つづきはまたまとめて投稿します。
原作組のピンチシーン一部修正しました。
リアスたちが辿り着いた廃墟、そこは昔一度だけ訪れたことがある場所。
それははぐれ悪魔の吸血鬼ベラルートの討伐の後、誇銅に連れられて謝罪した時である。
謝罪の内容は獲物の奪い合いの末の戦闘行為について。
あの日、ベラルートはリアスたちが来る前に既に倒されていた。だがリアスはこれは自分たちが正式に依頼されたことだからと体よく手柄を横取りしようとしたことでの戦闘。
リアスたちはこの戦闘で一応勝利を収めた。だが、実際実力では圧倒的に負けていた。
リアス眷属と堕天使総督をたった一人で圧倒した吸血鬼の少女、その名前は
「フランちゃん……」
フランドール・スカーレット
かつてリアス眷属を単純なパワーだけで圧倒してみせ反撃の一つも許さなかった吸血鬼の少女。
しかもその少女は死んだという報告を受けていた。
そんな存在が今目の前に威圧を増して存在していることにリアス眷属は全員目を丸くして驚く。
フランはそんなリアス眷属を見てフンッと軽く鼻で笑う。
そしてその中で驚いてるギャスパーに目を移す。
「久しぶりねギャスパー。
一応私のほうが年上だし今は敵同士だから呼び捨てにさせてもらうわ」
「本当に、フランちゃん?」
フランの死はほかの悪魔がその目で確認したと完全な死亡認定がされていた。
さらに言えば太陽に焼かれて僅か残った遺体も冥界に安置されているハズ。そしてギャスパーはその忌まわしいと嫌っていた目でしっかりと亡骸を見たのである。
そんなフランが目の前に現れたのだから疑うのも無理のない話である。
服装は前と違ってリボンのついた白いナイトキャップに衣装は帽子と同じ白を基本とし所々紅い装飾やリボンがついたものに変わっており、ミニスカートも踝辺りまで届く長さ。これにもやはり赤い紐が通っている。
さらに腰にはレイピアを装備している。
だけどそんな服装の変化などどうでもいい、亡骸まで確認したフランドール・スカーレットがなぜここにいるかが問題である。
「もちろん、スカーレット家の妹であり誇銅お兄様の妹でもあるフランドール・スカーレット本人よ」
「でもどうして……」
「フフッ、これよ」
フランは上着の裾を腹あたりまで捲ってみせた。
するとそこには真ん丸で真っ黒な穴が一つ大きく開いていた。
ギャスパーはその穴を知っていた。そしてその穴がどんな種族の象徴であるかも。
ギャスパーの中でフランが今どんな存在なのか完全に理解した、確かにフランは死んだがここにいるフランは本物だと。
ギャスパーは目に見えて動揺した。それに気づいたリアスと一誠はそれを拭い去ってやるように言葉を発する。
「騙されちゃだめよギャスパー、彼女は死んだのよ。
あなたもちゃんと見たでしょ?」
「そうだ偽物!
そんな穴が何の証明になるって言うんだ!」
二人がそう言ってもギャスパーの動揺は微塵も消えない。
フランドールはそんな様子を見て余裕の笑みがさらに笑いかかっていく。
ギャスパー・ヴラディの動揺はそんな的外れな言葉では全くひびかない。
おそらくこれから戦闘が起きるのは避けられない。なぜなら彼女たちを殺したのは、少なくとも大事な人を殺すきっかけを作ったのは自分たちだからだ。
自分の十中八九正解であろう予想通りなら自分たちがフランに勝てる見込みはかなり薄いと思われる。
今の仲間たちに不審を抱いてるとはいえそれなりに情もわいてる。
お互いが無事に済むことがベストだが、そうなる道が全く見つからない。
「まあ知らなければ無理もないわね」
「なに?」
「私は確かに死んだわ。
だけどね、私たちは生まれ変わったの、ルピお兄様の遺体を使ってね」
ギャスパーを除くリアス眷属たちはフランが何を言っているのかさっぱりわからないでいた。
そもそもルピの遺体を使ってなぜ生き返れるのかがわかっていない。
ルピがどういった種族なのか知らないからである。
フランはあえて自分が生まれ変わった理由を説明した。
「ルピお兄様の種族はアランカルというの。
アランカルとは虚と呼ばれる人間の魂を喰らう悪霊の最終形態。
盾子お姉さまがルピお兄様の遺体から他者をアランカル化する方法をあみだしたの。
お腹の穴がその証明よ」
フランは余裕の笑みでリアスたちを見る。
