変身したフランドールは空中から立ち上がったばかりのリアスたちを見下す。
フランドールの結晶のついた異形の羽は変身したことでシンプルなコウモリの羽に変化した。
だが見た目がシンプルに変わったことにより変身前から比べても増したフランドールから発せられる畏怖の念を感じさせるオーラがより際立つ。
「私がこの姿になったからにはもう敗北の運命からは逃げられないわよ」
「そんなことやってみなくちゃわからねえだろ。
運命ってのはな自分の力で掴み取るもんなんだよ!
例え相手が自分より強くてもあきらめないことが大事なんだ、誇銅に変わってお兄ちゃんがまだ幼いフランちゃんにそれを教えてやるぜ!」
本来ならなれなれしくちゃん付けで呼ばれたことと自分のことを誇銅の代わりのお兄ちゃんと言ったことにフランドールは激怒しただろう。
だがフランは一誠の言葉に特に心が動くことはなかった。
「ふふっ年上ね~、これでも私は496歳なのよ。
まあ人生の殆どは地下に幽閉されてたから人生経験はそっちのが上かもね」
最初のころより輪をかけて余裕の見下した態度をとる。
その時ギャスパーを除くリアスたちはフランドールを過去の強敵たちと完全に比べている、だからこそ立ち向かう力が余計に湧いてくる。
彼らの目にフランドールは害をなす悪として映っている。心の中では確かに復讐に囚われた哀れな少女としているが、今のフランドールの立ち振る舞いがレイナーレやコカビエルなどを連想させそのような気持ちが無意識ながら出てきてしまっている。
現在肌で感じることのできるフランドールとの実力の差を正しく認識できているのは誰もいない。
……フッ
「消えた……! 痛ッ」
フランドールの姿が一瞬にして消えたかと思えばフランドールは一番手前にいた一誠の首筋にかみついていた。
あまり強く噛んでいないとはいえフランドールの牙が一誠の皮膚を貫き血が出る。
フランドールは一誠の血を軽く吸血すると反撃の初動の時点で一誠から離れて元の位置に戻る。
「ぺっ、ぺっ、まっず」
口に含んだ一誠の血を念入りに何度も吐き出す。
首筋の小さな傷痕は悪魔の身体能力ですぐに完治されているが、反撃を行った際そこには既にフランドールの姿がなかったことに驚愕している。
そのためフランドールが血を吐きだしてる最中にフランドールが元の位置に戻っていることを認識した。
「ギャスパーはこの血をよく我慢して飲めるわね。
それとも単純な味覚の違いなのかしら?
口の中に下品な味が広がり喉を通った瞬間変な視線を感じたような悪寒が走ったわ。
普段から下劣な考えや行為をしていると血にも影響がでるのね」
「なんだと! 俺がいつ下劣な考えや行為をしたっていうんだ!!」
「世間の声に耳を傾けなさい、それに
一誠の反論も適当に答えたフランは既に一誠に興味なしと言わんばかりに視線を外す。
そして今度は一誠以外のリアス眷属たちを見回す。
「一応しときましょうか」
……フッ
「イタ」
「ぺっ、まずい」
リアスの首筋に噛みつき、血を吐きだすとまた姿を消す。
「イッ」
「ぺっ、雑味が多すぎる」
今度は朱乃の首筋に噛みつき、血を吐きだすとまた姿を消す。
「うっ」
「チープ」
「んっ」
「薄っぺらい」
「くっ」
「酸味が強すぎる」
「っ」
「臭い」
「むっ」
「安っぽい」
「あっ」
「まあ普通」
アーシア、木場、ゼノヴィア、小猫、ロスヴァイセ、ギャスパーの首筋に噛みついてはギャスパー以外の血を地面に吐きだす。
リアス眷属の血を一通り味見したフランドールは元の位置に戻ってハンカチで丁寧に口を拭く。
それからリアス眷属をもう一度見回してから鼻で一笑すると動きを見せた。
禁忌「フォーオブアカインド」
フランドールの分身体が3体出現する。
分身体のフランドールは本体と違ってリアスたちに対して戦闘の意思が見られる。
本物のフランドールがさっとリアスたちを指差すとフランドールの分身体がリアスたちに襲い掛かった。
「「「神槍『スピア・ザ・グングニル』」」」
分身体のフランドールがそう宣言すると三人の手の中に真っ赤な大きな槍が握られる。
最初に見せた『レーヴァティン』のオレンジかかった赤ではなく紅い槍、荒々しかった炎も消え去りシンプルな形であれど神でさえも貫けそうなほどの威圧感を放つ。
三体の分身体はそれぞれ違う動きをしながらリアスたちに切りかかる。
「さっきと槍の形が違う!
