BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

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 話数『超人同盟』にVS朱乃を追加しました。


裏切り、そして崩壊へ

 京都襲撃の一件が終わってから後始末は結構な重労働だった。

 暴れまわっていた人間の侵入者は頭に変な機械をつけていて、しばらくすると突然うめき声をあげて苦しみだした後にカチカチになって死んでしまった。

 八坂さんは不謹慎だが手間が省けたと言っていたよ。

 これは盾姉の予想だけど大半は頭に機械か魔術か知らないけど埋め込まれて操られてたと。でも、自我のハッキリしていた人もいたことと、目測では大群の中でも小規模にみえたから自らの意思で改造を受けたと考えたらしい。

 正直助けられなかったのは残念だったけど、これで家族に危害を加える存在がいなくなったならよかったよ。

 僕は誰も傷つけたくないなんて考えはとっくにあきらめたよ。

 だから、僕の大切な人たち。家族が無事なら大満足だよ。

 

 今回の事件が三大勢力の同盟者という立場から起こった事件であることを知った八坂さんは前々から三大勢力に打診されていた同盟は本格的に拒否するらしい。

 それによって三大勢力とは商業的なつながり以外はなくなる。実際は今までと対して関係は変わらないけどね。

 

 曹操さんたちは今回の一件で自分たちの力不足、そしてまだまだ進化の可能性を知れてしばらく鍛錬に専念するとこのと。

 体の傷や神器の破損は僕の神器で一発で治したけどね。ふふん!

 

「俺たちは神器なんていう人外に対抗できる強力な武器を手に入れて自惚れていたようだ。

 これがあれば俺たちは正面から勝てるといつの間にか思っていた。

 そんなの人間が人外に挑む心構えとしてはどうかしてる。

 人間は一人一人の力が劣るからこそ策を弄し、団結する。

 確かに人外に対して一騎当千の力を持ってはいるが、それでも自惚れていては勝てる者も勝てない。

 初心に帰って鍛えなおすとするぜ」

 

 そう言って英雄派のみなさんは京都から去る。

 そして後処理を手伝った僕たちも我が家に帰ることに。

 リアスさんからとか留守電いっぱい入ってたらヤダな~。

 

 

 

 京都から戻った僕は次の日、駒王学園に登校する。

 あ~ズル休みした罪悪感が~。

 そんなことを思っていると一誠に声をかけられた。また変な情報を入れてこないか心配だよ。

 

「久しぶり、誇銅」

「久しぶり、一誠」

「帰ってさっそくで悪いんだけど魔王様たちが誇銅に話があるんだって、なんか協力関係についてのことで」

 

 それはちょうどよかったよ!

 どんなタイミングで協力関係の破棄を申し出るか悩んでたとこでグッドタイミングだよ♪

 後は当日に緊張してうまく主張できないなんてないようにしなくちゃね。

 でも、もう協力関係を破棄するのは心に決めてるから大丈夫だよ!! 多分。

 はっきりと自分の意見を言うのってちょっと自信ないな。でも、僕がしなくちゃいけないことだもん! 頑張らないと。

 

「うん、わかったよ」

「……なあ誇銅」

「ん?」

「……いや、なんでもない」

 

 変な一誠。

 あっ、元々か。

 僕はこのことをとりあえず月と恋に話して、帰って家族達にも報告。

 そして当日に僕がいうセリフと相手がこう言ってきた時の返しの台本を作成した。

 結構時間もかかって、次から次に言われるであろうとこに対しての返しを考えるのは骨が折れたよ。

 そして当日、僕は護衛としてルピ君とアルセウスさんについてきてもらうことに。

 二人は僕の家族の中で一位、二位の実力者だから安心だよ。

 

「やあ、誇銅君。いきなり呼び出してしまって申し訳ないね」

 

 案内された場所には魔王様のうち三人がいた。

 一応こっちも三人だから気持ち的にはほんの少しだけ軽くなった気がするよ。

 でも、この魔王様側の空席はちょっと気になるけどね。

 

「まあお茶でも飲んでリラックスしてほしい」

「あ、はい」

 

 会談の内容はまずはなぜか雑談から入っていった。

 たぶんこれは魔王様側から僕の緊張をほぐすための善意的行為だと思う。

 普段なら効果覿面(こうかてきめん)なんだろうけど、今回は悪い話を持ってきてるからゆるい空気で話すのはちょっと……。

 そしてもう一つ、

 