リアスたちのほうが圧倒的に数が多いのにフラン一人のオーラに威圧されている。
フランはギャスパーに目線を移して大胆な発言をする。
「ねえギャスパー、こちら側にこない?」
「なっ、なにを言ってるの!?」
リアス眷属が勢ぞろいだというのにそこで敵かもしれないフランの大胆な引き抜き。
これにはリアスも大声で横から口をはさむ。
だがリアス眷属はリアスを含めて比較的落ち着いてる。誰も本気でギャスパーが寝返るとは思っていないからである。
特にイッセーはギャスパーがいくら誇銅と親しかったからとはいえ絶対に仲間である自分たちを裏切らず二つ返事で断ると思っている。
そしてギャスパーが出した返事は
「……誇銅先輩はどうなったの」
ふるえる小声でフランドールに問う。
ギャスパーは考えていた、フランドールが生き返ったのならばもしかしたら誇銅先輩も生きているのかもしれないと。
でも、不死身であるはずの誇銅が死ぬのはふつうありえないこと、生き返っていない可能性も十分あり得る。
だからまずは誇銅の生死を聞いたのだ。そしてもし生き返っていたのならギャスパーの心を揺れ動かす大きな要因になったであろう。
「残念ながら誇銅お兄様は駄目だったらしいわ。
盾子お姉さまの方法でアランカル化して生き返るには魂がまだ現世にあることと、元の種族がアランカルでないことが条件らしい。
私も残念だわ」
フランから告げられた誇銅の完全な死。ギャスパーは大きく落胆したと同時に少し安心でもあった。
やっと誇銅先輩は誰にも苦しめられずに済んだのかと。それでも家族と離れ離れにされてしまった悲しみのほうがつらいだろうとも思っている。
ギャスパーは短い時間だがよく考えて悩みに悩んだ末に答えを出した。
「ぼ、僕は、み、皆さんを裏切れません」
ギャスパーはリアス眷属に残る決断を下した。
確かに向こうに行けばおそらく心が楽になるだろう。
それにフランちゃんの様子からおそらくレイヴェルさんも誘ってくれる、そして自分がこっちにいればかなりの確率でレイヴェルさんもこちら側に来るかもしれない。
そうすればもう罪と義務の板挟みの苦しみからは解放されたであろう。
だが、それはあまりにもずるいと思った。誇銅先輩のほんの少しの助けにもならなかったのに。
フランちゃんがここに来た理由も何となく想像がつく。
だから自分もその罰を受けよう、リアス・グレモリー眷属の一人としてしっかりと戦って罰を受けよう。
ここで逃げては自分自身にも死んだ誇銅先輩にも顔向けできない。
ギャスパーはそう考えたのだ。
「まあいいわ。
そろそろ私が貴方たちをここに招いた理由でも話そうかしら」
「そうね、そうしてもらえる」
リアスはまっすぐとフランを見据える。
だがフランは何とも軽い口調で答えた。
「目的は単純明快、貴方たちを死を望むくらい痛めつけにきたの」
やっぱり。
ギャスパーは心の中でそうつぶやいた。
本当は殺しに来ただと予想していたがそれでも予想選択肢にはあった答えだ。
「私からお兄様を奪った罰よ」
「あなたの怒りはわからないでもないわ。でも、私たちを恨むのは角違いよ。
とりあえずあなたを野放しにできないわ。ちょっと痛いかもしれないけど拘束させてもらうわ」
「クスクスクス、へぇ~」
禁忌「クランベリートラップ」
フランの回りに魔法陣が浮かびあがり大量の弾幕が出現し、リアスたちに襲いかかる。
この攻撃を知っているリアスたちはすぐさま弾幕の処理に移る。
この攻撃は無差別に飛ぶのではなく敵がいる場所に飛んでくる。だから動き続ければ当たらない。
その筈だった。
「違う! 確かに僕たちを狙うが、いくつかの攻撃はその場に停止して逃げ道をふさいでる!」
「でもそれだけでしたら吹き飛ばせばいいことですわ!」
最初に受けた時より性能が違っていることに驚きはしたがリアス眷属は冷静に対処に移る。
あの時から今にかけての経験で彼らも場馴れしてきているのである。
雷光や魔法攻撃で設置型の弾幕を弾き飛ばそうとする。
「なにこれ!? 硬すぎる!」
「私のエクス・デュランダルでも斬れんとは!」
「くっ、通常の弾幕も同じくらい同じくらいの強度だ」
その設置された弾幕はリアス眷属の攻撃でも崩れずに、飛来する弾幕も避けきれないと感じて攻撃しても破壊できない、そらすのがやっとである。