それに見たところ性質も全く違うものに変化してるね」
「やっぱり変わったのは形だけってわけじゃなさそうだな」
「そうですわね、槍から感じれる魔力も先ほどよりもずっと上ですわ」
槍の形状からして『スピア・ザ・グングニル』は『レーヴァティン』以上に突き刺すことに特化しているハズなのにそれでもさすそぶりは一向に見当たらない。
木場はこれをフランドールの手加減ではなくて幼いゆえに武器の使い方を知らないと受け取った。
それならば武器の扱いを心得てる自分たちにも突破口がある。
あまりにも絶望的な力の差に木場は希望的観測で自分を元気づけるしかなかった。
そこに確立した希望があるとすればそこに本体が加わっていないことくらいである。
「でも所詮は分身体、本体を倒せば……くっ!」
「やっぱり先程よりもスピードもパワーも、そして魔力も桁違いに上がってます」
「こらこら、私一人に手こずってるんだから欲張らないの」
分身体を一網打尽にすることができる本体撃破、だがそれは分身体に阻まれて本体まで行き着くことはままならない。
それならばとわずかな可能性に賭けてリアス、朱乃、ロスヴァイセは遠距離攻撃に賭けてみることに。
「ムダムダ」
だがそれは本体にたどりつく前に分身体のフランドールによってガラスのように砕け散る。本体の直接手を触れずに破壊する能力は分身体も持ち合わせている。
その間に本物のフランドールは部屋の端にある戸棚へ向かってワイングラスと輸血パックを取り出す。
そしてソファに座って輸血パックの血をグラスに注いでゆっくりと分身とリアスたちの戦いを眺める。
フランドールは血のワインを一口だけ口に含むとフランは幸せそうな顔をして飲みかけのワイングラスを揺らしながら血を眺める。
「やっぱり誇銅お兄様の血は極上の味わいね。
口の中に含んだ瞬間優しい味が広がりすっと喉を通る。もうこの血も新鮮さはだいぶ失われてるはずなのに暖かな霊圧が私の魂に溶けていく。
誇銅お兄様が私のために抜いてくれた血もこれが最後、もう誇銅お兄様の暖かな胸に抱きしめられることもなければこの極上の血で魂を潤すこともできない、あなたたちのせいでね」
リアスたちは命を懸けた戦いを繰り広げているというのにフランドールはゆったりと血のワインを飲みながら嫌味を言う、リアスたちはまともに嫌味を受け取れるような状況ではないのに。
フランドールはリアスたちの死闘をつまらなそうな目でしばらく眺めると完全に興味を失い残りの血のワインをグラスに注いでワインの色や匂いのみをうっとりとした目で堪能する。
興味は完全にワインの方へ向きリアスたちなど見向きもしない。
「一人だけでも厄介なのにそれが三人も。
こっちの方が数が多いと言っても厳しい」
「唯一の救いは彼女がまだ子供だってことだね、経験と技量はこちらに分がある」
「それでもこのパワーと武器の鋭さは脅威だ、エクス・デュランダルがいずれ折られてしまうのではないかと思ってしまうくらいな」
木場は聖魔剣を砕かれては創り砕かれては創りを繰り返してフランドールの手加減の加えられている攻撃をなんとかしのぐ。
ゼノヴィアもエクス・デュランダルで攻撃を受け止めるたびにエクス・デュランダルから嫌な音を感じながら戦う。
一誠は現在『
だがそれではフランドールのスピードの前では守勢に回る一方、一誠は『
自分が倒れればそれだけ前線で耐えれる数が減ってしまう。
「こんなとこで死んでたまるかよ、必ずお前に勝つ!」
「分身にここまで手こずってるのに?」
「だったら僕たちも力を貸すさ」
「必ず勝って平穏な日常に帰ってみせる」
フランドールはある一言に少しだけ反応を見せたが別に感情を出すこともなくただただ余裕の表情で三人を追いつめる。
だが一誠はフランドールの一言で一度は言葉を詰まらせたが木場とゼノヴィアの言葉で再び勇気をたぎらせた。
そして戦闘の勢いもどんどん上昇させていく。だが、依然としてフランドールの手加減はそうとうなものとなっている。
「そうだ、俺たちはどんな時でも力を合わせて乗り越えてきたんだ、お前なんかに負けない!」
「そんなに強がっても貴方たちの負けは運命なのよ!」
それでも一誠と木場とゼノヴィアが戦ってる分身体は二人だけである。
残りの一人は他の眷属たちに他の三人たちほどではない攻撃を加えてさらに手加減をした攻撃をする。
たった一人の攻撃なのにリアスたちは必死でしのいでいる。分身体のフランドールもその様子がおかしくて時折笑い声がこぼれる。
「ククク、たった一人にここまで苦戦するなんて、ぷっ」
