BADENDの先に掴むもの   作:超高校級の警備員

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日本勢力VS三大勢力(会合)

 呪いから自力で解放された一誠は今までの状況からまだ危険とさもうしばらく検査入院することに。

 学校もしばらく休校となったためちょうどいいとのことで特に反対もなかった。

 そこでリアスや朱乃、アーシアたちは病院の個室で退屈であろう一誠の看病を嬉々として行う。

 だが、木場や小猫、ゼノヴィアの前線組はこの期間中になんとか自身を鍛えなおそうと考える。

 そうした意味でもヴァーリチームの参戦はグッドタイミングであった。

 小猫は黒歌と、木場とゼノヴィアはアーサー・ペンドラゴから修業の相手をしてもらうことに。三人はとても熱の入った状態で修業に取り組んだ。

 その中でひときわやる気を出していたのが小猫だ。

 

 小猫は今回一誠を助けるため日本妖怪に助けを求めた時に全く役に立たなかった。自身が日本妖怪であるにも関わらず。

 別に小猫に大きな責任があったわけではないが、同族であるにも関わらずなんの役にも立てず自分より上位とはいえ七災怪のこいしを自慢の仙術でとらえることができなかったのがふがいないと思っている。

 だからあの日からわだかまりの無くなった姉の黒歌からさらなる仙術の手ほどきを受けることを決心した。

 

「う~んやっぱり白音はまだ感覚がつかみ切れてないみたいだにゃ」

「そうですか……」

 

 小猫は仙術を使う際に出てくる猫耳をシュンとさせる。

 

「落ち込むことないにゃ白音。仙術はある一定のレベルになると使う感覚がまったく違うものになるにゃ。

 白音だって仙術の初段はすぐにできるようになってたんだから才能がないって悲観することは全然ないにゃ。

 私だってこの感覚をつかむのは苦労したにゃ」

「……でも、一番弱いから早く強くならないと」

「そんな焦ることないから、白音は白音の良さがあるし白音は弱くないにゃ」

 

 どんどん落ち込んでいく小猫を必死に励ます黒歌。

 だが、黒歌の頑張りもむなしく小猫の落ち込み具合は変わらない。

 

「初級の仙術では力を取り込むイメージだけど、上級近くになると途端に自然の力を体に流すイメージに変わる。

 その時に初級の力を取り込むイメージは完全に邪魔になってしまうにゃ」

「私にはよくわかりません」

「にゃあ、私もいまだによくわからないにゃ。

 だから長年の鍛錬によって習得できる技なんだにゃ。一気に変わろうとしても無理だにゃ」

 

 黒歌は昔まだ悪魔ではなかった頃に仙術の先生から教わったことを小猫に伝えた。

 そうして最初の恩師の言葉をしゃべってるうちに黒歌自身の心にも何かがしみ込んでくる。

 

「……師匠もそれを伝えたかったんだろうな」

 

 黒歌は小猫に聞こえるかどうか微妙な声量で独り言をつぶやく。

 

「どうしたんですか? 姉さん」

「なんでもないにゃ。さあ、仙術の練習を再開しよう!

 ……今更後悔しても遅すぎるし」

 

 黒歌との修業を再開した小猫だがやはりその後も目の前の壁を壊すことはできずそのままずるずると時間だけが過ぎた。

 だが黒歌は小猫の猫又としての才能は高いものだと確信している。

 初段とはいえ全く知識がないはずの仙術を短時間で習得した小猫には確かに小猫が思ってる以上の才能は備わっているであろう。

 しかし、これは黒歌も初めのころにぶち当たった難題だが自分に合った力の使い方がわからないのである。

 冥界で黒歌に仙術を教えてくれた元妖怪の転生悪魔も仙術に関してはその当時の黒歌とほぼ同等の使い手であった。だから黒歌の今の仙術はほぼ我流である。

 その時唯一頼りになったのが昔見た本物の一流の仙術である。

 だから小猫もそれさえつかめば必ず伸びると黒歌は確信している。

 自分の罪を償うためにも。

 

 

 

    ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 三大勢力と日本神話との会談当日。

 会場に指名された場所は駒王町にある廃寺。

 護衛に選ばれたリアス眷属は休校となった駒王学園で待ち合わせをして出発することに。

 その際条件として三大勢力は各勢力で一番政治力が高いもの一名で来るようにと条件付けされてた。

 そして冥界の代表は当然この悪魔。

 

