをしようとしていた八坂さんが突然頭を抱え苦しみだす。

 何かの病気かと思い、僕は八坂さんに『救世の神薬(メシア・アンサー)』で治療を試みるが効果なし。

 

「う……うぅぅぅ、うあああああああああっ!!」

「うわっ!」

「……!」

 

 苦しむ八坂さんから溢れ出す妖気によって後方へ飛ばされる。

 飛ばされた僕は恋にナイスキャッチされる。

 

「ありがとう、恋……あっ!!」

「……」

 

 恋にお礼を言うも、恋はずっと八坂さんの方向から目を離さない。

 僕も八坂さんの方を見て見ると、八坂さんの体は光を放ち徐々に変貌していく。

 そしてついには、

 

「オオォォォォォォォォォォンッ!」

 

 巨大な九尾の狐の怪物となった。

 すごく大きい、大体十メートルくらいはあるかな。

 なんで急に変身を!? だけど今の八坂さんの目は完全に自我はない感じだ。僕たちを見る目も鋭い。

 

「……来る」

「え、うあぁぁ!!」

 

 案の定、八坂さんは僕たちに襲いかかってきた。

 恋と、抱かれている僕は八坂さんの初手を躱すことに成功。

 だけどこのままじゃいけない。何とか八坂さんを止めないと。

 僕は恋に降ろしてもらって、大きな右手と左手の形の炎を作り出す。恋も『無頼無敵の方天画戟(ヴィンディテェ・ロード)』を構える。

 

「斬ったらだめだよ!」

「(コク)」

 

 まず迫りくる八坂さんを僕の炎の手で受け止める。すぐに力負けしそうだけど、少しくらいは止められそうだ。

 次に鞭のように攻撃してきた九の尻尾を、恋が『無頼無敵の方天画戟(ヴィンディテェ・ロード)』の刃のない部分で払いのける。

 それによって一瞬怯んだ隙を狙って、左手の炎を分解させて縄状に変える。

 

赤い荒縄(レッドバインド)

 

 八坂さんの体を炎の縄で締め上げる。

 僕の弱点の一つとして僕は二種類以上の造形をできない。そして一種類につき指の数、つまり五つ以上は作れない。さらに数が多くなればなるほど小さくなってしまう。

 炎の拘束によって一時的に止めることはできたが、

 

「オオォォォォンッ!」

 

 すぐに力押しで突破される。

 僕の力では止めるに至らず、非殺傷では恋の実力も十分に発揮できない。

 僕たちに八坂さんを止める手段はない。どうしたら……。

 そう思っている時、

 

「オラッ!」

 

 いきなり右側の壁が外側から壊される。

 土煙の中からは明らかに突進した後と思われる体勢で立っているボニータさんが。

 

「哈ァー!! 楽勝紅脚(ラクショーくれないきゃく)ッッ!!」

「オオァァァンッ!」

「もういっちょおまけアル。五十歩百歩神拳!」

 

 土煙から現れたもう一つの影が、八坂さんの頭に目掛けて鋭い飛び蹴りを放つ。

 その蹴りを受けた八坂さんは左側に倒れる。

 そこに追撃とばかりにパンダの形をした念力を八坂さんにぶつける。

 

「いやな気配当たっちまったな。青娥はこれどう思うよ」

「おそらく事故アルな。確かにこの京には大きな力を使用する力が働いてるアル。だがそれは何かによって力の流れがいたちごっこになっていたアル。だけど急にタガが外れたかのように消えたアル。

 曹操たちの言葉が嘘なら最初から力をいたちごっこにする必要はないアルね」

 

 ボニータさんともう一人は誰だろう?

 発言からして曹操さんよりの人っぽいけど、ボニータさんも信用してるみたい。

 

「ん? なんでこんなとこにいるんだ?」

「そ、曹操さんにここにいろって……あっ」

「大丈夫アルよ。それなら私たち全員同じアルね。ここでの事はお互い秘密で、ばれたら誤魔化しあうアル。私の名前は閻青娥アル。君たちのことは一応聞いてるアルね。

 で、何が起きたアルか?」

「その、急に八坂さんが苦しみだして、それで」

「何となくわかったぜ」

 

 ボニータさんは僕の頭を軽く押さえて説明を止める。

 ボニータさんともう一人心強そうな人が来てくれて助かったけど、どうしたらいいんだ!