「いつまでもそんな余裕をかませるなんて思わないことね、私たちはあきらめないわ絶望なんて絶対しない!」
「ぷっ♪ どれだけ吠えても運命は変わらないわ」
フランドールの分身体による手加減攻撃は一向にその度合いを下げるに至っていないリアス眷属。
手加減をしてるとはいえそれなりの時間も経ってリアスたちにそこそこのダメージが入ってはいるがアーシアの回復で軽症で済んでいる。
フランドールは絶望の自害をさせるためにあえてアーシアを狙っていないからである。
しかし血のワインが残り一杯となった時、フランドールは名残惜しそうにグラスを見つめてワインの入ったグラスを置いて元の位置へ飛ぶ。最後の一杯は戦闘後にと思いながら。
「さ~て、これ以上紅鈴を待たせるのも悪いしさっさと済ませちゃいましょうか」
フランドールが指をパチンと鳴らすとリアスたちの相手をしていたフランドールの分身体は煙のように姿を消した。
力の差を見せつけるだけではなくて痛みでも絶望を与えることにした。
そしてまた何もない時間が流れる。
その間にリアスは後から追いかけると言って一向に現れないソーナたちを心配して後ろを少し向く。それを見逃さなかったフランドールはリアスの心を見透かしたかのようににゃっと笑みを浮かべる。
「援軍なんて期待するだけ無駄よ、そんなの運命にないから」
「このことをソーナたちに頼るつもりはないわ、貴方との決着は私たちだけでつけるべきことだもの」
「あらそう、まあどうでもいいわ貴方たちが私に敗北するのは運命なのだから!」
変身してからは積極的に攻撃する姿勢をまったく見せなかったフランドールがついに動き出す。
戦闘の意思が完全に敵に向いたフランドールの強大な霊圧を前には弱者なら脇目も振らずに逃げ出すほどである。だが、リアスたちはそれなりの強さと実戦経験、使命感と勇気により臆せずに立ち向かう。いや、逃げるという選択肢を選べなかった。
リアスたちの考えにはチームワークを駆使して連携で勝利するという考えはあっても奇策を用いて不意をついて戦うもしくは逃げるという選択肢などはなからない。
既にこちらのすべての攻撃が効かないいじょうそれらの選択肢も最低でも頭に置いておかなくては無駄に全滅という最悪が起こり得るというのに。
武器も持たずに弾丸のように体を回転させながら突っ込んでくるフランドール。
その威力は感じるだけで先ほどの攻撃とは比べ物にならないほどの危機感を感じる。
その攻撃は木場の聖魔剣ともう一つの禁手化である『
それを本能的に理解した一誠はフランドールの突進の前に立ちふさがり攻撃を受け止めようとする。
「来い! お前の攻撃を受け止めてやる!」
フランドールがすぐそばまで近づく、一誠は攻撃を受け止めるために足腰にぐっと力を入れて受け止める体制を強める。
絶対に受け止めてやる、そう強く決意し覚悟を決める。
そしてフランドールの攻撃が一誠に激突した。
だが、フランドールの攻撃は『
それを受け止めた一誠は、
「大丈夫! イッセー!」
「うぐぐ……」
フランドールの攻撃を受けた一瞬、一誠は実戦で培った危機察知ですぐさま受けきれないと判断して寸でのとこで大部分の装甲を犠牲にしてなんとか命を繋いだ。
この時フランドールは一誠を動けないほどの傷を負わせる気だったがまあこれはこれで良しと思った。
どうせ足掻く手段なんてもうないのだから。
「貴方たち程度が私の攻撃を受け止めるなんて無謀よ」
フランドールは空中で見下した視線で助言する。
一誠はそれに言い返したい気持ちになったが実際に自分の最高防御力でも止めることはできないだろうということはわかっているので言い返すことができない。
「確かに、今のままじゃ受け止めきれそうにない」
「でも、あの攻撃さえ止めればあのスピードを封じることができる。
そうすればこちらにも勝機があります」
仲間たちが一誠に覚悟の視線を送る。
それを受け取った一誠は無言でうなずく。
そして一誠は再び倍加の力を発動させ、壊れた装甲も今必要ない部分で補強して立ち上がる。
一誠は再び受け止める構えをとる。だが今回は一誠の後ろから他の眷属たちが一誠を支える。
これではもう攻撃を受け流すということなどできない、だからこそ今度こそ受け止めてやると言った意識が強くあらわされる。
「来い!! 今度こそ俺が、俺たちがお前の全力を受け止めてやる!」
一誠は空中のフランドールに向けて強く叫ぶ。
それを聞いたフランドールはその場でやれやれの動きをした。
「まったく、私が殺す気だったらどうしてたのかしら?