「お兄様、本当に私たちでよかったのですか?」

「もちろんさ。確かに現状でリアスたち以上の強さで瞬時に判断できる上級悪魔はいるよ。

 だけど、今回もっとも護衛に必要なのは実力以上に信頼と人柄なんだ。

 今回の会談ではこちらが争う意思がないということを第一に伝えたい。そんなとこに警戒心むき出しの護衛を連れて行っては誤解を受ける可能性がある。

 だからこそ人柄も信頼もおけるリアスたちにお願いしたいんだ。もちろん実力と実績も判断材料の一つだよ」

 

 リアスはその言葉で自分たちより相応しい人物を頭に思い描いた。

 大事な会談で自分たちより適性があるならそちらに任せた方がよいと考えたのだ。

 

「それだったらソーナたちを。ソーナは日本妖怪とおそらく一番なじみがあるわ」

「ソーナくんが日本妖怪と個人的な付き合いがあるのは本人から聞いたし立候補もしてたよ」

「だったらなぜ?」

「それはヴァーリくんが正式に三大勢力についただろ。

 その直前に日本勢力の有力者を大事な用事の時に一方的に勝負を仕掛けてしまったんだ」

「ああ……」

 

 魔王は少し気まずそうにしながらも答える。

 その場のメンバーもさすがに先が読めた。

 

「そのことで日本勢力と面識の深いソーナくんにはそっちの方へお願いしたんだ。

 しかもその時ソーナくんは笑顔で了承してくれたんだけど、その笑顔がなんだか怒ってるのに笑ってるグレイフィアみたいで怖かった」

「おそらくヴァーリは思いっきり魔の悪いとこで仕掛けたんだろうね」

「お兄様、タイミングが悪かったのよ。

 それにこれは事故よ、もう吹っ切るしかないわ」

「なんだかわからないがリーアたんがそういうならそうするよ」

 

 リアス眷属とサーゼクスは指名された廃寺に向かった。

 廃寺ということで発見が困難であると予測されたが、日本側が渡した地図がかなりわかりやすく描かれてたためスムーズにたどりつくことができた。

 

「本当にここで合ってるんですか?」

「う、うん。そのはずなんだけど……案内状にも廃寺と書かれてるし……」

 

 たどりついたのはもう何年も使ってそうにないボロボロな廃寺。

 本当にここで合ってるのか疑わしく思ったが、廃寺の方へ進む。

 

「はいは~いスト~ップ」

 

 廃寺の屋根の受けからこいしが飛び降りてくる。

 こいしの気配も姿ももちろんリアスたちもサーゼクスも察知できていなかったためびっくりしている。

 

「お初にお目にかかります。私は天照様に使える七の妖怪、七災怪・風影のこいしと申します。

 お手数ですがこちらから先に進むには一つ検査を受けていただく必要がございます。

 失礼かと思いますが用心のためご協力お願いします」

 

 こいしは風影の笠とその下の帽子を脱いで頭を下げる。

 リアスたちの時の適当な態度とは違いしっかりと礼儀正しく対応するところにトップとしての自覚がある。

 

「もちろん構わない。これで信用がいただけるのならお安いご用さ」

「ありがとうございます。では、……お~い、出番だよ~♪」

 

 最後の最後で素の状態に戻ってしまうあたりこいしの意識に関してのツメの甘さが見られる。

 こいしの呼び声に反応して現れたのは3m近くの身長を持つ白いワンピース姿の女性。

 だが、それよりも注目するのはその手に持ってる笠。

 

「雷の笠……彼女が七災怪・雷影なんですね」

「ぽぽ?」

「それは違うぞ少年」

 

 女性の下の方から声が聞こえてくる。

 声のした方を見るとそこには一匹の白い犬が。

 

「初めまして、私が七災怪・雷影のあうんと申します」

 

 狛犬のあうんはおすわりの体制から礼儀正しく頭を下げた。

 それに合わせて後ろの大きな女性も頭を下げる。

 最初雷影と思われた大きな女性の次に現れた雷影と名乗る犬。このギャップにリアスたちは少し頭がついて行かなかった。

 