 そんなこともつかの間、ボニータさんと青娥さんと恋は八坂さんが立ち上がるとみるとすぐさま迎撃に向かった。

 僕も一歩遅れて迎撃の体勢を取る。

 

「オラーッ!!」

「アチョー!!」

 

 ボニータさんと青娥さんは八坂さんの九本の尻尾を受け止め、薙ぎ払いながら本体に攻撃する。

 だけど八坂さんを気遣ってあまりダメージはなさそうだ。

 恋も攻撃を加えているがボニータさんたち以上に効果はない。僕の攻撃もほとんど効果がない。

 

「オオォォォン」

 

 八坂さんの九本の尻尾に炎が灯り、その炎が僕たちに向かって発射される。

 僕はそれを炎の盾で逆に燃やしてやった。炎を燃やすって表現はおかしいけど、でも燃やしたんだ。

 

「おおー、すごいアルね」

「僕の炎は魔力のみを燃やすことができるんです。残念ながら火としての殺傷力はありません」

「不思議な炎アルね」

 

 今僕普通に会話してるけどあの人、八坂さんの攻撃を躱しながらしゃべってるからね。

 あんな巨大怪獣相手にして意外と余裕だよ。

 確かにあの人は八坂さんの攻撃を簡単に躱してる。ボニータさんも八坂さんの攻撃をしっかりと受け止めている。だけど二人の八坂さんへの攻撃にはやはりどこか気遣いが見えてあまり効いてない様子。

 それに素で混ざれてる恋もすごい。

 僕はもはや八坂さんの炎を炎で燃焼させることしかしてない。て言うか、それしかできてない。

 

「こりゃ、勝てるのも時間の問題だけど」

「九尾自身の暴走による精神的消耗と後遺症が心配アルね。

 力の乱れが収まるまで封印できれば一番いいアルが」

「青娥、お前陰陽師だろ。何とかできねーのか?」

「ツボを突いたり、気脈を操るのは得意アルが。私の一族は代々封印術が苦手アル。

 私にできることはせいぜい静かな水の流れを封じるくらいアルね。氾濫した激流なんて私じゃなくても難しいアル」

「そっか……じゃあどうすっか~」

「そして、もう一つ手段があるアル」

 

 青娥さんは真剣なまなざしでボニータさんを見る。

 ボニータさんも今まで見てきたお気楽な雰囲気を消して青娥さんを見る。

 いったいどんな手段があるの!? それは僕も手伝えることなの!?

 

(えん)系のみが知るツボ、殺さずのツボをつくことアル!」

「「殺さずのツボ?」

「相手を無傷で完全に戦闘不能にする技アル」

「じゃあそれをやってくれ!」

「だけどこれは半分力押しアル。今の九尾を止めるには私じゃ力が足りんアル。ボニータレベルのパワーが必要アル」

「じゃあオレがする。ツボの場所を教えてくれ!」

 

 二人がもめている間、八坂さんが待ってくれるわけでもないので僕と恋が気を引く。これくらいなら僕たちでも十分だよ。

 でも早めに解決策を持って、戻って来てね。

 

「殺さずのツボはかなり的確に狙わないといけないアル。その技術はおそらく私にしかないアル。

 少なくともボニータの技術じゃ無理アルね。それに力も集中させなくてはいけないアル」

「じゃあ、どうすれば…」

「方法はあるアル。私の技とお前のパワーを合わせればいいアルっ!」

 

 青娥さんは力強く手を差し出す。それに答えるようにボニータさんもガシッと握手をする。

 二人は握手をしたまま八坂さんを見上げる。

 

「お前の背中を預けるアル!」

「お前の背中に、俺のすべてを預けるぜ!」

 

 青娥さんを前に、ボニータさんを後ろに背中合わせをする。そして青娥さんがボニータさんを背負いあげて八坂さんに向かって突進する。

 

「「うぉぉぉぉおおおおおおおおぉぉっ!!」」

 

 二人はまるで新幹線のような突進をする。

 だが、八坂さんもただやられるわけではなかった。二人の突進を九本の尻尾で受け止めたのだ。

 

「「その程度では止まらん(アルっ)!」」

 

 だが、八坂さんは追加で二人に向かって大量の炎を飛ばす。

 流石にあの突進でもそこまでの妨害を受けてしまってはひとたまりもない。二人は体制を解かれ後方へ吹っ飛ぶ。

 

「くっ、このままじゃ届かんアル」

「もっとパワーあげていくぞ!」

「おうアル!」

「待ってください! 僕に考えがあります!」

 