もしも直接殺しに行くんだったら一瞬で背後に移動して一網打尽よ。
ふ~しょうがないわね、じゃあお望み通り“本気”で攻撃してあげる」
フランドールは今度は地面に下りずに壁に一度足をつけるとその壁を蹴って再び弾丸のような突撃を放つ。
そのまとうオーラは一発目を大幅に超える大きさとなっていた。
だけど一誠たちはその一撃を変わらず迎え撃つつもりでいる。
目に見える脅威が急速に迫ってくる、だが一誠たちは逃げない。そしてついにフランドールと一誠たちの守りが衝突する。
『ぐっ、ぐぐぐぐぐぐぐぐぐッ!!』
一誠たちはなんと回転は止められていないし進撃を止めれず後退はしているがそれでも受け止めることには成功した。
だがそこまで、『
誰一人としてフランドールの攻撃の衝撃から逃げられずに宙を舞う。
「くっ、くそ……」
そんな中一誠だけは『
だが他の眷属たちは立ち上がらない。なんの防御も施していない生身でフランドールの攻撃の衝撃を受けたのだから。
その光景を見てフランドールは満足の笑みを浮かべるが、一誠は仲間を傷つけられた怒りをふつふつとたぎらせるのである。
「ちょっとやりすぎたかしら? でもまあよし」
「よくも俺の仲間たちを……許さねえ……誇銅の家族だからってもう容赦はしない、覚悟はできてんだろうなッ!!」
「ふっ、どの口が言うのかしら」
一誠は怒りによってどんどん力が上がっていく。そのパワーはサイラオーグ・バアルとの試合中、ペンタゴナやサイラオーグに向けた怒りよりもずっと大きいものである。
しかしフランドールは一誠に脅威を感じない、なぜなら脅威足りえないからである。
「プロモーション! 『
一誠のプロモーションの中で最も使いどころに気を付けなくてはいけなくて、もっとも相手を殺してしまいかねないほどの性能をもつ。
最初は装甲の薄さを懸念していた一誠だが実はフランドールが強すぎるために殺さない加減ができないという理由でも使用を控えていた。
だがもうそんなことはどうでもいい、自分の仲間を殺そうとするならば殺してでも止めると。
「ハアアァァァァァァァァァァァァァアアアアアァァァァッ!!」
「私と速さ比べをする気? 受けて立ちましょう」
一誠は『
怒りの表情を見せる一誠と余裕の笑みを見せるフランドール、表情だけを見ればフランドールはまだまだ余裕があると見えるがフランドールもそこまでの余裕があるわけではない。
(なかなか早いわね。でも、これならまだいける)
フランドールはわざと隙を見せて一誠を誘い込む。
その目論見通り一誠はそこを狙ってきた。
フランドールはニヤニヤ笑いながらその攻撃をひらりと躱して後ろからおいうちで切り裂こうとした。
だが、一誠の目の前に真っ黒な穴が開いて、一誠はその中に突入することでフランドールの攻撃を躱す。
そしてフランドールがからぶった目の前にあの穴が開いて中から一誠が飛び出した。
これにはさすがにフランドールも対処できない。
「くらえ! ドラゴンダイブゥゥゥゥッ!!」
「グッ―――――――――――――――!!?」
不気味な黒いオーラを纏った一誠の斬撃はフランドールの胸を右上から左下に袈裟斬りに切り裂いた。
一誠の黒いオーラは一撃を浴びせたと共に消え去ったがそれでも十分、フランドールは重力に従って地面に落ちていく。
だが、落下最中に持ち直して一誠の方へ飛んでいき
「
「ぐあぁぁぁぁぁぁああああぁぁ!!」
縦横無尽に響転で一誠の周りを切り裂きながらすばやく飛び回る。
一誠の体はフランドールの爪で切り刻まれ今度は一誠が重力に従って地面に落ちる。
地面に倒れ伏す他のリアス眷属と同じように今度こそ同じようになる一誠。
装甲の薄い『
「今の一撃は予想外だったわ、あの技は一時的にこの世の
あきらめなさい、貴方たちの運命はすべて私の手の中よ」
「さっきから運命って言葉を何度も口にしてるけどそれほど自分に自信がないのかしか?
運命ってのは自分の手でつかむものよ、誰かが決めることなんてできない」
リアスが全身に力を込めてゆっくりと立ち上がる。それと同時に他の眷属も遅れて立ち上がってくる。
その間にアーシアは重症の一誠の治療を始める。
フランドールは再び笑みを浮かべた。
それは今までのような余裕から来た笑みではなくもっと別の種類の笑み、例えば自分が作ったナゾナゾを解いてもらえた時のよう、普通の人には伝わらないネタが伝わった時のような笑みである。
「自分に自信がない? 逆よ、私は自身があるからこそ言ってあげてるの。
早く絶望して楽になれるようにね」
「なんですって?」
「私の能力は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』
そして力の解放をすることによって私は新たに血のつながった姉の
その能力にリアスたちは耳を疑った。運命を操る? そんなデタラメな能力が存在するのか。赤龍帝の倍加の能力や白龍皇の半減の能力も十二分に強力な能力ではあるが対抗策がないわけではない。
だがフランドールの言う能力が本物ならそれはどんな強者であれ勝つことは叶わないということではないか。
リアスたちはさすがにそれはハッタリだと首を振る。
「ハッタリと思って自分の心の平穏を保つのは勝手だけど真実は曲げられないわ。
現に貴方たちは忌まわしきこの日、この時間にこの場所に自分の足で来ることを運命づけられたのよ。もしかしてすべてが偶然一致したなんて思ったのかしら?」
そう言われるとこれまでの出来事が偶然にしてはあまりにもできすぎていると感じる。
あの仮面の大男がフランドールの差し金だとしても、中国風の女性が招いたとしても多すぎる偶然が重なり続けている。
壁を開けた時の日の位置からしてあの時と時間もほとんど同じなのだろう。
ここまで同じにされたのは運命を操る能力のせい?