「じゃああの人は?」

「私は見ての通り犬だからな。笠をかぶってしまうと動きづらくてしょうがないんだ。

 だからどうしてもかぶらなければいけない時以外は誰かにもってもらうことにしてるのです」

 

 一誠はそんな質問をしたが実際は彼女の体だけではなく胸も超ビッグサイズなのに終始目がいっている。

 

「時間も惜しいので早速失礼します」

「え?」

 

 雷影のあうんをリアスたちとサーゼクスに近づいて何やらにおいをかぎ始める。

 その姿は道端であれば思わず撫でてしまいそうなくらい普通の犬のしぐさにも見える。

 アーシアなんかは実際に少し触りそうになったくらいである。

 

「くんくん。ふむ、異常なし。

 ご協力ありがとうございました」

「ではご案内いたします」

 

 こしが廃寺の扉を開くとそこにはまるで大きな旅館のような廊下が広がっていた。

 こいしが案内するままサーゼクス一行は奥の部屋へと案内された。

 そこには既に天使長と堕天使総督(まだアザゼル)が集まっている。

 

「おや、僕たちが一番遅かったようだね」

「ええ、でも私たちも今来たばかりですから」

 

 ミカエル、アザゼル、サーゼクスの三大勢力組がそんな話をしているうちに一番奥のふすまが開かれる。

 奥から現れたのは桃色のロングヘアーの少女が一人。

 その少女の表情は仮面をかぶったかのように無表情であり頭に能面の狐面をつけている。

 むしろ着けているお面の方が表情が豊かなくらい。

 いや、よく見ると紐が空中に漂ってるため浮いているので正しくは着けていない。

 そんな彼女からは強者のオーラも感じない。だが、あまりにも何も感じない彼女を弱者と思う愚行はトップは侵さない。

 むしろここまで無にできることはとんでもない強さの証であることは知っている。

 だからこそ彼女の登場に会談の始まりを予期した。

 

「おっと、やっと日本神話のお出ましか」

 

 アザゼルは自分のペースを崩すまいといつも通りの軽口から入る。

 その言葉はペースを維持する他にここからが会談の始まりだと一誠たちに伝える役目もある。

 その甲斐あってこういう場所に慣れず無の強さを感じ取れない一誠も彼女が日本最高神と気づいた。

 

「あの人が日本の最高神……」

「いや、違うぞ」

「違うんかい!」

 

 登場のタイミング、只者ではない存在感、部屋の中で控えていた風影・こいしがその人にお辞儀をして出て行ったことで完全に日本の神と間違えた。

 間違えたアザゼルと一誠は口に出してしまったため少し顔を赤らめる。だが、口に出してないだけでその場の全員が間違えていたため笑う者も咎める者もいない。

 だが、思いっきり勘違いさせようとするかのような登場にはツッコミを入れる。

 

「じゃあお前誰なんだよッ!」

「私は天照様の家臣、こころと申す」

「神ですらないのかよ!

 思わせぶりな態度とってんじゃねえよ!」

「そっちが勝手に勘違いしただけだ。私には何の責任もない」

 

 こころは至極まっとうな意見を言ってあたりをきょろきょろと見回す。

 その感情のこもってない瞳で周りを見、三大勢力が連れてきた護衛を見、トップたちの表情を見る。

 

「どうやらこの場を借りて天照様を亡き者にしようとはしてないようだな」

「おやおや、そんなに俺たちの事が信用できないのか?」

「日本の領土を勝手に我が物顔で領土主張するような奴らを信用できるわけないだろう」

 

 三大勢力のトップたちは痛い所をつかれたといった苦しい表情をする。

 

「それと、お前たちが詫びを兼ねた手土産として我々に送った魔剣や聖剣に人工神器……日本を戦争に巻き込む気かッ!