「あの、ちょっとおトイレをお貸りしたいのですけど……」

「ん? ああ、わかった。

 ちょっと道が複雑だから迷わないように彼が案内するよ」

 

 サーゼクスさんはドアの近くにいた使用人らしき人を指さして言う。

 僕はその人に案内されるまま一度部屋を出た。

 その際、アルセウスさんはドアの向こう側をじっと見て、ルピ君は案内してくれる人に一度だけ目を向けると再び魔王様の方を向く。

 おそらくアルセウスさんは奥の方に誰かいないか、ルピ君はこの人の霊圧を覚えたんだと僕は思う。

 そしてついてくるとか言ってこないとこを見ると大丈夫みたいだね。

 

「あの、まだですか?」

「もう少しです」

 

 広い場所故に歩く時間が長い。

 僕ももう漏れそうってわけじゃないからいいんだけどね。ちょっと空気をリセットしたかったってのが本命だし。

 長い廊下を歩いていると執事さんのポケットから一枚の封筒がこぼれ落ちる。

 執事さんはそれを拾おうとこっちを向いて屈む。

 

 ビクッ! シュ!

 

 僕は本能的に危険を感じ取りとっさに身を逸らした。

 すると僕の胸に鋭い痛みが走る。

 見て見るとそこには浅くない切り傷が。

 しかもその傷は『救世の神薬(メシア・アンサー)』を使用してるにも関わらず治る気配がない。

 この感じ、どこかで……あ!!

 

「そのナイフは!」

「知っているのか?

 これはリアス様が言うにはフェンリルに刺さっていたものだと聞いてる。

 フェンリルの強固な皮膚を裂くだけではなく、このナイフで誤って指を切ってしまったフェニックス卿の再生能力も無効にしたほどの逸品。

 これならあなたにも効くと思いまして。

 まあ、効かなければ神器を取り出す準備もしていますがね」

 

 入手経路はよくわかんないけど、あれは確かにミシェルさんが僕を刺したものと同じものだと思う。

 この神器を使ってるのに全く効果が表れない感じは確かにそうだよ。

 でも、なんで僕を狙うの?

 僕はまだそんな口実を与える行為はしてないハズ。

 

「外部で活動してる仲間の情報であなたたちが禍の団『英雄派』と繋がっているという証言と証拠を入手しました。

 あなたの強力すぎる回復系神器は敵の手に渡るのは危険すぎる。

 残念ですが死んでいただきます」

 

 執事さんは僕に向かって一枚の写真を投げ捨てた。

 そこには先日の事件で曹操さんたちの傷の手当てをしながら曹操さんたちに笑顔を向けている僕の姿が。まずい!

 僕はすぐさま自身の足を爆発させてアルセウスさんのとこへ逃げようとした。

 だが、後ろには見えない壁のようなものが展開されており向こう側へ行くことができないようにされている。

 いつの間に!?

 

「逃がしませんよ」

「こんな壁、すぐに燃やしちゃうもん!」

 

 僕は手の形をした炎を創り出して壁を叩く。

 壁には徐々にひびが入っていく。

 

「クッ、戦闘能力は皆無と聞いていたのですが……まあそのくらいなら問題ありません」

 

 まさか非力と思われた僕が壁にひびを入れたことに対しては驚きの表情を見せたけど、取り乱すまでは行かなかったようだね。

 この悪魔が僕より強いだろうってことはわかる。だから僕が取るべき行動はアルセウスさんかルピ君が来てくれるまで耐えること。もしくは逃げることだ。

 たぶんこの人には僕の必殺技も当たらないだろうし。

 今必要なのは質ではなくて、足止めする量!

 

「フラブルマ・マンドレイク!」

 

 100体の炎のマンドレイクが僕を囲む。

 そのうち50体をあの人にまとわりつかせて残りで壁を攻撃。

 

「チッ、邪魔くさい」

 

 流石にいくら小さくとも50体の大群にはこの狭い空間では有利に働いてるようだね。

 物理攻撃には弱いけど魔法攻撃にはめっぽう強いからね。

 壁も徐々にではあるが崩れてきている。

 そんな時、壁とは逆側の方から悪魔の応援が一人来てしまった。

 

「アルリウス様!」

「大丈夫だ、お前たちは手はず通り他の処分対象を、日鳥誇銅の仲間を討つように伝えろ!」

 

 僕の家族を!?