フランドールの言葉を否定する要素を探すも出てくるのは肯定の要素ばかり。
「貴方たちの運命は既に私の手の中よ、絶対手放さないわ」
「それでも私たちは貴方に屈したりしない! 最後まで絶望なんてせずに戦うわ!」
「だったらせいぜい無駄な希望を見てなさい、そしてより大きな絶望に飲まれるのよ」
◆◇◆◇◆◇
フランドールの反撃を受けて気を失った一誠の意識はは白い世界に来ていた。
そこは神器の中、『赤龍帝の籠手』の中にある世界。
一誠も歴代の赤龍帝を説得したりとよく訪れていた場所なので本人もここがどこだかはすぐに理解できた。
周囲には歴代の赤龍帝の残留思念が、黒いオーラを立ち上らせて怨恨めいた顔つきに変わっていく。
「
「
「あの女を倒すには
歴代の赤龍帝の残留思念が口々に不気味な言葉を口にする。
白い世界に映像が映し出される、そこには意識を意識を失った一誠が映し出されていた。
そして、笑顔でリアス眷属を傷つけていくフランドールの姿も映しだされる。
一誠はフランドールが憎くて仕方なくなった、歴代の赤龍帝の負の感情も相まって憎悪の感情はどんどん高まっていく。
フランドールを殺したい、この世から跡形もなく消滅させたい、一誠は解放された歴代赤龍帝のエルシャやベルザード、ウルフを思い出しながらも自分の闇にあらがえないでいた。
「イッセーにこれ以上手出しはさせないわ!」
上空の映像からリアスの声が響いた。
それにより一誠は一時的に闇の淵から踏みとどまる。
「イッセーくんは私たちを体を張って守ってくれましたわ、だから今度は私たちは体をはってイッセーくんを守りますわ!」
リアス眷属が命を懸けて戦闘不能となってしまった一誠を守る言葉が聞こえてくる。
他の眷属たちも体を張って一誠を守っている。
すると一誠の心の中に自分に期待してくれた魔王たち、分かり合えた友、自分を応援してくれた冥界の子供たちの自分を応援してくれた言葉をどんどん思い出した。
そして思い出した、自分とリアス・グレモリーの心が真に通じ合ったあの日を。
「さあ、現赤龍帝の兵藤一誠。暴れよう、『
歴代の赤龍帝の一人が黒いオーラを纏いながら囁きかける。だが、もう一誠の心は闇に落ちることはなかった。
「うるせーよ」
一誠は歴代の赤龍帝を見渡すように言う。
歴代の赤龍帝たちは心底驚いた顔で反応した。
「天龍は覇王となることが本来の道程。ありえない、そんなことはありえない」
「違う――――――。俺は……覇王になんてならねぇ、俺は兵藤一誠! ただのスケベで、いくならやらしい王様になってやるッ!]