 僕はついさっきの敗因を見て思いついた策を恋も交えて四人で簡潔に話す。

 そして三人とも僕の案に賛成してくれた。

 僕たちはすぐさま体制を整える。八坂さんも待ってくれないからね。

 

 まずボニータさんと青娥さんがさっきと同じように背中合わせでボニータさんを背負う。

 そして僕の炎を二人に纏わせる。

 僕の炎は魔力とかだけを燃やす。ただ突進するだけの二人には問題はない。ただ一つあるとすれば、

 

「熱くないですか?」

「大丈夫アルね」

「この程度じゃ汗もかかねえよ」

 

 どうやらいらない心配だったみたいだね。でも二人とも汗はしっかりとかいてる。

 二人は再び気合を入れなおすかのように「おっしゃー(アル)」と叫ぶ。

 そして八坂さんに一直線に視線を向ける。

 

「私の1000万の技と」

「オレの1000万の力」

「合わせて2000万パワーだ(アル)っ!!」

 

 二人は八坂さん目掛けて一直線に突進する。

 八坂さんも負けずと炎を飛ばしているが、僕の炎の衣を突破できていない。

 パワーは相当上げたからね。そう簡単に突破できないよ。

 炎が効かないとわかると、今度は九本の尻尾で止めにかかる。

 それもちゃんと対策してるよ!

 

「……無駄」

 

 恋の華麗な槍捌きで九本の尻尾を綺麗にはじく。

 それによって二人に障害のない道が出来上がった。

 後はお二人が決めるだけです。お願いします!!

 

「「くらえ! 光炎のロングホーン・トレイン(アルっ)!!!」」

「オオォォォォォォォォォォンッ!」

 

 二人のコンビネーション技が八坂さんの胸あたりを刺す。

 すると八坂さんはみるみる小さくなっていき、最初の三分の一ほどのサイズになると光を放って元の八坂さんの姿に戻る。

 なんか全然動かないけど大丈夫?

 近くにいる青娥が八坂さんの安否を確認する。

 答えは……

 

「心配ないアル。バッチリツボを刺したアルね。

 解除のツボを押せばすぐに目を覚ますアルよ」

 

 よかった~~~。

 これで一安心だね。

 僕は恋に抱き着いて喜びを分かち合う。

 

「まったく、世話がやけるぜ」

 

 八坂さんの近くに腰を下ろして、八坂さんの頭を撫でながらつぶやくボニータさん。

 やっぱりなんだかんだ言ってもお二人は仲がいいんですね。

 八坂さんと話してる時、貴方の話題になると百合なことをいっぱい言ってましたが、それと同じくらいあなたのいいところをいっぱい言ってましたよ。

 でもこれは僕の胸の中にそっとしまっておくことにしましょう。




 おまけ:八坂が英雄派に捕まってからのワンシーン

八坂「本当に部下たちはきちんと生きておるのじゃな?」
曹操「はい、九尾の御大将様に安心して囚われてもらうためですから」
八坂「そうか。なら別によいか♪ 京都には頼れる家臣たちもおることだし、九重にちょっとした経験を積ませてやると思っておくか。
 それに御大将の肩書から完全に自由になれる時間など皆無じゃったからな。ちょうどいい骨休めと思っておこう」
曹操「そ、そうですか……。まあお願いしたいことは夕食の時に説明したことだけです。
 一応護衛としてジャンヌを置いておきます。彼女は英雄派の女性の中で一番の手練れです。
 では、おやすみなさい」
八坂「うむ」


 数時間後……

「キャ――――――――!!」
曹操たち「なんだ!!」 

 バン!(襖を開ける音)

八坂「ふふふ、よいではないかよいではないか」
ジャンヌ「いや、ちょ、やめて。ジャンヌ・ダルクは穢れ無き聖処女なんだから!」
八坂「その割には抵抗が弱いのう? 本当はこういうのに興味あるのではないか?」
ジャンヌ「それはあなたが大事な客人だから……あっ! 曹操、ジーク、ヘラクレス助けて!」
曹操たち「……」

 スー(襖を閉める音)

ジャンヌ「助けろや――――――!!」
八坂「これこれ、女子(おなご)がそんなはしたない声を出すでない」
ジャンヌ「いや―――――――っ!!!」

 この後、無事ジャンヌは助けられました。もっとも、八坂も本気でするつもりはなく九割は戯れでした。(残り一割はいけそうだったら……)
 なおジャンヌは心の処女を汚されたため交代。
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