 

「そんなの駄目だッ!!」

 

 僕は急いで壁を攻撃している50体のマンドレイクを五体の鬼に変えてもう一人の悪魔を攻撃させる。

 

炎目(えんもく)、鬼ヶ島!」

「させるか!」

 

 マンドレイクの単純作業から鬼の手動操作に切り替えたため残りのマンドレイクの包囲があまくなって横を通り過ぎる鬼の首はいとも簡単に斬られてしまう。

 五体の鬼は消えてしまう。

 早くあいつを追いかけて止めないと!

 残りのマンドレイクも消して新しい炎を創り上げる。

 一体は人の形をした大男、もう一つは大斧。

 

炎目(えんもく)、まさかり担いだ金太郎」

 

 金太郎をイメージして作った炎で悪魔を攻撃する。

 全部僕の炎で作られている、重さなんてあってないようなもの。

 金太郎は僕のほぼイメージ通りに動くことができる。

 だけど、僕の精密操作より悪魔の戦闘能力のほうが上回っているようでなかなか倒せない。

 ここであんまり時間は取れない!

 

炎目(えんもく)、傘地蔵と月の使者」

 

 今度は地蔵と槍を持った人型を五体ずつ創り出す。

 月の使者は鬼ヶ島と違ってパワーと耐久力はかなり劣るけど、スピードと槍と弓の射程距離の長さが特徴だ。

 そして本来傘地蔵は防御用の技だけど、今回は盾で殴るように浮遊する鈍器として使用することに。

 

「甘いッ!」

「うぐっ……!」

 

 攻撃の隙間を縫って悪魔が僕に目掛けてナイフを投げた。

 しかもアルテミスのナイフをね。

 幸い心臓や頭には当たってないけど、お腹に深く刺さっちゃったよ。

 臓器がいくらか機能しなくても死にはしないけど、いろいろと支障は出る。

 うう、早くしないと僕の家族が……僕の家族が……僕の大事な家族が………僕の愛しい居場所が……僕の、僕の、僕を愛してくれる存在が………僕を救ってくれた家族が……………嫌だ、そんなことさせるもんかい!……嫌だ、いやだ、イヤ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう二度と奪わせるもんか―――――――――――――――――――――!!」

 

 僕の創り出した炎が崩れ僕の頭上に集まる。

 集合した炎は荒々しく燃えはじめどんどん大きくなっていく。

 まるで命を得たかのように。

 

「な、なんだ!!?」

「旧章、クトゥグア」

 

 出来上がった炎の塊は悪魔に向かって無数の太い炎の束を向ける。

 それはとてもよけきれるようなものではなく悪魔を瞬く間に炎に包む。

 

「ギャァァァァァァァァァ熱いィィィィィィィィィィィィィィィッ!!」

 

 僕の炎で悪魔は炎の中でもがき苦しむ。

 本来僕の炎は物質を燃やすことができないハズだけど、そんなことはどうでもいい、早く追いかけてあいつを殺さないと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グサッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛ッ! あ゛あ゛……」

 

 既に焼け死んだと思っていた悪魔は焼け苦しみながらもナイフを拾って僕を刺した。

 悪魔は未だに焼けて一部が骨になっていることから既に死んでると思うのに動いてることはどうでもいい。

 僕の胸にミシェルさんが使っていたものと同じナイフが深々と胸に突き刺さる。

 死の苦しみが僕の中を駆け巡る。

 異常な回復能力と不死性を自慢にしていた僕に最初と同じ死の感覚を感じる。

 もう僕はこのまま死んじゃうだろう。

 アルセウスさん、ルピ君、みんな……逃げて……。

 

 

 

    ***

 

 

 

 

 

 時間は巻き戻って誇銅が出て行ってから少し後の出来事。

 

 ガタッ!×2

 

 誇銅の周りで大きな乱れが起きたため立ち上がるルピとアルセウス。

 すぐに出て行こうとしたが使用人らしき人物が扉の前に立ちふさがって通路をふさぐ。

 