しょうがなく避けることだけを考えてどうしようもない攻撃はそらす方向で処理することに。
リアス眷属はそうして弾幕をばらまいてる時に全く行動しようとしなかったフランから完璧に目をそらすという失態を犯してしまった。
確かにフランは弾幕を張ってる最中は動こうとしない、動けないと思われている。
だがそれはフランが前の世界のルールを律儀に守っていただけ。
フランは最初の位置から消えている。そうして次の作戦を実行している。
「そ~れ!」
「!!」
フランはリアス眷属たちを掴んで廃墟の窓に放り込む。
瞬間移動とも見える素早い動きで一人一人掴んでは投げる。比較的身体能力の低いアーシアやギャスパーはある程度やさしく、逆にそれなりの威力で投げないと廃墟に入ってくれそうもないメンバーは死なないだろう程度に思いっきり投げつけた。
フランにはこの行為は攻撃ではなく中に入れるための行為であるためここで下手にダメージを受けすぎてもらっては困る。
そのもくろみ通りリアスたちは大したダメージを負わずに廃墟の中に入って行った。
「イテテテテ……ハッ、この場所は!」
「ふふふ、あの日のリベンジマッチと行きましょう」
フランが投げ入れたのはまさにリアス眷属とフランドール・スカーレットが最初に出会い戦ったあの場所。
誇銅が帰ってきてから一番最初に起こしたいざこざがこの騒動であった。
フランにとって屈辱を受けたこの場所で決着をつけることは大いに意味のあること。
そのためにフランは決着の地にこの場所を選んだ。
「確かにあの時俺たちは手も足も出なかった。
けどな、俺たちもあれからつらい修行や実戦を重ねて強くなってんだ!
昔と同じ俺たちと思うんじゃねえぞ!」
「その通りよ、確かに実力では負けていたけど今度はそうはいかないわよ」
昔と同じ場所、同じ時間、同じ状況、それらが昔の圧倒的力の差の結果を強く連想させる。
そしてその想像がリアス眷属の士気を内側から下げていく。
それをみんなにも自分にも感じ取った一誠とリアスはそのイメージを一掃できるように自分とみんなを励ます。
今と昔は違う、すべて同じなんかじゃない。
今の自分たちにはあの時よりも成長していると。
だがフランドールはそれを否定するかのように昔の状況を再現する。
禁弾「スターボウブレイク」
また昔を再現するかのように同じ技を同じ順番で使う。
嵐のような弾幕に加えフランドールの回りに複数の魔法陣が表れてそこから槍のような弾が発射される。
ただ槍のスピードは前よりもずっと早く弾幕の数もずっと多い。
この攻撃もついさっきの攻撃同様に壊すことはできずかわすしか方法はない。
今まで戦ってきた敵も自分たちの力を上回るものはたくさん存在した。だがそれでも最終的には真正面の力比べて勝利を勝ち取ってきたリアス・グレモリー眷属。
さらに言うならその格上の相手も自分たちの力がまったく届かないほどではなかった。
これは今までない種類の危機的状況である。
「プロモーション! 『
一誠はなんとか突破口を開こうとしてプロモーションでトリアイナ僧侶とプロモーションし弾幕をよけながらチャージーを始める。
リアス、朱乃、ロスヴァイセは一誠のチャージ時間をなんとか時間を稼ぐために弾幕を避けながら遠距離攻撃をする。
この時ゼノヴィアも参加しようとしたが、今まで聖剣のパワーに頼っていたところがあり元々緻密な回避を得意としていなかったため攻撃に意識を割けないでいた。
リアスたちはこんなにも必死にフランドールを足止めしようとしてるが、フランドールは上空で一切動かずにリアスたちを見下している。
滅びの力や雷光、さまざまな魔法攻撃が放たれる。
しかしフランドールは腰のレイピアを引き抜いて攻撃の放射線状に添えるだけ。
振りぬくでもなく突き刺すでもなくただ添えているだけ。
ただ添えているだけなのにリアスたちの攻撃は斬られ、弾かれ、流される。余裕の笑みを少しも崩せぬままに。
「チャージ完了、吹っ飛べッ! ドラゴンブラスターッッ!!」
チャージの完了した『
その砲撃はチャージ時間が必要なだけあってその威力はすさまじい。
なんとあれだけ頑丈だったフランドールの弾幕を破壊しながらフランへ一直線に飛んで行った。
砲撃から感じるエネルギーに流石にフランも余裕の笑みを維持することはできなかった。