 こんなもの送られたところで使い道がないし、同盟を組んだと思われたらどうする!」

「巻き込むなんて、そんなつもりはなかったのですが……」

「帰りに返すから持って帰れ」

 

 こころは三大勢力に精神的追い打ちを容赦なく浴びせる。

 失礼極まりないようなことを表情一つ言い放つ。変わっているところといえば頭の面がいつの間にか般若の面になっていることくらい。そしていつの間にか狐面に戻っている。

 苦しくなったサーゼクスはもしもの時のダメ押しをここで使用した。

 

「まあまあ、渡した達も貴方たちの事をけっしけ軽んじてるわけではない。

 現に三大勢力の期待の星、赤龍帝の一誠君の出身地はここ日本だ」

「え!? なんでここで俺に!?」

「なんだ貴様?」

 

 ―――――――――サー

 

 サーゼクスのもしものダメ押しとは兵藤一誠の存在である。

 自分たちの期待をかけている存在が日本人という事だけであるが、それだけ重要な人物が日本から排出されたことで日本を甘く見ていないと暗に伝える。

 だがこころはそれをどうでもいいかのように流す。

 

「というより転生悪魔が日本人として数えていいのか疑わしいぞ」

「俺は日本人ですよ!」

「なんか貴様? お前がどう思ってるかは今は問題ではない。

 はたして転生悪魔となった者が元の種族として認識してもよいものかということだ。

 確かに前の種族としての特徴は残しているであろう。だが、その本質は既に悪魔となっておりそこに前の種族としての誇りを語ってもよいもよいかどうか」

「こころ、その辺にせい。

 お前が前に出すぎて儂が登場したことに誰も気づかんかったぞ……」

 

 いつの間にか入ってきていた少女がこころを静止した。

 こころの一人語りのせいでその少女が入ってきたことに気付いたものは誰もいなかった。

 だがその少女の出現でこころは急に落ち着きを取り戻す。

 

「はい、申し訳ございません」

「ゴホン! さて、まずは自己紹介させてもらおう。

 儂こそが日本の最高神・天照大神(アマテラスオオカミ)じゃ!」

 

 きれいな黄緑色のロングヘアーに赤い鉢巻を巻いている中学生くらいの小柄な少女。

 アマテラスは自分の席に正座し、こころはアマテラスの後ろに控える形で立つ。

 

「やっと本命の登場か……」

「さて、まずは用心のためとはいえこちらから一方的に条件を突きつけたことと家臣が無礼を働いたことを詫びよう。すまなかった」

「まあ三大勢力の時もテロ攻撃が起こったのですから用心に越したことはありません。

 当然の権利です」

「だけど私たちを警戒する必要はない。私たちは貴方たちと友好な関係を築きたいだけなのだから」

 

 若干喰いかかったアザゼルと違い天使長のミカエルと魔王の一人サーゼクスはフレンドリーに日本勢力と最初の言葉を交わす。

 

 最初の登場こそ情けなさが見えたアマテラスだが会談が始まると神としての貫録をしっかりと発揮した。

 こころも会談が始まると一切話さず一切動かない。

 

「それでは、日本としては今後どうしていきたいとお考えに?」

「鎖国などはする気はない。これからは世界とのつながりが大事になるだろうからな。

 しかし、自国の領土を渡すのも悪しき者を日ノ本に侵入させる気もない!

 このまま日本に住むのも商売をするのも一向に構わんが、領土は返還してもらい日本に害するのであれば当然出て行ってもらう」

「それでは、やはり和平の話は……」

(いくさ)をする気はさらさらないが、お主らの傘下に加わるつもりもない。

 儂らは今のお主たちが信用できんからな」

「どうやらあなたの中で我々の信用は低いみたいですね」

「アハハ、三大勢力和平会談の時の俺と一緒じゃねえか」

「アザゼル、立場をわきまえなさい」

 

 アザゼルは三大勢力の和平会議の時の自分の立場と今の三大勢力の日本からの信用が同じレベルなのがなんだかかおかしくて思わず笑ってしまう。

 ミカエルはそんなアザゼルに注意する。

 

「わりぃわりぃ。いや、日本神話側の主張が思った以上に平和的で思わず安心しちまってよ」

「まあ確かにそうだね。こちらに信用がなかったのは残念だが平和は保たれそうだ」

 

 三だ勢力側はとりあえず日本が攻撃的な姿勢を見せなかったことに安堵した。

 そして次に会談開始前から気になっていたことをアマテラスに問う。

 

「ところで我々の一体何が信用できないのですか? 確かに日本神話側に許可なく日本領土を私物化していたのは申し訳ない。だが我々は日本神話に何も攻撃は仕掛けてなかったハズだが」

「日本の領土を勝手に自分たちの領土と主張し、日本の領土でそちら側の問題を平気で起こす。

 何より許せんのが妖怪の誘拐と侵害じゃ! お主らのせいで希少な妖怪は乱獲され居場所を奪われた!