「いかがなさいましたかな?」

「誇銅が何者かに襲われておる!」

「そこ退いてよ!」

「なんと! すぐにこちらの者を向かわせましょう」

 

 魔王たちはすぐさま人手の手配を支持する。

 だが、頑としてルピとアルセウスの退出を認めない。

 本当はアルセウスとルピはどうせ三大勢力の差し金だろうとはなから思っていた。

 だが、あくまで大義名分を与えないように細心の注意を払ってと言われていたためあえてその部分を隠した。

 しかし、誇銅が危機に陥り自分たちをここから出さないと言う露骨さが二人にはもう我慢できない。

 いや、ここまでくれば我慢する必要がないと。

 

「黙れ! どうせ貴様らの仕業だろう!

 今ならまだ誇銅の状態によっては目を瞑ってやってもいい。だからさっさとどけッ!」

 

 ルピとアルセウスが強引に突破しようとすると、扉を守っていた使用人らしき人物は両手に聖なる力で作られた槍で二人の頭部を刺しに来た。

 ルピとアルセウスもその攻撃を躱して後方に下がる。

 使用人らしき四人は背中から純白の羽を広げる。

 

「その羽の数は大天使だったんだね。天使ってことはわかってたけど、弱すぎて大天使ってわかんなかったよ」

「我もどうせ悪魔に寝返った天使だろうと思っておったわ」

 

 ルピとアルセウスは元々ここに天使がいることは気づいていた。

 しかし、二人の強さゆえにまさか大天使とは思っていなかったのだ。

 もしそれを見抜けていたならば二人は強引にでも誇銅を一人にはしなかったろう。

 体裁を守ることをした故に起きてしまったミス。

 アルセウスは人間の状態から全力のポケモンの姿に戻る。

 

「はかいこうせん!」

 

 アルセウスは極大の光線で扉をぶち抜いた。

 四人の大天使ごと破壊するつもりだったが、それは残念なことに躱されてしまう。

 だが、二人はさらなる焦りを見せることに。

 

「チッ、まさか既にここまで用意されてようとは」

 

 周りは結界に囲まれており、レーティングゲーム会場と同じ仕様にされている。

 つまり完全に戦う用のフィールドに誘い込まれてしまったということ。

 この規模からしてこれは奴らの筋書き通りということを認識する。

 

「だが、我々が本気で暴れればこの程度の結界、いったい何分持つかの?」

「ホントお馬鹿さんだよね。虐殺志願なんてね!

 (くび)れ、『蔦嬢(トレパドーラ)』」

 

 ルピも真の力を解放して上半身が鎧のようなものに覆われ、背中に8本の触手が生えた円盤が形成される。

 二人から漏れる威圧の実力の差に魔王三人と大天使四人も死を覚悟する。

 そしてあっという間に三大勢力側は満身創痍えと陥る。

 勝負になんて一切なっていなかった。

 アルセウスに向かった大天使四人とルシファーはアルセウス「ばくおんぱ」の一撃で地に落ち、ルピに向かって行ったベルゼブブとレヴィアタンは、ベルゼブブは『虚砲(セロ)』で一撃で落とされレヴィアタンは触手に捕まった。

 結界にも大きなひびが入って後一撃で崩れ去ってしまうほどに。

 三大勢力側はまさに座して死を待つのみとなる。

 だが、奇跡的は起こった。

 

「!……誇銅くんの霊圧が……消えた……」

「なんだと!!? デタラメを言ったなら承知せんぞ!!」

「僕が誇銅君のことで嘘を言うわけないだろ!!」

 

 ルピはいつも通りの喋り方ではなくイラつきを含んだ乱暴な口調でしゃべる。

 アルセウスはルピの態度からも嘘ではないことは信じたくなかったが嘘ではないと理解した。

 アルセウスは見るからに意気消沈し、ルピは下を向きながら手から血が出るほどに拳を握りしめる。

 二人とも先ほどの戦闘意欲が消えてることを見てサーゼクスは二人も前に出てくる。

 

「君の家族を奪ってしまって本当に申し訳ないと思ってる。

 だが、我々としても誇銅くんのような弱く強力な能力を放置しておくわけにはいかなかったんだ。

 よからぬことをたくらむ連中はきっと誇銅君を狙っただろう。

 それがどこにも所属してないとなると狙いたい放題だ。

 君たちを悪いようにはしない、だから投降してくれ」

「ふざけるなッ!!」

「勝手なことを言うではない!!」

 

 サーゼクスの説得に元々キレていたルピとアルセウスはさらに怒りを高める。

 既に二人の放つ怒気と溢れ出す力の前に圧倒されるトップたち。

 そしてアルセウスが襲いかかろうとした瞬間!