だけどそれでもフランはその場から動かない。レイピアを鞘に納めて羽で正面をガードしてこらえる態勢になる。
「ふんッ!」
『
ほとんどすべての弾幕を破壊してフランドールを包んだ砲撃にリアスたちは勝利を確信した。弾幕をすべてかき消しあれだけきれいにヒットした一誠の全力には耐えられないだろうと踏んだのだ。最低でも大ダメージはかたいと。
だが、
「な……に……!?」
「うそでしょ……」
「そんな」
煙が晴れた場所から現れたのはほぼ無傷で自分たちを見下ろすフランドール・スカーレット。
フランドールは一誠の一撃を羽を盾にして全力の霊圧の鎧をまとわせることによってダメージを極限まで軽減したのだ。
本当ならアランカルと吸血鬼の再生能力を持つフランドールなら霊圧の鎧は薄くして少量のダメージを受けたほうが効率がいい。
だがフランは圧倒的力の差を見せつけるために全力でガードして余裕の表情を見せつけたかった。
フランの思惑通りリアスたちはもっとも強い攻撃を放てる一誠の攻撃すらフランには通じないと誤認した。
「どう? あの時と全く同じ結果よ。
あの日と同じ場所、同じ時間、同じ攻撃、同じ結果、すべてが貴方たちの勝利を否定してるわ。
成長したと言っても力の差は歴然、未来は決してるわ」
フランドールのリアス眷属たちの気力をそぎ落とすかのようなセリフが続く。
だが、子猫の頭の中ではある単語が引っ掛かった、同じ場所、同じ攻撃、同じ時間?
フランドールが余裕を見せつけて攻撃してこない間に子猫は必死にその突破口になりえるであろう引っ掛かりを考える。
そしてついにその記憶の引っ掛かりと突破口を導き出した。
「部長、朱乃先輩」
「どうしたの」
子猫は思い出したことを近くにいたリアスと朱乃に伝える。
リアスと朱乃は子猫の作戦を聞いてハッとなる。そしてその作戦をこっそりとほかの眷属たちにも伝える。
おそらく現段階でフランドールを倒せる唯一の希望。
「行くわよ、みんな!」
『おーッ!!』
リアス眷属の士気が一気に高まる。
だがフランドールの余裕は一ミリも崩れない。
どれだけ抵抗しても自分との力の差は埋まらない、ほんの些細な希望も簡単に打ち砕いてやると。
一誠、木場、ゼノヴィア、ロスヴァイセはフランドールに攻撃を仕掛ける。
フランは今度は弾幕の攻撃ではなく腰のレイピアを抜いて直接攻撃で迎え撃つ。
禁忌「レーヴァティン」
炎がレイピアにまとわりつき巨大な炎を放つ枝状の剣へと姿を変える。
そしてその剣で一誠たちを力のみで圧倒する。
スピードやテクニックなどアランカルと吸血鬼の身体能力で反応してあとは純粋な破壊の力のみで圧倒する。
そうしてフランがそっちの相手をしている間に残りの眷属たちが次の段階に移る。
「雷光ッ!」
朱乃はフランドールに向かって雷光を放つ。
フランドールは強力な一振りで一誠たちを薙ぎ払いレイピアを丁寧に鞘に戻してから、雷光に向かって一度手のひらを向けてから手のひらを自分のほうへ移して何かを握りつぶすような動きをした。
すると雷光は空中でまるでガラスが割れるように砕け散った。
「それだけでは終わらないわよ」
リアスがそうつぶやく。
その自信は雷光の後ろに隠していた滅びの力の塊が源である。
雷光で見えないように巧妙に隠しての攻撃。
だがその攻撃も雷光と同じように空中で砕け散った。
「そうそう、これもあの時と同じね」
「そうね、そしてこれもね。今よッ!」
「はいッ!」
フランドールが一誠たちの近距離攻撃とリアスたちの遠距離攻撃に気を取られている隙に子猫がフランドールの背後に回り込んでリアスの合図と共に背後の壁を壊す。
するとそこからまぶしい太陽の光が差し込みフランドールを照らす。
「しまった! ああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁああぁぁぁッ!!」
「貴方の言った通りすべてがあの日と同じね、そして結果も」
太陽の光に苦しむフランドールを見てリアスは勝利宣言を行った。
あの強敵に打ち勝ったことによって一誠たちのその場に座り込む。
だがギャスパーだけは、フランと敵対しつつも攻撃を避けるだけで攻撃を一切しようとせずにフランが本気で自分たちを罰する時まで待っていたギャスパーはフランドールに違和感を感じた。
本当にこれで終わりなのか?