 そのせいで絶滅した妖怪すらいるのじゃぞ!」

「……そうか、それは申し訳ないことをした。

 確かに昔はそんな悪魔たちもいたのは事実。だが私たちは決して侵略を目的としてるわけではない。ただ種の絶滅を防ぎたかっただけなんだ。

 私たちが皆で協力すれば幸せな未来を築けるはず」

「お主たちが世代交代したのは100年くらい前の話だと聞いておるが?

 それでこれではどうかと思うぞ?」

 

 アマテラスのとげのある一言がサーゼクスの胸に突き刺さる。

 

「じゃが、すべては移り変わってゆくもの。諸行無常じゃ。

 儂もある時から変わることができた。こころ達のおかげでな。

 現在のお主たちの評価は最悪だが、もしもお主たちが真に善き王であるならばその言葉信じてやらんでもないぞ」

「私たちを信じてくれるのかね」

「だから同盟などの話はしばらく様子見じゃな。

 これからの結果、あり方次第では儂ら日本勢力も三大勢力の同盟に加わってもよいと考えるかもしれぬぞ?」

 

 その言葉に三大勢力は、特に悪魔陣営は希望を覚えた。

 まだ日本勢力は自分たちを見捨てていないと。

 

「そうか……私たちのことを信じてくれるのか。ありがとう」

「握手はその時が来るまで取っておくとしよう。

 なんせ今のところ我々はお主ら三大勢力を親の仇くらいに思っておるからな。特に悪魔陣営をな」

 

 アマテラスは軽く笑いながら差し出された手を拒絶する。

 

「では、直接冥界の様子をご覧になられればいかがでしょうか?

 我々としても最高のおもてなしをさせていただきたいと思います。

 確かに我々は昔日本の妖怪に対して誘拐まがいのことをしてきたのは事実。だからこそそれも改善された冥界の様子をお見せしたい。

 そんな彼らも今では安泰に暮らしてるところを」

「……護衛はしっかり連れて行かせてもらうぞ?」

「もちろん」

 

 そうして三大勢力と日本勢力の会談は幕を閉じた。

 三大勢力は日本勢力とはまだ見込みがあると嬉しく思う。

 だが、実際は……

 

 

 

    ◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 会談が終わった日の夜、アマテラスは自分の屋敷に七災怪を全員集めて話し合いの場を設けた。

 暗い和室の中で明かりは月明りと中央のろうそくのみ。

 その場のメンバーの顔は全員が俯いてることもあり一本のろうそくの光では影がかかって見えない。

 

「さて、今回集まってもらったのはほかでもない、三大勢力とのことで皆の意見を聞きたい」

 

 最高神のアマテラスが話し合いの狼煙をあげる。

 それによってうつむいていた七災怪の妖怪たちが顔を上げた。

 そしてそのうちの一人が手を挙げてから発言する。

 

「吾輩としてはもはや三大勢力に信ずることはできぬと思います。

 昔から悪魔共は我々の領地を我が物顔で侵し、天使共は我らを邪悪なものと呼び一方的に殺す、堕天使共も我らをその辺の獣と同じように考え扱っておる。

 なぜ今まで吾が輩自身も我慢しておったかわかりませんが」

 

 

       初代土影・土蜘蛛

 

 

 歌舞伎のような化粧をした男、初代土影・土蜘蛛が真っ先に三大勢力を批判する言葉を吐いた。

 それに続いて隣にいる七災怪が手を挙げる。

 

「まったくもってその通り。

 ワシの領地もなんど荒らされたことか。

 こちらが話し合いで解決しようとしても奴らはここは自分たちの領地だとぬかしおる。

 ワシとしては妖怪が住む場所と現世は別なのである程度は許容してやったというのに奴らは自分たちが譲ってやったと恩着せがましいことをぬかしよる。

 これが日本の手による開拓なら仕方なしとあきらめたが」

 

 

       初代陽影・鬼喰い

 

 

 

 黄金の体に頬までさけた大きな口を持つだるまのような妖怪が少し苛立ちを見せながら発言した。

 土蜘蛛と鬼喰いの言葉に答えるためにアマテラスが手を挙げる。

 