 

「グッ!? グググ……ガッ! ガアアアアアアアアァァッ!!」

 

 突如ガクガクと震え苦しみだしたアルセウス。

 するとアルセウスの体から17色の光が飛び出し地面に落ちた。

 光は徐々に光を失い17個の別々の色をしたプレートへと変化する。

 そしてアルセウスは瞳の色を失い、まるで糸の切れた操り人形のように地面に倒れ伏す。

 

「アルセウス!!? クソッ、いったどうしたってんだよアルセウス、どうしちゃったんだよ僕の体……うぐっ、苦しい……」

「もうあなた一人よ、降参してくれない?」

「お姉さんさ、今僕に捕まってるってこと忘れてるでしょ。

 お姉さんを串刺しにすることなんて今すぐにでもでき…はっ!」

 

 ルピの八本の触手のうちセラフォルーを捕まえている触手の根っこの部分が突如破裂した。

 それによってセラフォルーの拘束は解けて自由になる。

 ルピはそれを良しとせず残りの触手でセラフォルーを捕まえようとした。

 セラフォルーも負けずとルピに攻撃をするが、一歩の差でルピの攻撃の方が早い。

 

「ハガッ!!」

 

 だが、寸でのところでルピの触手の残りすべてが爆発。

 それによってルピの攻撃は不発に終わり、ルピはセラフォルーの攻撃によって全身を凍らされてしまう。

 なぜルピはこんなことになってしまったのか。

 それはルピが自身の霊圧に体が耐えきれなくなってしまったのだ。

 ルピはこの時、体は『中級大虚(アジューカス)』の体に戻っていた。しかし霊圧は『最上級大虚(ヴァストローデ)』のまま。

 その不釣り合いな霊圧に力不足の体が耐えきれず自壊してしまったのだ。

 さらにアジュカ・ベルゼブブのとどめの一撃によって上半身を吹き飛ばされてしまった。

 

「終わった……」

 

 冥界に来ていた誇銅とその家族は全員死亡した。

 

 

 

 

 

 

       ***

 

 

 

 誇銅が死んで三大勢力の裏舞台は誇銅家を襲撃した。

 だが、アルセウスの結界がなくとも対悪魔、天使魔法陣が侵入を一切許さない。

 もしも間接的に何かしようにも翡翠の龍と砂がそれを許さない。

 日本の領地でドンパチするわけにもいかなかった三大勢力はとりあえず見張りをつけて保留とした。

 

 しかし、そんな硬直状態は長くは続かなかった。

 いつの間にか誇銅家の人数は一人、また一人と消えていく。

 三大勢力側にも多大な被害を与えたものの残るはついに盾子だけとなってしまった。

 そして家を出て暗躍する盾子を誰よりも早く見つけ出したのはソーナ眷属である。

 

「盾子さん、なぜこんなことを」

「……」

「私は、あなた方の身にいったい何が起きたのか詳しいことは知りません。

 ですが、できることなら力になりたいと思っています。

 それが私を正しく成長させてくれた盾子先生への私にできる恩返しだから。

 安心してください。ここには私の眷属以外誰も呼んでいません。

 理由にもよりますが盾子さんの事は最大限弁護します」

 

 盾子は最初の問いかけに何も答えない。

 それでもソーナはまっすぐで誠実な瞳で盾子の目を見続ける。

 盾子はその目線を切って俯く。

 そして長い沈黙の末に口を開いた。

 

「あの日、誇銅は魔王達に呼ばれて冥界へ行ったわ。

 何の理由で呼ばれたか知らないけど、その日誇銅は協力関係の破棄を申し出るつもりだったわ。事前に何度も練習してね。

 そして誇銅と護衛について行ったルピとアルセウスも帰ってこなかった。

 代わりに来たのは殺意むき出しの悪魔や天使」

 