「否、それは…」
「いやらしい王様になる? いいんじゃない」
白い光に包まれている男性が一誠に向かって話しかける。
それを見て歴代の赤龍帝たちは
「貴様は……」
「俺っちは歴代アルビオンの一人。
君はアルビオンの宝玉を『赤龍帝の籠手』にはめ込んだでしょ? あの中に俺っちも少しだけ入ってたの。まあ本来の俺っちは向こうだけどね~」
歴代白龍皇の男が一誠に手を差し伸べる。
「赤龍帝、これも何かの縁だろうし君を助けてあげよう。俺っちが持つ半減の力であいつらを抑えてあげるよ」
「いいのか? 俺は赤龍帝でヴァーリじゃないのに……」
「かまわない、俺っちは元々芸術家だからそこは興味ない。それよりも君が手に入れたあの力の続きが見たい。
あの龍の力を借りれば最高の赤龍帝となれるだろう」
淡い閃光が白い空間に広がり、歴代赤龍帝の残留思念たちの黒いオーラを取り払っていく。 さらに憎悪の念が半分に消失して、黒いオーラも半分に減る。
「させ……」
「ハイハイ君たち邪魔、もう黙っとき。
さあ現赤龍帝、もう行き、仲間が待ってるよ」
歴代白龍皇はさらなる白いオーラで歴代赤龍帝を黙らせると一誠を見て笑いかける。
一誠は黙って頭を下げると覇龍とはことなる呪文を唱える。
すると一誠は混濁した虹色のオーラに包まれると白い世界から消えた。
「いやらしい王様になる? いいんじゃない―――――――――どうでも。
あの龍の力を借りれば最高の赤龍帝となれるだろう―――――――ちゃんと借りれればね」
◆◇◆◇◆◇
「ハア……ハア……強すぎる……」
「う~飽きてきたな~。
もう自害じゃなくてもいっか、魂さえ残ってれば」
もはや一誠を守るという気力だけで立っているリアス眷属、傷痕は浅くとも全身切り刻まれて血まみれである。
フランドールはここまで殺さないように、戦闘不能にしないようにギリギリの手加減を加えていたがそろそろめんどくさくなって手加減をやめようと思う。
「じゃあまずは王から殺っちゃいましょう」
フランドールは上空から急降下してリアスにとどめを刺そうと急接近する。
リアス眷属にはその接近に気付けない者と気づけても反応できない者の二種類がいた。
だがどちらにしても誰も止められない。
だが、一つの影がフランドールとリアスの間に割って入り攻撃を止めた。
「またせたなリアス、みんな」
その攻撃を止めたのはさっきまで倒れていたはずの一誠。
混沌としたオーラ纏いその姿は今まで見たこともない装甲に包まれていた。ただリアスだけはその鎧に似たものを見たことがあった。
「イッセーくん(さん)!!」
「イッセーその姿は」
「詳しくは後で説明します」
リアスたちは一誠の復活を心から喜び歓喜の声をあげる。
フランドールは不愉快な目で一誠を見る。
「なにそれ」
「『
「『
だがそれは胸・背中・両腕のみであとは三種類のプロモーションをごちゃまぜにしたような形になっている。
先に動き出したのはフランドールだった、一度空中で距離をとってから再び超スピードで一誠に接近する。
一誠はそれを正面から迎え撃ってみせる。
今までは正面から迎え撃ててもスピードが追いつかず、スピードが追いつけば耐えきれずだったが今はある程度フランのスピードに食いつきながら攻撃を受け止めている。
ただしスピードは『
「ふーん、なんか知らないけどパワーアップしたってところね。でもあなたの運命は未だ変わっていないわよ」
「言っただろ、運命は自分の手で手に入れるもんだって!」
二人の壮絶な空中戦が繰り広げられる。
スピードは互角とは言い難いが一誠はフランドールのスピードにほんろうされずに立ち回れている。
防御力は一誠に分がありスピードはフラン、攻撃力は総合的に引き分けと言った具合。今のところフランドールの方が優勢だ。
フランドールはこの優勢をさらに確実なものにするためにさらなるアドバンテージを取りに来た。
「運命『ミゼラブルフェイト』」
フランドールが発生させた魔法陣から紅い鎖出現して一誠を捕らえようと追尾する。
だが一度は捕まりそうになった一誠だったが両手に黒いオーラを纏わせて鎖を何度もひっかく。すると数度目で鎖は一誠のクロー攻撃で斬れてしまう。
フランドールはまさかこの鎖が斬られるとは思っておらずに唖然とした。そしてその隙をついて一誠はフランドールに急接近して全力の拳を叩き込む。
「いたずらが過ぎるぞ、おしおきだ――――――!!」
「ア゛ッ―――!」
今度ばかりはフランドールも空中で耐えることができずに地面に激突した。
フランドールを中心として小さなクレーターが出来上がる。
それでもフランドールは大きな外傷もなく立ち上がった。だが余裕の笑みだけは消えている。
「どうなってるの!? こんなの……私の運命にはない!! 運命の鎖が斬られるなんて……。
貴方だけは……私の能力を持ってしても操りきれないって言うの!?」
フランドールは空中の一誠を目を凝らして観察する。
一誠の内部、フランドールの
「ぐぐぐ~……見えたわ原因が! 貴方の中にある黒い力、その運命の外の存在が私の能力を阻害してしまっている!
――――――でも、すべては操りきれないだけ。貴方たちはまだ私の運命から逃れられていない!