「すまぬ、そのような事になっておるのに何もせんで。

 だが、これだけは聞いてほしい。儂のところにもなぜが全く情報が入ってこなかったんだ。これだけ被害がでているというのにまったくじゃ。

 そして最近になって一気に儂のところに報告が入ったのじゃ。

 報告が入ってこなんだことも奇怪じゃが、それまで儂もまったく違和感をかんじておらんかったのも奇怪じゃ.。

 じゃが、儂が神としての務めを怠慢しておったのも事実じゃ。すまなかった」

 

 アマテラスが頭を下げて七災怪の皆に謝罪する。

 だがこれはアマテラスばかりが悪いのではなくこれと言って反撃をしようとしなかった自分たちにも責任がかなりあると思っている。

 七災怪の妖怪たちはアマテラスの頭をどうにかあげさせようと一人が手を挙げた。

 

「アマテラスサマ、オカオヲアゲテクダサイ。

 ソノコトニカンシては、ワレワレにもタダイナ責任がアリマス。

 アマテラスサマからオオセツカサッタシメイヲ果たすことがデキテイナカッタのですから。

 ソレニ、その奇怪なゲンショウはワレワレにも起こってオリマシタ。

 だからこそシメイをハタセナカッタのデス」

 

 

 

       二代目陰影・鵺

 

 

 

 全身が黒いモヤでおおわれている妖怪。

 普段は見た人によって姿が違って見えるのだが、現在はその能力を強く使って自分の正体を完全にわからなくしている。

 この状態の鵺の正体を見ることは七災怪どころがアマテラスにも見えていない。

 だが、正体を完全に不明にしてしまってるため声も安定しない。

 

 鵺の言葉で何とかアマテラスの頭を上げさせることに成功。

 そして話し合いは再び始まり次の妖怪が挙手。

 

「私のところには幸運なことにほとんど三大勢力の手は伸びておりません。

 しかし、自分たちの領土で生まれた邪龍を日本の領土で処分し、日本の元々住んでいたものとして名を奪う行為は許せませ

 一度この目で見たことがありますがあの程度の邪龍に『八岐大蛇』と名乗られるのは侮辱でした」

 

 

 

       初代水影・八岐大蛇

 

 

 

 

 長い髪を頭のてっぺんでくくり、八の頭を持つ龍の形をしたマフラーのようなものを首に巻いている男の妖怪。

 自身の名を汚されたことによる苛立ちで右握りこぶしが震えている。

 それに呼応してこころが手を挙げた。

 

「それについては私も常々思っていました。

 日本の伝統ある名前を粗悪なまがい物で偽って日本の品格を下げる行為は許し難し。

 現に八岐大蛇は既に三大勢力に負けた事になり、日本本来の力は冥界の劣化品が元祖として知れ渡ってしまっている。

 あまつさえ日本妖怪の絶滅危惧種を希少価値だけで勝手に保護と称して恩を売ると共に自分たちのものにしてしまう!」

 

 

 

      七災怪元締め・無影・こころ(付喪神)

 

 

 国宝級の付喪神であるこころは日本を侮辱する冥界の行為に一番頭にきていた。

 その怒りは八岐大蛇の怒りに劣らぬ。

 そんな二人の怒りもほどほどに話し合いは続けられ次は雷影がお座りの姿勢からお手の要領で手を挙げる。

 

「私の領地は田舎なので三大勢力の被害はほとんどありません。

 しかし、私の領土の妖怪たちは荒事向きではないためもしものことがあれば一方的にやられてしまうでしょう。

 それに、唯一まともに戦えるのは私と八尺だけです。

 なのでやはり三大勢力には良い印象はありません」

 

 

       二代目雷影・あうん(狛犬)

 

 

 

 気性が穏やかで三大勢力にほとんど関わり合いのないあうんでさえ三大勢力に対して反対意見を出す。

 そして次に手を挙げた妖怪は彼女。

 

 

「多摩は他の七災怪の皆よりは知ってる程度ですが、やはり三大勢力は表の噂は良いですが信用に足りぬ存在かと」

 

 

 

 

 

       三代目火影・多摩

 

 

 

 超人騒動の際にネプチューン・キングを跡形もなく焼き払った火車へと進化した猫又。

 この中で最も三大勢力の情報を持っているであろう多摩の意見にみながやはりといった表情を見せる。

 だが、多摩以上に三大勢力の闇を知る妖怪はここにいる。

 また一つ七災怪の一人の手が上がる。

 