そしてその予想は見事的中することとなった。
「あああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁアハハハハハハハハハハッ!」
フランドールは日の光を背に立ち上がる。
リアスたちは一体どうなっていると疑問ばかりが浮かぶ。確かにあの時はこうして逆転勝利を収めた。吸血鬼に対して最高の武器、太陽の光で。
フランドール・スカーレットは吸血鬼、それもギャスパーと違って純血であるため太陽の光が弱点のはずなのに。
この異常事態にただただ戸惑うしかない。
「言ったでしょ、私は死んだって。そしてアランカルとして生まれ変わったと。
太陽の光が弱点だったのは私が吸血鬼だったから、アランカルには無毒よ。それに、こうすることで太陽の光を遮ることもできるのよ」
フランドールは自分の周りから赤い霧を大量に発生させた。その濃さは最初にあったものとは比較にならないほど濃い濃度のもの。それが広範囲にまき散らされる。
赤の霧はまたたくまに屋敷の外までを真っ赤に染め太陽の光を遮ってしまった。
これでは例えフランドールが吸血鬼のままであろうとももう太陽で殺すことはできない。
リアスたちは本当に万策つきてしまった。
「どう、私との力の差がわかった? 自分たちがどれだけ頑張ろうが勝てないってわかった?
これからもっと惨い拷問をしてあげる、殺してもらえるなんて幸せな考えは捨てなさい、私は貴方たちを一生いたぶり続けるだけよ。
どうしても死にたいなら自殺しなさい、それだけは認めてあげる」
フランはひたすらリアスたちを嘲笑した。
フランはあえてリアスたちを殺さずにいたぶることで少しでも自分と同じ苦しみを与えるつもりなのだ。
そしてなぜ自殺だけは許可するのか。それはアランカルがこの世を彷徨う魂に干渉できるからである。
もしもこのまま殺せば彼らの魂は真っすぐあの世行きである確率が高いが、自殺した魂は必ず現世に留まりすぐには成仏できない。
そして魂だけになった彼らを自分が死ぬまでいたぶってやろうという魂胆なのだ。
自分の大好きなお兄ちゃんを奪ったささやかな仕返しのつもりである。
フランのもくろみ通りリアス眷属内は圧倒的力の差に絶望を見せる。
だが、フランの意とした反応はかえってこなかった。
「あきらめるかよ……」
一誠が小さな声と共にゆっくりと立ち上がる。
フランはそれを不快そうな目で見下す。
「俺はまだ……倒れるわけにはいかない」
「はっ?」
「仲間を傷つけられて黙ってられるかよ!
お前が俺の大切な仲間の妹でも、死んじまった誇銅の妹だろうと仲間を傷つける奴は許さねえッ!
それに、自分の家族が自分の仲間と殺し合いをするなんて誇銅も望んでねえハズだ、だけど仲間をこんな目にあわせるのなら俺も容赦はしない!