多少相違があっても結果は絶対に変わらないわ!」
原因が分かったことでフランドールは余裕を取り戻し再び笑みを浮かべる。
相手は自分の能力の範囲外にいるわけではない、自身の勝利はまだ揺らがない。
だけど一誠だけにはもう油断はできない、本腰を入れて一誠を殺そうと狙いを定めるフランドール。
だが一誠は地面に下りてフランドールに歩み寄った
「なあ、もうやめないか?」
少し優勢になり始めていた一誠は纏うオーラを消してフランドールに話しかけた。
いきなりの一誠の行動にフランはポカンとしてる。だがそれはリアス眷属も同じ。
「急にどうしたのイッセー、それじゃ駄目って?」
「ちょっとウルフさんのことを思い出したんですよ。
ウルフさんは子供を大切に思ってた、だからやっぱり小さい子に力じゃなくて優しく接しないといけないなって思ったんです。
それに冥界の子供たちのヒーローが子供に手を挙げるのはどうかと思っちゃいまして。
フランちゃんこれだけ暴れて少しは落ち着いたんじゃないかな、だからもうやめてほしい、そして普通の日常に戻ろう」
一誠は優しく諭すようにフランドールに話しかける。
フランドールは一誠の目からとっさに目を背ける。
ちらりと見るも一誠はその目を辞めずに自分をじっと見つめる。
フランドールの目には薄らと涙が出てきた。
「……だったら返してよ、私の家族を返してよ!
私の心の穴を、この孤独を癒してみなさいよ!!」
先程から感情を隠して振舞っていたフランドールがついに感情を表に出して叫ぶ。
だが一誠はやっと子供らしい感情をみせたことに安心感を覚えた。
「フランちゃんのお兄ちゃんを返してあげることはできないけど、新しい居場所を上げることはできる。
俺が新しいお兄ちゃんになってやるぜ!!」
「何言ってるのイッセー!?」
「誇銅の代わりに俺がお兄ちゃんとなってフランちゃんを孤独から救って見せる!
ほら、君を歓迎してくれる人たちはここにいっぱいいる、新しいお姉ちゃんもここに!」
「イッセー!」
一誠は隣にいるリアスを抱き寄せてフランドールを見る。
これであの孤独なフランちゃんも救える、一誠はそう思っていた。
だが、フランドールはその言葉を聞いてからは一誠から目をそむけない、逆に負の感情がこもった目を見開いてじっと見ている。
「私はね元々は由緒正しいツェペシュの末裔、スカーレット家の第二児として生まれたの。だけど私は生まれつき内に強い狂気を抱えているせいで気がふれているという理由で大半を紅魔館の地下室で過ごしてきた」
フランドールは自分の過去を語り始めた。
瞬きひとつせずに負の感情がこもった目で一誠を見つめながら。
「そしてある日その狂気がついに限界に達して地下室を破壊して暴れまわったの。
普段なら私の姉が私を抑え込んでまた私を地下室に放り込む。だけどその日は違った、姉は体調が優れなかったのかいつもの強さはなかったの、そして私は実の姉を殺してしまった。
それでも私の狂気は収まらずに美鈴も咲夜も、パチュリーも小悪魔も屋敷に住んでいる全員殺しちゃった。
狂気から覚めた私は泣きながら太陽の下へ飛んだわ、自分は生きてちゃいけない存在、そして家族を殺した自分が憎くて仕方なかったから。
誇銅お兄様に出会ったのはそれからよ。魂だけになった私に温かい手が触れた、するとその手の主の記憶が流れ込んできたの、こんな人が私のお兄ちゃんだったらなっておもっちゃったわ」
負の感情だらけだった目から少しだけ負の感情が消え去りうれしそうな笑みを浮かべる。
だがすぐにフランドールの目から涙がどんどんあふれ出しフランは空中で俯く。
だが話は続けた。
「気づいたら私の体は元に戻っていたわ。そして目の前には誇銅お兄様と月お姉さま、恋お姉さまがいたわ。誇銅お兄様は私に家族の一員になってほしいと甘美な提案をしてくれた、だけど私は家族を壊してしまう、私の居場所なんてどこにもない、そう思っているとお兄様は言ってくれたの『君の居場所はここにあるよ、おいで』って。
私は嬉しくてうれしくて反射的にお兄様の胸の中に飛び込んで大泣きしたわ。
その時から私は誓ったの、破壊する力を持った私がお兄様の幸せを破壊するものを破壊してやるって」
フランドールの手にだんだん力が入る。
それと同時に声も徐々にふるえていき怒りがこもる。
「だけど結局、今度は自分の手ではなくとも私たちの家族は破壊されてしまった、貴方たちのせいで。
私の幸せを壊したお前らに変わりなんて務まるか! 私の温かい家族はもう戻ってこないんだ! 代わりになる? ふざけるな!! お前たちが壊した!
だから破壊してやる……貴方たちの幸せも、未来も破壊してやる!」
顔を上げるとそこにあったのは負の感情でも涙でも幸せでもなかった、ただただ純粋で凶悪な狂気にあふれたフランドールの眼だった。
あまりにも強い狂気に自然と足が後ろに下がるリアス眷属。
「ふぅーふぅー……アハハ、ちょっと狂気が漏れちゃった。
ちょっと前までなら少しくらいならコントロールできたのにお兄様がいなくなってからは一度漏れると抑えが利かないの。
アハ、アハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
フランドールは壊れたかのように笑い出す。
実際フランドールは自身の狂気に侵されて壊れてしまっている、もはや自分でも制御できないほどに。
だがこのままでは今までのように加減はできなくなる、そのことをフランドールは残りの理性で考えた。
「どうしよう、もう加減できる気がしないよ~? 殺しちゃったらどうしよう~?