「私は先日冥界の魔王の妹の記憶を深く除きました。

 その者は自身の眷属を使えぬものと判断するや否や見捨てるという形で殺めました。

 そしてその者が強くなって復活すると自分の眷属だと主張して無理やり引き戻そうとしておりました。

 さらに、許しがたきはその者が仲間にならぬと確信すると確証のない罪をかぶせ組織全体で再び殺めました。

 魔王の妹でありながらもこのような行為を侵し、あまつさえそれを国を動かすものが一緒になって哀れな一般人を陥れるようでは信用する価値はないかと」

 

 

       二代目風影・こいし((サトリ)

 

 

「なんと! そのような事を……やはり吾輩は信用に値しないと思いますぞ!」

「ワシも土影と同意見だ。

 火影と風影がつかんだ情報、そして今までの愚行から見てもやはり信じてはならぬと思います」

「アイツラ、ロクナコトシヤガラネエナ。

 ソノ情報ヲ持ってきてクレタ風影には感謝ダナ」

 

 七災怪の妖怪たちは完全に三大勢力を信じる方に反対の意見を言う。

 それを聞いてアマテラスは一度うなずいてから手を挙げる。

 七災怪たちの視線は一気にアマテラスの方向へ向いた。

 

「うむ、皆の考えはよくわかった。

 だが儂は三大勢力に一度だけ機会を与えてやりたいとおもっとる。

 儂自身昔はとんだ愚か者であった。そして悲劇的状態からお前たちに救われた。

 だからこそ、過去の過ちを悔いて立ち直ろうとしてるのであれば汚名返上をしてやる価値はあると思う。

 これを聞いてなお皆の意見が聞きたい」

 

 アマテラスの考えを聞いて七災怪の全員が深く悩む。

 七災怪の妖怪たちもいかにどれだけ日本が三大勢力に苦しめられてきたか理解も体験もしている。

 だが、アマテラスの昔と現在の変貌の過程のように改心して善き王となるのであれば待つ価値もなきに非ず。

 そして10分ほど悩んだ末に七災怪たちが出した答えは。

 

「それでは、冥界の事情を直接調べたうえで善き道を進んでおるか愚かなままであるか判断するのはいかがでしょう。過去の過ちをくり返せんとして四苦八苦してる可能性を考慮して」

「まっその辺が妥当でじゃろうな。

 だから冥界に向かう際に皆には儂の護衛よりも情報収集を優先してもらいたい。

 そこで最も働いてもらうことになるのは風影と陰影じゃ。頼めるか?」

「お任せください」

「天照大神様ノゴキタイに応エテみせまショウ」

 

 鵺とこいしが深々と頭をさげる。

 そして長い沈黙となった。

 

「……他に何か言うことはあるか?」

 

 アマテラスが最終確認として一声かける。

 だが、沈黙は依然として破られない。

 

「じゃ、これでお開きとするのじゃ!」

 

 アマテラスはさっきまでの真面目な態度から一変して見た目相応の雰囲気に変わる。

 そして電源を入れて部屋の明かりをつける。

 多摩がろうそくのあたりを消してこころがそれを片付ける。

 

「なんかお腹すいちゃった。みんなで軽く夜食でもたべないか?」

「にゃあ、アマテラス様に賛成にゃ。鵺さんも一緒に行くにゃ!」

「モチロンいクヨ。ソレにワタシもスコシすイタ」

「私も食べる~~」

 

 先ほどの堅苦しい雰囲気も異名で呼び合うこともせずに仲良く対等に接する。

 そんな仲よさげにアマテラス・多摩・鵺・こいしが部屋を出る。

 それを見送ってからゆっくりと立ち始める七災怪の男性陣。

 

「メシもいいが今はちょっと甘いものも食べたい気分だ」

「吾輩のところで作っておるまんじゅうを土産として持ってきておる。

 それも皆で食べようではないか鬼喰い」

「おお、それはありがたいな土蜘蛛。おろちとあうんはどうする?」

「アマテラス様のお誘い、ありがたく頂戴いたす」

「私もアマテラス様にモフモフされに行きますか」

「じゃあ全員来るでいいのだな?」

『お待ちくだされこころ殿』




 アマテラスはロリババア!! これ私のこうであってほしい妄想!!
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