 ソーナ・シトリーはこの事件について誇銅家が反乱を起こしたとしか聞かされていない。

 そして自分の知る盾子や誇銅がそんなことをする人ではないということも十分理解している。

 そこで考えた。姉たちは何か重要なことを隠している。だが自分にはそれを暴けるほどの力量は無い。

 ソーナはとりあえず誰よりも先に唯一の生き残りである盾子を見つけだすことに。

 そして聞かされたのがこの真実。

 ソーナは三大勢力という身内を疑った。

 

「誇銅が死んだことにより私たちに与えられていたものがどんどん消えて行ったわ」

「与えられていたもの?」

「まず最初に、絶望の悲しみでぽっかり空いた心の穴を塞いでもらっていた月は再び溢れ出した絶望と悲しみに耐えきれず誇銅の部屋で写真を抱いて自殺したわ」

 

 盾子は俯いたまま話を続ける。

 ソーナもその事実に目を丸くして驚いている。

 そんなソーナをまったく見ずに盾子は話を続ける。

 

「次に、怒りを抑えてもらっていた恋は昔の怒りと現在の怒りに怒り狂って単騎で冥界に乗り込んだわ。最初はプロシュートの煙草で抑えてたけどそれも効かなくなってね。

 そこであんたも知ってのとおり大量の悪魔を殺したけど、ついには人間の限界を超えて戦死した。

 内に潜む狂気を封印してもらっていたフランは家の中でも何度も暴れ回ったわ。

 その度にテトが力ずくで止めて何度も呼びかけて止まったわ。

 テトの声は不思議に魅力があるから心に届くの。

 でも、本来持っていな声を与えられていたテトの声はだんだん失われていき、ついには声が出なくなったわ。

 そしてフランを抑えきれずにフランに殺された。

 狂気に支配されたフランも知ってのとおり討たれたわ。

 そして最後に残ったプロシュートも……」

 

 盾子は両手で顔を覆い震えだす。

 ソーナは盾子はプロシュートにどんな感情を抱いているが毎回の惚気話で知っている。

 恋人を失った悲しみは共感はできなくとも理解できる。

 さぞつらかったろうとソーナは思う。

 だから盾子からの次の言葉には耳を疑った。

 

「あたしが殺した」

 

 顔を覆ってた手をどけるとそこには狂気じみた盾子の笑顔が。

 盾子が震えていたのも悲しんでたのではなく笑っていたのだ。

 ソーナは目の前の盾子の様子を信じられないといった様子で見る。

 

「え……」

「暗殺者時代のスキルを生かして冥界にちょっとお使いに行ってもらったの。

 そしたらついでにってあいつらの弱みや証拠をボロボロになって持ち帰って来たの。

 帰ってきたプロシュートは私に情報を手渡して息絶えたわ。

 愛する男が目の前で死んでいくなんて……超絶望的だったわ///」

「狂ってる……きっと盾子さんは疲れてるだけですよ。

 きっと落ち着けばいつもの盾子さんに」

「今の私は昔の絶望的な私に戻ってるの。

 あんたの前に現れたのはあたしの最後の良心ね」

 

 ソーナは目の前の盾子が信じられなかった。

 確かに盾子は普段から厳しい現実を自分にぶつけてくる。

 でもそれは自分を育てるための言葉だし、厳しいばかりではなく魔法の練習や勉強はやさしくわかりやすく教えてくれる。むしろ厳しい時の方が少ない。

 厳しく教えるところは全部一歩誤れば取り返しのつかなくなるとこばかり。自分もそれがわかっているからこそ厳しい現実と向き合える。

 盾子はまず現実と向き合える心を育て上げた。

 だからこそ自分のすべてに負けて快楽に溺れたような目の前の盾子をソーナは信じられなかった。

 

「盾子さんはそんな人じゃない! 私はちゃんと知っています、盾子さんは誰よりも希望を愛する人。絶望なんかに負けない人!」

「これが本来のあたし。

 あたしが与えらていたものは希望へ進む推進力。

 本当のあたしは絶望の化身よ。一度は元いた世界を絶望まみれにしたほどのね。

 絶望的にあきっぽいあたしは復讐なんてのもとっくに飽きてるんだけど、これクリアしないと他の絶望計画ができないように希望時代のあたしに暗示かけられたのよね。

 まったく、絶望的に希望な私が私の邪魔をするなんてチョー絶望的~」

 