……殺してから考える♪」
フランドールの元々持ち合わせている天真爛漫な面が短絡的な結論に至らせた。
だがフランドールの頭の中にはこの時既にあばれる以外の選択肢はなかったためわずかな理性も理性としての機能は果たせていない。
「神槍『スピア・ザ・グングニル』、禁忌「レーヴァテイン」 」
両手に二種類の槍を創り出すフランドール。
不気味なほど紅い凶悪な槍、すべてを焼き尽くすかのような凶暴な槍の二種類を構えたフランドールは最初のころの優雅さはなくなり無邪気な子供のように突撃してきた。
この時リアス眷属内でまともに動けるのは一誠のみ、一誠は一人でフランドールに戦いを挑んだ。だがもう一誠にはフランドールを殺す気はなくあくまで鎮圧するという無謀で愚かな考え方をしている。
さらにもうフランドールの攻撃は耐えられると力を過信した。
その結果一誠はフランドールの二種類の槍に貫かれ片足を焼かれることに。
「ぐああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁッ!!」
「ねえねえこれで終わりじゃないよね? 耐えれるよね? お兄様はもっとひどい苦痛に耐えたんだよ? もっとひどいことされたんだよ? もっと遊べるよね? 死んでもこの苦痛は何度もコンティニューさせてあげるからね」
貫いた槍を何度もぐりぐりしながら傷口をえぐる。
最初は楽しそうにぐりぐりしていたがその顔はどんどん不満の表情へと変わる。
二本の槍を乱暴に引き抜いて一誠の体を蹴飛ばす。
一誠の体は人間なら治療不可な程のダメージを負わされた。
「ああもう貴方たちの顔見てるの不快になってきちゃった。
だからもう魂だけになって、そうすれば楽しい思いだけして苦痛を与えられるから」
フランドールの霊圧が今までにないほど上昇していく。
魔王クラスなんてランクで言い表せないほどの魔力にリアスたちも命の危機を鮮明に感じ取る。
一誠は急いでリアスたちの方へ移動した。足の痛みなど忘れて。
背中の翼を大きく広げてリアスたちを包み込み、自身の魔力を最大限まで防御につぎ込んだ。
「紅魔『スカーレットデビル』!!」
フランドールを中心として真っ赤な柱状のオーラが広範囲を消滅させながら天高く昇って行く。
オーラが止まった後にフランドールの周りには一誠たち以外何も残ってはいない。木々も小石も廃墟も飲みかけも血のワインも、そして自身が周りに散布した紅い霧も。
一誠の装甲はフランドールの一撃でボロボロになっていた。それはもう触っただけで崩れてしまう程に。
文字通りすべての魔力を防御につぎ込んでドライグが極限までダメージを最小にするため攻撃を受け流そうとしてくれたおかげでリアスたちはもちろん一誠も危険な状態ではあるが息はある。
アーシアはあわてて一誠の回復に全力を注ぐ。
そして次にリアスたちの目に入ったもには太陽の光だった。
「太陽の光が……」
「今更霧を晴れたとこで……キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ熱いィィィィィィィィィィィィィィッ!!」
突如太陽を克服したはずのフランドールが太陽の光に焼かれる。
本人もどういったわけかわからずに影を求めて。
だが、ついさっきの大技で周りに太陽の光を遮るものなど何もない。
フランドールは急速に弱って行きついには動かなくなった。
リアスたちの運命を握っていたフランドールは自身の運命は操れなかった。
さらにフランドールは狂気に呑み込まれてしまったことによって握っていたリアスたちの運命すら手放してしまった。
強力な狂気による強化はフランドールを強くした反面、力を不安定にさせるという大きなデメリットも与えてしまった。
そのせいでフランドールの最後の攻撃も一誠を完全に絶命するには至らなくさせてしまったのだ。
リアスたちは一誠を見て涙を流す。だがギャスパーだけはフランドールを見て涙を流した。
そしてギャスパーは気づいた、フランドールの右手がまだかすかに動いてることに。
ギャスパーは急いでフランドールの下へ走る。
この時フランドールの右手の照準は一誠の方へ向いていた。
右の手のひらを向けて―――――――――何かを握りつぶす動きをする。そしてまた動かなくなった。
その時、だれも気が付かないほど、音が鳴ったかどうかも疑わしいほど小さな音で何かが割れる音がした。
ギャスパーが到着したころにはフランドールの体は3分の1ほどが灰に。
急いで自身の体で影を作ってそれからフランドールを日陰まで移動させた。だが、フランドールは既に息を引き取っていた。