誇銅に変わって俺がお仕置きしてやるぜ!」
フランはすでに不快を通り越して嫌悪感丸出しの目線でイッセーを見下す。
と言うより視界に入れたくないとすら思っている。
だが、そんなこの場に適していないような言葉を連発する一誠を見て最初はポカンとするリアスたちだが次第にその絶望の表情に笑顔が戻る。
「そうね、家族がこんなことをするなんて優しい誇銅には耐えられないわよね。
それなら私たちが止めてあげなくちゃ」
「ほんと仲間思いだねイッセー君は。
死んでいった仲間のためにもここでくじけるわけにはいかないよね」
「ふふっ、イッセーくんにはいつも勇気づけられますわ」
「…先輩に勇気づけられたおかげで私も自分の力を受け入れることができました」
リアス、木場、朱乃、子猫がゆっくりと立ち上がる。
「イッセーから勇気をもらって、みんなを立ち上がっているというのに私があきらめるわけにはいかんな」
「私はリアスさんに助けていただいた身、ヴァルキリーがこんなところでくじけるわけにはいきません」
「私もよくイッセーさんに助けられます。それに皆さんのことも大好きです。回復しかできないけど、それでも皆さんと共に歩むために私はあきらめません!」
「僕はフランちゃんと戦いたくない。だけど、みんなの命もあきらめたくない!」
ゼノヴィア、ロスヴァイセ、アーシア、ギャスパーも立ち上がった。
未来をあきらめない心を胸に一致団結してフランドール・スカーレットに立ち向かうと決めたのだ。
その様子を見てフランドールの中で何かがキレた。
最初の余裕の笑みもついさっきの不快な表情も消え無表情へと変わっている。
それは自分の中の甘さに憤りを感じているのだ。
生ぬるい手加減を加えすぎた、自分が感じた心の穴に匹敵する苦しみを与えキレてない。
もっともっと徹底的に痛みと力の差を見せつけて絶望させてやらないと。
「……そう、あなたたちを絶望させるにはこの程度じゃまだ足りないってことね」
フランドールの雰囲気ががらりと変わる。
先ほどの余裕感たっぷりの緊張感漂う威圧が発せられる。
フランは腰のレイピアを引き抜いて天高く上げる。
「こ、これは!?」
フランドールの霊圧が二倍三倍に膨れ上がっていく。
その上がっていく様子が肉眼でも確認できるほどに、周りの大気を震わせながら上昇していく。
「
フランドールの周りの霊圧が一気に弾けて煙に覆われる。
リアスたちはいったい何が起きたのか全く分からずただただ警戒するしかなかった。
そして煙が晴れると、そこには先ほど以上の威圧感を出しながら笑うフランドール・スカーレットの姿が。
さらに七色の結晶がついた羽は吸血鬼らしい蝙蝠の羽に変わっている。
「さあ、第二幕の始まりよ」
◆◇◆◇◆◇
「早く、早くリアスたちの援護に行かないと」
「お嬢様の邪魔は誰にもさせません!」
ソーナは焦っていた。
最初は紅鈴と会話をしてなぜリアスを先に行かせるのか、これは恐らく今までの敵と同じような理由であろう。しかしその理由はなにか? それを紅鈴との会話で探り可能であるなら戦闘自体を止めようと考えていた。
向こうも外道な手段を使ってこなかったからには話す価値もあるのではないかと。
戦闘がひきがねは彼女がお嬢様と呼ぶ存在、フランドール・スカーレットの生存をソーナが知った時。さらにフランドールが既に太陽という弱点を克服したことと新しい能力を知った時、一刻も早くリアスの救出に行かねばと考えた。
おそらくリアスは殺されてしまう。
リアスたちがいくら強くなったとはいえフランドールの能力には勝てないだろう。
あまりいい人とは言えない部分も多いリアスだが、友人の危機を見過ごせないと思うソーナ。
「水遁、破奔流」
ソーナは掌に水の渦を作り出してから、広範囲に及ぶ攻撃を巨大な水の竜巻に変えて紅鈴に打ち出す。
紅鈴は正面に渦状の氣を生み出して真正面から水の流れを止める。
その間にほかの眷属たちが多方向から同時に属性遠距離攻撃で攻撃をする。
「それなら! 虚砲」
紅鈴は氣の盾を解除して水の竜巻に当たりながら正拳突きの構えから虚砲を放って竜巻を破壊する。それから氣をまとった拳や蹴りで遠距離攻撃に対処する。
攻撃をするときもされるときも紅鈴はその場を一歩も動かない。
ソーナたちは紅鈴を無視して進むことも実力的にもできるはず。だがそれをしない、それができない理由がある。
「硬いですね、その城壁は」
「そりゃそうですよ、私の
紅鈴の刀剣解放で紅鈴より後ろは城壁に阻まれるように行くことができなくなっている。
紅鈴自身はこの能力のデメリットでその場から動くことができなくなっているが、ソーナたちの嵐のような攻撃も鋭い中国拳法とアランカルの力と元々の頑丈さで耐えている。
感知能力も仮面の大男以上で敵の視覚外からの攻撃をされない紅鈴。
例え友人を助けるためだといえ自分の眷属たちを危険にさらすわけにはいかない。
ソーナは紅鈴の足止めを見事くらっていた。