 ソーナはもはや信じるしかなかった。

 昔のソーナならばここで心が折れていただろう。

 だが、盾子が育て上げたソーナならば。現実と向き合って戦えるソーナは目の前の現実を受け止めてみせた。

 

「……そうですか。

 でしたら、私はあなたの敵です。

 現在水面下で起きている謎の暴動事件。規模が小さくすぐに鎮圧されていたので問題にはならなかったですが、小規模で最大限の効率性で三大勢力に打撃を与えてます。

 確実な証拠はありませんが、時期とやり方が実に盾子さんらしい。

 それに今日話して確信しました、黒幕はあなただと。

 三大勢力は腐敗寸前かもしれませんが、私の希望の夢を叶えるためにはなくてはならない後ろ盾。それに同種であり守るべきものでもあります。潰されては困ります。

 もし今からでも投降していただければこの事件は私がもみ消して安全な生活を送れるように弁護もします」

「そんな絶望的な選択肢をとるとでも?

 既にあたしたちは危険人物認定、安全なんてないわ。

 それに、もしも安全な生活が保障されても今のあたしの性が良しとしないわ」

 

 ソーナの最後の提案を拒否する盾子。

 二人の魔力に大きな波が現れ始める。

 それと同時にソーナの周りには水が、盾子の周りには砂が集まる。

 

「仕方ありません。では、実力行使で行きます!

 『蒸気暴威数(ジョウキ・ボーイズ)』」

「あたしに本気で勝つつもり?

 砂の群魔獣『イギーズ』」

 

 ソーナは水で着物を着た小さな子供を、盾子は砂でインディアンっぽい羽飾りをつけ、犬っぽい前足と車輪の後ろ足を持つ大きめの魔獣を大量に創り出す。

 

「行きなさいッ!」

「喰い散らかせ」

 

 二人の創り出した人型と魔獣がぶつかり合う。

 二人の戦いは最初は拮抗していたがその均衡はすぐに崩れ去り戦局は盾子に傾き始める。

 だが、そこでソーナ・シトリー眷属が数人駆けつけて一気に逆転。

 最初は盾子の巧みな操縦と変幻自在の砂に翻弄、圧倒されていたがソーナは人数の差をうまく使った作戦を『蒸気暴威数(ジョウキ・ボーイズ)』を通して伝達。

 それにより盾子はどんどん不利に陥った。

 そしてついには盾子は大ダメージを負うほどに。

 人の身で瀕死の重傷を負った盾子は砂あらしを起こして視界を遮る。だが、ソーナは爆発ですぐにそれを晴らし盾子を追いかける。

 そして瀕死の重傷でフラフラとした足取りで逃げる盾子にとどめを刺そうと近づく。

 

「すいません。そして、ありがとうございました」

 

 ソーナは自身の師をこんな状況になる前に守ってあげられなかった自身の力のなさを謝罪し、ここまで自分を育ててくれたことに感謝の言葉を言って水の刃を振り上げる。

 だが、盾子は振り返って狂気の笑顔でソーナを見る。

 

「賭けは私の負け、そして私様の勝ち」

 

 ソーナは盾子の首を切断した。

 切断された盾子の首は重力に従って地面に落ちて体も力なく倒れる。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 盾子の遺体はすべて砂に変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒヒヒ……アハハハハッ!」

 

 盾子は重傷の体を引きずって自身の研究室へ逃げてきたのだ。

 小さな研究室の中に盾子の狂気に満ちた笑い声が響く。

 あらゆるものが無造作に、しかし実はきっちり整頓された様々な物の中から小さめの木箱を手に取った。

 盾子は木箱に普通は見えない魔法陣のロックを外し、中の電子機器のパスワードを入力する。

 

「プロシュートが頼んだお使いをキチンとこなしてくれたおかげね。アハハ」

 

 最終的に中に入っているのは一本の中身の入った注射器。

 

「私様の絶望はまだ始まったばかりよ」

 

 そう言って注射器を自身の首筋に注射した。




 魔王戦は一度書いてみたものの、文字にするとしょぼい上になんかリズムが悪くなったので省略。
 そして誇銅死亡後の誇銅家の状況もだらだらと描写するとただただ読者の不満が溜まりそうなので省略。(完結後に詳しく描写を書くかもしれない)
 予告通り、次回終章突入
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